Schooldays in U.C.0079   作:碗古田わん

8 / 15
#7 ガンダムの力

 鮒子田(ふしだ)(しょう)RX-78NT5(ガンダムNT5)のコクピットに残って作業を始めた。

 初期設定が済んでるのは、実際に動かしてみてわかってたが、それでも調整するところはある。

 特に自己学習型(LLM)コンピューターはRGM-79A7番機(ジム07)がデーターをそのまま移植されていたので、RX-78NT5(ガンダムNT5)用に最適化するのに、時間がかかった。

「あれ? まだやってるの?」

 不意に声を掛けられ匠は顔を上げた。

 そこにはデレック・イージスが立っていた。

「飯食ったの?」

 昼食時に食堂で姿を見かけなかったことを、デレックは心配した。

「今何時?」

「もう14時だぜ」

 匠の問いにデレックは呆れたように答えた。

「食ってない・・・・・・」

 匠はしょんぼりした。そう言われると急にお腹が空いてきた。

「もう食堂、終わってるよね?」

「艦内食堂なら、とっくに終わってるよ」

「だよねぇ」

 匠は苦笑いするしか無かった。

「どうしよう?」

 そして、路頭に迷った。

「コンペイトウの食堂は確か24時間だったはずだなぁ」

 そこへデレックが助け船を出した。

「なら、そっちへ行くかぁ」

 匠はコクピットを出た。

 デッキの備え付け内線を使ってブリッジにいた艦長のロッド・ジョーンズに下船許可をもらってから、軍服に着替えた匠は、エレベーターで重力ブロックに降りた。

 途中、少し迷ったが、なんとか食堂にたどり着くことができた。

 食堂は、時間が外れていることもあって、人もまばらだった。

 配膳台でA定食を頼んで、受け取る。

 それから適当に席に着こうとした時、

「匠!」

 不意に声を掛けられた。

 声の方を見ると、久嶋(くとう)繁幸(しげゆき)飯島(いいじま)貴子(たかこ)、それに柴田(しばた)智美(ともみ)がテーブルに陣取っていた。

「シゲ!」

 匠は嬉しそうにそのテーブルの方へ向かった。

「生きてたのか!」

 そして、空いていた繁幸の隣に座る。

「そっちこそ無事だったのか!」

 繁幸も同じく笑顔を見せる。

「独立部隊が投入された第3艦隊は激戦区って聞いてたから、死んだかと思ってたぞ」

「ちょっとヤバかったけど、まぁ、なんとかね」

 定食に手を付けながら、匠は聞いた。

「そっちは?」

 その問いに繁幸は、笑顔を崩さずに言った。

「なんとか生き延びたよ。最後に二本足が出てきて、ちょっと危なかったけどね」

「二本足?」

 聞き慣れない単語に匠は聞き返した。

「二本足の大型モビルアーマーだよ。正式名称は確か・・・・・・」

「ビグザムでしょ?」

 言い淀んだ繁幸に変わって、貴子がフォローする。

「そう、それ」

 正解とばかりに繁幸は、貴子を指さした。

「なんでも、ドズル・ザビが乗ってたって噂だよ」

「そうなんだ・・・・・・」

 実は匠もそのMA-08(ビグザム)に撃墜されていたのだが、その時はまだ知らなかった。

「君たちは?」

 匠は、食事を続けながら、貴子に聞いた。

「あたしたちは、輸送船勤務だったから、作戦には参加してないんだ」

 モビルスーツはサラミス級巡洋艦にも搭載できるが、その艦数には限りがある。

 正規の艦隊では、コロンブス級輸送艦に乗せられ、戦闘前に発進してマゼラン級戦艦やサラミスに取りつくという運用方法がとられていた。

「それにしても・・・・・・」

 智美が楽しそうに言った。

「こうして、同じ中学(ジュニアハイスクール)出身者が揃うなんて、凄い偶然だね」

 すると、繁幸が意地悪く笑った。

「朝倉もいればよかったのにな」

「あっ・・・・・・」

 スプーンを動かしていた匠の手が止まった。

「フ・・・・・・朝倉は戦死したよ・・・・・・」

