萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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それが私の責任なんだ

 皆の前でつい光ってしまった。

 多分これは……私の格がランクアップしたせい……順調に人間離れをしてる証でしょう。

 とはいっても皆にどう説明すれば穏便に行くか脳を回転させる。

 

「偉大な相手というのは、輝いて見えるものです」

「それネットミームでしょ加賀美さん」

 畜生、小日向さんに秒でバレた!

 

「嘘ではありませんよ、レベルアップ・ランクアップしたんですよ。今の私は他人の認識を力として取り込めるので」

「それが……君の言う神に対抗する手段という訳か」

「はい、とはいってもただ単に私が強くなるだけ……もちろんデメリットはありますよ、他人からとんでもなく蔑まれるような事があればこの力は逆に私に牙を剥いてくる」

 

 それは本当のデメリットではない、実はそうなった場合でも世界を欺く大罪を背負う事で認識攻撃特化型にビルドを変えるリカバリー案も準備しています、それこそ世界中の全ての人間に一瞬で忘れ去られるみたいな事態にならない限りは打ち込んだ楔が機能する。

 

「けれどそれをやれる奴はそうはいません、今の仮想敵であるキャロルですら……それを実行しようものなら負けを認めたようなものですから」

 

 前哨戦でぶつかり合った時に流れ込んできたキャロルの思考、彼女を構成する記憶、父を無実の罪で奪われ、世界に欺かれたあの始まりの日。キャロルは世界を識る事を望んでおり欺く事が目的ではない。

 

 だから私に罪をふっかけて名を落とす様な事はしてくる時はキャロルが負けて自棄になった時だけ。

 まだ計画をリカバリーできる程度に逃げ道は残してある、退路を断たれた人間こそが最も危険なのだから。

 

「まあ……ノーリスクで得れる力などありません、もしも間違った時は……私は皆さんを信じているので止めてくださいね」

 

 あえてこうやって予防線を張っておくのも安心させる点では大事なのですよ。

 さて、やるべき事はやった。

 

 私の仕事はシンフォギアの強化完了まで、そろそろ帰り支度をする必要がある。

 少しばかりやるべき事が増えて、出来る事が増えて行って、距離が開いてしまっても友達なのだから、危機さえ乗り越えたならばまた好きなだけ遊べるのだから、今は抑えなければ。

 

 本当に?手に入れた力を、立場を、権力を簡単に捨てられるものなのか?

 今でこそ世界の為に動けている光明結社や風鳴機関が、手に入れた影響力をそう簡単に手放すとでも?

 

 ノーブルレッドの三人の未来も本当に保障されているのか?そして神となった後の私はどうなる?

 

 本当に人間に戻れると思っているのか?

 

 

 知るものか、今やらなければどっちにしろ明日はない。

 明日の事は明日が来たなら考えればいい。

 

 

 

「あのキャロルの意思を叩き折るとは、想像してなかったよ僕も」

「して……アダムとしてはまだやると思いますか、彼女は」

「そうだね、しかし彼女とて愚かではない。するだろうね策を練り直すぐらいは」

「なるほど……まあ要警戒ですね、爺さんはどうです?日本政府の掌握度は」

「生温く腐り果てた連中を皆更迭してやったわ。儂がいなくなったと見て他国に媚を売る連中も纏めて始末してやりたい所だ……が、完全に繋がりを断てば前大戦の焼き直し。この国の事こそを想う者だけが残ればよい」

 

 闇の三者面談、もとい今後の活動方針を固める為の会議が鎌倉で行われる。

 隠居決め込んでて元気のなかった訃堂の爺さんも最近はかなり活き活きとしててとても100歳越えてるとは思えない元気さ、今日も今日とて腐敗役人を突いて潰してそこに風鳴機関の手の者を入れ替えて、どんどん影響力を取り戻していくんですが思ったより甘ったれた役人が増えすぎていて政治家が足りないまである。

 なんなら他国のスパイまで居たらしいですが、今は国で争ってる暇ではないと向こうさんにも暗に伝えて、ガチの危機を共有しつつある。

 米国はあいも変わらずなんですが、一応それとなく大統領に直でアダムが危機を伝えたら核を使うとか言い出してちょっと一悶着あったとか……向こうの国の英雄願望は中々深刻でしょう……。

 

「で、キャロルから直で聞いた話なんですが、私が神になったり神が復活すると死んでいた概念や哲学も同時に復活してこの世の物理法則に影響を与える……との事ですがアダム氏、何か言い訳はありますか」

「それが悪い事だとは思ってなかったのさ、慣れ親しんだ空気なんだ、僕としてはね」

「そういうところやぞ、で……具体的にどんな概念が復活するかキリキリ吐きなさい」

「王権神授なんかが有名な所だろう、神から王である事を与えられる……それだけで支配力は格段に増すし、加えて民からの信仰も得られる。ただ今の時代に復活したところでなんだよね。後は災害関係が大きなところじゃないかな?コントロールしやすくなるよ供物や信仰なんかでさ」

 

 うーん絶対に言ってない事ある奴じゃないですかこれ、私が躊躇うとか尻込みしちゃうと思ってさぁ!

 

「わかったわかった……教えるよ、神罰が使える様になるよ。君がね」

「それは面白そうだ、不届き者を神が罰する。善き哉」

「この世で一番の不届き者は私ら一味ですよ」

 

 これでもまだ黙ってる、なら仕方あるまい……ここまで黙っていたいのは余程に不都合があるんでしょう、ここは一旦引いてあげましょう。そう決意するとアダムの気がちょっと緩む、あっこいつもしかして神になった私の力でちょっと世界を自分好みに支配しようと考えてたな!

