萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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私は知らないんだ

 結局のところ、S.O.N.G.にキャロルの脅威を知らせる事はまだできず居る、アルカノイズという新たな脅威についてもだ、シンフォギアを早急に強化して対策しなければならないというのに。

 

 ハッキリ言ってまだパヴァリア光明結社の事、錬金術の事すら詳しく話せてない。

 それもそうだ、ノーブルレッドの3人もちょっとした人間離れしたパフォーマンスとはいえ司令や緒川さんのがもっとおかしいし、そもそも妖怪が実在するんだから大した事はない!って言ったら納得されちゃったんだもん!

 

 おまけに訃堂のジジイの突然のマネージメントも「マリアさんの起こした歌の奇跡見て可能性を感じたんでしょ」で納得されちまったし!そこはもうちょっと疑えよ!しかしてあまりに隠し事が増えすぎてしまった……。

 

 何故……何故誰も私を怪しまないんです?まさかそんな狂った行動をしまくるイカレ女と皆には既に認識されている……?

 

「聞いてくださいエルザちゃん、誰も何かおかしいと指摘してくれないんですよ。そもそも突然あなた達を引っ張り出して来て、舞台で堂々と異常行動しているのにですよ。どこから連れて来たんだとか普通疑うでしょう」

「それは……凛音さんが日頃の行いが悪いと思うでガンス。わたくしめらより遥かに化け物してるものですから」

「ひでーこと言いますね、練習量3倍にしますよ」

「鬼、怪物、魔物」

「反骨精神はまだ死んではいないようですね、安心しました。ところでどうしたら皆さんは私に心を開いてくれますか?この間サンジェルマンさんに皆さんの健康を改善する為の薬を用意してもらったのに全然、感謝すらないじゃないですか」

「普段の仕打ちを考えて言うであります」

 

 くっ……こうして常日頃からノーブルレッド3人組をどうにか解きほぐそうとしてるんですがそれも中々うまくいきません……やはり私には人付き合いは難しいのではないのでしょうか……!

 

「せめて人間らしい行動してから言えよ加賀美凛音、ウチらからみても化け物行動だぜ」

「そうはいいますが……化け物ムーブだって営業ですよ!やらないと世界の危機なんですから」

「やらなきゃで出来ちまうのが化け物だってウチらは言ってるんだぜ」

 

 はあ……完全に心を閉ざされておられる……こうも心が通わないと泣いちゃいそうですよ私。

 

「私達まで怪物扱いされてるのが納得いかないわ、そうよねミラアルクちゃん、エルザちゃん」

 

 この三人は怪物扱いされる事を拒んでいる、人間に戻りたいというのはわかってる……けれど今は働いて貰わないといけない……こういう思想の時点でダメだとはわかっているんです!しかし……。

 

 これまでが簡単に打ち解けてくれるお人好しばっかりだった、人の出会いに恵まれていただけだったんです。

 

「わかりました、マジで仕事だけは……仕事だけはお願いしますよ。今年中頑張ればそれで解決できる筈なので。その暁にはそのパナケイア流体全部ぶっこ抜いて後付けされた概念やらも洗浄できるようには契約してあるんで」

「おーようやく雇用期間の話がでたぜ、どう思うヴァネッサ」

「そうね、嘘はついていなさそうね。それに裏切るつもりもなさそう……けどまだ信用が足らないわね」

 

 そりゃあそうでしょう、今までが都合が悪くなれば処分される立場だったと言われれば……契約満了処分になるかもと恐れるのもわかる。

 

「せめて、いい加減に計画の詳細を教えて欲しいものね」

「前も言いましたが同時進行で動いてるんで全部を把握している訳じゃないんですよ、大まかに私に人々の信仰心を集めた上で、レイラインと星座を使って神の力を降ろして、南極で眠ってる神をぶっ飛ばす」

「ミラアルクちゃん?」

「はいよ」

 

 目を合わせると心を読み取ったり、操ったりできるという能力は鉄板です、彼女にもそういった能力があるのでしょう、あえて正面から受けてやりますが……。

 

「ダメだぜ、見えない。なんでそんな暗くて寒い心してんだよ加賀美凛音はよ~!」

「暗くて寒い言うな!失礼な!」

「ウチの不浄なる視線がまるで通用しない強固な精神だぜ」

「それで信用してくれますか?」

「無理ね」

 

 こいつらマジ……!落ち着け凛音、そうだ……一応こっちにもまだ手札はある……。

 

「そういえばあなた方には給金が支払われている筈ですが、ちゃんと使えてます?休養・休暇は権利ですよ」

「……初めて聞い……冗談よ冗談、今にも怒鳴り込みに行きそうになるとは思わなかったの」

「それを聞いて安心しました、流石にそこまで権利がなかったら私もパヴァリアに中指立ててましたよ」

「マジかよ加賀美凛音……命知らずってレベルじゃないぜ」

「さすがは化け物を越えた化け物ガンス」

 

 にしてもこいつら怪物ってワード好きすぎでしょ!擦り過ぎなんですよ!もっと持ちネタ増やせ!

