ついに事態が動く、フィーネのアジトが判明したらしく司令はじめとしてエージェントが乗り込むが……既に逃げられて証拠隠滅を図られた……ですがそこで保護したクリスから「カディンギル」なるものの情報が語られる。
ようやく語るまでの信用を得られたという訳です。
時を同じくして4体の超大型飛行ノイズ4体がスカイタワー周辺に現れるも、人を襲う事なく旋回を始める。
カディンギルとは塔の事であるらしく、スカイタワーこそがフィーネの目的……にしてはあまりにやる事がショボイ。
しかも態々巨大な目立つノイズを出すにしても、あの杖があるんだからもっと奇襲的に出す事もできるでしょう。
思い浮かぶのは陽動という言葉。
シンフォギア装者を一か所に集めて、本命は別の場所……もし櫻井先生なら、厄介な二課本部を潰すだろう。
そんな事、わかってるから陽動に陽動をぶつけてみせる……ぐらいはやるけれど相手はノイズを使う。
『加賀美くん、どうした』
「すみません……調子が悪く動けません」
『なんだと……』
「私は万が一に備えて寮にて待機します」
『……そうか、わかった二人には伝えよう。君もくれぐれも無茶はしないように』
本来は出なければいけない筈の私ですが「不調」では仕方ない。本当に仕方ない。
できればこれが最後であってほしい、けれど最後かもしれない。
作りかけの曲を完成させるべく作業を始める。
このリディアンに入ってから色々な事があった、楽しい事も辛い事も。
だから後悔の無い様に、未練の無い様にやれるだけをやっておく。
そしてネットにアップロードの予約をしておく、ついでにオフボーカル音源も全部全部。
私がもし居なくなっても歌は残るのだ。
『本部周辺にノイズの反応出現!やはりです!加賀美さんは……』
「復調しました、迎撃に当たります!」
藤尭さんのオペレートに従い即座に出撃、さあ守って見せますとも……私の、皆の帰る場所を!
『Firiteas Ikaros Fill torn 《誰よりも高く飛ぶのは私だ》』
まずは飛行型ノイズを片付ける。フライトユニットからレーザーユニットを形成、マルチロックからのフルバーストで1割を消し飛ばす、やはり本部を落としに来てるだけあって大した量ですが……それだけです!
ノイズ共は人間を狙う動きを優先し、次に脅威となる者を狙う。
私を向かず、生徒達や一課の避難誘導をしている者達を狙う奴から順番に始末していく。
上下左右前後、四方八方から私目掛けて飛んでくる攻撃は極力回避、頭痛が走る……処理能力をわずかにオーバーしているけれど問題ありません。ノイズに生身の人間が対抗できないのは炭素分解の脅威、攻撃力だと思われがちですが、一番の脅威は普段別位相に隠れていてこちら側の攻撃が通らない事なのです!
それをこちら側に引きずり出して、火力が通る様にするのがシンフォギアの真髄。
『撃て!シンフォギアを援護しろ!』
私が歌い、調律している限り通常火力でも多少は通る様になると言う事です!
大型ノイズの上半身が吹っ飛ぶ、戦車砲の集中砲火が効いたのでしょう。
『撃て撃て撃て!こんな機会は滅多にないぞ!日頃の鬱憤を晴らす時だ!』
『散々仲間を殺しやがって!てめえらなんか位相差障壁がなけりゃその程度なんだよ!!』
火力支援によって瞬く間にノイズが数を減らしていく、が新たに地面を裂きながら新たな巨大ノイズが現れて小型ノイズを吐き出す。それも一課の隊員のすぐ前に、ですがこの距離なら間に合う。ドローンユニットをリフレクターとしてレーザーを照射してノイズの群を薙ぎ払う、そしてドローンの反射角度を調整、巨大ノイズを解体。
『助かったシンフォギア!感謝する!』
『こちらには勝利の女神がついている!怯むな!』
なるほど、本来はこういう運用がしたかったのですね……!
目に見える分にはこれでノイズは片付いた。あんまりにも呆気ない……地上の被害も殆ど出ていませんが……!
殺気を感じて身をよじる、何かがフライトユニットに突き刺さた。
これは……ネフシュタンの!
「お前も陽動に乗っておけばよかったものを」
黄金の鎧を纏った女、こいつがフィーネですか!
『撃て!シンフォギアを援護しろ!』
「有象無象が、消えろ」
鞭の一薙ぎ、それが大地をズタズタに斬り裂き、戦車をも屑鉄に変え、衝撃波だけで一課の隊員たちが紙切れの様に飛ばされる。
「人の命をなんだと思ってる!」
無事なレーザーユニットでホーミングレーザーを放つ、がそれは通用しない。ですが本命はミサイルです!
