FISの保有するこのヘリ、結構な速度が出る様であっという間に目的地近海へと辿り着こうとしている。
緒川さんに立花さん小日向さん、後はFISの皆さん……これから計画の大詰めと行きましょうと覚悟を決めていらっしゃる。
私はもうクタクタどころがシナシナなんですがまだひと踏ん張りしていかなきゃ。
『こちら二課本部は指定位置まで到着した。ここから何が始まる?』
「それなりに素晴らしい事です、未来さんお願いしますね」
「わかった!」
ステルス装置から神獣鏡のペンダントを取り外し未来さんに託す、そして私自身もギアを纏う。同時にマリアさんがエネルギー波収束用のミラードローンを展開。
『新しい、シンフォギアだと!?』
「ええ、小日向さんの立花さんを想う力です」
神獣鏡の力がついに封印された古代の遺産を呼び起こす。海面を突き破り現れるのは巨大な島、これこそがフロンティア。先史文明が遺した星間船……建築物群の側にヘリを降ろし。二課からも司令と翼さん、そしてクリスが上陸してくる。本部に関しては流石に潜水艇なので海で待機していて貰う。
「数日ぶりですね、司令」
「ああ……気分転換の散歩はどうだった」
「歴史の転換点についちゃいましたよ」
クリスは……相変わらずムスっとした感じですが翼さんもこちらを見て心配そうにして……申し訳ない。
「師匠~!みんな~!」
「立花!治ったというのは本当なのか!」
「はい!バッチリ!でもシンフォギアがなくなっちゃって……すみませんがノイズとの戦いは一時休業になっちゃいました」
「そうか、それは仕方ない。それにノイズと戦うだけが全てじゃない。奏の遺したギアはなくなったが」
「はい!ちゃんとこの胸の歌だけは……決して消えませんから!」
「加賀美の方もバカだがお前もバカ!いくら治る可能性があるからって何の疑いも無くついていくんじゃねえよ!罠だったらどうしたんだよ!」
「ごめんクリスちゃん!でも心配してくれて本当にありがとう……」
とりあえず三人はヨシ、後は……。
「初めまして、二課司令風鳴弦十郎……私はナスターシャ、このFISの責任者よ……この件に関しては私が全ての首謀者であり……裁かれるべきは」
「うむ……しかし、その話は今ナシにしよう。まだ政治取引でどうにか出来る可能性がある、それに米軍がもう動き出しているだろう。その計画というのを優先しよう」
そうです、そうこうしている内にもう向こうも動かせる戦力を出している事でしょう。
全員で揃ってフロンティア内部へと突入、特に防衛機構などはなくあっさりと動力部へと辿り着くがやはりというか「火」がない。これじゃこの船はポンコツのままだ。
「ウェル博士、アレですね?」
「はい、このネフィリムの心臓を取り付ければ!エネルギーが瞬く間に!そしてコレ!Linkerとネフィリムの細胞を混ぜ合わせたモノを僕の腕に注射すればホラ!」
「うげ……なんですかその気味悪い奴は」
「人聞きの悪い、ネフィリムはあらゆる聖遺物を食らう力を持つ。それを応用した簡易制御装置ですよ!まあもっとも僕の頭脳あってのモノですから君達が使っても完全な制御は無理ですがね!」
球体状のデバイスらしきものをウェル博士が握ると、照明の様なモノがつき始め、本格的に船が動き出したのがわかる。私も試しにデバイスをイカロスで触ってセンサーを繋いでみる。
「んなぁっ!?僕が苦労して考えた案を!?」
「操作はできませんよ、あくまでパスのチェックぐらいしかできてませんし……ああ、これ分割して組み替えたりとかする船なんですね……すごい、各ブロックが切り離し可能になってますよ。でこれがエネルギー制御室的な役割ですか……おそらく月遺跡にアクセスするのはコレじゃないですか!?」
「僕の仕事だぞ!!取るんじゃあない!」
やかましいですね!操作するのは私じゃないんだからいいじゃないですか!
