私の謹慎は3日にして終わった、どうやら政府も腹を括ったらしくシンフォギアの保有に関して公表したらしい。
これまで機密にしてきたのは装者への非難を防ぐ為、また戦闘能力を持つ事から安全保障上の条約や法に抵触しかねない「ポテンシャル」があると都合よく言い換えて「規制する為の該当法がまだ存在しない、試作品」という形で決着をつけた。
これに対して国連はシンフォギアの基幹となる「櫻井理論」の公開を要求、対特異災害という公益になると日本政府はそれを受理。一応はシンフォギアの存在が公に認められた。
同時にアメリカ側からも対応がありFIS、米国の聖遺物研究組織がかつて櫻井了子と繋がっておりシンフォギアの研究を行っていた事を認めたが……そこからが問題だった。
なんとそのシンフォギア装者達が揃って脱走、おまけにいくつかの聖遺物も強奪されている事をゲロったのだ。
ガングニール、イガリマ、シュルシャガナの3つのギアは先日のQOM会場に現れたモノだとアウフヴァッヘン波形まで送り付けて来てこちらも黙秘している訳にはいかなくなり、こちらも4機のギアがあると通達。これでお互いに秘密を吐いたという事でイーブンにしろと仲裁が出たのだ。
さてシンフォギアには一つ大きな問題がある、それは適合者だ。
少女の歌には血が流れている、適合できる者が少女しかいないという情報だけは双方明かす事が出来なかった。
そうすれば人道問題を突っつかれてもう事態の収拾がつかなくなるからだ。
今、二人のシンフォギア装者が判明している。
一人はマリア・カデンツァヴナ・イヴ、もう一人は加賀美凛音。
もはや公に出る事はやむを得ない状態となりました。
なので、ここは開き直ってクソな世間に中指を立てるぐらい図々しく行くべきだと私は判断しました。
『おはりん!!!!!!我が名は凛音!!!皆には黙ってたけど私!日本のシンフォギア装者!』
「嘘だろ……会見だぞこれ……」
「おはりんってなんだよ!!」
「ふざけてるのか!!」
「やはり……おりんか!」
記者会見、一応念の為に会場にはいかずテレ会話という形での質疑応答になったのを聞いて私はひらめいた。
二課の保有する貸出ノートパソコンに自前の配信機材一式を登録。素材も使用!
つまりはいつもの配信画面です。
『まずあなた達に一つ言わせて貰おう!!私は好きで望んでこの仕事をやっている!金になるし実績になるからです!おまけに歌って戦うから体も鍛えられますからね!ちなみに私の尊敬する歌手は翼さん!あの事件当日は私はようやく念願の翼さんのライブに参加!!って超ウキウキで行ってたんですよ!そしたらアレですよ!まあマスコミの皆さまは事前に私の配信を見て頂いたと思うんですが、私の怒りがね限界を突破しつつも何とか観客の皆を避難させなきゃってなったんですよ……まあその結果こうなりました!』
「子供の癇癪で!?」
「本当に大丈夫なのか?こんな子供に武器を持たせるなんて……」
「まあ犠牲者は出なかったが……」
「本当に?脅されたり洗脳されてはいないのか?」
「それよりも強化手術でも受けているのかという情緒だぞ……」
『ぶっちゃけるとこんな形の会見にしたのは、この世の中がクソだからです。誰も彼も隠し事をしながら誰かの隠し事を暴いてはそれを理由にゆすりたかり血を流して、もみ消して、それが今になってあちこちで暴かれて混乱して、もううんざりなんですよ!だから私はこうすることにした」
画面の前で右手と左手の握拳を見せ、私は両手の中指を立てた。
その瞬間、会場の音が途切れ静寂が訪れた。
「ワオ、ロックンロール……」
外国人記者が目を見開いて呟いたのを確認して私は笑みを浮かべる。
『私はこの世のありとあらゆる理不尽、不条理、悲しみ、憎しみに対して中指を立てる事にしました。おりんロックで食っていこうと思うんだ』
「お……お前、変なクスリでもやってるのか」
「躁鬱じゃないか?」
「ダメだろ……必要なのは病院では?」
「遊びじゃないんだぞ!?」
『てめーら好き勝手いいやがってよ……まあ私も好き勝手させてもらうんやがなブヘヘ。そういう訳で質問やクレームは特異災害対策機動部まで、私は今までどおりノイズをぶっ飛ばして人を救います。後、フィーネとか名乗ったマリアは捕まえてライブ台無しにしてくれたのを謝らせます』
「え?終わり!?」
「嘘だろ……」
「クレイジー……ジャパニーズ……ガール」
「日本のロックはまだ……死なずか……!」
配信を終了、世論はもう滅茶苦茶だ。
そりゃもう賛否両論、9割ぐらい私の態度に対する批判だがとりあえずこの辺りは政府に対応丸投げしてやねぇ……ざまーみろマスコミ共!びっくりしただろ!
