萌え声クソザコ装者は憧れたんだ   作:青川トーン

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少女の本音

 闇の中に私は浮かんでいた、儀式は……いえこの計画は失敗だった。

 最初から、私の中にこそ倒すべき神が宿っていた。

 

『どうだ?自ら畏れる者の復活を手助けをしたのは?』

『糞が、翼さんに、皆に触れさせるものか』

 

 必死にコントロールを取り戻そうと、思い浮かぶ限りの行動をする。

 しかしそれは空を切るだけ、何を念じようと、手足を動かそうと何も変わらない。

 

 今、現実でどれだけの時間が経っているのかすらもわからない。

 

 それでも、神の力は完璧ではない筈。

 シェム・ハの力の大半は南極にある筈、まだどうにかなる、リカバリー可能な筈だ。

 

『何故だ?何故我を受け入れない。このまま拒み続けてもお前は永遠に孤独なままだ』

『孤独?どこがですが!私には友人がいる!守るべき人がいる!』

『しかし、お前とは真の意味で心は繋がっていない。人の意識の中には景色があるものだ、バラルの呪詛によって分断された今でなお深層心理の中では。確実に他人の影響を受けた景色がある筈なのだ、それがお前の中身はどうだ?この暗黒と虚無……我ですら寒気がする。どんな孤独な者でも必ず光があるというのに』

『出まかせを!あなたが光を覆い隠しているだけだ!そんなことは』

 

 

 私が思い浮かべるのはこれまでの事、苦しみも痛みも歓びも確かにある、存在する筈なんです!

 

『……お前はずっとこの暗闇の中で輝いている様に振舞っていた。外に光を求めて手を伸ばし続けていた、わかっている筈だ……お前は天使として、我が眷属としてもイレギュラーなのだ。バラルの呪詛によって統べるべき人々に声をかけることは出来る、確かに肉体的に触れ合う事は出来るだろう。しかしそれはシステムの上でしかない、お前は……お前を信仰する者達の名を全てを覚えているか?』

『覚えているに決まっているでしょう、一人たりとも同じ人間はいない!その一人一人に違う意思があるのですから!』

『普通の人間は、そんな事まで覚えられない。例えバラルの呪詛がなくても、天使といえど記憶量には限界がある』

 

 そんなことはどうでもいい、とにかく制御を……

 

『はっきり言おう、お前は……必要な機能を維持する為に表面上の感情を取り繕っているだけにすぎない。本当は友愛も親愛も感じてなどいない……これまで見て来た者の中で最も孤独で哀れな存在だ』

 

 

 なにが、何がわかるというのですか。

 

『それすらも、取り繕った感情だ。お前の内にあるのは……果て無き飢え、愛を知らぬが故の虚無……だから救うのだ、我が。でなければお前が生きた証は残らない、この星にも、この宇宙にも……何者とも繋がらない真なる孤独は世界の記憶からさえも消え去るのだ』

 

 だから?だからどうしたというのです!私なんて消えてなくなろうとも!皆が幸せに居られるならば!

 

『それは本当にお前を、お前だけを信じた者に対して言える気持ちなのか?』

 

 ええ、言えますとも!どうせ忘れるのでしょう!ならば何を言ったってかまいやしません!

 私なんて所詮消え行くだけの存在だった!だけれど世界の為に、明日の為にお前を諸共に消し去れるならば価値があった!意味があった!

 

『お前に光を与えた者に対しても、それは言えるのか?風鳴翼に対しても、それを言えるのか!悲しませるようなことを!傷つける事を平気で!』

 

 そんなこと、できますよ。

 どうせ消える傷なんです、むしろ上等ですよ……どうして私はああじゃない?

 知ってるんですよ、訃堂のジジイが実の父だって、でも心の中では八紘さんこそが本当の父だと思っていて!

 愛されていた!例え忌子、鬼子と周囲に陰口を叩かれようとそれを決して顔には出さず、相応しい娘であろうと努力してきたのだと聞いてしまったんです!

 

 ライブの惨劇で山ほど死んだ人達も、生き残った人達も決して翼さんを恨みはしなかった!

 それこそ生き残った人にこそ恨みをぶつけてでも翼さんは悪くないって守ってたんですから!

