萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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謎は深まるんだ

 まるで第二の自室となった謹慎室、そもそも身バレした時点でリディアンの寮にはもう戻れない。

 めんどくさい連中が山の様に雪崩れ込んでくればありとあらゆる人々が迷惑をする事になる、だから最低限度の私物を持ち込んでここで暮らすこととなっていた。

 

 だがこんなレトロな固定電話、果たしてあっただろうか?

 ジリリリと取れといわんばかりに自己主張をしているソレを取るべきか。

 

『やれやれ、出てくれてもいいじゃないか、電話に』

 

 と思ったら明らかに怪しい男の声が電話機から聞こえてきた。

 

「まずは名乗ってくださいよ」

『僕はアダム、失礼したね。今日は君に一つ頼みがあってしたんだよ、連絡をね』

 アダムと名乗る男、まあこんな怪しいモノを二課本部に持ち込めるだけタダモノではない。が果たしてそんな奴がする頼み事などロクなものでもなかろう。

 

『怪しまれてるね、まあ仕方ないだろうけれどね。やはり君とは簡単に意思が通じるねイレギュラー』

「私をイレギュラー呼ばわり、フィーネの関係者ですか?」

『持ってくれたみたいだね、興味を。そう……遥か昔の付き合いだ、敵対してた事もあったさ。でもそんなことはいいのさ、僕からの頼みは一つ、フィーネを名乗る彼女らに少しばかり手心を加えて上げて欲しいのさ。君も知っているだろう、月が落下してくることを。それは困るんだ、この地球に住む以上はね……だから程々に支援しているのさ僕らもね』

 僕ら、組織ですか。して目的はやはり月の落下の阻止で、マリア達はその手立てがある。

 

「ボコボコにして情報抜き出して二課でやった方が早くないですか?」

『それだと僕らの計算ではおそらく間に合わなくなる、もちろんこれに全てを賭けている訳じゃないさ。もしも本当に彼女らを叩き潰せたなら、その時は君達に頼む事にするよ』

 手は一つだけではない、リスク管理も出来るのは好感が持てますね……。

 

「しかし……解せないのは何故私に連絡を?司令や日本に直接すれば……ああ違うのですね、彼らはまだ呪詛に囚われている……見ず知らずだというのに直接私に「テレパス」を繋げたのは」

『そういう事だよ、歴史上何度もイレギュラーは存在した、けれど僕とて世界の全てを常に知っているわけじゃない。あの日、世界に姿を晒してくれたから、僕らは君を知る事となったのさ。例外をね』

 例外、果たして私の何が私をイレギュラーたらしめる因子なのか、さっぱりわからないですが……。

 

『一つ、君が今思った事の答えを教えてあげよう。例外は必然なのさ、黒いカラスの中に生まれる白いカラスのようなものさ。さして気にする事はない、むしろ目立つのだからそれを利用していくといい』

 

 白いカラス、その言葉が私によく突き刺さった。

 いつのまにか怪しい黒電話は消えており、私は頭を悩ます。

 これを司令にどう報告したらいいのかと……そんな時、非常警報が鳴る。

 

 

 

 どうやら当たりを引いたらしい、非常に、非常に腹立たしく悔しい事ですがマリア達のアジトを探っていたエージェントからの非常通信と同時のノイズの反応が同じ位置から検出。即座に二課は動く事になった。

 

 廃病院に向かって急行、やはり私のイカロスは人を運ぶのに向いている。クリスと立花さんを乗せて急降下強襲、翼さんがタイミングをズラして急襲。

 

『おかしいぞ!ノイズが妙に硬い!』

『違うよクリスちゃん!これ私達のギアが弱ってる!』

 

 の筈だったが罠が仕掛けられていたようで何故かギアとの適合率が一時的に低下、技を出す度にバックファイアでダメージを受ける有様……突入時にブチ開けた穴から漏れ出す赤い煙、おそらくアレが原因です。

 

『翼さん、突入は一旦マチで。二人は入って来た所から出れますか!?』

『つってもノイズが多い!片付ける前にこっちが倒れる!』

『私が上空から狙撃して数を減らします!ガスが原因なら外にいる私達には効果がない筈です!』

 

 二人のギアのカメラをジャックしてホーミングレーザーを放ち、ノイズを焼き払い退路を確保。二人に脱出を促したその瞬間、下から一瞬の輝き。

 まずいと判断して回避すると私が居た場所を光線が通り過ぎる。

 

