Schooldays in U.C.0079 作:碗古田わん
漆黒の闇の中をグレーの機体が飛んでいた。
その機体の名は、
RX-78の試作3号機だ。
「ここら辺のはずなんだけどなぁ」
そのコクピットでケイン・フォスターは、周りを見回しながら目標を探していた。
正面下の
目標の艦は、
ミノフスキー粒子が大量に散布されているこの宙域では視認は困難なのだ。
「さて・・・・・・どうする」
プロペラントタンクを2本追加しているとは言え、コンペイトウからここまで飛ぶのに、燃料はほぼ使い切ってしまった。
ケインが思案していると、
「おっ?」
遠くに定期的に点滅する光が見えた。
サラブレッドだ。
「サラブレッド、聞こえるか?」
レーザー通信をオンにして、ケインは問いかけた。
「こちら、
すると、直ぐに返事が返ってきた。
『こちら、サラブレッド。着艦を許可します。左前足の甲板に着艦してください』
「了解」
そうは言ったが、ケインは首を捻った。
「左前足・・・・・・?」
サラブレッドに近付くと、その特徴的なフォルムがさらに明確になる。
見ると、その左前足の上に円状の着艦位置マーカーとメカマンが、誘導棒を振っていた。
「あれか・・・・・・」
ケインはコントロールレバーを操作して、
それから
お肌の触れ合い通信だ。
「ブリッジへはどう行ったらいい?」
『あちらのハッチから入っていただいて、あとは伍長がご案内します』
「OK。ありがとう」
言われたとおり、ハッチに入るとエアロックで与圧して、サラブレッドの中に入る。
そこに控えていた当番兵の案内で、ブリッジに上がるエレベーターまで案内される。
エレベーターでブリッジまで上がると中に入った。
「ずいぶん広いんだなぁ」
物珍しそうに周りをきょろきょろしていると、キャプテンシートが目に入った。
ケインは、そこまで飛ぶと、敬礼をした。
「ケイン・フォスター中尉、着任しました」
「ご苦労」
それをロッド・ジョーンズが労う。
「全員揃ったらブリーフィングを行うのでそれまで待機しててくれ」
見るとブリッジには他の部隊のパイロットたちも揃っていた。
「はいっす」
再び敬礼したケインは、ブリッジの隅に移動しようとした。
「ケイン」
そこで声を掛けられる。
振り向くとそこには、ジェフ・ロバーツが立っていた。
「ジェフ!」
知った顔がいてケインは頬をほころばせた。
「どうだい?
「絶好調だぜ。もっともまだ実戦してないけどな」
ジェフの言葉にケインはジョークで返す。
「見ろよ、ショウ」
そんなやり取りを遠目で見ていたデレック・イージスは、隣に立つ
「イエローバードだぜ」
「イエローバード?」
聞いたことない単語に、匠は首を傾げた。
「チェンバロ作戦で敵モビルスーツを十機以上撃墜したスーパーエースさ」
と、なぜかデレックが誇らしげに語る。
「へぇー」
感心する匠だったが、内心では、
(僕にも二つ名がついたりしてるのかな?)
