私が目を覚ましたのは医務室だった、ネフィリムの突進自体のダメージもですがその後の墜落もまた大きなダメージとなっており、丸一日意識を失っていたそうで。
それよりも重傷なのが立花さん、なんと左腕を喪失するも勢いでどうにか再生してネフィリムを撃破……しかしこれまで問題ないと見逃されてきた融合症例がついに牙を剥いた。
増殖した聖遺物の欠片が体を蝕んでおり、いずれ体を突き破って死に至る……かもしれない。
除去するにも活性化しすぎて間に合わないだけでなく神経に複雑に絡み合って外的手段はとてもじゃないけれど無理だ。
出来るのは極力前線に出さず、進行を遅らせる事だけ。
この事は二課にとって非常にショックであった、一番傷ついてるのは翼さんだ、奏さんの遺したガングニールが私達の絆を紡ぎ、世界を救ったというのに、今度はそれが立花さんを殺そうとしている。まだ知らされていないでしょうが小日向さんも、多分知ったならとても心の平静を保ってられない……でしょうね。
もし立花さんが抜ければ私達の戦いは大きく変わる事となる、最高火力が、突破力が失われる……今、この時期に
彼女の離脱は困る。けれど、戦わせればそれだけ死に近づく……。
加えてもしガングニールの欠片の除去に成功しても、立花さんは装者ではなくなる。
あくまで融合症例であって正規適合者ではない……仮にマリアのガングニールを奪取したとして適合できるかは不明、ならば今後は何らかの方法であの3人をこちらに引き込んで戦力低下を抑えるしかない。
いや、そもそも立花さんを、フィーネの様に完全な融合まで持ち込んでしまえば死のリスクも戦力低下も気にしなくて済む……どうやればそうできるか……じゃない……何を考えているのですか私は。
何を当然に様に立花さんに犠牲を強いようとしているのですか?私は、そこまでヒトデナシになってはいけない。
彼女だって人助けをしたい、と思っているでしょうけれど……でもダメなんです、ヒトの形から逸脱させてしまえば彼女は人の世で生きていけなくなっていく。
まずはコミュニケーションだ、ここで黙っていても仕方ない。
ちょうどよさげな相談相手はいるじゃありませんか。
「もしもし、アダムさん?ウチの立花が融合症例重症で死にそうなんですが体内に複雑に増殖した聖遺物除去できる案ありません?」
『ウソだろ……してきたのか逆探知を……』
脳内に直接イメージしてテレパシーを飛ばしてみたら本当に繋がりましたね、これ便利っすね……なんでカストディアンはこれをバラルの呪詛で封印したのか……。
『驚いたよイレギュラー……しかし知っていてそれを教えるメリットが僕らにあるのかい?』
「二課に口利きします、私に可能な限りの報酬は払います」
『僕らは出たくないんだよね、表にはさあ……けれど無きにしも非ずといった所だよ、手段は』
やっぱり、月の落下回避といいアダムの所は異端技術に関しては私達の一歩向こう側に居る。
とはいえあった事もない相手ですからね……二課の面々が信用してくれるかはわからないのが実のところ最大の壁なんですよね……。
『汚染の浄化、それを可能とするものがある。それを使えれば、といった所なんだが結局それもまだ未完成といった所だ。おまけに所有物ではないからね、僕個人の』
「部下とか組織のモノなんですね、それでどれぐらいの対価を払えば力を貸してくれるので?」
『FISから手を引けといっても無理だろう君達には……それに貸せるとは言っていない、悪いけどね』
「なんですかもう……じゃあ他になんかアイデアとかありませんか?」
『いつから僕は相談役になったんだい君の……大した格のない聖遺物だよ、神獣鏡という魔を祓うソレがあるならば、あるかもねチャンスは』
「ありがとうございます、このお礼は……」
『そうだねぇ困った時は一度助けてもらいたい所だね、例えばカストディアンが、アヌンナキが復活しそうになった時なんかにね。まあ今の所はないけれどね』
神の復活、途方もなくスケールが大きく……事実起こりえないソレが起きた時に協力しようだなんて随分とまあ、実質タダみたいなものじゃないですか。協力しなきゃ終わるし、まずそもそも起こらない様なものですから。
「もしもーし立花さん、まだご存命ですか」
「あはは、凛音ちゃん……起きたんだ」
「ハッキリ釘さしときますからねーなんだかんだ何とかなるので諦めはしないでくださいね、でも戦うのもしばらくNGでお願いしますよ、お体にさわりますんで」
「師匠にも言われたよ……でもこんな時になんて」
面会に行った立花さんは結構参っちゃってるみたいでした、そりゃそうでしょう……希望が呪いになっちまったんですから、でも呪いだろうが知った事じゃないんですよ。
「いっておきますけれど私達は、私は立花さんを絶対に死なせませんからね。もしも無視して突っ走るようなら完全にガングニールと融合して人間辞めてでも生き残って貰いますからね」
「それは……心強いけれど、人間辞めちゃったらどうなるんだろう」
「ごはんの味がしなくなるかもしれませんよ」
「えっそれはやだよ!?」
「だったら大人しくしておくことです、いっそのこと小日向さんと青春休暇という感じで前線から離れて貰う感じでお願いします。今のあなたはバカ程に心が弱ってますから、必要なのは「生きる意志」を回復する事です」