『アウフヴァッヘン波形確認!ガングニールです!』

『座標送信、翼さん!そっちの応戦をお願いします!』

 今はまだ私はマリアに対応できない、二人の脱出がまだなのですから。

 

『おやおや、もうお帰りですか?二課の皆さん』

『てめえは……ドクターウェル!!』

『クリス、相手をしなくていいです!どうせそんな事だと思いましたから!指名手配リストが一人増えるだけです!立花さんと一緒に屋外に出てください!』

『つれませんねぇ、ですが帰られると困るんですよ。ネフィリム!』

 

 案の定、ノイズを操っていたのはドクターウェル。ソロモンの杖を起動させてしまった負い目があるクリスがその場に引き留められてしまって、その隙を狙ったかのように壁を貫いて現れる怪物。

 ノイズの排除に向けていたホーミングレーザーをそいつに向けて一瞬動きを止めた隙に立花さんが屋上にクリスを連れて避難。これで窮地は抜けた、次は私狙いに飛んできた飛行型ノイズと……。

 

「ノイズと肩を並べるのは癪デス!さっさと落ちるデース!!」

 突然高所から現れたイガリマ、今の今までセンサーにもレーダーにも反応しなかった!けれどお前は飛べない!

 

「空で私に敵うとでも?」

 右手の機銃で即座に応戦、イガリマの攻撃の出を潰して私よりも「下」へと落とす。高低差はアドバンテージの差!次にミサイルで飛行型ノイズを処理していくが、飛んできたアンカーがフライトユニットに引っ掛かった。

 

「まだ撃たれ足りないのですか!」

「今デス!」

 

 また突然高所からギア!?今度はシュルシャガナ!?

 視界に丸鋸が迫って来る、ここでするべき判断は……フライトユニットをパージ!踏み台にして落下攻撃を回避!

 

「避けられた!?」

「敵ながら……上手いデスが!」

 

 私という制御を失ったフライトユニットは簡単に破壊され、ここからは落ちるだけ……とでも?

 まだ私は飛べる、全身のスラスターを使って減速しながらの降下戦闘が始まる。

 

 左のプロテクターをブレードに、飛び込んでくるノイズを迎撃しながら右手にはライフルを形成、イガリマとシュルシャガナに攻撃をさせないように牽制。スラスターの冷却に合わせて高度を稼ぎ、常に立ち回りを意識。

 

「降りてこいデス!!遅延戦術やめろデス!」

「私が叩き落す……!」

 

 先に地上に到達したイガリマとシュルシャガナが何か言ってるが関係ない、連中の遠距離攻撃手段は大した事がないのは前のでわかってる。私が降りる先はクリスと立花さんの側。

 

「まだ戦えますか?」

「ったりまえだ!」

「もちろんだよ、それよりもさっきのあの怪物は……」

 バイタルデータは許容値まで戻って来た、適合率も。

 けれどさっきのバックファイアで二人ともそれなりにダメージは受けている筈。

 

 ズンと音がして屋上の床を貫いて巨体が露わになる、随分ブサイクな面をしてやがりますが……!

 

「げっネフィリム出したんデス!?」

「まずいかも……耐えれるかな」

 

 どうやら向こうとしてもこいつを出すのは予定外だったのでしょう、がさて乱戦は避けたい。

 

「立花さんとクリスはあの二人の相手をお願いします、この怪物は私が倒します!」

 とても知性があるとは思えない敵の相手、とても楽な仕事です。

 それに、私だとあの連中から話を聞きだすには向いてない、まずはぶちのめすという思考が先に来て向こうの言い分はそれからになってしまう。

 

『翼さん、そっちの様子は!』

『加賀美か!二人は無事なんだな!こっちは……少しばかり苦戦しているが、段々と動きが分かって来た。このまま押し込める』

『了解です、ここで終わりにしてやりましょう!』

 

 夜が明け始める、フライトユニットの再形成も間に合った。これで一方的にこいつを叩き潰せる。

 両手にライフルを持って得意のオービタル軌道で徹底的に、徹底的に弾丸にて滅多打ち。

 

 対話の出来ない相手なのだからこれぐらい拒否してやってもバチはあたらんでしょう。

 痛みに呻きながらよろめく怪物にそろそろトドメをくれてやりましょう!