と思っていた。
「また来たぜ」
すると、窓から外を見ていたクワサ・アラーが声を掛けた。
ブリッジの窓から
『こちら
「
通信を受けた
ロッドはこくっと頷いた。
「第
そのやり取りを聞いていた匠は、聞き覚えのある部隊名に首を傾げた。
「
そしている間に、
モビルスーツを降りたパイロットたちは艦内に入ると、エレベーターでブリッジに上がってくる。
そして、キャプテンシートの前で3人整列した。
「
と小隊長の
「正一朗!」
一連のやり取りが終わった後で、匠は嬉しそうに声を掛けた。
「ひさしぶりだな」
それに対して正一朗は右手を挙げて答える。
「もしかして、機体は
「そうだよ」
「出世したなぁ」
「まぁ、な」
感心する匠に、正一朗はドヤ顔で答えた。
「第16独立部隊、サラミス級巡洋艦、アフターライト、まもなく到着します」
そこで、良美の声が聞こえた。
「第16独立部隊って・・・・・・」
「カツのいる部隊だな」
匠の疑問に正一朗が真顔で答える。
「あいつも生きてたのか・・・・・・?」
すると、更なる疑問が頭をよぎる。
チェンバロ作戦で独立部隊の大半は第3艦隊に所属していた。
「生き延びてたよ」
だが、正一朗がそれを否定した。
「コンペイトウで会った」
「そうか!」
旧クラスメイトの生存を匠は素直に喜んだ。
「今は
つられるように喜びながら、正一朗は補足した。
「よし、全員揃ったので、ブリーフィングを始めるぞ」
そこでロッドが指示を出した。自分もキャプテンシートから降りる。
床の大型モニターの周りにサラブレッドのクルーとパイロットたちが集まった。
正面の大型モニターには、第16独立部隊のメンバーが映し出される。
「では、今回の作戦、ムーンライトエナジーについて説明する」
おもむろにロッドは話を始めた。
「作戦目標はズバリ、グラナダだ」
それを聞いても、動揺は無かった。
集合地点が月の裏側のグラナダの防衛線ギリギリの位置だったことで、既に予想されていたからだ。
「しかし、グラナダの占拠が目的では無い」
それも部隊の規模から、予想されていたことだったので特に異論は出なかった。
「グラナダに牽制を掛けることで、敵戦力をグラナダへ釘着けにするのが目的だ」
大型モニターにグラナダ周辺の地図が映し出された。
「グラナダの周辺には、多数の艦艇とモビルスーツ部隊が哨戒に出ている」
そのマップに敵影が加わる。
「中には、未確認のモビルスーツも存在するので、注意してほしい」
そこで大型モニターの表示が変わった。
そこには、見知らぬモビルスーツの三面図が映し出されていた。
だが、それも一瞬で、直ぐに元のマップ画面に戻る。
「具体的には・・・・・・」
そして、ロッドは作戦の概要を説明し始めた。
それを匠は神妙な面持ちで聞いていた。
「最後に今回のモビルスーツ部隊の指揮だが・・・・・・」
一通り説明が終わって、ロッドは付け加えた。
「フォスター中尉、君にやってもらう」
「オレっすか?」
指名を受けたケインは驚いた。
「オレ、中隊指揮なんてやったことないっすよ?」
そして、抵抗してみせる。
「今回のメンバーで、士官学校を出てるのは君だけなんだ」
それをロッドは諭すように撥ね除けた。
ケインは一瞬迷ったが、直ぐに諦めの溜息を漏らす。
「わかりました。拝命します」
敬礼してから、ケインはパイロットたちを見回すと、
「ブリーフィングが終わったら、小隊長は残ってくれ」
と声を掛けた。
それでブリーフィングは終了となった。
ケインの元に匠、正一朗、それにニック・アローが集まった。
第16独立部隊所属のジョン・マックスは床の大型モニター越しに参加している。
「まずは名前と階級、それに小隊と構成を教えてくれ」
ケインの言葉に匠が応えた。
「ショウ・フシダ。准尉です。
続いてニックが発言する。
「ニック・アロー准尉です。
「マサイチロウ・コミヤ准尉。
『ジョン・マックス准尉です。所属は
正一朗が発言して、最後にジョンが締めくくった。
だが、それで終わりでは無かった。全員の視線がケインに集中した。
「そっか、オレがまだだったな」
それでケインは自己紹介がまだだったことに気づいた。
