「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で-   作:カービィ改二

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第11話です。
ここ最近仕事とかの関係で執筆ペースが落ちていますが、何とか投稿していきます。
最上に迫る第3のPhantom9の影。


act.11「Dark Cloud(立ち込める暗雲)」

RX-8にさらに手を加えたことでギアをさらに上げた最上。

幻惑の白き妖精、ミッドナイトローズを倒したことでさらに名は知られていく。

そんな中で、<Phantom9>のうちの「黒崎三兄弟」の最後の1人が、最上を待ち構えようとしていた…

 

 

 

―――幻惑の白き妖精やミッドナイトローズを倒した2日後。

最上はほぼ毎日チューナーのオヤジの元に通い、都度車にチューニングを施していた。

お金自体はあるのでモンスターに仕上げようと思えばすぐにできるのだが、それをしないのは最上自身が車に徐々に順応していくことの大切さをわかっていたからかもしれない。

今回のチューン内容はボディのスポット溶接とポート研磨並びに排気量アップ、ECUの高性能化。

現状の馬力としては315馬力と言ったところか。

この日、最上は横羽線を経由して大黒PA、湾岸線へと駒を進めていた。

 

「(よし、また勝ちっと)」

カーナビに表示された「WIN」の文字を確認し、RX-8の速度をゆっくりと落とす。

川崎浮島から羽田空港までのトンネルを220キロで走るRX-8は、その速度をゆっくりと落としていた。

国内唯一といっても過言ではない、20キロ以上の3車線の超高速区間。

一般車両も少なくないが、同時にとんでもないパワーを要求される区間である。

ターボを後付けされたRX-8は240キロまでは速度が伸びる。

スタート直後に多少差を付けられても、最高速勝負では勝つことも増えてきていた。

それほどなまでにこの車のチューニングは施されている。

たしか足回りとしてスタビライザーを交換し、インタークーラーとタービンを高性能化したといっていたような気がする。

本来NAエンジンのRX-8だが、ボルトオンターボを取り付けていたこともあってストレート区間が苦痛にならなくなっていた。

カーナビ上にはまた青い矢印が数個表示されている。

この調子なら今のライバルたちも次々と蹴散らすことは出来るだろう…最上はそう思っていた。

だがそんな中で、クーリング走行のために60キロを維持したままで走っていると…トンネルを抜けようとしたところで1台のマシンが迫ってきているのを確認した。

 

推奨BGM:天邪鬼(from beatmaniaⅡDX29 CastHour)

「(1台来る…)」

湾岸環八近くでライバルエンカウント。

どうやらある程度チームメンバーを倒してきたことで、そのリーダーがお出ましのようだ。

一番左の車線を走っていたRX-8の後方にやってきたのは…赤色のVAB型WRX。

普通の走り屋よりは速いのかもしれない…最上はそう思った。

速度が60キロになったところで、後方に迫ってきたWRXがパッシングしてくる。

 

「(セナ足…?なんだろそれ?)」

最上には通り名の由来が分からなかった。

「COMMANDER」の「セナ足ギンジ」と書かれている。

セナ足とは何なのか?

走り屋でありながらドラテクの知識が疎い最上にとってはそれがよくわからなかった。

だがともあれ、相手が勝負を仕掛けてきた以上受けて立つというのが走り屋というもの。

そういうルールについては何度もバトルをこなしているうちにわかってきた。

とりあえずバトルを受け付けようとしたところで、カーナビのカウントダウンが始まる。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「―――!」

GOサインと共にアクセルを全開に踏み込む。

前方の長いストレート区間がどこまでも続いている以上、ここではマシンパワーがものを言うのは言うまでもない。

だが、次の瞬間。

 

「…!」

ブロックを仕掛けようとしたところで、右サイドからWRXが追い抜きにかかる。

どうやら加速勝負では向こうの方が上のようだ。

空港中央方面へと走る2台は、そのままの勢いで加速し続ける。

長い長いストレート区間という事もあり、メーターの速度は60キロから200キロまで加速していく。

 