「えっ?」

 その言葉に繁幸が驚きの声を上げる。

 貴子と智美も信じられないものを見る目で匠を見た。

「どこで知ったんだよ!?」

 動揺で語尾を荒げながら、繁幸は聞いた。

「ふーちゃん、補給部隊だから作戦には参加してないんじゃないの!?」

 親友が死んだと言われて、智美もまた半ギレで問いただす。

「チェンバロ作戦の前にうちの部隊が補給を受けることになったんだ」

 俯いた匠はぽつりぽつりと語り始めた。

「第235補給部隊がくることになってたんだけど、合流前にジオンの哨戒艦隊に見つかって・・・・・・」

 匠は目を涙が溢れそうになりぎゅっと閉じた。

「緊急発進したんだけど・・・・・・間に合わなくて・・・・・・」

 それでも涙は溢れて、頬を伝わって流れ落ちた。

「匠・・・・・・」

 繁幸は掛ける言葉が無かった。

「なんで、ふーちゃん、助けてあげられなかったの!?」

 だが、智美は怒り心頭で叱責する。

「・・・・・・ごめん・・・・・・」

 それは不条理な怒りのぶつけかただった。

「ふーちゃんのこと、好きだったんでしょう!?」

「・・・・・・ごめん・・・・・・・・・・・・」

 それでも匠は謝ることしかできなかった。俯いたまま、膝の上で拳をぎゅっと握る。

「柴田・・・・・・それぐらいにしといたほうがいいと思うぞ」

 見てられなくて繁幸は助け船を出した。

「一番辛いのは、匠なんだから」

「けど・・・・・・!?」

 繁幸は諭したが、智美の怒りは収まらなかった。だが、匠を攻めるのはお門違いだと言うことはわかっていた。

「もうあたし、行くね!」

 結局、怒りの方先を見つけられずに、その場を去るしかできなかった。

「気にするな」

 立ち上がった繁幸は、匠の肩をぽんと叩いた。

「うん・・・・・・」

 腕で涙を拭きながら、匠は力なく頷いた。

「じゃあ、俺たちも行くから」

 貴子に目配りをしてから、繁幸はテーブルを後にした。

「慰めなくていいの?」

 食堂の出口に向かいながら貴子は聞いた。

「慰めたいけど、言葉が見つからない・・・・・・」

 その問いに繁幸は歯切れな悪い答えしか持っていなかった。

 

 食事を終えた匠は、サラブレッドに戻った。

 まだ休息するには早い時間だったが、これ以上作業する気にもなれず、自室へと向かった。

 部屋は一人部屋で重力ブロックにあった。

 ベッドに転がった匠は、先ほどまでの食堂のことを思い出した。

「フーコ」

 考えれば、また涙が溢れてくる。それでも考えざるを得なかった。

「ジオンめ・・・・・・!」

 匠は悲しみを怒りに変えようとした。

「ガンダムなら・・・・・・」

 そして、自分は力を得たことを再認識した。

 そのままひと寝入りしようとした時、

”ラララララララ・・・・・・”

 声が聞こえた。

「なんだ?」

 いや、聞こえたという表現は正しくない。

 頭の中に響いたのだ。

『総員第3戦闘配置』

 そこで、艦内放送が入った。

 匠はベッド横の大型モニターのスイッチを入れて、ブリッジにつないだ。

 すると、軍服姿の良美(よしみ)・イェンスキーが映し出された。

「なにがあったんですか?」

『哨戒に出ていた艦艇が撃沈されたみたいです』

「敵襲ですか!?」

 匠は驚きの声を上げた。

『いえ・・・・・・それが・・・・・・』

 しかし、良美は言葉を濁す。

 首を傾げた匠に、良美は困惑気味に言った。

『敵影が確認できないそうなんです』

「えっ?」

 その言葉に匠も状況が飲み込めず困惑した。

『ショウ』

 そこで画面が切り替わった。

 ブリッジの艦長席に座るロッドが映し出される。

『とりあえず、直ちに出港ということはないが、念のためガンルームで待機してくれ』

「了解」

 その指示に匠は敬礼で答えた。

 

