萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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力を示すんだ

 ネフィリムとの戦闘で暴走した立花さんを確保するのを優先して、ドクターウェルは放置されていた。

 そのツケが回って来た、街中でFISに回収される為にソロモンの杖でノイズを呼び出して、偶然居合わせたクリスがそれに対応。相手装者……イガリマとシュルシャガナが回収の為に現れた上でシンフォギアの適合率を引き上げる為の薬剤「Linker」を注射し絶唱を行う。

 それを阻止すべく立花さんが介入、絶唱によって絶唱を束ねるS2CAによって相手シンフォギアの絶唱を不発にして難を逃れるも完全に熱暴走、侵食がより早まってしまった。

 

 私よりも先についた翼さんが貯水タンクの中身をぶちまけて強制冷却するも、立花さんはダウンで小日向さんにも事態が知れる事となった。そしてクリスは自責の念に駆られて塞ぎ込んでいる。

 

 事態は思ったより悪い。

 このままいけば遠からず融合症例は限界に達する。

 手立てはない、それとなーく「神獣鏡」って聖遺物無いですかって聞いたモノのデータベースにはない、名前の出所としては適当にあげて厄払いとかあるべき姿を映すとかそういう鏡の性質でどうにかなりませんかと……しかし日本にはない……アダム曰くレアではなく複数あるよとの事なので今から探せば……いや間に合わないですね。

 一応アダムにもう一回問い合わせたけれど組織の中にはあるけれど今誰が持ってるかは知らないと言われ落胆。

 

 役立たずめと罵りたい気持ちといやでも希望をくれるだけマシかという気持ちが半々、むしろ情報に関しては毎回ほぼ無料でくれてるのだから……。

 逆にこっちの情報も駄々漏れというのも考慮してもです。

 

 かくなる上には立花さんを完全な融合体に仕上げてでも生き残らせるプランを立てなければなりません、どうやるのか……というと「Linker」を使ってもう限界以上まで適合率を上げ、立花さんに自己認識としてガングニールは立花さんであり、立花さんはガングニール、シンフォギアであると確立して貰う……なんてものが浮かんでいます。

 聖遺物と人体がベツモノだから反発作用が起きる、ならばその差を消してしまえばいい。

 

 そんな時だった、私宛に「鎌倉」から直通で連絡が来た。

 二課ではなく風鳴機関のツテで動かしている訃堂の爺さんの私兵がマリア達FISを追って国内で米軍特殊部隊が動いている事を察知したという、それを追えば十中八九見つかるだろうと。

 

 これはかの爺さんからの試し行為だろう、二課の、司令の言葉を無視して動けるかどうかの……。

 かつてルナアタック事件の際にも米軍が勝手に国内で活動しており、二課の後ろ盾であった政治家を暗殺した疑いがあるという情報も一緒に送られてくる。

 

 けれど放っておけば巻き添えで犠牲者が出る、そしてまたノイズが出てくれば立花さんが戦う事になるかもしれない。

 だが私の直感がコレを受けろと言っている、ドクターウェルは聖遺物だけでなく生体技術にも明るいとか。

 もしかしたらヒントを得られるかもしれない……私は秘匿回線によって「動く」と返答した。

 

 これで「鎌倉」預かり案件となった、すると扉がノックされエージェントがやってきた。

 申し訳ないけれど二課にもやはり訃堂の手の者がいくらか混じっている、彼もその一人なのだろう。

 

「ちょっと気が滅入る事が多くてリフレッシュの為に散歩してきます、司令」

「わかった、しかしこの間のウェル博士の事もある。くれぐれも気をつけてな」

「はい、ただ一人で行くとマスコミとか厄介なんでエージェントの人借りていきますけれどいいですよね?」

「もちろんだとも」

 

 司令には悪いですが、まあ……訃堂の爺さんがしりぬぐいしてくれる筈です。

 

「それで、加賀美様。すでに米軍の特殊部隊はFISのアジトを見つけて突入準備に入っている様です」

「周辺の封鎖は?」

「誘導をしております、しかし近隣の学校の通学路になっており完全には……」

「急ぎで行きましょう」

 バイクに乗せてもらい、飛ばしていく。面白い程に信号には引っ掛からないわ、邪魔な車も居ないわでスムーズに行くしで、これが政治パワーって奴ですか。

 そしてどうにか事態が起こる前に到着できた、ここからが勝負です。

 