 

 私の周囲にはそうやってでも愛したい人はいなかった!愛してくれる人も!

 なのにのうのうと生きている!惨めですねぇ!哀れですねぇ!悔しいでしょうねえ!

 

 誰も彼もが愛してくれる翼さん、愛されて、愛に応えて努力し続けて来た翼さん!

 なんて美しいんでしょうか、羨ましい、羨ましくて泣けてくる!

 

 でもおかげで私はこの世界にはちゃんと愛があると、幻想ではないと信じる事が出来た!

 ならば、ならばこそ諦める事もできた!

 

 プラスマイナスの総量が釣り合う様に、私が不幸なだけだった。

 そうやって心を保つ事が出来た!

 

『それが本心と言っても、まだあるだろう。どうせそこまで言ったのならば最後まで言え』

 

 ええ、だから……だからこそ翼さんを越えたいと思った。

 観察して、研究して、分析して……何もかもを知り尽くしてそれ以上の存在となる事、それでこそ私は救われるのではないかと思いました。

 

 シンフォギア装者となったのも研究の一環です、戦士としての技量もあの人を越えたかった、訃堂が私を風鳴の後継者としようとした時は笑みを隠すのが大変でしたよ!あの司令やら翼さんさえも抑えて私が認められたんですよ!?おまけにアダムが私をアイドルにして神にしようなんて言い出した時は嬉しくて仕方なかった!

 

『普通の人間ならば当然、そんな事は受け入れられぬ。お前はやはり』

 

 よーく見てますよね、私は鬼子。ファナティクスとして活動してる時は本当に心地が良かった、私の一挙一動が世界を支配する……なんて気持ちいいのでしょう!我慢我慢って随分と良い子ぶってきましたが……。

 

 本当の所、私は随分と汚らしい支配者だった。

 

 ルシファー……傲慢にも神に成り替わろうとして地に堕とされた者、その末路こそが相応しい。

 あなたも私と一緒に地獄に堕ちるんですよ。

 

『精神の自死作用だと……まさか!?』

『あなたと一体になってるならば……私と一緒に死に向かう事だって出来るでしょう?あいにく一度死ぬのは経験しているんです』

 

 外から見れば力に耐え切れず自滅した様にしか見えないでしょう。それでいい、今この場で共に消え去れば……時間は稼げるでしょう、代替プランを立てるだけの時間はあるはず。

 

『それでいいのか、お前は!自分の力で風鳴翼に勝つ事もできず!負け犬のまま死んでいく事が望みなのか!』

『いいも悪いもありませんよ……作り物の人気で勝ってしまった以上、もう勝負の舞台に立つ事など』

 

 

 

「そんな事はない!凛音!」

 

 翼さんの声?どうしてこんな所に?

 

『お前の心の声を聞かせてやったのだ、何も伝えようとしないお前自身の本音を!この我が!』

 バカな!なんでそんなことを!!

『見てられぬからだ!!こんな孤独な者を救うためにこそ我は!全てが一つとなる事を望んだ!』

 

「お前が、お前がそんな気持ちを抱えていた事を私は知らなかった!確かにそうだな、私は……私は幸せ者だ、愛してくれる人々に恵まれ!そして……そこまで想ってくれるお前に出会えた!」

 

 ふざけるんじゃありませんよ!!これじゃあ私が道化じゃないですか!!

 それに……こんなことを言われたって嬉しくなんてない!!

 

「翼さん、騙されないでください。惑わされるんじゃありません!!これはこいつの出鱈目……!私ごと討つんです!今ならばまだ不完全……倒せる筈です!」

「言われなくとも消し飛ばしてやるとも!!諸共になぁっ!!」

 

 聞こえてくるのはキャロルの声、ありがたい、いやめんどくせえ事をしてくれる。

 空に浮かべるは小型の太陽、相当量のエネルギーを使ったのか……核爆発ぐらいの威力は平気でありそうな火球を出している。

 

 これを撃たせればとてもではないが被害が出過ぎる!!