 パイロットスーツに着替えてからガンルームに行くと、既にデレックや、クワサ・アラー、それに第308機動兵小隊(M-308)のメンバーが揃っていた。

「よう、ショウ。飯は食えたか?」

「なんとかね」

 笑顔で聞いたデレックに、匠は頷いた。

「機体の整備は?」

 と、さらに聞かれて匠はあっとなった。

「まだだわ・・・・・・」

 それから独りごちる。

「待機はまだ少し続くみたいだから、その間に調整しちゃおうかなぁ」

「そうすれば」

「うん。ちょっと行ってくる」

 いつものお気楽な口調でデレックが言ったので、匠はガンルームの出口に向かった。

 通路を通って、モビルスーツデッキに入る。

 そのまま、RX-78NT5(ガンダムNT5)のコクピットに流れ着く。

「正体不明の敵か・・・・・・」

 メインスイッチを入れながら、匠は思案した。

「さっきの声と何か関係があるのか・・・・・・?」

 そうは思ったが、それ以上のことは思いつかない。

 仕方なく、つなぎっぱなしだった整備用端末を操作して調整作業を再開した。

 

 それから2時間、匠は作業に没頭した。

「こんなもんかな?」

 ようやく作業が終了した時、艦内放送が鳴った。

『第3戦闘配置解除』

 時計を見るともう18時を回っていた。

「夕食でも食うか」

 それなら、と匠は整備用端末を片付けて、メインスイッチをオフにしようとした。

 そのタイミングで補助(サブ)モニターに通信が入った。

 通信主はロッドだった。

『整備は終わったか?』

「はい」

 ロッドの問いに匠は頷いた。

「デレックたちには話したんだが」

 前置きしてからロッドは言った。

「出港が早まりそうだ」

 予定が早まるのはいつものことなので匠は特に驚きはしなかった。

「それで、明朝8時にブリーフイングを行うから、ブリッジまで来てくれ」

「ブリッジに?」

 だが、それは予想外だったので思わず聞き返した。

「ペガサス級は、ブリッジがブリーフィング室を兼ねてるんだ」

 それでブリッジがあんなに広いのかと、匠は合点がいった。

「了解しました」

 そして、敬礼で応えた。

 

 翌朝の8時、ブリッジにはブリッジ要員とパイロットが集まっていた。

 その中には()()のために乗り込んだジェフ・ロバーツとイリア・フィリップも含まれていている。

 床にある大型モニターには、コンペイトウを含むラグランジュ5(L5)ポイント、それにサイド5(ルーム)のあるラグランジュ1(L1)、それに月が映し出されていた。

「第27独立部隊には、敵残存戦力の掃討とともに次の作戦に備えるよう命令が下った」

「次の作戦?」

 軍服姿の匠は、浮かんだ疑問を口にする。

「月だ」

 ロッドの答えに、デレックが口笛を吹いた。

「グラナダを攻めるんですか?」

「詳しいことは、まだ極秘だ」

 匠は再度聞いたが、ロッドは言葉を濁した。

「この作戦には、他の部隊からも艦艇およびモビルスーツが参加する予定だ」

「共同作戦か・・・・・・」

 クワサは独りごちったが、匠は別のことを考えていた。

(共同作戦ということは、大規模な艦隊を動かすわけじゃないのか・・・・・・)

「出航は2時間後だ。各自準備に入れ」

 ロッドの号令に全員が敬礼した。

 