「(速い…でも!)」

空港中央出口付近のアーチ付近を通り抜け、220キロオーバー。

このまま加速差でWRXがリードを取ろうとする…のだが、意外なことにRX-8はWRXと一定の距離になったところから追いつき始めていた。

空港中央の先のトンネルの時点で、速度は240キロまで加速する。

RX-8はどうやら最高速の方では上なのか、WRXの後方へと忍び寄っていた。

 

「(スタートこそ頭を取られるけど、ついていけてる…いい車だね、これ)」

格上のマシンにもパワーで追いつけるようになっている。

それだけでも大きい。

湾岸線、横羽線区間はスイフトスポーツの時は大きく苦戦を強いられてきた。

RX-8に乗り換えてノーマルで走っていた時もそうだ。

だが今は違う。

エンジン回りやターボと言った単純なパワーだけでなく、ミッションやクラッチと言ったパワートレイン部分にもしっかりと手が加えられていることによって、格上のマシンにも根負けはしなくなっている。

そしてトンネルの中間部…下り坂と上り坂の境となる場所において、RX-8は真ん中の車線を走っていたWRXを左サイドからオーバーテイク。

追い抜き自体はあまりにもあっさりと決まってしまった。

 

「(…油断しなければ勝てるのかも)」

これまでのマシンと比べて明らかにRX-8はパワーがある。

スイフトスポーツとは比べ物にならないくらいのパワーを自分は得ている。

そう考えると、多少格上のマシンであっても追いつけない…とは限らないようだ。

上り坂区間でも230キロオーバーを出し続けるRX-8。

後方のWRXの姿は徐々に小さくなっていく。

 

「(あとは、油断せずに)」

トンネル先の右高速コーナー。

左車線を走っていたRX-8は、トンネルを抜け出したところで徐々に右車線へと進路を委ねる。

アウトインアウトのラインを描くように、アクセルを全く抜かずにコーナーへと飛び込んでいく。

普通であれば250キロオーバーのコーナーリングは怖いだろうが、そんなこともお構いなしに最上はハンドルをゆっくりと曲げつつマシンをコントロールさせることが出来ていた。

軽量なロータリーターボマシンであるRX-8は、コーナーリングスピードで更に差を広げる。

前方の一般車両を視認しつつも自分の走行ライン…一番右の車線から一番左の車線へと膨らむそれの上に、マシンが存在しないことを瞬時に判断しつつアクセルを踏み続けていく。

 

「……」

高速右コーナーを抜け、上り坂ストレート区間。そして上り坂の先に東海JCTの分岐高架が見えてくる。

その時点でRX-8は260キロを出しているが、バックミラーのヘッドライトは確実に小さくなっていた。米粒程度まで小さくなっている。

そうなるとカーナビに表示されている相手の体力ゲージもどんどん減っていき…すぐに空っぽになった。

空っぽになるのと同時に、カーナビには「WIN」の文字が表示される…こうなるとやはりというべきか、最上は勝利した。

そしてそれを最上が東海JCTの高架寸前で確認したところで…RX-8はクーリング走行のためにアクセルを抜いて減速していく。

 

「(また、1人っと)」

最上にとって正直勝ち負けはどうでもよかった。

ただ、何故ここを走るのか。

それを知りたいがために走り続けている。

沢山のドライバーを倒していくという快感…それは見いだせそうだ。

だが、それ以外にも何かがある。

それを、自分は知りたいし…まだ見出すことは出来ない。

 

そんな思いを抱きつつも、最上は再びRX-8を湾岸線北行き方面へ走らせていく。

 

 

 


 

 

 

―――湾岸線大井JCTから東京港トンネルへと向かい、そのまま湾岸線を直進、深川線へ。

深川線から都心環状線外回りへ。

適度にPAで休憩を取りつつも、ロングランの中で最上は一人また一人とライバルたちを倒していく。

 

