萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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いつも上手く行くとは限らないんだ

 あの後、立花さん達は無事にキャロルを撃破した。

 イグナイトという新たな決戦機能、心の闇を押さえつけて力とするソレでキャロルを圧倒して追い詰めるも自害される。私の方は即座にやって来たプレラーティさんとカリオストロさんが治療を施してくれた。

 

 その内手足を失う事もあろうかと私の体の一部をいつでも作り出せる用意をしていた訳です。

 滅茶苦茶奇妙な感覚でしたよ、失ったモノが戻って来るのは。さすがにまだ表舞台に出るには早いとフードを被った不審者ルックで、治すとすぐにお礼を言う暇もなく帰ってしまいましたがおかげで皆を心配させずに済みそうです。

 

「して、私の知ってる情報から言いますとキャロルは撃破しましたが……あくまで一時的なモノでしょう。記憶を転写して既にあらかじめ次の体を用意していてもおかしくはない」

 

 それを聞くと立花さんはホッとしたような、でもまだ終わってないんだという複雑な表情をしましたが私は続けます。

 

「立花さん達のギアがエルフナインちゃんによって強化されるのは想像の内、むしろ計画の内に入ってたようですが……逆に私がオートスコアラーの一体を破壊した時、物凄い動揺をしていました。それこそ3人に負ける時よりも遥かに」

「……凛音、それはどういう意味なのか説明してもらおう」

「呪い、というのは中々に厄介でもありますが使いこなせば便利な道具となります。私のギターなんかの様に……だから立花さん達に呪いの力を付与させて何かをやらせたい、おそらくそこにオートスコアラーが介在してくる。そんな予定だったんでしょう、しかし計画に歪みが生まれた」

 

 3人とも聞こえていたのでしょう、ハッと気づいた様です。

 

「何故、キャロルちゃんは凛音ちゃんを殺しておくべきだったって」

「あのライブの以前にも私はキャロルから何度か命を狙われていました、しかしキャロルでも簡単に手出しできない協力者のおかげで難を逃れていたんです。そして私がキャロルにとって邪魔な理由……それは、推測ですが私が必要以上に影響力が大きくなり、計画の障害となる程の存在となったからでしょう。何度も私のことをイレギュラーと呼んでいましたからね」

 

 例外、今私が想像しているのはイグナイトとその材料であるダインスレイフの呪いの力。

 確かに爆発的に出力を上げるのはいいですがイカロスとの相性は?そして私自身との相性は?という事です、アダムが一目で見抜いた様に私は前々から普通の人間とはどこかが異なっていた。キャロルもそこに気付いていたのでしょう。

 

「多分ですが、全力を出した状態でオートスコアラーと拮抗させて……何かしらの現象を起こすとか?儀式だったりとかしたかったのかもしれませんね……まあ私が一体ぶっ壊したのでそれがオジャンになってそうな気もしますが」

 

 なので次の連中の動きがわからない、仕切り直しとしてまた何年も後に再度チャンスをうかがうのか、それともなんらかのリカバリーを施して計画を続行するのか。

 

「エルフナインちゃんは何かわかりますか?」

「僕はチフォージュシャトーの建設に関わってたのですが……わかるのはオートスコアラーがそのシャトーの中の何らかの機能とリンクしていた、ということぐらいしか……僕も錬金中は限定的な知識しか与えられていないので……」

「なるほど、破壊されるとやはりまずかった……のでしょうね。ところでそのチフォージュシャトーとやらは建物らしいですがどこにあるんですか?」

「世界の狭間、位相差空間に普段は存在する筈です……なのでこちらから攻め込むのはとても難しいかと」

 

 なるほどー……となるとまた後手に回る事になるでしょう……。

 

「いつの間にか凛音くんの方が我々より異端技術への理解が強くなってしまったな」

「とはいっても実行できるかは別ですよ司令、櫻井先生やウェル博士みたいに実際に動かせるのと理屈は分かるのはまた別ですから……」

「凛音さんもすごいですよ!あのキャロル相手に一歩も引かず、呪いの力を使いこなして!」

「呪い、とは」

「はい、凛音さんの持つギターはかなりの強い呪いが掛かっています、それこそダインスレイフには劣りますが……そこにライブ活動で集めて来た人々のイメージを哲学兵装として上乗せした武器として扱っているんです。例を言えば凛音さんが撃破したオートスコアラーのファラが持っていたソードブレイカー、アレも哲学兵装で剣に対して非常に強い効果を持っていた筈なんです」

 

 うーん、なかなかに将来有望な錬金術師です。この子が居ればS.O.N.G.は大丈夫でしょう!ですが、ふと敵意の視線を感じる。それはエルフナインちゃんの視界を通した……覗き見だ。

 やーっぱりキャロルの目が入ってますね、ちょっと脅かしてやりましょう。

 

「エルフナインちゃん、ちょーっとこっち私と目を合わせて欲しいんです。あなたはどうしてもキャロルに作られた存在ですからバックドアが仕掛けられていますね」

「……えっ!?そんな……そんなこと……ああ!!」

 

 思い当たる節があったようですね、例えば作業用に運用されていたとして、その作業進捗を確認するなんかに視界が見えた方が便利ですよね?

