「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
遂に本リリース版の段階へ。
最上も新車に乗り換えます。
そしてカメオ出演で、「首都高バトルの話題拡散に尽力していただいたあの方」も出てきます。
act.16「New Rampage(新たなる戦いへ踏み出す者)」
―――新たな魂の前に、深き夜の姫は瞳を閉じた。
何者でもなかった魂の噂は首都環状を駆け回り、新たな好敵手を呼び起こす。
…もう気づいているはずだ。ただ「走りたい」だけだった心が、新たなる挑戦を求めていることに。
夜10時。
―――カーステレオからラジオが流れる。
「輪堂千速の『Tokyo Highway Scramble』~」
ラジオから流れるのは比較的若い女性の声。
首都環状を走り抜けるドライバーたちが主にメインターゲットとなるラジオ番組だ。
週に1日、夜の早い時間帯に流れる名物番組である。
「はーい皆さん、今夜もエンジン全開!レッツゴー!FLOW GLOWのDJ兼運転手担当、輪堂千速でーす!」
―――「神速なる幌馬車の従者」、こと輪堂千速。
大手事務所所属の配信者だが、本作の世界でも走り屋として登場する。
普段こそ動画配信者、DJ、運転手など多忙な身だが…熱狂的な車好き。
そんなラジオも活動の一環である。
因みに愛車は彼女のためにガッツリカスタムされたRX-8。
「皆さん、首都環状でのバトルは楽しんでますか~?ちははライブやらDJやら最近本業が忙しくてご無沙汰でーす。かれこれ2週間近くは首都環状に行けてないかなー。愛車のエイトちゃんがガレージでしょぼくれちゃってますね…ヤバいヤバい」
ラジオMC自身普段から多忙であるがゆえに首都環状へと赴けていないようだ。
「では早速、オープニングトークがてらお手紙を…ラジオネーム『無責任大将』さんから頂きました。ありがとうございます」
スタジオに置かれているファンレターをMCが読み上げる。
「何々…『ちはさん初めまして。オレは普段から首都環状を走っていて、ちはさんのラジオを普段から楽しませてもらってます』…ありがとうございます。走り屋なんですね~まあちはも首都環状を走っている身なので、聞いたことはある名前ですが…『首都環状では最近、新進気鋭のドライバーが増えてきています。1人は久遠のポラリス、もう1人はバリバリ全開達人…もし何か知っていたら、是非トークとしても取り上げていただければと思います』…『無責任大将』さん、ありがとうございまーす」
首都環状を走るドライバーから振られた話題、それこそが久遠のポラリスとバリバリ全開達人のことだった。
「なるほど…『久遠のポラリス』と『バリバリ全開達人』かあ…ちはも情報収集はしてるし、噂は聞いてますよー。久遠のポラリスはなんでも、とっても若い女の子だって聞いてますねー。そんな子がたしかスカイラインGT-Rに乗って、首都環状の猛者たちを次々と倒している…って言うのはー聞いてます。ちはも次首都環状に行ったらバトルしたいなーって思うんですが、どこを走っているのかがわからないのでエンカウント待ちになっちゃうかなぁー」
ラジオMCの耳にも久遠のポラリスの話は既に伝わっているようだ。
BCNR33に乗ったとても若い少女が首都環状で名を広めている。
これだけでも大きな話題になるのは当然といえば当然だろう。
「でもちはが注目しているのはやっぱり『バリバリ全開達人』さんかな~。何せちはと同じRX-8に乗っているそうですからねー」
ラジオMC…幌馬車の従者が注目しているのは、やはり例のもう1人のドライバーの方だ。
彼女は首都環状において、RX-8でバトルに臨んでいる。
そんな彼女だからこそ、RX-8乗りの実力者となると興味を持つのは当然だろう。
「何だか聞いたところによると、2人とも首都環状の『12時過ぎのシンデレラ』って滅茶苦茶速い方…ちはも会ったことがありますが首都環状の生き字引とも言うべき人を破ったそうで。これはまたすごいことになりそうだなーって。まあ新進気鋭のドライバーがどんどんでてくるのはちはとしてはもう大歓迎です、マジで。ちはも2人とバトルしてみたいなあーって思います」
「神速なる幌馬車の従者」…である彼女はやはり、同じマシンに乗っている「12時過ぎのシンデレラ」が破られた事もまた知っていた。
そしてそんな、現状を打破するかのような新進気鋭のドライバーとはいずれバトルをしたい…そう彼女もまた願うのだった。
「さて…噂のドライバーの話は一旦ここまでにして、ここで関東地方の高速道路交通情報でーす」
