萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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戸惑うんだ

 ガングニールあるいはグングニール、北欧神話の主神オーディンが手にした必中の槍。

 そしてシンフォギア第2号としてかつて天羽奏が纏っていたといたそうです。

 

 その継承者が現れた、それがあのライブの惨劇の生存者。

 私と同じくリディアンに通う生徒である立花響。

 

 ああ、それなりに彼女は有名ですからね。人助け大好き、お節介焼き、そしてバカ。

 それこそ板場まぬけトリオより遥かにバカ、ついでに横には常に小日向未来が居る。

 

 まあそんな事はどうでもいいんですよ、翼さんが完全に不機嫌というか空気が終わってるんですよ!

 空気の読めない立花が地雷を踏んだのが簡単に想像できるんですよ!

 

 完全に私すら眼中に入ってない、そんな状態です。

 

「困ったものね、確かに適合者を集めているとは言っても……まさか心臓に奏ちゃんのギアの破片が刺さって例外的に適合しただなんて」

「手術で取ったりとかしなかったんですか」

「心臓周辺で簡単に手出しできなかったそうよ、それに今の今まで何の影響もなかったらしいわ」

「うへーそりゃご愁傷様と言いたい所ですね、ギアを手放して黙ってさえいれば退職できる私と違ってそれじゃあ逃げられないじゃないですか」

「そうねぇ……本人がどう思おうと彼女はしばらく二課で預かりになるでしょうね」

「仕方ない事とはいえ私のテストの無期延期ですね……」

「それなら、響ちゃんと一緒にデータ取りでもいいのよ。模擬戦だったり」

 

 今日は本来なら本部のシミュレーションルームで最低限度の戦闘能力検証をする予定だったのですが、突然の新人出現に予定がパーに。

 世の中、何が起きるかまるでわからないものですね。

 

「けど、あの子……実戦に出る気満々よ」

「嘘でしょ……恐怖心とか無いんでしょうか」

「サバイバーズ・ギルトでしょうね、あの子のプロフィールを見る限り」

 

 生き残った者の罪、ああ……そうかあの惨劇の生き残りとなると他の犠牲者の遺族の八つ当たりを経験している……でしょうね。

 

「人間って醜いですね」

「凛音ちゃんって結構人に対して冷たいわよね」

「そりゃ親がアレでしたから、私もそんなものですよ」

 

 他人の悲しみや苦しみに寄り添える程に私は優しくも強くもない。

 そんなこんなで噂をすれば影、検査を終えて出て来た立花響。

 

「はじめましてご新人、私は加賀美凛音。あなたと同じシンフォギア装者です」

「え?はじめましてじゃないですよね加賀美さん!」

「実際に話す機会が無かったら殆どはじめましてじゃないですか」

「……え、それじゃあ改めて私の名前は立花響!好きなものはごはんアンドごはんです先輩!」

「ああ、それと。私はシンフォギアの研究の方ですからあなたと違って戦場に出る事はありませんので。そこの所よろしくお願います」

 へっと呆けた顔をしてやがりますよこの新人。

 

「凛音ちゃん、ダメよいじわるしちゃ。それにあなただって緊急時にはシンフォギアの使用が許可されてるのよ」

「外出なんて滅多にしないから大丈夫ですよ」

「それはそれで不健康よね、それはさておきデータを取る為にも多少は動けてないと困るわ……二人揃ってる事だし……少し模擬戦、してみましょうか?」

 

 

 櫻井先生の指示によりシミュレーションルームで向かい合う立花さんと私。

 互いに聖詠と呼ばれるシンフォギアの起動パスワードの様な歌を口にする。

 

『Firiteas Ikaros Fill torn 《誰よりも高く飛ぶのは私だ》』

『Balwisyall nescell gungnir tron《喪失までのカウントダウン》』

 

 互いに姿を変えて、出力を調整。アラートと同時に動き出す。

 立花さんは武器を出せずにいる……が、私にはわかる。その手足こそが武器、近接特化型だ。

 悪いけれど、私も痛い目にあうのは勘弁だから……右手のプロテクターから機銃を形成、距離を詰めずに、離さずホバーで衛星の様に周回しながら射撃開始。

 