 

「確かにオシャレとか……ご馳走とか……前とは待遇が大違いであります。ですが……わたくしめらの心はそれだけで握れるとは思わないで欲しいであります」

「わかってます、ですが……それでも私は身近な誰かに、知らない誰かにも少しでも幸せであってほしいと思っています。望みがあるならば、叶えられるだけ叶えましょう。だから遠慮なく言ってください、あ仕事以外でですね」

「くっ言質が取れなかったぜ……」

「そういならばミラアルクちゃんとエルザちゃんを仕事の無い日なんかに学校に通わせる事も出来るのかしら?」

 

 学校、ああ……それは……。

「確認取ってみましょう」

「無理ならいいのよ、流石にそこまで高望みはしていないから」

 

 端末を繋ぐ先はお馴染み訃堂のジジイ、その政治力ならば不可能などあんまりない。

 

『何事だ、今は商談中だ』

「うちのメンバー二人、語彙やら引き出し増やすのにリディアンに通わせたい。幸せを知らん奴は使えんのです」

『よかろう、手配させる。だが……果敢無き哉!貴様……単位は足りているが出席日数が誤魔化せんと言われておる!出席しろ、それが条件だ』

「くそ……誤魔化せんかったか……わかりました行きますよ、まったく厄介なものですよ!」

 

 とりあえず通ったな!ヨシ!と3人を見ると唖然としていた。

 

「どうですか?通りましたよ」

「マジ?」

「ええマジですよ」

「わたくしめら……学校通っていいんでありますか!?」

「通ってよし!」

「友達作ってもいいのか!」

「作ってよし!」

 

 よしよーし!初めてノブレ組を喜ばせられた気がしますよ!やはり力……力こそ人を幸せにする!

 力が無いと幸せにできない今の現実は……悲しいですがこれだって権力の有効活用です!

 

「……無理を言ったけれど本当に実現するなんて、本当にあなたは怪物よ」

「怪物ではない!神ですよ!」

「じゃあ間を取って魔神だぜ」

「願いをかなえるランプの魔神であります」

 

 しゃあねえ、今はそれで許しましょう……まあ普通の神より魔神の方がなんか親しみやすそうな気がするし!

 そんなこんなでメンバーの二人と共にリディアンへと後日通う事が決定、そういえばと思い立花さんへメール。

 

『ファナティクスの連中二人をリディアンに編入させるので仲良くしてやってください。私も近々出席日数取るのに出ます』

 っと送って、ここから検閲が入って……返事が来るなら明日かなと思っていたら即着信。

 笑顔とサムズアップの絵文字の二つだけ、なるほどそれは通ったか!と思い悪魔とギターの絵文字を送るとサイリウムの絵文字、どうやら私のアレコレも見てくれているんだなって嬉しくなる。

 

 ああ……そうか、あの三人にも観客が見てくれて「嬉しい」って気持ちが分かれば……もっと近づけるかもしれない。

 

「ミラアルクは、ライブをして、演奏をして何か感じたりしないんですか?」

「見世物になるのは……ウチは嫌いだ」

「わたくしめも……あまり見られる事は、嫌いであります」

「……それは実験動物扱いされていたからでしょうか」

「……いいだろ、教えてやる。ウチは結社で非検体となる前は人殺しを見て悦ぶ連中の為に働かされていたのさ」

「地下闘技場とかですか」

「スナッフフィルム、クズ共の歪んだ娯楽」

 答えたのはヴァネッサさんでした、それは口にするにも、文字に書き起こすにも悍ましい、邪悪で醜悪な行いの数々……3人の過去にまつわる絶望。

 

 それでようやく、私はこの三人の絆の形を知りました。

 同じ苦しみを分かち合った弱者の叛逆、未来を勝ち取る為の足掻き。

 

 そこに私は入れない、誰にも介在できない……。

 同じだけの苦しみを知らないから。

 

「人でありながら人を捨てて、人でなしになろうとする。あなたの行いこそ私達に対する当てつけに思える」

 

 心を繋ぐ事こそが、何よりも善き事だと私はまだ信じている。

 けれど……それを押し付けて開かせるのは……正しいのでしょうか。

 

 過去の私の在り方を想う、失望される事が何よりも怖い。

 いつだってこれが心の中にあり続けた、失望されない為に、嫌われない為に何もかもを果たそうとしてきた。

 

 キャロル・マールス・ディーンハイム、父を奪われたという彼女の望む復讐の事もまた心に浮かぶ。

 

 私は……これまで何かを奪われた事がない。

 本当の意味で何もかもを奪われずにここまで歩いてきた……もしも、もしも大事に思うモノを失った時、私はどうなる?

 友も金も名誉も立場も、私は何もかもを持っている。

 でも背負ってない、あの時……サンジェルマンさんに私達はちょっと似ていると言ったことも烏滸がましい。

 確かに神と戦うだけの覚悟はある、けれど絶望を、挫折を私は知らない……!

 

 何も望まれなかったあの日々だけが、両親の愛が足らなかった事だけしか、私にはない!それを悲しいとも思ってもいない!

 

 立花さんも小日向さんも!翼さんもクリスも!マリアさんも切歌ちゃんと調ちゃんも何かを失ってきて、それでも立ち上がって来たというのに私だけ!!私だけが幸せなままに進んでいる!

 

 後ろめたい、こんなことを考えてしまう私が!

 

 眩暈がして膝をつく、終わらない問いかけに私は熱暴走を起こし、機能不全に陥った。

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