 

「……シャトーの建設中、報告もしてないのにキャロルはずっと把握していました……僕はなんてことを……」

「大丈夫だ、エルフナインくん。それよりも凛音くんはこれをどうにかできるというのか?」

「はい、しかしバックドア自体を完全に潰す事は出来ません……いやむしろやらない方がいいでしょう。むしろ見えているならばこちらからの交渉窓口として使える筈ですから」

 

 エルフナインちゃんと視線を合わす、今にも泣きそうな子の心を通るのはちょっと申し訳ないですがこれも後の為です。

 

『ハロー、キャロル・マールス・ディーンハイム。あなたの脳内にお邪魔しますよ』

『貴様なら遠からず来ると思っていたが随分早いご到着だ、さぞ満足だろうな!オレの計画に亀裂を入れて!』

『やっぱり効いてたんですね~!事を焦らなければチャンスはあったというのに、何故あんなことをしたんです?私なんか最初から触らなければその分余裕があった筈です』

 

 あくまで双方の思念を一方的に送り付けてるにすぎない、心を通わせている訳ではないので完全に頭の中を覗けている訳ではないですがこれもまたテレパシーの一つでしょう。

 

『貴様がそれを言うのか、ならば教えてやる。貴様が神の力を手に入れた時、何が起こると知っている?』

『そりゃあ地上に新しい神が生まれるに決まってるでしょう』

『その通りだ、神が生まれれば……神にまつわる多くの概念が息を吹き返す。死んだ、忘却された概念がな……すると世界は神代へと回帰していく、どんどんと世界の法則はぼやけて不鮮明なモノへと変化していくのだ!貴様の行いは今ある人間世界を破壊する!!』

 

 それは衝撃的な話だった、だが確かに神の存在証明が起きれば……神が決めたルールみたいなものにまで力が宿る事になるのは納得できる話、かつて神は死んだと定義して多くの科学者や哲学者が今の世界の法則を見つけて来た……それが崩壊していくと間違いなく大きな混乱が起きる。

 

 フィーネが月を破壊した余波で天変地異が起きるのと同じ様に、私が神になれば世界の再編が起きかねない。

 

『だからこそオレが世界を識る為に貴様の存在が!どうしても許容できなかったのだ!』

『それはどうも、してここは一つ停戦協定を結びませんか?私が神にならなくとも今年の冬になれば封印されたカストディアンの一体が復活する予定なんです。どっちにしろ神が現れるのは確定した様なもの……』

『それも知っている、だからこそ急いだのだ!それがこの結果だ!!オレは、止まる訳にはいかない!!貴様の言葉など聞くものか!神がこの地に降りるよりも先に決着を付ければいいだけだ!』

 

 クソ、こいつも大概頑固すぎるけれど……いい煽りを思いつきました。

 

『してそのチフォージュ・シャトー、パヴァリア光明結社のプレラーティとの共同開発の筈でしたよね。ワールドデストラクター、使い方によっては世界を滅ぼせるそれは当然自分達にも害となりうるでしょう……なのに何故協力したか、それは強制停止させられるバックドアをいくらでも仕込めているからです』

『そんなことは千も承知、だがオレの手にかかればそんな機能の万も億も等しくねじ伏せれる』

『本当ですか?私というイレギュラーを前にして同じ事をまだ言えますか??チャート崩壊しておりますよ?』

 

 イレギュラーとは何をしでかすかわからないからこそ、恐ろしいのです。

 ただの不安要素、脅威とはまるで違う事こそが恐怖なのです。

 

『あなたが仕組んだ事でしょう、シンフォギアを一度破壊してダインスレイフを埋め込む事は。ですが残念な事にその呪いを克服する手立てはこちらにはあります……賢者の石』

 

 激しい動揺と激怒が伝わって来る、姿見えてないけれど台パンしてそう。

 

『くそ……なんという事だ……』

 

 S.O.N.G.は錬金術に明るくない、けれど日本政府には今ではパヴァリア光明結社というお友達がいる。

 友達の友達までが盤面に乗って来るはずではなかったのでしょう。

 

『貴様が……貴様が関わってこれない様に工作までしたというのにこれか……なんという様だ』

 

 それもお前の仕業だったのか……してそもそもの失敗の原因は私がアダムと知り合いだった事で、そんなことを知ってる奴は誰も居なかった。秘密の関係がキャロルの計画を滅茶苦茶にしたのだ。

 

『マジで潰しておいてなんですが、エルフナインちゃん越しのパスは私達の手でどうにかなるものでもないので残ったままになってるんで用事があればそっからお願いします。まだ続けるのか、それとも一度立ち止まって見直すのか……それとありがとうございます、私の気づかなかった危険性について指摘していただいて』

 

 無力に咽び泣いている少女を見ないふりをする、そんな情けも私にはあるんです。

 

「はい、もういいですよエルフナインちゃん」

「え?もうですか!?まだ3秒と経ってませんよ!?」

「お互い意識が加速してたんでしょうが、やっぱりキャロルと繋がってたんでまだやりあうか、一旦止まるか決まったらエルフナインちゃんに教えろとだけ言ってやりました。とりあえずエルフナインちゃんは……知ってもいい情報だけ教えて貰いながらギアの改修を続ける感じでいいんじゃないですか?司令」

「そうだな、機密事項などに触れない程度なら……知ってしまえばむしろ欺瞞情報を流せるメリットもある。すまないなエルフナインくん……」

「いえ……可能性に気付かなかった僕が悪かったのです」

 

 一先ずこれで問題は一つ解決に進んだ、次は……。

 

「り……凛音ちゃん、光ってるよ!?」

「えっ!?」

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