「(浜崎橋から都心環状線外回りへ…スピードが乗ったこの車でも、段々と慣れてきたから怖くはないね)」

以前はスイフトスポーツで攻めていた都心環状線だが、RX-8に乗っている中で段々とこの車での攻め方が分かってきたように思える。

スイフトスポーツでは明らかに力不足だったところも、今ではある程度のゴリ押しが出来るようになっている。

そう考えると、自分は走り屋としてレベルアップが出来ているのではないだろうか…とも思うようになっていた。

そんな中で芝公園入口付近を70キロで走るRX-8の後ろに、1台のマシンが勝負を仕掛けようと現れた。

 

推奨BGM:Dragontail Butterfly(from GuitarFreaksXG3&DrumManiaXG3)

「(ハチロク…?)」

バックミラーに映ったマシンはかなり派手にカスタムされた、ピンクと黒のツートンのAE86のレビン…チーム名は「ROLLING GALS」。

そのチームのリーダーである「ローリング娘1号」が勝負を仕掛けに来ている。

どうやら、ここに来て女のドライバーであるようだ。

おそらく芝公園から入ってきたに違いあるまい。

 

「(女かぁ…)」

自分と同じ女のドライバーはこれまでに何度か遭遇したことがある。

確かに自分も女ではあるからこそ、油断はできない。

同性でも異性でもここは走り屋という条件…つまり車でバトルをする者である以上、性別や年齢は関係ないのだ。

加えてここまで負け知らずで順調に替地進んできたからこそ、易々と負けて連勝記録をストップさせるのもどうかと思う。

適度に休憩をはさみつつ、これまでに何度も何度も様々な相手を倒してきているのだ。

どんな相手でも見くびるつもりはないし、きっとこれからも見くびらない。

それはやはり、例のドライバー…「久遠のポラリス」の存在もあったからだろうか。

 

「(まあ、勝負を仕掛けられたなら…いいよ)」

最上としては相手からの勝負を全然受け入れるつもりだった。

走り屋という一定の決まりがある程度わかってきた以上、そのルールに従うまで。

そう思ったところで…一ノ橋JCTの分岐手前において、カーナビのカウントダウンが始まろうとしていた。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「……!」

前方に右直角コーナーが迫る中でアクセルを軽く踏み込む。

半分程度の踏み込みだが、それはやはり前方の右直角コーナーに対処するためだ。

一応前方はクリアな状態だが、コーナー出口に何があるかはわからない。

下手をしたら一般車両が待っているかもしれない。

そう思った以上半分程度しか踏み込んでいなかった。

だが、ハンドルを右に曲げていたその時だった。

 

「(外から…!)」

RX-8よりも軽量なハチロクレビンが、隙を見たのか…小回りを生かすように攻めてくる。

アウトから一気に攻めてきたハチロクレビンは、そのまま最上のRX-8の左サイドスレスレを走るように攻め込んでくる。

だが最上もハンドルを生差をしつつもコーナー脱出寸前にアクセルを全開まで踏み込み、マシンを加速させる。

素の性能自体はRX-8の方が上という事もあり、何とかサイドバイサイドになっていた。

 

「(…やるね。でも、決して負けない相手じゃない…!)」

一方の最上も追いつかれたとはいえ、動揺はしていなかった。

狭い環状線においても、まだまだRX-8の性能は手に余るほど…と言うほどではなかったのである。

馬力も300馬力級であり、もっとチューニングしたマシンと比べると…まだタイヤもグリップしているし、スピード領域もまだ自分の目で追いつけるレベル。

狭い直線区間でアクセル全開で踏み込んでも、まだ自分の手の内にあるという事を考えると…最上には幾分か余裕があった。

飯倉トンネルから谷町JCTへと2台は走るが、2車線の長いストレート区間でRX-8とハチロクレビンはほぼほぼサイドバイサイドの状態を維持していた。

 