そう言って彼女はいったん話を切り上げ、交通情報へと話題を変えるのだった。
―――例のラジオMC、幌馬車の従者による軽快なトークにより、夜の首都環状の話題は更に広まっていく。
「久遠のポラリス」と「バリバリ全開達人」…2人の話題は彼女のラジオによってまた、多くの走り屋へと知らされる。
最速への階段を駆け上がる2人の前に現れる新たなる壁。
首都環状の渦は間違えなく、彼女たちが中心となり得ようとしていた。
―――最上が12時過ぎのシンデレラを破った2日後、夜9時。
例の貸しガレージ。
車を早速購入したという連絡を最上から受け、チューナーはガレージの玄関にいた。
表の文房具屋を閉めた後、近くにある貸しガレージの横開き戸を開けようとする。
するとそこへ、1台のマシンがやってきた。
ガレージの方向にやってきたそのマシンは、横づけするように駐車した。
駐車したマシンからドライバーが降りてきて、チューナーと対峙する。
「やあ、おやっさん。おやっさんのアドバイス通り、買ってきちゃったよ」
そのマシンから降りてきたのは例のドライバー…ラジオにおいて「バリバリ全開達人」と呼ばれていたドライバー、最上だった。
最上が乗ってきたマシン、これからの相棒となるマシン。
それこそが鮮やかな水色…レーシングブルーパールのホンダ・シビックタイプR…その最新型であるFL5シビックだった。
早々にFL5シビックを購入した最上に対し、多少驚きつつもチューナーは感心するように口を開く。
「くくく…早速来たな。しかしオメーさん、たった2日足らずで買ってきちまうとはな」
「中古車屋に行ったら置かれててさ…試乗したらピンときたから、そのまま買っちゃった。ちょっと値段は張ったけど、チラシにも書かれてない限定販売だったしね」
「ほう…乗って何か感じるものがあったと?」
「そうそう!加速がハンパなくてさあ、走らせた瞬間に『これだ』って思っちゃったわけ」
最上が買ってきたマシンは中古車店で買ってきたものだが、彼女にとっては「これだ」と言えるものがあったらしい。
それはやはり以前スイフトスポーツに乗っていたこともあるのだろうか。
それでも最上の様子は普段とは違ってハキハキとしていた。
興奮冷めやらぬ、と言うべきだろうか。
「くくく…何というか、思い切りのいいヤツだ。そういえば走行距離は?」
「実はこれ、新車ディーラーの展示車両だったらしいんだ。あまり運転されてなかったみたいでさ、ほぼ新品ピカピカらしいんだ」
「ほうー新古車ってことか」
「うん。お店で聞いたよ?この車って新車じゃかなり手に入りにくいみたいだね」
「ああ。このシビックは最新型…受注停止になるくらいには人気だ。オメーさん、なかなかに運がいいな」
FL5シビックは現実において、受注停止状態となるほどの人気がある。
仮に購入しても納車まで1年待つこともザラという大人気車種なのである。
それほどなまでの激レアマシンなのだが、最上は運よくディーラーに置かれていた展示品…つまり新古車を手に入れることが出来たのだ。
新古車は基本的にディーラーでの展示や市場を主としているため、走行距離が非常に少ない中古車。
マシン自体もディーラーで整備されていることもあり、見かけは新品同様同然と言ってもよかった。
「いやーあはは。あ、とりあえずこの車をガレージに入れていい?」
「ああ、わかった。車を入れな…とりあえずガレージを開けるから手伝え」
「わかった」
チューナーと最上がガレージの横開き戸を開く。
開ききったところで最上は再びFL5に乗り込み、ガレージの中へとゆっくりと入れる。
大きなガレージの中央に、FL5シビックが鎮座するように止まった。
エンジンを切って最上が降りてきたところでチューナーが再び話しかける。
「どう、おやっさん?色々と思った事とかある?」
「まあな。俺も実物は初めて扱うが、なかなかいい外観だ…それでいて速いからな」
「おやっさんが速い速いって言ってるけどさ、やっぱり速いよねこの車。試してきた街乗りの加速でもスイスイいけちゃうの!たまらないね」
「くくく…流石にニュルで世界最速になっただけはあるな」
「ニュル?」
「ニュルブルクリンク…ドイツのサーキットだ。数年前にFFモデルのマシン限定だが、シビックタイプRがコースレコードを叩き出した」
「それって、すごいことなの?」
「1周20キロ以上、コーナー数100以上の過酷なコースで記録を作ったからな。しかもたった数百万のスポーツカーが、何千万や数億円もするスーパーカーを差し置いてレコードを叩き出した、といえば…お前さんでも少しは伝わるだろう?」
