翼さんの復帰ライブの日程が決まり……なんとチケットまで貰ってしまいました!
この頃、ツキが回って来た気がしますが揺り戻しが怖いので調子に乗るのは控えましょう……!
「えへへ~楽しみですね翼さんのライブ」
「楽しみでない訳が無い。私今まで一回もライブに行ったこと無いんですよ!全部落選ですよ!」
「仕方無いよ~大人気だもん!」
そらわかってますよ!ですがね!やっぱりリアルで見たい気持ちは抑えきれない!
私達だけに生歌を聞かせてくれたのも嬉しいですがそれはそれとしてライブは別腹!
「けど……いいのかな」
「まあまだ全部が解決してる訳ではありませんが、心配なんですか?クリスが」
「うん、師匠が連絡も買い物も出来る端末を渡せたって言ってたけれど……」
「そこは仕方ありませんよ、それこそ彼女の気持ちも考えないと。ひどい目にあって、回りを信じられなくて、利用されて捨てられて……でも彼女は折れてはなかった」
立花さんはやはり、優しい人です。
散々な目にあわされて、狙われた側だというのに自分の心配よりも相手の心配なんて。
「凛音ちゃんはクリスちゃんと会ったの?」
「一緒に協力して戦いましたよ」
「ええ!?私だってまだなのに!?」
「小日向さんが怪我して倒れてたクリスを拾った所に偶然居合わせましてね。その後にノイズが出て来たので逃げ遅れた人達を助ける為に協力してもらいました」
「やっぱり……じゃあ!」
……とはいえ、綺麗な事ばかりで済ませられない。
彼女は彼女で自分がやってしまった事への責任を感じている。加えて司令は保護する気で、貴重なシンフォギア適合者であるけれど、事件を起こしている身でもある……罪は簡単には消えてくれない。
情状酌量の余地はあれど、という感じです。
最後は彼女が信じられない大人達に委ねる事になる。
私も、彼女がしでかした事とそこで出た犠牲に関しては……まだ許せてはいない。
それこそフィーネとの決着、それが果たされてようやく出る答えなのかもしれません。
期待しすぎて苦しむのはいつも私達なのです、ですが出来れば、救われて欲しい。
穏やかな喜びの中にありながらもほんの少しの不安を抱えたまま、日々は過ぎていく。
ライブ当日、既に翼さんは現地入りしている。
時間帯が帰宅ラッシュに被ってちょっとばかり込み過ぎてるのが少し困りましたが、どうにか会場の外には辿り着けた……んですが立花さんのオバカが迷子になって先についたのは私と小日向さんだけ。
「響……また何かに巻き込まれてなければいいけれど」
「人助けもいいですがそれで遅刻しないでいただきたい所ですよ」
「あはは……でも響はきっと放っておけないよ」
「でしょうね……」
そんな時だった、端末からアラートが鳴る。マジで、マジでお前!
『加賀美くん、ノイズの反応だ!』
「最悪のタイミングです」
『翼です!私も現場に……』
おいおいそりゃないでしょ!これはせっかくの晴れ舞台なんですから……!ドタキャンなんて。
こうなりゃやるっきゃない。
『ちょっと待った!響です!翼さんはライブに専念してください!』
「よく言いました!今日くらいは私達に任せてください!お代は観客と……翼さんの笑顔です!」
『凛音ちゃんの言う通り!ノイズの戦って皆を守るのも翼さんですが!皆を歌で救うのも翼さんなんです!』
絶対言うと思いましたよ立花さん、せっかく誘っていただいたに申し訳ないですが……!
「さて小日向さん、滅茶苦茶急用が出来てしまいましたが……後で見た感想教えてくださいね!」
「……加賀美さんも気をつけて、それから響によろしくね」
私は人込みをかき分け、走る。
不思議なものですね……今まで私はずっと翼さんに守られてきた、助けられてきた。
それが今日という日は、翼さんを守る為に戦える……不謹慎かもしれないれど、嬉しい気持ちもある。
夜空を駆けて、現場へ辿り着けばもうすでに戦闘は始まっていてそこにはクリスの姿もあった。
「やあやあお揃いで!なんですか一番遅れて来たのは私じゃないですか!」
駆けつけ初手にミサイルと機銃の斉射で飛行ノイズを撃破して制空権の確保。
「待ってました凛音ちゃん!」
「けっ羽根がついてんのに遅れて来やがるとはな、空でも混んでたか?」
「撃ちますよ、楽しみにしてた予定が潰れたんですから!」
ドローンユニットを展開、周囲の敵の位置を把握して逐一二人のギアに送る。
「ありがたいんだけど新しいアイコンが出ると慣れねえな!」
「うわわっなんかモニターが出ましたよ!?」
うーんUIに関しては私は素人なんでどう触れたものか……まあそこは慣れて貰う他ない……しかしクリスのギアに情報を送った時からですが、周波数とか関係ないんですかね?使い方によっては通信傍受とか諜報活動にも使えそうですねこれ。
……ちょっと試してみますか。
「立花さん、いまからメッセージ送るんで承認してみてください」
「ええ!?戦闘中にいきなり!?なんかポップアップ出た!?え、OKと……」
「あー見えますね。今立花さんのギアからの映像が見えるようになりました。へーこういう風にも使えるんですね」
実験は成功、とりあえずヘッドギアを被れば立花さんの視点や大まかなギア状態が見えるようになりました。とはいえ他人の視点は難しいですね、多分使い道は無いでしょうがギアの状態確認の方は……HP確認とか?みたいな?