 

「おっとそうは行きませんよ!」

 ドクターウェルの声と共に怪物を守るようにノイズが飛び出す。

 

「かわいそうに目覚めたばかりだというのにこんなに滅多打ちにされてぇ!君には手心というものはないんですか?」

「高いですよ、私の手心は」

 廃病院に逃げ込んだ怪物を、追う前にまずこいつだ。

 

「投降すれば……弁護士ぐらいはつくかもしれませんよ」

「まさか、僕たちにはやらなければいけない事があるのですよ。人類を救うという使命がね」

「散々殺しておいてですか」

「少数の犠牲は仕方ない事ですよ、いつだって人は誰かを犠牲にしながら存続してきた」

 ソロモンの杖の護送、岩国の米軍基地、そして二課のエージェント達、死を覚悟して役目を全うするのはわかる、だけれど、だとしても!!

 

「去って行った者は二度と戻らない、私はあなた達に報いを受けさせる!!」

「それが加賀美凛音という英雄の覚悟ですか!ならば僕にも覚悟はありますよ!」

 

 振るわれたソロモンの杖にてノイズを束ねて、作り出されるのは邪竜、フィーネがあの時纏った黙示録の竜とは比べ物にならない程の出来ですが、「それなりには」厄介なエネルギー量を持っている。

 

 有象無象と切り捨ててるノイズにもそれぞれに何らかの特徴があったりする、爆弾を生成して施設を破壊する事に特化したモノや飛行要塞として機能するモノ、それにこの間の増殖タイプ、こいつはノイズの決戦個体とでもいうのでしょう。

 

「君達にはこれの相手をしてもらいましょう、そろそろ彼女らの体が心配なのでね」

 突如、空中に現れたのは巨大なヘリ、下には巨大なコンテナが接続されていて、そこにはネフィリムと呼ばれた怪物が入っていた。

 

 しかしこれまで熱源も風も音さえも隠蔽していたというのですか、異端技術というのは随分と厄介ですね……こんな完全ステルスをかまされるとこれまで見つからなかったのも納得です。

 

「また会いましょう、加賀美凛音」

 

 ノイズの攻撃に紛れてイガリマとシュルシャガナに回収されるドクターウェル、そしてそこに合流するマリア。追いかけたい所ですがこいつを放っておくわけにはいきません。

 

 ライフルが通らない、目のような感覚器らしきものは透明な甲殻に覆われて守られている。シンプルに私だけじゃ火力不足で突破が困難な相手です。皆さんの状態を確認するとクリスはダメージを受けていてキツい、立花さんもやはり不安定、まださっきのガスの影響が抜けきってない状態で敵装者二人の相手を任せたのは……いえ、仕方ない。

 

 だが竜退治ならば!天羽々斬がある!

 

「待たせたな加賀美」

「いえ、私もいまやり始めた所で!」

 

 翼さんの一撃はさぞ効いたようで、流石の邪竜のノイズも大きく仰け反る、その傷口にホーミングレーザーを収束させて内側から加熱してやります!

 

「マリアは……どうでしたか」

「覚悟だけはある、生半可な相手ではないのは前でもわかっていた。だからこそ、何故あのような向こう見ずな行動に出たのかそこだけが悔やまれる」

「ふぅん……翼さんにそこまでいわせるんですね」

 

 もはや私達二人にかかればこんなノイズ敵でもなんでもない、翼さんが斬って、私が追い打つ。

 それだけで確実にダメージは蓄積されて、ノイズは形を保てなくなっていく。

 

「まさか加賀美、お前……妬いているのか!?」

「あったりまえでしょうがぁっ!突然現れておいて翼さんに即認められてッ!私だって翼さんと一緒に歌いたいのに!」

 

 怒りと嫉妬をギアに込めて、トドメにフライトユニットを直接ぶつけて爆発させる。

 決着はついた、しかし……あのネフィリムとかいう化け物と月の落下阻止が繋がらない。

 巨人の名ですから巨大化させて押し返す?それとも動力炉にでもするんでしょうか。

 

「そうだな……なら凛音」

「え……」

「名前で呼ぶのはどうだ」

「……」

 

 あーーーー……待って、待って。いきなりぶっこまないでくださいませ。

 

「嫌か?」

「全然、嬉しい、嬉しいですが時と場所を考えてくださいよ」

「ずっと考え事をしてるだろう、それに今だって先の事ばかり考えて一人悩んでいる。私達は友であり、仲間だ。もっと話してくれてもいいんじゃないか」

 

 ……そうですね、話さなければ伝わらない事はある。

 少しだけ、心が安らいだ……そんな気がします。

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