Schooldays in U.C.0079 作:碗古田わん
そのうち3隻は、
残りの2隻は第235補給部隊のコロンブス級輸送艦、ラブフェアとサラミス級巡洋艦、ソネットだった。
先の戦闘でメインブリッジを失ったソネットは、サブブリッジで艦を運用している。
コロンブスの2つのハッチが解放され、そこから
エイプリルスターのモビルスーツデッキでは、搬入された物資の入ったコンテナをメカマンたちが忙しそうにあっちこっちに運んでいた。
「このパーツはこっちでいいのかい?」
それに交じって、パイロットであるデレック・イージスも補給物資の整理を手伝っていた。
「このパーツは、ここだな」
「そのパーツ、こっちに流して」
同じくパイロットのクワサ・アラーとテル・ヘンドリックもそれに加わっていた。
しかし、
「ショウの様子はどう?」
手近のコンテナをメカマンにパスしてから、テルはデレックに聞いた。
「駄目・・・・・・部屋に閉じこもったまま出てこない」
デレックはお手上げのポーズをする。
「想い人が死んだんだからね・・・・・・」
テルは心配そうに言った。
「掛ける言葉もないよなぁ・・・・・・」
会話に加わったクワサも沈痛な面持ちだった。
「そうだよな・・・・・・」
それはデレックも同じで、意気消沈していた。
エイプリルスター内の匠の部屋はデレックと同室だった。
大抵はガンルームで過ごしているので、ここで寝泊まりすることはあまりない。
しかし、今の匠はひとりになりたかった。
パイロットスーツを着たままの匠は、膝を抱えて背中を丸めながら宙に浮いていた。
周辺には、涙の粒が無数に散乱している。
「フーコ・・・・・・」
匠の頭の中に
初めて会ったのは
ほとんど一目惚れだった。
だが、恋愛系経緯のない匠は、どう接していいかわからなかった。
なので、急速に距離を縮めようとした結果、風子を怖がらせてしまった。
それで嫌われたと思った匠は、失恋したと決めつけた。
けれども、それでも風子への恋愛感情は消えずに、ずっと思い続けていた。
親友の
ジオンが攻めてきたあの日の会話。
ルナツーで、約1年ぶりに再会したこと。
そして、最後は
「フーコ・・・・・・フーコ・・・・・・」
もう何度も繰り返してきた思考のループ。
「くそっ・・・・・・ジオンめ・・・・・・!」
匠は、あらためて怒りを露わにした。
その時、艦内放送がなった。
『これから、作戦概要の説明を行います。ブリッジ要員とパイロットはブリーフイング室へ集まってください』
「・・・・・・行かなきゃ」
その放送を聞いて、匠は自分のやるべきことを思い出した。
部屋を出てリフトグリップを握り、ブリーフィング室に向かう。
「ショウ!」
その途中で、デレックが後ろから声を掛けてきた。
「もう大丈夫・・・・・・じゃなさそうだな」
振り返った匠は、本当に酷い顔をしていた。
「まだ休んでたほうがいいんじゃないか?」
同じく、匠の顔を見たクワサが心配そうに聞いてくる。
「いや・・・・・・もう平気だから」
そんな二人に匠は強がって見せた。
「でも・・・・・・」
それでもテルが心配した。
「このまま部屋にこもってたって何も変わらない」
匠は強く言った。
「死んだフーコのためにも、僕はジオンを叩く!」
そして、決意する。
「そっか」
その言葉にデレックは白い歯を見せてにっと笑った。
「なら、力になるぜ」
「オレも」
直ぐにクワサが同意する。
「ボ、ボクも」
それを聞いたテルも慌てて付け加える。
「ありがとう・・・・・・」
戦友たちの言葉に匠は感謝した。
4人がブリーフィング室に入ると、既に他のメンバーは集まっていた。
慌てて、一番後ろの席に座る。
それを確認したロッド・ジョーンズは、正面スクリーンに映るラリー・フォードに頷いた。
『それでは、次の作戦の概要を説明する』
ラリーの声でスクリーンに
『作戦目標は、ずばりソロモンだ』
