「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
空白の数ヶ月間の物語…その前章をお楽しみください。
act.0「A New Genesis(影の艦娘)」
―――――夜の高速道路を彷徨う無数の魂たち。
時代が変わっても色褪せることのない、「最速」の称号。
エキゾーストサウンドの咆哮、闇夜を切り裂くヘッドライト、限界まで踏み込ませるアクセル。
今、都心環状線に現れた新たなる魂。
何物でもなかったその魂も、ここに足を踏み入れた瞬間から…走りの本能に目覚めるのである。
そして、その航空巡洋艦の名を持つ少女もまたーーー
推奨BGM:Remedy feat.Kanae Asaba(from beatmaniaⅡDX24 SINOBUZ)
―――深夜0時、都心環状線。
首都環状でも屈指の、バトルが盛んなエリア。
そこは、スピードに飢えた狼たちの楽園となる。
浜崎橋JCTの左ヘアピンを1台の白いNBロードスターが走っている。
「やっぱりスゲェところだなあ首都環状って」
走り屋の雰囲気だけをかましているNBロードスターのドライバーはそう呟いた。
「今考えてみても、こんなアップダウンの激しいコースがまさかサーキットになるとは思わなかったよ。まあ、思うが儘に爆走してみたかったのは事実だけどな」
助手席の男がつぶやく。
首都高…その都心と神奈川の一部のエリアは、首都環状エリアと呼ばれている。
路線名でいえば、都心環状線、向島線の一部、深川線、台場線、湾岸線、羽田線、横羽線、大黒線。
3年前に開業したバイパス道路によって首都高全体の交通量は大きく減少。
それをきっかけに、ある都市開発事業の企業によって首都環状エリアが買収。
結果として首都環状エリアは表向きこそ全面的な一般道でありながらも、大規模な都市型サーキットと生まれ変わり、それ以来多くの走り屋たちの楽園と化していた…。
「そういえばさ、最近首都環状の勢力図が変わってきているらしいぜ」
運転手のドライバーがそう呟いた。
「勢力図?」
「4年前にさ、首都環状最速となったドライバーがいて…そのドライバーが『最速』と呼ばれるようになってずっと硬直状態だったんだよ」
「硬直状態って?」
「4年前に首都環状最速と呼ばれるドライバーが生まれてから、首都環状じゃ新たなドライバーが参戦してきたり、逆にチームや走り屋ごと去った…まあ淘汰されたドライバーが多かったんだよ」
「へえー」
「だけど首都環状が正式にシティサーキットになってからは…あまり人の出入りも少なくて、結構落ち着いていたんだけど、最近になってある走り屋がチームの奴らを軒並みぶっ潰しているって話だ」
「ある走り屋…?って、あれ?」
助手席の男が後方から光が大きくなっていることに気が付いた。
「おい、後ろから何か来てねえか?」
「は、速い…!?まさか、横羽線から?」
合流から新交通システムの効果へと走っていく中で、バックミラーの光がどんどんと大きくなる。
一番左の車線を走っている中でも、バックミラーの光源は大きくなり…次の瞬間には、その光源の元となるマシンがやってきた。
NBロードスターを追い抜いた一番右の車線を走行していたそのマシンは…水色の、FL5シビックだった。
「「!!」」
250キロは軽く出ている中で、FL5シビックはフルブレーキングしたかと思いきや一番右の車線から一番左の車線へタックイン。
FFならではのオーバーステアで一気に汐留S字コーナーの最初のコーナー…左直角コーナーをアウトからインへ。
かと思いきや、次の右直角コーナーへも一気にマシンをタックインさせて一番右の車線へ。
僅かながらもマシンを滑らせつつ、FL5はリズムよく駆け抜けていく。
そして200キロオーバー以上のスピードを維持しながら…汐留JCTを右へ、都心環状線へと駆け抜けていく。
その速さ、ものの数秒。
FL5シビックはそのまま汐留トンネルへと消え、NBロードスターはあっという間に置き去りにされた。
「み、見たかよ…何だあれ?」
「ああ。アレは…間違えない」
「あの車、俺でも噂は聞いたことがある。あれが今話題の…」
「「究極の不沈艦!!」」
NBロードスターのドライバーと助手席の男はそう互いに、「例のドライバーである」ということを認識してそう口にした。
そしてそう口にする時点で…不沈艦と呼ばれたマシンは、瞬く間に汐留トンネルのブラインドコーナーの先に消えていった。
「………」
―――一方、こちらはFL5シビックのドライバー。
FL5シビックは何事もなく汐留トンネルを抜け、そのまま250キロ以上のスピードで都心環状線を疾駆していく。
だが当のドライバー…「あの時代」の服を着た、ボーイッシュな女性ドライバーは何も考えていなかった。
今はとにかく走り込んで、強いドライバーと戦って腕を磨きたい…それが彼女の本望。
速くなりたいというよりは、首都高のドライバーたちを倒して…「一番になりたい」。
それが彼女の本望。
だが、そんな彼女の本望も最初から存在したという訳ではない。
「(速くなりたい…というよりは、何で走ることになるのかわからなくて、知りたくて走り始めて…ここまで来ちゃったなあ)」
銀座出口付近のS字区間手前でアクセルリリース、ブレーキを踏み込んでFL5シビックを減速させる。
だがブレーキングの最中、FL5のドライバーはふとそう思っていた。
速くなりたい、というよりは…シティサーキットを何故走り屋が攻めるのかを知りたくて、何なら「制圧したい」という思いが強くなって…ここまでずっと走り続けてきた。
だが、彼女の心の中は満たされない。
走り屋たちを倒すことでしか、彼女の心は満たされていないのだった。
銀座出口付近のS字区間をタックインさせつつFFドリフトを僅かに決めつつ2つのコーナーをあっという間に立ち上がっていく。
FL5シビックはその強大なターボエンジンのパワーをフルに発揮し、銀座から新富町までのストレート区間をアクセル全開で駆け抜けていく。
スピードメーターはあっという間に300キロ以上と言うスピードを発揮し、そのまま闇夜に溶け込むかのようにFL5シビックは駆け抜けていくのだった。
全てを失った少女、は時雨だけではなかった。
「箱根の時雨」こと時雨、「ゼロヨンチャンプ」こと雪風、そして…「究極の不沈艦」こと最上。
後に「ザ・スピリッツ」でグループCカー同士による、「ゴジラ」、「ガメラ」、そして…「ウルトラマン」による戦い。
時雨不在の空白の数ヶ月間に首都環状で何があったのか?
そして、首都環状でのバトルの先に待ち構えるものとは一体?
戦いは、まだ…終わっていない。
これは、時雨と奈美子が首都高を離れていた空白の2ヶ月間の間の物語。
「最上」の名を持つ少女の物語が、首都環状からはじまる。
COMING SOON。