「(いくら速いからって、あの車なら…)」

最上はローリング野郎のドライバーたちとバトルをしたことを思い出していた。

あの時はスイフトスポーツだったが、それでも勝利できた。

今の自分はRX-8だ。

当時とは比べ物にならないくらい…馬力としては2倍くらいの速さがある。

だからこそ、というべきか…対戦相手がハチロクである以上限界があることはわかっていた。

ストレート区間ではスピードの伸びが違う以上、こちらにはいくらでも有利な条件。

そう思う中で、最上はアクセルを踏み続ける。

アクセルを踏み続けることでマシンの性能差が徐々に出る中で、RX-8はハチロクレビンに対してリードを取ろうとしている状態だ。

 

「(ようし、この調子だ!)」

後方を走るハチロクレビンに対し、谷町JCTでRX-8はハチロクレビンと更に差を付けようとしていた。

どうやらストレートスピードでは明らかに最上の方が上。

良くも悪くもハチロクというマシンである以上、どうやら最高速度ではストレート区間で頭打ちになってしまうようだ。

220キロ以上というスピードを出し、2台はそのまま谷町JCTから赤坂方面へ疾駆する。

2台の車間距離は徐々に引き離されていく。

だがそれでも、完全に振り切れるという訳ではない。

赤坂ストレートで2台の車間距離は離されるも、まだ足りない。

 

「(この先のトンネルでどうなるか…)」

後方のハチロクレビンはある程度引き離されているが、もう一押しほしい。

この先には霞ヶ関トンネル直前の高速複合コーナーがある。

一般車両を処理しつつコーナーを駆け抜けることで、相手を振り切るチャンスはあるはず…最上はそう思った。

最上の現状のマシンならアクセルを踏み込み続けてベストライン…アウトインアウトのラインで突破できる。

そう最上は確信した。

 

「(全開で突っ込むか…!)」

一般車両を追い抜きつつ、前方の霞ヶ関トンネルに迫っていくRX-8。

クリアな状態の中で左車線へと移る。

コーナーへは最初にコーナーとは逆の車線に移り、そこから思いっきりコーナーに攻め込んでいくのが速いという事は最上自身も走り続けていく中で感づいていた。

そのやり方が速いとわかった以上、最上としてはそれを粛々とやるまで。

そう思った以上、最上としてはこの先でやることは決めていた。

 

「(…ここだ!)」

脳裏に描いた走行ライン。

最初のコーナーを内側スレスレまで攻めて、一定のタイミングでハンドルを切り返すという…左車線から右車線へ移ったかと思いきや、そのまま右車線から左車線へと攻め込むラインだ。

トンネルが迫る中で最上はアクセル全開のまま左車線から右車線へとマシンを移すようにハンドルを一気に切る。

ハンドルを一気に曲げられたことで、右端の壁へと攻め込んでいくRX-8。

前方がクリアな中、最上は200キロ以上の中でアクセルを踏み続けてコーナーに飛び込む。

左車線から右車線へ旋回するRX-8。

右車線に移ったところでコーナーの右端の壁と隙間数センチというギリギリのラインを描こうとしたところで、最上はハンドルを僅かに左へと切り返す。

トンネル内のコーナーは緩いとはいえ、多少曲げないと理想的なラインを走れない。

右車線から左車線へ滑らかに移動し、そのまま霞ヶ関トンネルへ。

トンネル内の左高速コーナーをそのまま左車線のインベタ走法で走り抜ける。

アクセル全開のまま左サイドをトンネル内の壁すれすれまで接近させるが、同時にハンドルも徐々にニュートラルに戻す。

 

「(さあ…どうかな?)」

霞ヶ関出口横の直線区間でアクセル全開のまま、220キロ以上のスピードで走り抜けるRX-8。

その車内で最上はちらりとバックミラーを見た。

後方のライトは見えない。

どうやら先ほどのコーナーで差を付けることが出来たようだ。

 