「お前は子供の割には察しが良く、頭もそれなりに切れる」
放ったミサイルは全て鞭によって迎撃された、次の策を考えるが……思考が鈍って、視界が歪む。
「おまけに捨て身の覚悟もある、だから眠っていて貰う。何、殺しはしない……お前は人質として有効であり、サンプルとしても優秀なのだから」
「何を……」
サンプルというのは……ですが人質は……足手纏いは……。
『ダイレクトフィードバックシステム・オフライン!凛音ちゃん!目覚めて!』
友里さんの声で思考がクリアになる、即座にフライトユニットをパージして地に降りる。
「ほう、やはり気づいてたか」
「ええ、人は空を飛ぶようにはできてない。これも借り物の力でしかないということは知っています」
「だが飛べないお前に何が出来る?」
「足止め、ですがもう十分に止めましたから」
「何だと?」
地面が揺れる、おもわずフィーネがよろける。再び大地が裂け赤き「鉄拳」がフィーネをかすめる。
「なんだとぉ!?」
「悪いな了子、不意打ちさせてもらった」
私も正直びっくりですよ、地下通路ぶち抜いて司令が飛び出してくるなんて。てっきりパワードスーツかなんかでも着てくるかと思いきや生身とかこの人本当にどうなってるんです?
ですがチャンスです、よろけたフィーネ相手に機銃を叩き込む、ネフシュタンの鎧であるならば最大出力で撃てば最低限度のダメージを蓄積させられる!
そこへ司令の追撃が入る!すげえ司令!ネフシュタンの鎧ぶち抜いたし!
「ば……バカな!生身で完全聖遺物を圧倒するだと!?一体どういう手品だ!」
「知らいでか!飯食って映画見て寝る!男の鍛錬はそれで充分よ!」
「だが人の身である以上ノイズならば!」
「させるか!」
蹴った石であの杖も吹っ飛んだ!こうなればフィーネも哀れなものです!行け!トドメを刺すんです司令!
「これで終わりだ!」
「弦十郎くん!!」
一瞬、時が止まった。しまった、そうか司令は情に厚いから!!!
司令の腹部を貫通するネフシュタンの凶刃……ここぞという時に!!
「焦らせてくれる!」
「司令……!」
甘ちゃんがよ!!!そういう優しさを私達は信じていたけれど!それでやられちゃ世話ないんですよ!
ですがまだ死んではいません!あの出血量で重傷なだけって!バケモンですか!ですが放っておく訳には行きません!
ドローンを自爆させて煙幕を作り、フライトユニットを形成。くそ、負担が大きいですがやるしかありません!
「捨て鉢になったか!?」
フィーネにタックルをかまして弾き飛ばす、そして司令を回収して撤退!まったく世話の焼ける人です!
建物の中に逃げ込み応急処置を開始、幸いフィーネはこっちに興味がない様で追撃はありませんでした。司令が負けた時点で本部からは皆撤退済み、避難スペースを仮設本部として最低限度の機材を設置していた。
「まさか司令が負けるとは……」
「むしろ生身でぶち込んで勝算あった方が私としては意味不明ですよ……」
とりあえずまだ意識は戻ってないですが危険域からは脱した事がギアの生体スキャン機能でわかったので安心する。
「え……おりん?」
「加賀美さん!」
避難スペースにやってきたのは小日向さんと板場まぬけトリオ……小日向さんはさておき板場さんに見られるのは初めてですね。
「何そのカッコ!?こんな時にコスプレ!?」
「コスプレじゃありませんよ、れっきとした戦闘服です。ホラ」
アームドギアをガチャガチャ動かしてやればそれが本物だと理解した様で3人、特に板場は目を輝かせていた。
「もしかしてさっき外で戦ってたのは!おりんだったの!?アニメみたいに!?」
「ええ、ですが司令が負傷したので一時撤退しました。幸いノイズは倒し尽くしましたのですぐに危険という訳ではないですが……ここに残ってください、まだ戦いは終わってません」
ええ、おそらくフィーネこと櫻井先生の目的は地下のデュランダル……それを回収する事でしょう。
そして私の推測では……二課自体がカディンギルという奴なのでしょう、考えても見ればあんな地下深くまでエレベーターを伸ばす必要はない、塔を隠すなら地下というのもアリでしょう。
それに手を加えるならば施設点検という名目でいくらでも国の予算を使える、考えましたね。
「行くんですか、加賀美さん」
「はい、すぐに立花さん達が戻って来るでしょうが……一つ気になる事があるので、無理そうなら戻ってきます」