「ウェル博士、あなたの力があってこそここまでこれたのです。感謝を」
「当然ですよ教授!これで僕らは英雄になるんだ!厄介者が上陸する前に船を浮上させますよ!」
「わかった、二課本部に通達、これより船は浮上する。離れろ」
巨大な反重力でしょうか、まるで振動なども感じる事なく景色が変わっていく。
空気などもフィールドか何かで閉じ込めているのか高度が上がっても気圧差なんかも感じない。
これが先史文明の力ですか……!
「マジかよ、飛びやがったぜ島が」
「ああ、これなら月をどうにかできるという説得力もあるというもの」
そんな時だった。
アダムからのテレパスが来た。
『まずい事になったよ、諜報員から連絡が入った。持ち出したようだよ、反応兵器を』
『ええ!?』
同時に二課本部から緊急通信が入る。
『米国より通達!反応兵器の使用が決定、繰り返します!反応兵器の使用が決定!』
「反応兵器だとォ!?」
マジかー手に入らないならぶっ壊すまでかー……船の情報を見てみればバリア発生装置はある……けれどエネルギーは足りるかギリギリ……!
「本部はいますぐ急速潜航!海域を離脱しろ!俺達は……」
「大丈夫ですよ、先史文明の遺産をナメないでください!反応兵器一発ぐらいじゃ落ちませんよ!フロンティアは!」
「だ、そうだ!」
一発なら耐えれるでしょうね、一発ならば。そんな甘い訳がない、時間差でもう一発飛んでくる事も考慮するとエネルギー供給が間に合わない。どうすればいいんだと思ったその時、フロンティアに衝撃が走った。
大きな揺れと輝きが空を覆った。
「マジで撃ちやがりましたねあん畜生ども!報復してやりたいところだがそれどころじゃない!ネフィリムの心臓でエネルギー供給……えっ」
「やはりもう一発ぶち込んできましたか、泣きを入れたら!ウェル博士、防壁に指向性を持たせてください!」
「けどエネルギーが!」
「動力ならここにもう一個あります!!」
ネフィリムの心臓に手を触れる、凄まじい勢いで力が吸い取られていくのを感じるが耐える。これならいけます!
奏でるは絶唱……!わたしの血を捧げてやりましょう!
「馬鹿!そんなことをしたら君のエネルギーが吸い尽くされて死ぬのがオチだぞ!!」
「やってみなければわかるまいよ!」
ジェネレーターを最大出力、こいつを増幅炉にしてネフィリムに特大のメシを馳走してやるんです!
私は絶唱を口ずさむ、ただそれは一人ではなかった。
「馬鹿、一人で突っ走んなっていったろ……」
「凛音、私達もついている!」
さすがに三人分の絶唱、立花さんじゃなくて私を介したS2CAですか!しかし私の特性では二人の負荷までは背負えない……!
「ぐっ……やはり堪えるな!」
「ここが気合の入れどころだろ先輩!」
「はっならば負けてはいられないな!」
どうにかネフィリムの心臓のエネルギー供給が間に合うレベルに達した、そして二度目の衝撃は……完全に殺し切れずフロンティアの一区画を崩壊させるに至った。
そしてダメージが限界に達して私の意識が暗転する。
気が付けばまるで外から眺めている様だった、
『ドクター!大丈夫!?』
『僕の頭脳があやうくオジャンになるところだったじゃないか!それに……まずい事になったぞこれは!ネフィリムのエネルギーが枯渇して飢餓状態に陥った!』
『つまり暴走という訳デス!?』
『ナスターシャ教授、何処へ?』
『ドクター、私が制御室へ向かいます。到着したならばブロックを切り離して射出してください。そしてマリア、あなたは……歌いなさい。フォニックゲインが必要なのです』
『待ってマム!それって……!!』
『行くべき者が行き、残るべき者が残る……時間がありません、私の最後の務めであり……これがあなたに託す最後の使命です』
『いかないでマム!それならば私が……!それに他に方法が……』
『まずい、加賀美くんの心臓が止まっている!』
『心臓マッサージならできます!』
『響くん頼むぞ!翼と雪音は無事か!?』
『はい……どうにか』
『くそ……このぐらい訳ねえ』
私は、死んだのだろうか。
いえ違いますね……これはギアの機能のおかげで気絶しても意識が残ってる様な状態でしょう。