「(…追いついてこない?)」

霞ヶ関トンネル中間部でRX-8はハチロクレビンをバックミラーから消し去っていた。

どうやらハチロクレビンはトンネル手前でアクセルを抜いたかブレーキを踏んだかのどちらかをしたらしい。

フルスピードでアウトインアウトのラインを描いて走り抜けたRX-8に対し、失速してしまったのならば…もう差が付けられてしまうのは言うまでもないだろう。

霞ヶ関入口直後にある左直角コーナーに向けて、右車線に移ったところで最上はアクセルオフからブレーキオン。

そしてそのまま左直角コーナーへ攻め込もうとしたところで…カーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。

ブレーキを踏み込んでいたこともあってしっかりと減速していく中で、本来の侵入速度よりもさらに減速させる。

 

「(やれやれ、勝てた)」

カーナビの文字を確認したところで、最上は60キロまでRX-8をスローダウンさせた。

アクセル全開で踏み込んでいたこともあって水温も油温も上がりっぱなしだが、それでも勝利することは出来た。

このままマシンをクーリングすれば、あと何回かはバトルは出来るはずだ。

霞ヶ関トンネルから三宅坂方面へとRX-8を走らせる中で、そう最上は思った。

だが一方で…

 

「(そういえば、例のあの子は最近どうなんだろう?)」

マシンを一定速度まで落として走らせる中で、最上は心の片隅で例の彼女の事を気にかける。

彼女もここ最近首都高を走っているという噂自体は聞くが…それでもまだ詳しいことはわからない。

最上が疑問を持つ中で、RX-8は千代田トンネルへと走り抜けていく。

 

 

 


 

 

 

―――数十分後。

都心環状線外回りを走り抜けたRX-8は、そのまま江戸橋ジャンクションから深川線へと合流、そのまま福住、塩浜方面へと走っていた。

現在の場所としては辰巳ジャンクション付近と言えばいいだろう。

分岐を右方向に進んだRX-8は、そのまま湾岸線方面へと向かう。

 

「(さて、そろそろ僕の力を見たいというドライバーが現れるはずだ。チームのリーダー以外の…ね)」

最上は何度かチームリーダーたちとバトルを繰り返すことで、実力者が勝負を挑んでくるか自分を探して出没してくるであろうと思っていた。

それはやはり、これまで何度もあったからだろう。

RX-8が辰巳JCTから湾岸線に合流する中で、カーナビには青い矢印が表示されている。

どうやらまだ倒していない相手のようだ。

 

推奨BGM:Glitter Flatter Scatter(from jubeat Qubell)

「(どうやら、そうかもしれない…)」

矢印の形はこれまでのチームメンバーやチームリーダーとは異なる形。

おそらく実力者であろう。

そう思いつつも最上はRX-8をそのマシンへと接近させていく。

有明JCTへ150キロ台を維持しながら走らせる中で、その存在が最上の視界に入った。

 

「(あの車…あのワゴンは?)」

銀色に光る…いや、鉄そのもののような色。

そんなカラーのワゴン…レヴォーグ。

派手な外装であり、同時にエアロもかなり手が加えられている。

だがその存在に、最上はどこか既視感があった。

 

「(たしか、紅童子…とかと同じ車…?だとしたら…)」

紅童子、金色般若。

これまで戦ってきた「Phantom9」のドライバー。

そのマシンと全くもって同じマシン。

通り名としては…鉄翁(くろがねおきな)と書かれている。

マシンの雰囲気からしておそらく、例の「黒崎三兄弟」の最後の1人だろう。

つまりはPhantom9の1人である。

 

「(Phantom9だかなんだか知らないけど、挑まないわけにはいかないね)」

最上としては正直、Phantom9とか黒崎三兄弟とかはよくわからない。

ただ首都高を走っている走り屋である以上、ここでは速さこそが全て。

勝負に挑むことに関しては、何ら変わりもないのだ。

そうである以上、「バトルをする」という選択肢しか最上にはなかった。

RX-8を減速させつつ例のレヴォーグの後方に付け、ライトスイッチを操作してパッシングする。

パッシングしたところで前方のレヴォーグのハザードランプが点滅する。

バトルを受けてくれるようだ。

 