 そして、2時間後。コンペイトウの第5宇宙港(スペースポート)から、サラブレッドは出航した。

 モビルスーツデッキでは既にパイロットの準備は整っていた。

 RX-78NT5(ガンダムNT5)に乗った匠は、機体をベッドから起こすとカタパルトに乗せた。

 RX-78NT5(ガンダムNT5)はランドセルにプロペラントタンクを2本装着している。

 サイコミュを乗せるために、いろいろな機能を削った結果、燃料タンクもRGM-79A(ジム)の半分以下になってしまったためだ。

「ショウ・フシダ、RX-78NT5(ガンダムNT5)、出ます」

 掛け声とともに、ぐっと身体にGがかかり、RX-78NT5(ガンダムNT5)はサラブレッドの左舷モビルスーツデッキから射出された。

 続いて、RGM-79A6番機(ジム06)RGM-79A3番機(ジム03)もカタパルト発進する。

 そのまま第272機動兵小隊(M-272)は、哨戒任務に入った。

 特に敵影は無く哨戒任務は順調に進んだ。

 それから、6時間が経った。

「燃料はまだある?」

『そろそろギリギリ』

 匠の問いにデレックが答える。

『右に同じ』

 クワサも同意した。

「こちら、RX-78NT5(ガンダムNT5)。そろそろ燃料が尽きそうなんだけど、交代してもらっていいか?」

 匠はレーザー通信を開くと、サラブレッドに聞いてみた。

『大丈夫です。第272機動兵小隊(M-272)は帰投してください』

 すると、良美の声が返ってきた。

「よし、戻るぞ」

 そう言って匠は機体を反転させた。

 

 モビルスーツによる哨戒任務を繰り返しながら、サラブレッドは月へと近付いていた。

 第272機動兵小隊(M-272)は何度目かになる哨戒任務をこなしていた。

「いる・・・・・・」

 不意に匠は、敵を感じた。

 その方向を補助(サブ)モニターで拡大する。

 そこにはムサイ級巡洋艦が1隻と周りにMS-09R(リックドム)3機が見えた。

「こちらRX-78NT5(ガンダムNT5)。敵艦艇を発見しました」

 匠は直ぐにサラブレッドに報告した。

『敵はムサイ級が1隻とMS-09R(リックドム)が3機。どうしますか?』

 その問いにロッドは思案した。

「そのままやり過ごすか・・・・・・」

 サラブレッドのレーザーセンサーでもまだ補足していない。ということは、相手もまだ補足してない可能性が高い。

「ビットで攻撃させてみたらどうでしょう?」

 そこでイリアが提案をした。

「試験にはちょうど良さそうだね」

 それをジェフが後押しする。

「本当に動くのか?」

 だが、ロッドは懐疑的な目で2人を見た。

「そのための試験です」

 イリアは断言した。

「わかった」

 二人の熱意に半ば押し切られる形で、ロッドはその要求を受諾した。

「ショウに、ビットで攻撃するように指示してくれ」

「了解」

 ロッドの指示を受けて、良美はモニターに映る匠に言った。

RX-78NT5(ガンダムNT5)は、ビットで攻撃してみてください』

「ビットでか・・・・・・」

 匠は疑心暗鬼になった。

『ほー、ならこっちはお手並み拝見だ』

 補助(サブ)モニターに映ったデレックがお気軽な笑みを浮かべた。

『たのむぜ、ニュータイプ』

 同じく、補助(サブ)モニターのクワサが茶化す。

「やってみますか」

 その言葉に後押しされて、匠はサイコミュを起動させた。

 ビットが両肩から外れて、宙に浮く。

「敵は・・・・・・見える」

 相手とはかなり距離があったが、匠はその存在を確実に察知することができた。

「行け・・・・・・!」

 匠が念じると、その意思を受けてビットが一斉に飛んでいった。

「攻撃・・・・・・!」

 匠は命じた。岩を相手にした時とは違う。今はもう目標がはっきりわかっていた。

 ビットからメガ粒子の矢が飛ぶ。

 それは確実にムサイ級巡洋艦のブリッジにヒットした。

「本当にできた!」

 匠は驚嘆した。

「モビルスーツも・・・・・・!」

 周り待機していたMS-09R(リックドム)が慌てふためいているのがわかった。

 容赦なくメガ粒子砲が撃ち込まれる。

 コクピットを直撃されたMS-09R(リックドム)は、その場で沈黙した。

 あっという間に、敵部隊は全滅してしまった。

「凄い・・・・・・」

 補助(サブ)モニターの拡大画面でその様子を見ていたデレックは、驚愕した。

 その模様は、サラブレッドにも中継されていた。

「・・・・・・」

 ロッドは言葉を無くして、信じられないようなものを見る目でモニターを見詰めていた。

「成功だね」

 そして、ジェフとイリアは、満足な結果を得られてがっつりと握手した。

「これがガンダムの力・・・・・・」

 ビットを回収しながら、匠は驚きながらも確かな手応えを感じていた。

 戦争は、まだ、続いている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。