FL5シビックは現実において、ドイツ・ニュルブルクリンクサーキットでFF車最速のレコードをたたき出した。
世界中のメーカーがマシンテストのために訪れる超巨大サーキット、ニュルブルクリンク。
大小さまざまなコーナーやストレートが連立し、ドライバーには精神力もテクニックも要求される世界屈指のコース。
そんなコースにおいて名だたるスーパーカーやスポーツカーを差し置いて記録されたレコードは、車好きや各メーカーに大きな衝撃を与えたのは言うまでもないだろう。
タクシードライバーとは言え、車自体の知識が疎い最上としてはあまりその凄さがピンとは来ていないが…「スーパーカーとかと肩を並べられるくらいには速い」ということは何となくわかった。
すると最上がマシンの事について質問する。
「へえ…そうなんだ。まあ、速いってことはわかったよ。それでおやっさん、この車はどんなふうに速くするの?」
「そうだな…まずは足回りと冷却系の強化を重点的にやっていこう。パワーはただでさえ330馬力はある…最初はリミッターカットをした上で、曲がって止まれるマシンを目指そう。パワー面は後々でもいいが、バランスよくやろう」
チューナーによるチューニング方針は、まずは巨大なパワーを受け止めるだけの足回り強化と長距離走行に応じられるほどの冷却系強化だった。
FL5シビックは素で330馬力というハイパワーを誇る。
これはついこの前まで乗っていた最上のRX-8が、チューニング込みで高くても360馬力程度だという事を考えれば…その性能の高さが伺えるだろう。
すると最上があることが気になったように追加で質問する。
「ふーん…たしかこの車はターボって付いてるよね?最終的にどれくらいになるの?」
「フルチューンとなると時間がかかるが…俺の試算じゃ少なくとも660馬力以上にはなると思ってる」
「660馬力…!今の2倍くらいの速さになるってこと?」
「いや、馬力上はな。最高速度は330キロは出せるぜ」
「そんなマシンになるんだ…それなら、湾岸線や横羽線でも戦えそうだね」
「くくく…まあそんな一気にはパワーアップはしないぜ。お前さんの成長度合いを見て、最終的にはそう仕上げたい。だが確実に乗りこなせるようには前のRX-8同様段階を踏む必要があるな」
チューナーによると、FL5シビックは最終的に600馬力以上になると試算した。
多少チューニングすればすぐに350馬力は出るが、それでは今後様々な相手と戦うためには足りなくなるに違いない…そう考えたチューナーは最終的に660馬力オーバーのモンスターマシンになると語った。
「へえーそっかあ。まあ、勝ち続けていけばその代わりに少しずつ速くするってことだよね?」
「ああ…まずは車の動きに慣れることが一番だ。足回りを整えることで、止まって曲がれるマシンを目指そう。お前さんが何度か勝ちを重ねるようになったら、更なるパワーも与える。エアロも少しずつ全体的に変えるか」
「わかった…おやっさんがそう言うなら、お願いするよ」
「よし…とりあえず今日はリミッターカットとインタークーラーの大型化、ブレーキパッドを高性能な奴に変えよう。それで一旦走らせたら、またここに戻ってきて足回りから詰めていくか」
「いいよ。僕も手伝おうか?」
「ああ、そうしてくれ」
チューニング方針について決め会った最上とチューナー。
ものの数週間足らずで「12時過ぎのシンデレラ」を撃破するほどの実力者と、かつて名を馳せたチューナーによる新たなるマシンが…静かに目覚めようとしていた。
―――インタークーラー、リミッター解除を実施した数十分後。
最上は早速FL5シビックで環状線外回りに繰り出していた。
まずはやはり手ごたえを理解するためにここから…そう思ったのである。
環状線はテクニカルなコースだが、同時にマシンのセットアップにはもってこいの場所でもある。
神田橋からコースインしたFL5シビックは、そのまま江戸橋方面へ。
「(さあて、ウォーミングアップがてら1戦…っと)」
最上としては誰でもいいからウォーミングアップに付き合ってほしいと思っていた。
それはやはり、この車の実力を見てみたいと思ったからか。
なおこの時、シビックのドライブモードは「+R」…つまりサーキット向けのドライブ設定となっていた。
FL5シビックには複数のドライブモードが存在する。
FL5シビックタイプRにはドライブモード切り替えがついる。トラックモード的なハード仕様の+R、初期設定のSPORT、街乗り向けのCOMFORT、そしてカスタマイズ仕様のINDIVIDUAL。