緒川さんに一応報告してから、私は避難所から出て二課へ繋がるエレベーターをこじ開け、降下。
噴射で減速して着地、道なりに行けば動力室にセットされたデュランダルと、機材を操作する櫻井先生の姿がありました。
「せっかく拾った命を態々捨てに来るとは愚かな」
「いえいえ、別に戦いに来た訳じゃないですよ」
「なんだと?」
「目的を聞きに来たんです、どうせこの後立花さん達とやりあうんですから……その前にあなたの事情だけでも聞いておきたいと思ったのです」
さて、さすがの私でもフィーネはデカい塔を立てて何がしたいのかまではわかりません。
まるで想像がつかないのです。
「……いいだろう、時間ならある。教えてやろう」
「ありがとうございます。さすがに少し察しがいいといってもここまで来ると全然わからなかったので」
「カディンギル、デュランダルのエネルギーを使った巨大な荷電粒子砲だ。これが撃ち抜くのは月だ」
「月を破壊する……そんな事になれば地球環境は滅茶苦茶になるし小惑星が山ほど落ちてくる様になると聞いた事がありますが」
「本質はそこではない、月は先史文明期……創造者達が作り出した人工衛星であり。統一言語、人間の意思伝達を妨げる「バラルの呪詛」いわばネットワークジャマーの様なものの発生装置なのだ」
「なるほど、それを消し去る事で人類を統一しようということですか……ですが一つ、その先史文明がいつだったかは知りません……しかし長い時を人は重ね過ぎました。今更また一つに戻れるとでも……?」
進化、分岐、派生、変異……人は形を変え続けてしまった、もしフィーネの、櫻井先生の言う通り人が作られた存在であり、統一言語というものがあったとしても……憎しみまでは消えない。
「私の本当の望みはそんなことじゃない。かつて私は、創造主を愛していた……しかしある時、突然、何の予兆もなくあの月が呪詛を放ち人々は言葉を、繋がりを奪われ、あのお方は姿を消された。何が理由なのか私でさえ察する事はできない……だが言葉さえ取り戻せれば、あの方に問う事ができる。もう一度言葉を交わす事ができる……それだけを信じて何千年もの間、耐え忍んで、技術を磨いてきた」
「愛ですか」
「そうよ」
ああ、そういうことですか……フィーネは、私達と何ら変わりない……一人の女なんですね。
「月を破壊すれば、大勢の人々が愛する者を失います。あなたと同じ苦しみを味わう事になる」
「かつてお前とよく似た者が居た、そいつは……私の友だった。例外というものはいつの時代でも現れるのだ」
「……何の話ですか」
「お前の察しの良さに一つの心当たりがあったのだ、バラルの呪詛の影響を受けないイレギュラー。お前が纏うイカロスはかつて私の友が作り上げた聖遺物だ。月を破壊すれば環境は滅茶苦茶となるのだから、もっと穏便にバラルの呪詛を解く手段として月まで飛べばいいと言ってな。夢見がちな奴だった」
「……そしてこれが今ここにあると言う事は」
「ああダメだったよ、月まで届かなかったなら……それでよかった。太陽に焼かれて落ちたならそれでよかった!だが奴は人に殺された!愚かなものだ!お前に教えてやろう、統一言語を失った人間は互いを殺し合う事にばかり囚われ!聖遺物を兵器としか見なかった!ノイズとてその一つ!人が人を殺す為に作り上げたものだ!」
そんな過去があったのか、まるで御伽噺の様なそれがごく自然に受け入れられる。
この身にそんな大層な力などないと言いたかった、けれど今。
「友の形見たるイカロス、決して適合者など現れるとは思ってもいなかった。シンフォギアなどこのカディンギルを作り上げる為の予算を得る為のものでしかなかった、なのに何故お前は現れた?今更、本当に今更……」
「櫻井先生、いえフィーネ……」
今ならまだ辞めれる、なんて言葉はかけられなかった。
私にはわかってしまう、感じ取れてしまうのだ、無念が、執念が。
かといって通す訳には行かない。
「かつての私は……虚無だった、けれど今の私には守りたいモノがある、私にも愛する人が出来た。あなたが背負ったものの様に、私にも背負うものが出来た。だから決着をつけましょう」
「……お前に何がわかると言いたいのにな、お前にはわかるのだろうな羨ましい」
「あなたの願いを打ち砕く。あなたが奪って来たものの報いを受けさせ、私は私の未来を守る!」