 

「まあいいでしょう、で……門を開く方法はわかったんです?」

「鍵はバルベルデに有る、しかしディー・シュピネの結界によって建物までは把握できない。やるならば現政府を叩いてその安全圏に逃げ込ませなければならない……だが心証が悪いだろう?結社が直接叩くと。国連に介入させるにも異端技術、アルカノイズを使わせるとなるとそれもバレるだろう、関与が……ここが悩みどころさ」

 

 なるほど……あくまで「味方」という立場になってしまったから今までのマッチポンプの様な立ち振る舞いが出来なくなった、悪行はその分帰ってきますから論外ですけれど。

 他人を焚きつけての回収は……気が引けますね、独裁軍事政権相手であっても。

 

「大地の門に関しては当てがあった……古代の文献を辿った先、月読神社に地よりいずる神の門、地脈を利用した儀式が古代に行われていたと」

「……大したものだね君達の情報網も、さすがに辿り着けなかったよ、地域に根付いた信仰までには」

「近頃の者は己が住まう地の事すらも疎かにする。かつてはそこで生まれ、そこで死んでいく事こそが常識であったのだ」

 

 なるほど年寄りの知恵ですね、これで最悪地球からエネルギーを吸い出せる……けれど。

 

「そうだねえ、神に対抗するだけの力を全てこれで賄おうものなら大地は荒れ果て、勝った後も飢餓と天変地異さ。だから主軸とするべきは天の門さ」

「となるとティキを回収しなきゃならんわけですが……国家転覆なんてやろうものなら流石に私へのイメージが警戒になってしまいますからねぇ……」

 

 困った困った……こうなると難しいけれど……。

 

「人道支援という手を使う、幸いにも予算ならば潤沢とある。これで現地に支援者を送り込み、それを戦火に巻き込む事で介入の大義面分を得る」

 

 ……!それはまるでクリスの過去の焼き直しではないですか!!他人を犠牲に……犠牲にしろと!

 

「何、送り込むのは風鳴機関の手の者。死なずに人質になるだけで構わぬ、覚悟をしている者を使う分には構うまい」

「良い考えだ、覚悟をしている者を使うというのは。さすがにこれならば無いだろう?文句は」

 

 覚悟を、そうなると分かっていて向かうというのなら……ならば私は許しましょう。

 

「極力死なない人材を選んでくださいね」

「そうだの、儂自らが行けば示しもつく」

「えっ」

「それなら放っておく訳にもいかなくなるね、日本政府も。けれど大丈夫かい?」

「心配は不要、死ぬならそれまでよ」

 

 マジで言ってるんですかこの爺さん!?司令もびっくりすると思うよ、突然鬼ジジイが人道支援とか言い出して独裁国家に捕まりにいくんですから!?

 

「わかりました、確かに誰とも知れん相手を巻き込むよりは遥かにいいです……しかし政府軍の兵士達も殺し過ぎない様に……彼らにも出来れば信者になっていただきたいので」

 

 後日、風鳴訃堂は新たに立ち上げた法人の親善大使としてバルベルデに行く。

 当然ながら日本政府は泡を吹き、混乱に包まれた……そして当のバルベルデでは弾圧される人々に潤沢に物資を行き渡らせ、政府軍やレジスタンスを圧倒的な財力で買収して寝返らせ、瞬く間に一大勢力が誕生……。

 

 危機感を抱いた独裁政府がパヴァリアに泣きつくまであったとか……その上で出来たのが訃堂抹殺計画ですが、それも結社の手の内、おまけにその計画すら政府内部に生まれた訃堂シンパによってリークされる始末。

 

 それを幸いとレジスタンスが政府軍に訃堂とその法人の支援の良さを語り離反を促し……半月も立たずにバルベルデ政府要人が結社に保護を求める為にディー・シュピネの結界で隠された建物に逃げ込んだ。

 これまで悪徳を積んできた連中なんで簡単に許すわけにはいかないですが、あまりにも哀れなので心を入れ替えて善行を行う事を条件に降伏を許した。

 

 そして一週間と待たずにティキを確保、ついでにバルベルデは救われた。

 マジで偉人と化した当の本人にコメントを頂いた所「果敢無き哉……人心の離れた者共など恐るるに足らず」との事。

 なんでこれまでこんな怪物が隠居してたんです?というかこういった善行とかはこれまでなさらなかったので?

 

 あまりにも電光石火の事態で次のライブに向けて抗争を練って私達や、まだどう出るかわからないキャロル対策に特訓をしていたS.O.N.G.御一行もびっくり。

 

『いや、本人が任せろって言ったから送り出したんですよ。てっきり向こうと交渉して目当ての聖遺物だけ貰う予定だったんですよ!知りませんってバルベルデの英雄フドー・カザナリなんて!』

『そうはいうがな……親父があんなことして兄貴達からどうなってるんだって問い合わせがな……それと国連からも……』

『当の本人に説明させりゃーいいでしょうが!』

 

 私はとんでもない奴を味方につけていたのかもしれません……流石は司令を不肖の息子と呼ぶだけある怪物です……。

 して回収されたティキは起動後、瞬く間に私をライバル視しだした。

 

「アダムは渡さないんだからねー!」

「いや私も恋愛感情は抱いてませんからね!仕事!仕事仲間ですから!」

「でもアダムはいっつも凛音の事ばかり考えてる!!」

「そりゃ私が切り札ですから!」

「ティキだって神の力纏えるもん!!!」

 大昔にもフィーネと争ってた時に神の力を宿す器候補だったらしいティキ、その役目を取られた……と思ってるのも対抗意識の原因なんでしょうが……やりづらい!

 

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