「(Phantom9とやらの実力、見せてもらおうか!)」

最上としては今はとにかく強い相手と戦いたいという気持ちが強い。

そうである以上、Phantom9のドライバーと戦う事は必然と言えば必然だった。

そして目の前に現れたという事ほど好都合なことはない。

今は挑戦するまで…

そう思ったところで、カーナビのカウントダウンが始まる。

場所としては有明JCT近くである。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「(―――!)」

GOサインと共にアクセルを踏み込む最上。

だが、前方のレヴォーグもそれに応じて加速していく。

一方で後方の穴…マフラーから青い炎が出ている。

あれが何だかは知らないがレヴォーグという重量級マシンの重さを感じさせないような加速。

これまで戦ってきたドライバーでも似たようなことは合ったが、それでも格が違う。

湾岸線の直線であっという間に200キロ以上まで到達する。

それでも前方のレヴォーグはじりじりと離れていく。

だがそれでも、勝てない相手でもない…そう最上は思った。

なぜなら…

 

「(スタートダッシュは速い、けど…あの車は、重いんだ!)」

最上はワゴンというマシンの特性にある程度勘付いていた。

車自体が重いのである。

有明JCTを左方向に進み、そのまま台場線へ。

台場線に入ったところで右直角コーナーがある。

RX-8の強みはやはりそのロータリーという特性と馬力に対するマシンの軽さ。

だからこそ、多少無茶な突込みでもコーナーを突破できる…そうである以上、最上にとっての算段はすでに整っていた。

内側からコーナーに突っ込んでスピードに乗ったまま相手をぶち抜く。

脳裏に右車線をフルスロットルで走り抜けるというラインを描く。

上り坂を上り切ったところにある右直角コーナーが勝負所…それはもう言うまでもない。

2台の車間距離が25m近く引き離されそうになったところで、左車線を走っていたレヴォーグに変化が生じた。

上り坂を上る中である程度車間距離が開いたことに気が付いたのか、マフラーからの青い炎は消えていた。

だがそこからしばらくして、前方のコーナーに向けてなのか…ブレーキランプが点灯した。

その瞬間を、最上が見逃すはずもなかった。

 

「(やっぱりブレーキングが早い…!)」

上り坂を上り切ろうとしていたレヴォーグが、ブレーキを掛けて減速する。

だが、最上はアクセルをずっと踏み続けている。

早めにブレーキを踏み込んだレヴォーグのその巨体がRX-8の左斜めにぐんぐんと迫ってくる。

それでも最上はアクセルを一切抜くことはしない。

レヴォーグの横を、それを見越したかのようにRX-8は右サイドをあっさりとスルー。

そのままコーナーへと飛び込んでいく。

 

「―――!」

直角コーナーへノーブレーキ、アクセル全開の度胸一発な走り。

傍からすれば無茶そのものというべきだろう。

だが、最上はマシンの限界を把握していた。

今のマシンなら、台場線の右直角コーナーくらいならアクセル全開でも突破できる…そう思ってやまなかった。

コーナーに飛び込む寸前で一瞬だけアクセルオフをしたかと思いきやハンドルを一気にグイと右に曲げ、アクセルを再度踏み込んでマシンを旋回させる。

インベタの状態でコーナー内側のゼブラゾーンに飛び込んだRX-8は、右車線からアンダーステアを出して徐々に膨らんでいく。

 