「オレはケイン・フォスター中尉。機体は
「ガンダムタイプが2機か・・・・・・」
正一朗が口の中で呟く。
「今回の作戦のキモはわかってるか?」
ケインの問いには、匠が答えた。
「敵の牽制ですか?」
「その通り」
ケインは満足そうに頷いた。
「牽制なので、敵の防衛戦をちょっと突くだけでいい」
そして、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「奴らに、油断してるとグラナダに仕掛けるぞ、と警告するのが目的だ」
その笑みにつられて、匠たちも笑みを零す。
「逆に言うと、目標以外への攻撃は極力避けろ」
ケイン目から笑みが消えた。
「特にグラナダは軍事基地化してるとはいえ、民間人も多く住んでいる」
グラナダは元々、サイド3を建設するにあたって、資材をマスドライバーで打ち出すために作られ発展した月面第2の都市だ。ジオニック社の工場もあり、そこで働く民間人も多く住んでいる。
「なので、絶対攻撃するな」
ケインは念を押したが、匠は心の中で違和感を感じていた。
「了解です」
それでも、一応、他のみんなに合わせて敬礼をした。
作戦時間になり、各モビルスーツ部隊はサラブレッドとアフターライトを発艦した。
ケインの
「・・・・・・見つけた」
早くも敵の気配を感じた匠は、サイコミュを起動させた。
肩のジョイントが外れて、ビットが自由になる。
そのまま急加速して、遙か遠くで哨戒していた
ビットの不意打ちに、
「あれがジェフの言ってた新兵器か・・・・・・凄いな」
遠くに輝く爆発光を見て、ケインは呟いた。
その爆発で連邦のモビルスーツ部隊に気づいた
「よし、こっちも散開! 各小隊ごとに敵を撃破しろ!」
「了解!」
ケインの命令で、モビルスーツ部隊は編隊を崩して、各個撃破に入った。
勝の所属する
月の重力に負けないように胸の
すると、突然、上空からハンマーが飛んでくる。
「!?」
ハンマーはメイサー・
「メイサー!?」
大破した
クレーターの縁を越えると、クレーター内に見覚えのないモビルスーツを発見した。
直ぐに
「EMS-13・・・・・・?」
それはジオンの試作型モビルスーツ、EMS-13、ガッシャだった。
「なんであんなのが、こんなところにいるんだよ!?」
愚痴りながら勝は、肩の240㎜ロケット砲で攻撃を仕掛ける。
それに対して
そうしながら、右手に装備された山越ハンマーを繰り出してきた。
山越ハンマーは内蔵された
「なんで、ミノフスキー粒子下で誘導ができるんだ!?」
勝は焦った。
実は
「くそっ!」
悪態を垂れながら、勝はなんとかハンマーを回避しようとした。
”ガッーン!”
しかし、健闘むなしく右側面から直撃を受ける。
「うぐっ」
コクピットごと身体を押しつぶされ、勝は血を吐いた。
「ここまでか・・・・・・」
諦め掛けた時、240mm低反動キャノン砲が連続で
キャノン砲の連射を避けきれず、
『大丈夫か?』
「なんとか・・・・・・ね」
それに対して勝は強がって見せた。
『
ジョンの報告を聞いたケインは顔を顰めた。
「思ったより防衛線が厚いな・・・・・・」
迎撃に出た
「そろそろ引き際か・・・・・・?」
ケインが自問した時、
『ショウ! 突出しすぎじゃないか!?』
デレックの声がノイズ混じりに聞こえてきた。
慌てて首を左右に振って、
すると既に防衛線を突破して、グラナダへと迫る深紅の機体が遠くに見えた。
「まだいける」
匠は迎撃に出てきた
(それにこの先には・・・・・・)
匠は確かに感じていた。巨大な敵の気配を。
グラナダ上空に達する。
そこで、
ムサイ級巡洋艦3隻にザンジバル級重巡洋艦1隻だ。
「あれか!」
匠はビットに攻撃させようとした。
しかし、同時に出てきたモビルスーツに90㎜
「
敵影を捉えたメインカメラから送られた映像を解析した
「MS-18、ケンプファー・・・・・・?」
その分析通り、モビルスーツは、
だが、匠が注目したのはそこではなかった。
「碧いモビルスーツ!」
そのパイロットは
匠は、血がたぎるのを感じた。
そして、ビットに引き続き攻撃するように命令しつつ、自分も
戦争は、まだ、続いている。