それを聞いた全員が、やはり、と思った。
『作戦名は、チェンバロ。以後、そう呼称する』
(チェンバロ作戦か・・・・・・)
匠は心の中で反復した。
『艦隊は
スクリーンに艦隊が書き込まれる。
『
そこで、今度は第3艦隊がアップになった。
『我々、
そして、第3艦隊がソロモンへ侵攻するアニメが加わった。
『まず最初に第3艦隊が進撃を開始する』
さらにスクリーンが拡大される。そこには、3つに部隊が分かれていることがわかった。
『その際、パブリク突撃艇が先行してビーム攪乱膜を散布する』
スクリーン上のソロモンが靄に覆われていく。
『そのため、両軍ともビーム兵器は使えないと思って欲しい』
「
それを聞いたデレックが率直な感想を述べた。
「でも、あれ、スカート付きに利くのか?」
クワサがひとりごちる。
「
テルも腕を組んで考え込んだ。
『ソロモン攻略にはソーラーシステムを使用する』
ひとり、匠だけはそれを聞き流しながら、真剣にスクリーンを見詰めていた。
作戦概要の説明が終わり、クルーたちはブリーフィング室を後にした。
「早速、ハンガーに行って装備の変更だな」
リフトグリップを握りながらデレックは言った。
「そうだな」
続けてリフトグリップを握ったクワサが頷く。
「お勧めの装備、教えてくれよ」
さらに続いたテルが、後ろを向くと匠に聞いてきた。
「取り敢えず、
最後にリフトグリップを握った匠が答える。
「でも・・・・・・予備あったけ?」
それから誰とはなしに聞いた。
「補給部隊が大量に持ってきたから、大丈・・・・・・あっ!」
そこまで言ってテルは慌てて口を押さえた。
その様子に匠はふっと笑みを零す。
「そこまで気を遣わなくても平気だよ」
「なんか・・・・・・ごめん」
謝るテルに匠はニッコリと笑顔で返した。
宇宙世紀0079年12月24日。
その中にはエイプリルスターも含まれていた。
すでにモビルスーツはデッキを出て、エイプリルスターに取りついている。
その数5機。
元々、エイプリルスターに所属する
補充兵がいなかったので、
それぞれの
「やってやる! フーコのために!」
作戦開始時間まであと5分と迫った。
『いい? パブリク突撃艇が先行するから、モビルスーツ隊はその後に続いて』
ヘルメットのヘッドホンから、
『繰り返しになるけど、15分だけ持たせてね』
それは作戦前のブリーフィングで説明されていたことだった。
今回の作戦で
第3艦隊が時間を稼ぎ、その間に
「了解」
あらためて作戦内容を頭の中で反復させながら匠は返事をした。
『ソロモン防衛隊、こちらの動きに気づいたようです』
エイプリルスターのブリッジから、
カウントダウンの数字がドンドン減っていく。
カウントゼロ。
パブリク突撃艇が一斉に突撃を開始した。
ロケットブースターを装備したパブリク突撃艇は、一気にソロモンの防衛ラインへと到達する。
そこでお腹に抱えた大型ロケット弾を発射した。
要塞砲やムサイ級巡洋艦が迎撃する。
次々に破壊される大型ロケット。
だが、それこそ連邦の思う壺だった。
破壊された大型ロケット弾は中に積み込んであったビーム攪乱膜を周辺にまき散らした。
あっという間にソロモン宙域はビーム攪乱膜で覆われてしまった。
即座に退却するパブリク突撃艇を見たルーベンスは、号令を発した。
「全機発艦!」
命を受けて匠は、
同時に発進した
ソロモン防衛隊のモビルスーツが迫ってくる。
ターゲットスコープを覗いた匠は、先陣を切る
いつものようにロックオンシーカーには頼らない。
自分の勘でトリガーボタンを押す。
左手に装備した
ロケット弾は
それを合図にジオンのモビルスーツから反撃の砲撃が始まった。
匠はそれを右に左にかわしながら、次々に
「すげー!」
その様子にデレックは驚愕した。
自分も既に
左手の
左から攻撃してきた
「次!」
その命中を確認することなく匠は次の目標を探した。
『ショウ! 前に出すぎ!』