「(…いける!)」

度胸試しと言ってもいい走りかもしれないが、それでも最上は200キロ以上というスピードでコーナーを突破できると信じていた。

コーナーリング中にゼブラゾーンから右車線へと膨れるRX-8。

だがそれでも最上にとっては計算ずく。

これくらいのスピードならコーナーくらい突破できる…そう最上は思っていた。

直角コーナーをインベタの走りで突破しつつもグリップを失いかけるRX-8だが、右車線から左車線へ。

そしてそのまま左端への壁に接触する寸前で一瞬だけアクセルオフ。

ハンドルをニュートラルに戻し、マシンの態勢を整えて再びアクセルを全開に踏み込む。

 

「(減速による失速っていうのは結構大きいんだ…この車がスピードに乗っている以上、もう食らいつかせない!)」

コーナーをスレスレで突破したRX-8は、アクセル全開のままレインボーブリッジ方面へ。

超高速区間において240キロ以上というスピードになったRX-8は、もはや誰にも止められないシロモノと化していた。

長い長いアクセル全開区間において、最上のRX-8のその速さは後方補レヴォーグを振り切るのにも十分すぎるもの。

前方の一般車両たちを左に右に軽々と避けつつも、RX-8は後方のライバルを突き放すように加速していくのだった。

そして後方のレヴォーグの体力ゲージがどんどんと減っていき…台場入口の合流を過ぎたところで、カーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。

 

「(噂通りだったか…ここまであっさりと勝負がつくとは)」

一方の鉄翁。

コーナーで大差を付けられた以上、もう自分としてはどうしようもなかった以上諦めていた。

あそこまでのアドバンテージを取られた以上自分の負けを認めざるを得なかった。

弟たちが噂していたとはいえ、まさかここまで相手にされないとは…想像が出来なかった。

やはりそれは、黒崎三兄弟の長男という自負があったからだろうか。

それゆえの奢りでもあったのか…そう思わずにはいられないのだった。

それでも先程の勝負というのは自分が隙を見せた瞬間あっさりと行かれた。

あまりにもあっさりとしすぎていて、もはや勝負と言ってもいいのかすらもわからなかった。

やはり実力を認めざるを得ないとはこういう事だろう。

 

「(勝ったけど、ちょっと走りすぎて疲れたな…休憩しようか)」

一方でレインボーブリッジの寸前で勝負を付けた最上はRX-8を60キロまで減速させつつ、レインボーブリッジの先にある芝浦PAへとマシンを向かわせるのだった。

 

 

 


 

 

 

―――芝浦PA。

 

推奨BGM

芝浦PAに入ると、見覚えのあるマシン…金色のVMGレヴォーグがいた。

そして自分のマシンを追いかけるかのように、後方から先程の黒鉄色のVMGレヴォーグが入ってきた。

最上はRX-8を例の金色のVMGレヴォーグの横に止めて車を降りる。

その様子を見た金色のレヴォーグのドライバー…金色般若と、先程バトルしたレヴォーグのドライバー…鉄翁が、最上と対峙する。

 

「よう、『高速の闘士』…お前、まさかだが兄貴を倒したんだな?」

「兄貴?」

「さっき入ってきたレヴォーグだよ。俺達の長男」

「…たしか黒崎三兄弟?だっけ」

「ああ、そうだ」

「まあ、倒したって言えば倒したけど」

「やっぱりそうだったか…全く、これじゃあ<Phantom9>の連中に顔が立たねぇじゃねえかよ、兄貴!」

金色般若はどこか呆れるかのようにそう口にする。

例の「黒崎三兄弟」が全員敗れたとなれば、メンツも丸つぶれであるのは言うまでもない。

だが、鉄翁自身はどこか満足げだった。

そんな様子が彼の口から語られる。

 

「ふっ…だがこれ程の手ごわい相手が現れたことは、<Phantom9>にとっては歓迎すべきことかもしれないぞ。強敵を徹底的に叩き潰し、己の強さを証明する…いかにもスネークアイズが好みそうじゃないか」

鉄翁自身は最上の事をどこか歓迎しているようだ。

それはやはり最上の実力を間近で見たから…いや、自分を追い詰める程の実力があると認めたからか。

 