「うわわわわわっ!」

 ダメージになる様な威力ではない、ただ衝撃はあるし弾丸が飛んでくるのは相応に怖いでしょう。

 

「どうしましたか!ノイズは待ってはくれませんでしたよね!」

「だって!私武器の出し方もわからないんだよ!」」

「だったら殴ればいいじゃないですか!」

 

 殴られてあげるつもりはない、けれどこのまま一方的に撃つと私が嫌な先輩みたいな扱いになってしまう。

 

「聞いていますよ!小さな子を守って戦ったんですよね!必死だったでしょう!訳も分からないまま力を振るったんでしょう!訳なんてわからなくていいんですよ!まずは一歩踏み込んで見せる事ですね!じゃないと死にますよ!」

「!!」

 

 死ぬ、という言葉に反応してか一気に立花さんの雰囲気が変わった。ドンと床を踏み込んで猛スピードで飛び込んでくる。けれどその程度のスピードじゃ私は捕まえられません、横にステップして回避して機銃を接射。

 

 威力を徹底的に落としてるのでバランスを崩す程の効果もないが先程からずっと立花さんへは当て続けています。

 いわばスコア稼ぎとでも呼びましょうか、私もズブの素人なんで人の事は言えないんですが立ち回りに関してはゲームのイメージがあります!

 

 つかず離れず、自分の適性距離で引き撃ちこそが最も厄介な戦術なのですよ!

 

「だとしたらっ!」

 流石に直進だけではダメだと地面をステップで移動、多少だけれど私を真似したのかブーストで回避する事をはじめた。学習能力はあるみたいですね!

 

 しかしこちらもまだ手札を一つしか切ってない、左手側のプロテクターからも機銃を形成、これで射線が増える。

 

 また立花さんが強く踏み込む、今度はブーストも加わって流石に簡単に回避……とはいかない!

 が、私は「飛べる」。

 フライトユニットを形成して直上これで回……

 

 ズガンと頭痛と共に視界が真っ暗になった。

 ナニコレ。

 

『凛音ちゃん、天井が低すぎて頭が突き刺さったのよ。急上昇するにも頭上注意よ』

「……大丈夫ですか!?加賀美さん!?」

 

 どうやら肩まで刺さってたせいで腕が届かない。

 

『響ちゃん、抜くの手伝ってあげて』

 

 

 クッソ恥ずかしい奴じゃないですか!!!!!

 初めての模擬戦は、両者共とても酷い結果となった。

 

 

「ちょっとは手加減してくださいよ!加賀美さん!」

「私だって戦った事ないですから、というか武器出したのも今日が初めてです」

「ええっ!?あんなに一方的だったのに!?」

「それは立花さんがあんまりに手間取ってるからですよ」

 

 その後は反省会という形になったが、私が思うに立花さんは人を傷つけるのが無理なタイプなんだろう。

 シンフォギアは使用者の心の在り方が強く影響するらしいから、そういった武器のイメージを出すと躊躇しちゃうんでしょう。

 私?ああ、全然このぐらいならいけるでしょうの精神でやってますので余裕でしたよ。

 

「ああ……それとそのガングニール、あなたも聞いている事でしょうが奏さんのモノです。奏さんといえば翼さんのパートナーでしたね?あなたが悪いという訳じゃないんですが、翼さんの気持ちが多分グチャグチャだと思うんで……余計な事を言わない様に気を付けた方がいいですよ」

「それは……」

「例えば奏さんの代わりとか、奏さんみたいにとか言ったら多分斬られますよ」

「斬られる!?」

「日頃のあなたの言動を見てる同級生からの忠告です、それから力を手に入れたからって調子に乗らない様に!」

 

 これは私自身もだ、ド素人の立花さん相手に有利に立ち回ったとはいえ……正直な所学習能力、適応能力は私より立花さんの方が上だ。感覚的にわかる、シンフォギアを初めて纏った時の私は小鹿みたいな有様だった。

 

 これだけ釘を刺しておけば大丈夫だろう……と思った時翼さんがやってきた。

 相変わらず不機嫌オーラが漏れていましたけれど指摘する必要はありません。

 

「翼さん、お疲れ様です。もしよければ少し一緒に……」

「ごめんなさい、今はそういう気分ではない」

 

 気を逸らそうとする作戦失敗!ガッツリ立花さんに視線が行ってる!