生きるという意思、バカになりませんからね。これを失った人間は一気に弱くなります、死を覚悟して突っ込んでくる奴が怖いといいますがそれは最後まで有意義に生きるからでもあるからだとか。
とりあえず立花さんのカウンセリングを済ませて、次は翼さんです。
「翼さーん、とりあえず立花さんに釘刺しておきましたよ。妙に突き放すような事を言うのは禁止です」
「……見透かされている様で怖いな、私も立花を前線に出すのは反対だ」
「だからといって厳しく言うとマジで気に病んで潰れそうなのが立花さんなので、気持ちを認めてあげながらも生きていて欲しいと素直に言うのが大事なんです」
「凛音、お前は……お前はどうなんだ?最近、私にはお前がどんどん変わっていく様に思える」
私……?心配される要素、ネフィリムにやられたダメージぐらいじゃありませんか?変わっていくって言われてもほら……
「そりゃ変わりますよ、生きてますから」
「違う、その……まるで櫻井女史、フィーネの様になっているように私の目には映るんだ。それこそマリア達じゃなくお前に、フィーネが乗り移ったかのように」
「……?そんなわけないじゃないですか、必要に駆られて頑張ってるだけですよ」
今まで使ってなかった能力を使う様になって疲れる事は疲れます、ですが私はフィーネの器なんてキャラじゃない。それに彼女なら私を塗りつぶすような事をしないし、なんならこのアホみたいな事態の打開の為に力を貸してくれるとは思うんですが。
「うーーーん……」
試しに翼さんに私は大丈夫ですよって念波を送ってみる。
「どうした凛音……そんな難しい顔をして」
「私の大丈夫さを翼さんの心に直接届けられないかなって念じてみたんですが」
ダメですねぇ……バラルの呪詛に阻害されてるのか届かない、いやまあそもそも通じるアダムはなんなんだ……バラルの呪詛が効かないタイプの電波でも使ってるんですかね?
「……そんなオカルトな、そういえばテレパシーとか前に言っていたが不思議ちゃんになるつもりか凛音は」
「不思議キャラもいいですね。どうです私のラブの波動が伝わってきませんか?」
「悪いな、歌にしてくれた方が多分伝わるぞ」
「ようやく笑いましたね、翼さんも気を詰めないでください。まだ何もかも終わった訳じゃないんです、希望は必ずあるはずなんです。もし100%無理だったなら101%をぶち抜いて可能性を作り出してやればいいんです」
「算数ヘタクソか?」
とにかくこれでヨシ!少しでも和ませられればそれでいい!
後はクリスですね、っていい所に来ましたね。
「クリス、こっちへ」
「んだよ……お前もまだ寝てた方がいいだろ」
「雪音、凛音なら冗談を言えるぐらいには回復しているぞ」
「ぶっちゃけ言いますがソロモンの杖の事と立花さんの事両方で悩んでるでしょう!」
「……お前さ、いい加減にしてくれよ」
思いっきり不機嫌な顔になってますがこっちも釘を刺しておく必要がありますね。
「どの道、連中をぶちのめしたらソロモンの杖はこっちに戻って来るんです。それに集中すればいいんです、次に立花さんの事なんですが下手に突き放さずに気持ちはわかるが休めって感じの路線で我々は統一した方がいいと思います。その辺の共有をですね」
「……おい、こいつやっぱりもう一日寝かせておこうぜ」
「そうはいうがな雪音、私も気づいたんだ。歌で、戦場で心を通わせてこそいるがこういう時も気持ちのすり合わせをしておく必要がある……私も凛音に言われなければ立花に厳しく言って傷つけてしまっていたかもしれない」
「……はあ、まあわかったよ。けれどアタシは自分の責任からは逃げない、逃げたくないんだ」
「わかりました、でも一人で突っ込んでいかないでくださいよ?実行するにも一言言ってくださいね」
「言っておきながら止めねえのかよ!」
「決意した人間は止まりませんからね、とりあえず事前報告だけお願いします」
……止まらないのは私もですね、既に決意はある。
覚悟だって出来ている筈です、だから人類も友達も救って見せる。
この身が燃え尽きたとしても、この想いだけは決して燃え尽きはしない。
「あ、そうです。クリスは出来るだけ立花さんの近くに居てやってください。私はリディアンにはほら……行けないんで、何かあった時に立花さんを戦わせない為にもですね」
「わーったよ、締まらねえ奴だな。それでお前も趣味の方は出来てねえだろ」
「それを言ったら翼さんも歌手活動控えてるじゃないですか」
「しかたあるまい、マリアのせいで少し面倒な事になったからな……」
確かに会見で中指立ててSNSでぶつくさ言い放った後から特に動いてませんでしたからね。
「じゃあそろそろやるかー……政府公認配信……」
「ものすごく嫌な予感がする」
「奇遇だな、アタシもだ」
『美少年と美少年は、いいですよ!』
・うわあああああおりんが練りBLゲー配信してる!
・嘘だろ(絶望)
・これが政府公認ってマジ?
・恐怖!シンフォギア装者は腐だった!
『心が曇った時は美しいものを見るに限る』
・中指を立てるってそういう……
・美しいものが味方とは限らない
・怖いよ!俺こいつの意図が読めなくて怖いよ!
・ママー!
『わからんか?美少年がメスになって、やがてママになる事の美しさが』
・性欲だろそれ
・男もイケるしな
・かわいそ、これを監視させられている関係者かわいそ……
・監視者に悲しき現実……