「スネークアイズ?たしか例の…」

「けっ。雅路といい、兄貴と言い…なんでこんな奴にこだわるのかね」

最上が口を動かそうとしたところで、金色般若はそう口にする。

だが、最上の事を見越したかのように鉄翁は視線を向けてこう口にする。

 

「…おい、若造」

「ん、何だい?」

「お前はなかなか見どころがあるよ。だから忠告しておいてやる…」

「忠告?」

「―――これから首都環状に動乱の時代が訪れる。4年前…かつてスネークアイズと<Phantom9>が、幾多のチームを潰した頃のようにな。今回のバトルは遊びみたいなもんだ。ただし…これから先も俺達の前を走ろうとするなら、それ相応の覚悟をしておけ」

「はあ…」

鉄翁の言葉に対し、最上はどこか困惑するしかないのだった。

それはやはり、走ることの意味というよりは…ただひたすらに走ることが楽しいという感情だけだったからか。

(第11話End)




本作を執筆するにあたって、BEMANI系楽曲のリクエストを募集してみたいと思います。
感想ページに楽曲名、アーティスト名、出展(初収録作品)を書いてください。
なお選定条件は以下の通りです。

・選定条件
BEMANIシリーズ(beatmaniaⅡDX、DDR、pop'n music、jubeat、ギタドラ、ノスタルジア、DANCERUSH、DANCE aROUND、SOUND VOLTEX、ポラリスレコードetc)に収録されている「コナミオリジナル楽曲」。
それ以外でも「BEMANIシリーズ」に含まれる作品なら可能。
ⅡDX INFINITASなどのクラウド版限定楽曲も可能。
削除曲は禁止事項に触れなければ基本的に可能。

・選曲傾向
作者がメインに遊んでいる関係上、基本的にⅡDXとDDRが多めです。
ただし、リクエストがあればそれ以外の作品でも試聴した上で採用を判断することがあります。

禁止事項
BEMANIシリーズに含まれるライセンス楽曲(ⅡDX EDITION含む)の選曲禁止(例:ⅡDX33の新曲のうちライセンス楽曲の場合…「Caramel Pain」「LEMON MELON COOKIE」「PALETTE」「かわいいだけじゃだめですか?」「でんぱ どりる わんにゃー☆三」「バブリン」「もんめためたもん」、DDRWORLDの新曲のうちライセンス楽曲の場合…「きゅうくらりん」「強風オールバック」「勇者」「トラウマ催眠少女さとり!」「可愛くてごめん」etc…削除される可能性が高いので)
BEMANIシリーズに含まれる「東方Project楽曲」の選曲禁止(例:「千年ノ理」「Scarlet Moon」「NEON WORLD」「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」「チルノのパーフェクトさんすう教室」「Crazy Hot」「残像ニ繋ガレタ追憶ノHIDEAWAY」etc…ライセンスと同じ扱い。コナミ音ゲー初出楽曲(SOUND VOLTEXでのコンテスト対象楽曲含む)もNGです)
BEMANIシリーズ以外の音ゲーのオリジナル楽曲・ライセンス楽曲の選曲禁止(太鼓の達人、maimai、チュウニズム、オンゲキetc…作者の守備範囲外)
BEMANI以外のスマホ音ゲー、家庭用音ゲーのオリジナル楽曲・ライセンス楽曲の選曲禁止(バンドリ、プロセカ、D4DJ、EZ2ON、DJMAXetc…作者の守備範囲外)
天下一音ゲ祭等他作からの移植曲の選曲禁止(きたさいたま2000、Xevel、Got more raves?etc…ただし極圏、月光乱舞、FLOWER、Scars of FAURAのように初出がコナミ音ゲーなら可能)

以上です。
リクエスト条件は色々書きましたが、まあ「BEMANIシリーズのオリジナル楽曲」なら何でもOKです。
まずはお気軽にどうぞ。
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