ノイズ混じりにルーベンスの声が聞こえる。
その通り、1機突出した
お構いなしで匠は囲んでこようとする
「
それを見ていたクワサが驚きの声を上げる。
「次!」
包囲網を突破した匠が次の目標を見つけようとした時、
「なんだ!?」
突然、ソロモンに眩いばかりの光が注ぎ込んだ。
「ソロモンが・・・・・・焼かれていく・・・・・・」
テルは驚愕した。
「あれが、ソーラーシステムか・・・・・・」
戦場が一瞬、固まる。
「!!」
だが、直ぐに我に返った匠は、手近にいた
”ズギャァァーン"
その爆発で戦場が再び動き出した。
今や戦場は、敵味方入れ乱れて1000機以上のモビルスーツが戦闘する大乱戦になっていた。
ロケット弾で
『わぁー!』
その時、テルの叫び声がヘルメットのヘッドホンから聞こえてきた。
「テル!?」
慌てて周りを見回すと、
「テルーッ!」
匠は絶叫した。
「やったな!」
怒りのままに今、テルを墜としたとみられる
『戦況はどうなってるの!?』
次の目標を探している匠の耳に、ルーベンスの声が入ってきた。
『第2連合艦隊が、
続いて良美の緊迫した声が聞こえてきた。
『
「ジプシークインとリフレインまでやられたのか!?」
「畜生! ジオンめ!!」
怒りを露わにしながら、左手に持った
すると、突然、ジオンのモビルスーツが一斉に後退を始めた。
「なんだ?」
匠は首を捻った。
『追撃しろ!』
誰かの声がノイズ混じりに響く。
それで匠はスロットレバーを最大戦速に叩き込んだ。
見ると、ジオンのモビルスーツは、ソロモンの水際で迎え撃つつもりのようで、編隊を組み直そうとしていた。
「させるかよ!」
匠は叫びながら、その中に突っ込む。
それを阻止しようと
そうしながら、
「弾切れか」
匠は弾倉が空になった
さらに進撃を続ける。
周りをも見ると、デレック、クワサ、それにルーベンスが続いていた。
激しく弾が飛び交う中、ルーベンスの
悲鳴を上げる間もなく、
『隊長!』
デレックの叫びに、匠はかっとなった。
「くそぉ!」
悪態をつきながら、今、
しかし、
それでも匠は動力部に集中して弾を撃つ。
遂に装甲が貫通して、
「やはりスカート付き相手だと時間がかかりすぎる・・・・・・」
匠は思案した。
ビーム攪乱膜の影響はまだ続いている。
「ソロモンに取りつけば・・・・・・」
そう思った時、多くのジオン軍モビルスーツがいる中、ちょうど空白状態になっているところが目に入った。
「いける!」
迷わず、匠はその空白に突進した。
途中、迎撃を受けたがそれをなんなくかわすと、
そこはちょうど第2
周りを確認したが、他に味方が来る気配はない。
「敵は・・・・・・」
匠が
「よし!」
決意を決めた匠は、単機で
不意に
しかし、それよりも早く
爆風をシールドで受けてから、匠は周りを見回した。
「これだけか・・・・・・?」
匠は自問した。
「敵の気配は・・・・・・感じられない」
だが、直ぐに結論づけるとゆっくりと
しばらく道なりに進むと、十字路が見えた。
そこで匠は、一端、機体を停止させる。
「いる・・・・・・スカート付きか?」
十字路の右側に敵の気配を感じた匠は、武装を
そして、十字路に入ると素早く右を向いた。
ほぼ無防備状態だった
匠はスロットルレバーを微速にして、そのまま直進を続ける。
「!?」
不意に、嫌な予感に襲われた。
慌てて、スロットルレバーを後退に入れる。
その時、正面から光の壁が迫ってきた。
とっさに匠は、左右のシールドで防御した。
だが、光はシールドを溶かし、
「わぁー!」
何が起こったのかわからないまま、匠は身体を守るように両手を前に出した。
急速にコクピットの温度が上がり、パイロットスーツを着ていても身体に焼けるような痛みを感じた。
光は
「今のはいったい・・・・・・」
訳のわからない攻撃を受けて、全身に痛みと衝撃を受けた匠はそのまま気を失った。
戦争は、まだ、続いている。