「二課本部機能を一時的に誤魔化してください、ギアを使います」

『了解、偽装データ送信開始』

 どうしても国の組織ですからね、設備もほぼ把握されていると言ってもいい。しかし止めてられるのは2分ぐらいが限界でしょう、一瞬でカタを付けなければならない。

 

「殺しはナシで、制圧後は回収して米国との取引に使えそうなので、後は自害されない様にも気を付けてくださいね」

「わかりました」

 

 イカロスに新しい機能が解放される、それは光学迷彩。景色に溶け入る様に私の姿が消えていく。

 

「なんだ……?今何かが動いたぞ」

「気を付けろ、相手は異端技術を持っている。何があっても……ぐあっ!」

「P1がやられた!敵の姿は見えない!ウオッ」

 

 さすがにプロ、やられてもすぐに対応してくる。申し訳ないがちょっと痺れますよ。

「はうっ」

 センサーを拡大して隠れている連中の側にアクティブドローンを忍ばせてテーザーでぶち込んでやる、さすがに騒ぎに気付いてマリアが外に出てきて、それを狙って狙撃が飛んでくる……が。

 

「まったく、米軍の人間とはこんなに無慈悲なんですか?」

 あえてこの体で受け止めてやる、そしてカウンタースナイプで気絶させた。

 

「あ……あなた!加賀美凛音!どうしてここに!それにこの騒ぎは……!」

「どうもこうもありませんよ、ここは日本ですからね。他国の軍人が好き勝手するなんて許される訳がない」

「確保!クリア!全員拘束しました」

「了解、さっさと連れて行ってください。私はまだ話があるので何人かは残ってくれるとありがたいです」

 

 無力化した特殊部隊がドナドナされていく、やったのは私ですが……先に手を出したそっちが悪いんですよ。

 

「さてお話、というか私からお願いがありますマリアさん。協力要請というものです」

「……どういう風の吹き回しかしら」

「私の友人が、二課の装者の内の一人が重症なんですよ。彼女を救うための手立てが無いか、探しているのですがこれが上手く行かず……そっちには優秀な医者がいるとかで」

 

 私はギアを解く、そしてペンダントを隣にいるエージェントの手に渡す。

 

「あなた正気なの!?敵地だというのに!力を手放すなんて!」

「これが私の覚悟です、たとえ裏切りだと言われても……それでも守りたいモノがある!救いたい人がいる!」

「……私達の手にも負えないとは思わないの、私達が当然の様に受けるという前提はどこからきたの?」

 

 確かに普通の人間ならそうかもしれませんが、私はただの人間じゃない。

 全てに中指を立てる加賀美凛音ですよ。

 

「友の命も、世界の明日も手に入れる!その為ならこの命を投げうつ事など容易い事です!もちろんあなた達にもメリットがある。あなた方が目指す月の落下の阻止、それを私とその後ろ盾となるものが全力でサポートしましょう」

 エージェントの一人がトラックをアジトに入れる、荷台から出てくるのはいくらかの医療品と食糧などの物資。

 

「……私の一存では」

「マリア」

 いつものあのステルスヘリが姿を現し、車椅子に乗った女性がこちらへと来た。

 

「ナスターシャ教授、ですか。お体が悪いので?やはり逃亡生活で無茶をしていらっしゃいますね」

「そこまで見抜かれるとは……しかし、自業自得でしょう。我々としてはその提案に乗りたいと思っているわ」

「しかし、信用が足りないという所でしょうか。かつての勝手知ったる米国と違って日本の組織内がどうなってるかまでは知らない」

 

 さて、ここで信用を得る方法。そうですね……ならばここは一つ。

 

「先にあなた方の目的を達成できる様にしましょう、私の友の治療さえできるのならば」

「……まずその友というのは立花響、融合症例の事でいいのですか?」

「はい、彼女は心臓近くに埋まったガングニールの欠片から全身の神経に絡まるように増殖した聖遺物に侵されています。このままいけば遠からず死ぬ事になるでしょう、なので前線に出る事そのものを控えさせているのですが……思ったより進行が早いんです。知人のヒントでは神獣鏡を使えればどうにかなるかもしれない、との事ですが……」

 そんな都合よく持っている筈もない、だけれど聞いてみるだけならタダですからね。

 どっちにしろ本命はLinkerと……ウェル博士の医療技術です。

 

「ありますよ、神獣鏡ならば。しかし渡すというのは出来ない。これは計画の要であり、我々の生命線でもあります」

「あるんですか!!!」

 このまま壊滅させてでも奪い取るという選択肢が頭に浮かんだものの沈める、ダメですそれでは筋が通りませんから。ようやく希望が見えてきました。

 