「加賀美くん……さすがの俺も、君の精神状態を推し量れない」
「もうこうなりゃ徹底抗戦ですよ、怯んだら負けなんです。レスバというのは最後まで立ってた奴の勝利なんです」
「や……野蛮だな……インターネットという奴は」
さすがに司令も困惑しているが、これでいい。非常識には非常識をぶつける事で比較的理解できる非常識の方がマシだなとなる、ヤバい人間はよりヤバい人間を見ると冷静になるんです。
「これで私は現状最強のヤバい人間になりました。それで私よりヤバくない人達を冷静にしたんです」
「君は……まさかこれからそれでやっていくつもりなのか……」
「こうなった以上、地球最強のヤバ女目指します。平和を目指すヤバ女に」
さてと、私は私物のパソコンを起動。
超燃えているSNSアカウントに投稿をする。
【今日からここを特異災害対策機動部アカウントキャンプ地とする!!】
誰もが熱に浮かされている今こそ動きどころなのです、あらゆることを既成事実として黙らせるんです。
【私の曲買え、私への収益分が募金になるから。チャリティーだ】
【翼さんをすこれ】
【リディアンに凸っても私はいないぞ!今日から通信だ!】
「おじさま、私の携帯の通知が壊れた!」
本部で待機していた翼さんが突然駆け込んできた、どうやら私が言及したせいでフォロワーが爆増したらしい。
「翼さん、それは通知オフにしておくといいですよ。っていうかしてなかったんですか?公式アカウント」
「せいぜい告知でしか伸びなかったからしていなかったのだ!それよりもだ加賀美!!」
ああ、そういえば翼さんとは……三日ぶりですね。
「心配したんだぞ、お前が……お前が重圧でおかしくなったんじゃないかって」
「大丈夫ですよおかしいのは元からですから、もう逆に吹っ切れましたね」
「……私の事で怒ってくれたのは嬉しい、それに観客を救ってくれた事も……あの惨劇の二の舞を避けてくれた事も……だが、お前はもっと自分を大事にするべきだ」
「へへへ……叱られちまいましたね……」
まあ完全に私のやらかしですから、とはいえ翼さんもマジで運が悪いというかライブの度にノイズ出てきたり……事件に巻き込まれたり……。
「だがこれからはどうするつもりなんだ」
「翼さんが皆に歌で勇気を与える様に、私は私のやり方で人々に示すんですよ。この世界には戦うヤバ女がいると」
「加賀美くん、そのヤバ女というのは気に入ったのか……?」
「ロックンロールですよ、私の方向性が決まったんです」
もうこうなったら徹底的に反抗してやるぜ!!
「それはさておくとして、彼女らの動向だ……ここ最近の不動産取引やアジトとなりうる建造物をしらみつぶしに探してはいるが、今の所結果は芳しくない」
「尻尾巻いて日本から逃げ出してる、とは思えないんですよね」
「米国FISより奪取されたいくつかの聖遺物、それの詳細までは我々に告げられていない。これらによってうまく逃げ隠れしていると考えられるがそもそもだ、何故あのライブで宣戦布告をする様な事をしたか。その理由だが、おそらく完全聖遺物の起動だ、歌と装者達の戦いの両方で間違いなくそれなり以上のフォニックゲインは手に入っただろう」
「つまり敵の手には……推定、ソロモンの杖と完全聖遺物が一つ、そしてシンフォギアが3機」
考えると前のフィーネとはまた違う嫌さだ……だが、と思い返す。
あの時戦った3人の装者は簡単に行く相手ではない……あの時の私はリミッターが外れていたから拮抗できていたものの普段であればおそらく簡単に打ち負かされる様な力量差があった。
あれが本気であったらいいのですが、フォニックゲイン集めの為に手加減をされていたと考えると困る。
「それについては雪音と立花、そして私と加賀美がいる。あの戦いを乗り越えた以上そう簡単にいかせはしない、そうでしょう司令」
「ああ、そして……月の落下に対抗する手掛かりを持っているとの言葉、可能であるならば協力できれば最善だったのだが……彼女らが最初から我々を信用できず、敵対的行動から始まった以上そう簡単にはいかんだろうな」
一度始まった戦いは、そう簡単には止める事はできない。
歴史上何度も繰り返されたその教訓は生かされる事無く、また新たな戦いが始まる。
私は一瞬打ち合ったマリアの表情を思い出す、そこに迷い躊躇いはあったのか、本当に覚悟はあったのか。
あの時は完全に頭に血が昇っててそれすらも思い出せない、私の心が悪意を見出してしまう。
米国から脱走して事に及んだ事を考えると……本当にモルモットの様な扱いを受けていたのかもしれない、フィーネが関わっているんです。昔のクリスの様に便利に使われていたのかもしれない。
だけど……だからといって、簡単に許せるわけがない。
「……加賀美」
「大丈夫です翼さん、私は迷いません」
笑顔を作って見せる、うまく作れてる自信はない。
不安が無いと言えばウソになる、だけどそれを覆い隠すのは慣れている筈です。
いつものように笑い飛ばして……叩き潰せば解決すると私は信じる。