そんなこんな言ってたら随分とデカブツが出てきましたね。全身に砲門を生やした、まるで要塞の様なノイズです。試しにミサイルを撃ち込むもまるで効果無し、立花さんが近づこうにも弾幕とノイズを吐き出して壁を作り出す……。
「クリスさん、手を貸してください」
「んだと?」
「私のギアのエネルギーを供給します、立花さんは防御をお願いします」
「はい!任せてください!」
「おいまだやるとは……」
「そろそろキツいんじゃないですか、体力。片付けるのは早い方がいいです」
「チッ……お前は……そういうとこだぞ」
装者の状態を数字化するのも出来るんですよ、やっぱりまともに休めてないからかクリスの疲労はそれなりに蓄積している。
フライトユニットを畳み、ツインジェット・ジェネレーターを形成してケーブルユニットを引き出す。
「本当に任せる気かよ、アタシがあのバカを撃つなんて考えないのか?」
「そんな無駄な事はしないでしょう、それにあなたは私を信用してくれたじゃないですか」
「……そんな事も言ったな」
「私は!私は信用できる!?クリスちゃん!」
「おめーはまだだよ!」
「そんなー!」
とにかく冗談を言えるだけ打ち解けているのはいい傾向です。
敵だらけというのは、やっぱり辛いですからね。
「まだ……まだお前達の全部を信じた訳じゃない。それに私には……そんな資格がない」
「誰かに信じられる事に資格なんていりません。だから今は共にぶっぱなしましょうではないですか」
クリスのイチイバルとリンクが成功する、ジェネレーターが回り出してイチイバルのアームドギアが変形、バスターライフルが形成される。さすがにギア2機分ですからね……相応にパワーが漲るというもの!
「よーし、立花さん!後ろに下がってください!」
「了解!」
射線上に残るのはノイズだけ、高エネルギーに気付いた要塞型がこちらに砲門を向けるが遅い。
「消し飛びやがれ!!」
放たれた砲撃諸共にエネルギーの激流が全てを薙ぎ払い、ノイズの巨体を丸ごと呑み込んで消し炭へと変えていく。その余波で小型のノイズは瞬く間に消滅、地面をちょっと溶かしてしまいましたが必要経費でしょう。
「すこーし過剰出力でしたね」
イチイバルのバスターキャノン砲身は焼け尽き崩壊、ジェネレーターも機能停止し両者共にパージ。
「てめえエネルギー流し過ぎなんだよ、アタシのギアにまで熱負荷掛かってんじゃねえか」
「初めての試みなんで大目に見てください、ウチには射撃武装担当がいないんですよ」
「3人も居て近接近接支援ってバランスがわりい組み合わせだな」
「だからクリスさんがウチに来てくれれば助かるんですがね」
手を差し出す、がそれは振り払われてしまった。
「まだだ、まだアタシは……その手を取れねえ……お前らに裏表がなくても、けど」
「また一緒に戦ってやってもいい」
一歩前進、ですね。共に歌う事、共に戦う事で見えてくるモノもあるという訳です。
去り行くクリスを見送り、立花さんと共に事後処理の為の一課到着を待つ。
「すごいよ凛音ちゃん、クリスちゃんと距離を詰めれるなんて」
「立花さんが全力で押し込んでくれてるおかげです、私が引き寄せる様に距離を詰めれてるのは」
「ってことは……いずれ!?」
「そうですね、クリスさんを仲間にしたいとは思ってます。でも彼女次第です、やっぱり自分の一番の芯の部分、譲れないものもあります」
しかし……最近は櫻井先生の姿を見ない、やはり疑惑は当たってるのかもしれない。
イチイバルはかつて二課が保有していた聖遺物で紛失した為に初代司令が責任を取る事になったとか。
で、その時居たといえば……やっぱり櫻井先生。
「ちょっといいですか?凛音ちゃん」
「おーなんでしょうか友里さん」
「前回の戦闘と合わせて新しくアンロックされた機能、二課本部のサーバーとリンクさせて欲しいの。そうすればきっとこれまで以上に戦闘支援に役立つオペレートができるの」
「それは……」
見せられたのは手書きのメモ『シンフォギアにバックドアがあった場合の対策として使えるかもしれない』との事、やっぱり櫻井先生疑ってるんですね……皆さん……。
さらに二枚目には『リミッターを設けた時にイカロスだけ何か細工されている可能性が高い』との事……ええ……。
「わかりました、この後やります」
人間の脳は飛ぶように出来ていない、それを補うのがシンフォギアに搭載された脳波制御システムなんですが……イカロスにはダイレクトフィードバック機能というのがある。
これのおかげで私の脳に負荷が掛かる事なく空を飛ぶ事を可能にしているのですが、一歩間違えれば体の制御を乗っ取られかねない、そんな機能なのだと。
いずれ来るフィーネとの決戦、もしも本当に櫻井先生が裏切っていたならば……と考えると。
私は少し憂鬱な気分になった。