「ナスターシャ教授、困りますよ。勝手にそこまでお話しされては」

「ドクターウェル、しかしこれもチャンスです。実際に我々も消耗が無視できない、このままではフロンティアへの到達前に倒れかねない」

「はぁーまったく、フィーネという名前に乗ってみれば実際には居ないですし。ネフィリムは心臓残して破壊されるし、フロンティアの封印解除も機械増幅では上手く行かない。挙句には敵だった相手に協力を乞う……ガバガバすぎるんですよ計画が!」

 派手に暴れたお前が言うなという気持ちをこらえつつドクターウェルを見る。

 

「世界救おうってつもりならそのぐらいのガバチャー走り切るぐらいの気概をみせてください、それに協力を乞うてるのはこっちです、確かにあなたのせいで悪化したようなものですが元からあった爆弾です……それをどうにか出来ないのもこちらが聖遺物関係をフィーネに依存していたせいもあります。なので、どうかお願いします」

「はぁ、ならば二課の介入を止めてみせてください。それなら考えて上げてもいいですよ」

「確かに、言われればそうですね。訃堂の爺さんに二課の足止めを……題目は融合症例悪化に対する会議なんかで、それから……FISの皆さんに少し休める宿ぐらい手配してあげろと」

 これぐらいなら出来るでしょ、余裕で譲歩できる範囲ですし。

 

「えっ」

「なんですか、まさか信じてなかったんですか」

「なんで君の一存で出来るんだ!?まさか君がトップって訳じゃないでしょうが!」

「知らんのですか、いや言ってませんでしたね、今の後ろ盾の政治力が強いんですよ」

「許可が下りました、加賀美様」

「ありがとう」

「ええっー!?」

 

 変顔を晒して眼鏡がずり落ちるウェル博士、ほうと驚くナスターシャ教授、何が起きたのかわからないマリア……。

 

「そういうわけで休戦協定と行きましょう、FISの皆さま」

 

 

『どういうことだ、加賀美くん』

「すみません、どうにもあの爺さんに気に入られて試されたんで応えたくなったんです」

『はぁ……こっちの気持ちも考えて見ろ、突然活動を止められて、それが鎌倉からの命令で、おまけにお前が絡んでいるとなって驚いたぞ』

「一言連絡ぐらいはしたかったんですがね、正直司令は過保護ですからこれをやるとなったら止められそうだったんで」

『……確かに俺なら止めていたな、しかし上手く行ったからよかったものの……上手く行かなかったらどうするつもりだったんだ』

「その時は暴れまわって滅茶苦茶にしてやるつもりでしたよ、あれぐらい乗り切れる自信はありましたし」

 端末越しに司令と連絡する、場所はお上に用意させた温泉宿です。

 一先ず、FISの方々にはマジで休養を取って貰わないと計画進行よりも前にぶっ倒れそうだったので、特にナスターシャ教授がひどい、古傷もですがストレスと塩分の取り過ぎと高血圧でヤバすぎたせいで秘密医療チームに来てもらって処置をしてもらうぐらい。

 

『翼達がお前の事を心配している、後で連絡ぐらいいれてやれ』

「そうですね、それと良いニュースが一つ、立花さんの治療の目途が立つかもしれません。具体的には聖遺物の影響を除去できる装置があるんです、これを使えば体内のガングニールの欠片を取り除けそうです」

『本当か!!それならば……よくやった』

「ただ出力が問題で先延ばしにするぐらいになるかも、との見立てもあるので……期待のし過ぎもいけませんね」

 

 通信を終えて、次は訃堂の爺さんに繋ぐ。

 

「どうです、うまく丸め込んだものでしょう」

『米国の鼻を明かせた分を上乗せして及第点といったところ、無駄な譲歩が多い』

「そりゃ恩で縛るんですよそこは」

『だが過去の罪はどうする?我が国の民が少なからず犠牲にはなっているぞ』

 

 ……確かにウェル博士のやらかしなんかでエージェントだったりがそこそこに死んでいるのも事実、岩国の米軍基地の犠牲者も……なあなあにするのはよくない。

 彼らにだって家族は居ただろう、明日があっただろう、それを考えると私の行動は……。

 

『他人を裏切っても、己自身を裏切らんことだ』

 

 それはそれ、これはこれ、という割り切りも必要なのかもしれませんね。

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