まだギアが解除されてないから死んでいない……。
このままいけば計画はオジャンでこの星も、皆も守れない、そんな終わりは嫌です。
死んでいる場合ではない……電気ショック機能解除、自動蘇生プログラムを起動。
「ふぐぅっ!?」
「ぶへぇっ!?」
心臓再起動、呼吸再開、意識が戻ってきましたねヨシ。
「死……死んでる場合じゃあないっ!」
おでこを抑えてる立花さんには悪いですが私はまずナスターシャ教授とマリアさんの方へ。
「マリアさん!」
「凛音!あなた無事だったのね!あなたもマムを止めて」
「……マリアさん!あなたに、あなたにしか出来ない事なんです。そしてナスターシャ教授の仕事はナスターシャ教授にしかできないんです!」
慌ててどうにかネフィリムの暴走を抑えているウェル博士の横からデバイスに手をぶっこむ、セキュリティがガバになっているおかげでハッキングが容易くできた。これで電波ジャックを決行。さすがに画像までは送れないけれど、声ぐらいは全世界に届くはずです。
「ナスターシャ教授、お願いします。どうか月遺跡へのアクセスを確立してください」
「……ええ、任せなさい。それとマリア達をお願いします」
現実を受け入れたくない、と泣き崩れるマリアさんの肩に手を置き偉大なる先人を見送る。
「どうか化けて出ないで下さいよ!」
そうしてナスターシャ教授が乗った区画をウェル博士が射出、有人である事を考慮してシールドを回してはいますが……いずれ酸素もエネルギーも尽きるし、ナスターシャ教授のあの体では長くは持たない。
「マリアさん、お願いします。あなたが……最後の希望なのです」
切歌ちゃんと調ちゃんが側にやってきてマリアさんと手を繋ぐ。
「……そうね、私は……私達はやり遂げると誓った!!」
どうにか再起を果たしたマリアさんにマイクを渡し、電波を送信開始。
涙声のマリアさんが歌うのはわらべ歌だった、これまで聞いてきたマリアさんのどの歌とも違うシンプルな旋律が私達の胸に伝わる。ごく短い時間でしかないこの歌が……このフロンティアの下に広がる地球という星に住まう人々から莫大な量のフォニックゲインを産んだ。
そしてモニターからはそれを射出された制御室経由で月遺跡へとフォニックゲインを照射するのが見えた。
「月軌道、正常化を確認。やりましたよ!!!やったんですよ!これで僕らは世界を救ったんです!」
「ええ、救いは救いましたがまだ問題が一つ残っていますでしょうが!そのネフィリムの心臓どうするんですか!メルトダウン寸前ですよ!」
「そんなこと僕の知った事じゃありませんよ!」
「このクソボケがーっ!」
思わず勢いでウェル博士をどつく、とにかくいつ三発目の反応兵器が飛んできてもおかしくないし、このヤバイ状態のフロンティアからは今すぐにでもおさらばしなければ……いやでもネフィリムを放置していくわけにもいかない……!
「杖だ、バビロニアの宝物庫にぶち込んじまえばいいんだよ!」
おおクリスさんナイスアイデア!しかしアレ開くには相応のエネルギーが……。
今現在動ける装者は……マリアさん達三人と小日向さんにクリスと翼さん……。
私は、ちょいと無理です。さっきの自己蘇生で無理をしてこれ以上は立ってるのもやっとです。
せめてもう一人欲しい……そんな時だった。
「セレナ……?」
マリアさんがペンダントを二つ持っていた、一つは壊れていてとても動くようには思えない、なのに輝きを放っていた。
「そうね……ずっと見ていてくれたのね、セレナ……行きましょう!立花響、これを受け取りなさい!」
そういって投げ渡すのは無事な方のペンダント……それはガングニール!まさかですが……。
「マリアさん!」
「あなたならば使えるはずよ!」
「はい!」
「ネフィリムの片づけは私達が請け負おう、凛音はドクター達と一緒にヘリで脱出を」
これは……どうにかなりますね、さすがにここまで頑張ったんですから……少し休ませて貰いましょう。
私はもう出来るだけの事をやったんですから……。
『ああ、お前は出来るだけをやった』
『哀れな落とし子よ……お前も必ずヒトの中へ帰れる』
『唯一お前達が仰ぎ見る事が出来るこの神の元に』