 

 ワイヤーを射出して止めようとするが遅い、ゆっくりと光は落ちてくる。

 それを受けて止めるのは私の体。

 

『して……器を破壊されるのも面倒だ。我が力の一端を見るがいい』

 

 瞬間、黄金の輝きは白く染まり、まるで凍り付いたかのように温度を失い砕け散る。

 

「馬鹿な!!黄金錬成を、消し去っただと!?」

「錬金術といえど所詮はこの世界の摂理に従ったものでしかない、我ら神の領域には届かず……そして」

 

 私が放ったワイヤーの起動が上書きされる、それはキャロルを拘束し、突き刺し、力を同化していく。

 脳裏に浮かぶのは錬金術の使い方、キャロルの記憶、感情、そして計画などの全て。

 

「ほう、記憶の焼却でエネルギーを生み出すか……だがそれは、やめておくがいい。お前という個が消えてなくなるのは損失だ」

「知ったような口を利くな……うぐっ!!!」

「キャロルちゃん!!やめて!凛音ちゃん!」

 

 いや私じゃないけれど、でも止める理由なんてないじゃないですか。

 だって放っておけば害するんですよ、私達を。

 

「悪いですが、キャロルには退場して貰いましょう……巻き添えはごめんでしょう!」

 シェム・ハの力を流し込み、凍り付かせる様にキャロルを白銀に包む、死にはしませんし意識を奪うわけでもありませんが、とりあえず動けなくはしておく。

 

 ごく自然にやり遂げてしまい、私は……ああ。

 人でなしだ、やっぱり。

 

『ようやく、ようやく我を受け入れたか』

 でも、嫌ですね。

 

 イラつく、なんであなたが、神なんかが私の気持ちを左右するんですか?

 私のやりたい事は、こんなことではないと理解している筈ですよね?

 私の本心だって見える筈です。

 

 ならば手出しは無用です。

 

「凛音……お前は……」

「どうして笑ってんだ……!おい!」

 

『まさかお前は!やめろ!取り返しがつかない事はよせ!』

 狙うは月、手にするは呪われたギター「ラグナロック」こいつが……こいつだけが私の心を本当の意味で理解してくれる。巨大なアンカーを月へと放ち、打ち込んだ。

 

 そして月遺跡へとシェム・ハの権能でアクセス、そこには神の遺志とも言える者がいた。

 彼が、彼こそが遥か昔にバラルの呪詛を作った者であり……フィーネが追い求めた者。

 

 流れ込んできた情報を処理した上で彼に伝える。

 

『手出しは、無用です。決着をつけるのは私達がやりますから』

 ここから先は神様が決めるんじゃない、私が……私自身が決める。

 

『わかった。ネットワークジャマーを解除しよう……けれど君は、君はいいのか』

『いいも悪いもありません、これは私の我儘……まあ精々フィーネにはちゃんと謝ってあげてくださいよ』

 

 この時を以てバラルの呪詛は機能を停止、シェム・ハは全ての人々を束ねる権限を取り戻した。

 けれどそれを使わせる私ではない。

 

 お笑いですね、私を取り込む筈が……逆に私に引っ張られている。

 無駄に私なんかを憐れんで!救おうと手を伸ばしたからですよ?バカな神様です……。

 

 深淵を覗く者は、その足を滑らせない様に気を付けないと!

 

「くくく……あはははは!!私は、ついに神になりましたよ!本当の神に!これで……これでようやく並べる……翼さん!!こうして神となった今こそ、ようやくあなたに挑戦状をたたきつけれるものといえるでしょう!!」

 

 夜空が赤く染まる、ファナティクスが広げて来た熱狂の概念が世界を覆い尽くす。

 

「凛音……どうした、どういうことなんだ!!」

「私は……あなたが妬ましかった!疎ましかった!!あなたを越えたかった!!けれどそれは……簡単に出来る事ではない!!邪魔をする柵があまりにも多すぎた!あまりにも遠すぎた!けれど今ならば!誰が許さなくともほかならぬ神である私がそれを叶える事ができる!!」

 

 ああ、生きていてよかった。

 とても気分がいい、私を妨げ、縛り付けるうっとおしい全てが平伏した!

 

「翼さん、歌いましょう。命を懸けて、私とあなた……どちらかが死ぬまで!この世界というステージの上で」




Q.どういうことだ!
A.歌で決着を付けろ!
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