 頼む!爆発しないでくれよな!

 

『ノイズの出現を検知!翼さん!今すぐ出動準備を!』

『そういことだ翼!頼むぞ!』

 端末のアラームが鳴り、司令さんからの指示が飛ぶ。

 

「私も行きます!」

「えっ立花さんも!?」

 

 私は……一歩を踏み……出す。

 

「……戦闘に参加しませんが私も出てよろしいですか!イカロスで二人を現場まで運びます!」

『……わかった!無茶はするなよ加賀美くん!翼!ぶっつけ本番だがやれるな!』

 私と立花さんの顔を見て、少しの沈黙の後翼さんはそれを了承した。

 

 流石に今日は帰って配信する気にはなれないなぁ……。

 

 

 夜空を駆ける、フライトユニットにハンガーをつけて二人を乗せて飛ぶ。人を乗せて飛ぶのは初めてですがまぁ出来る気がしてたので全然問題なし。

 

「加賀美、何故あなたまで出る」

「少しでも誰かを助けたい、それだけじゃダメですか」

「だとしてもこの先は戦場だ、お前もだ立花」

「ええっ!?私も誰かが傷つくのは嫌です、だから少しでも助けになれればと」

「……そんな甘いものじゃない」

 

 昔話を聞いた、奏さんは家族の復讐の為にノイズと戦う道を選んだ。

 血を吐き、体をズタズタにされ、それでも戦い、死んだ。

 けれど同時に翼さんと心を通わせてもいた、戦うだけが全てじゃないと、生きる事を諦めるなと叫んだ。

 

「私は……奏さんじゃありません、あのライブの時……皆を助ける為に戦った奏さんみたいに強くはないし、足を引っ張るかもしれない……でも!それでも!私は何もしないなんてできない」

 

 なるほど、随分とエネルギッシュな女ですよ立花響……。

 

「まあ私としてもほら……後輩というかほぼ同期がコレだと惨めになるんです、何もしてないじゃないかって」

「加賀美、あなたもそんなことで」

「そんなことだからですよ、さあ着きますよ!戦闘準備!」

 

 ハンガーユニットをパージ、二人がノイズの群の中に飛び込んでいくのを見届け、私は離脱しようとする。

 その瞬間、飛行型ノイズが襲ってくるが左腕にプロテクターからレーザーブレードを形成して叩き落す。

 

「本当に効くもんですね、シンフォギアって」

 

 さすがに一匹だけではない、どんどん飛行型がこちらにやってくるので機銃でそれを迎撃しながら周辺を旋回、フライトユニットからミサイルを発射して制空権を取る。

 

『送迎だけだと言っただろう』

「自衛行為ですからセーフですよ」

 司令から呆れた様な通信が入るが私も自衛の為の戦闘なら許可でてるもんね。

 

『それで二人はどうだ?』

「まあまあ大丈夫そうですよ、不機嫌オーラ減ってましたし……ああ、ノイズもう片付いた様ですよ」

『こちらでも確認できている……加賀美くんもよくやってくれた。感謝する』

 

 殴る蹴るだけでしたがそれでもノイズの数を減らすのに貢献してましたね立花さん、こりゃ私が最弱かもしれませんね……。

 ってアレ?なんで翼さんが立花さんに剣を向けて……

 

「あなたの今の戦いを見て思った、今ここで模擬戦……あなたと私、戦いましょうか」

「ええっ!?」

「アームドギアすら手にせず戦う、私はそんなあなたを認める事ができないの。だから納得させてみせて!」

 

 ウワーッ!いきなり斬りかかった!というか翼さん気迫がマジすぎる!これどうすればいいんですか!?

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