このドライブモードの設定を切り替えることで、エンジンレスポンス、ハンドルの重さ、サスペンションの硬さ、エンジン音のスピーカーでの増幅の程度、オートブリッピングのレスポンス具合、メーターデザインが変わるという。
現在最上が設定した+Rは文字通りのサーキット仕様のもの。
エンジンレスポンスは鋭く、ステアリングの手応えが重めになり、切り始めからシャープに感じやすい。
おまけにサスペンションは減衰が締まり、ロールを抑える方向になる。
街中では硬く感じやすい一方で、路面が良い場所では安定感が出やすい。
シフト操作時の回転合わせが、よりスポーツ走行向きの制御になり、運転席のメーター表示が+R専用のレイアウトに変わるなど、文字通りのサーキット向けの設定だ。
FL5を70キロで走らせる中で、江戸橋JCT分岐手前で1台のマシンが迫ってくる。
推奨BGM:SOLID WYVERN(from beatmaniaⅡDX29 CastHour)
「(あれはたしか、フェアレディZ…だったかな…)」
まるで北海道方面へと走る新幹線のような派手なペイントをしたZ32…「FAMILY BUSINESS」の「クイックキッド」が最初の相手である。
相手は280馬力級のターボマシン。
マシンスペックとしては最上の方が多少格上だろう。
だがそれでもバトルをしないからにはシビックの性能が分からない。
江戸橋JCTの分岐を抜け、都心環状線外回り方面のヘアピンが迫る中でZ32の後方にFL5シビックを付けた最上は、そのままライトを操作してパッシングする。
「(12時過ぎのシンデレラを倒したからには、また速くなっているはず…まずはどれ程なのか、お手並み拝見かな)」
相手は一回のチームメンバーの1人。
これまでならバトルをする場所を考えて挑んでいたが、今のマシンは少なくとも素のスペックでは上。
そうである以上…遠慮なく挑んでみることにした。
江戸橋JCT先の右ヘアピンを抜け、上野線と合流しようとしたところでカーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
GOサインと共に3車線区間に合流した2台は互いにアクセルを全開に踏み込んで加速し始める。
スタート直後の京橋方面の下り坂、加速自体はほぼ互角…いや、正確にはシビックの方が上。
しかし驚くべき点として…Z32はライトチューン、シビックはリミッター解除と冷却系強化、おまけでブレーキパッドの高性能化のみである。
下り坂を右車線で加速し続ける2台だが、バトル開始後数秒でシビックが真ん中の車線へ移動する。
2台は加速をやめないが、車間距離もあっという間に詰まっていく。
「(いける…付いていける!前だったらストレートで置き去りになりかけていたマシンにも、付いて…)」
そう最上が「付いていける」、と思った瞬間だった。
京橋JCTの分岐手前で…シビックはZ32を左サイドからあっさりとオーバーテイクしてしまった。
速度は220キロは出ているが、それでも加速をやめない。
「(あれ…あっさりと追い抜けちゃった)」
最上としては、いくらドライブモードがサーキット仕様のそれとはいえ「もっと追い抜きに時間がかかる」と思っていた。
何せハチロクトレノやロードスターと言った、「明らかな格下」と戦っているわけではない…相手は280馬力級のマシンなのだ。
それでも素の性能で330馬力を誇るシビックは、まるで時代の差を思い知らせるかのように…その加速であっという間に追い抜いてしまった。
ノーマルでも最高速度270キロオーバー…そんな性能を誇示するかのように、FL5シビックはZ32をあっさりと追い抜いてしまった。
正直多少は苦戦すると思っていた最上にとっては、あまりにも拍子抜けと言っても過言ではなかった。
「(まあ、追い抜けたのならあとは振り切るまで!)」
アクセルべた踏みで、VTECターボの爆音を響かせながら加速し続けるFL5シビック。
京橋JCT分岐を左方向に進み、右車線へ。
後方のZ32との車間距離は開いたまま。
「まあカーブでは早めにブレーキを…っと」
前方の橋脚が迫る中、右車線を走り続けるシビック。
そのまま橋脚区間に飛び込んだところで早めにアクセルをリリースし、ブレーキを踏み込む。
速度が230キロから200キロまでストンと落ちたところで、ハンドルを左に曲げる。
橋脚区間を通過したところに現れる、上り坂の左高速コーナー。
橋脚区間脱出と共にハンドルを左に切り込む。
「……」
早めにブレーキを踏んでアクセルリリースしたままハンドルを左に曲げた事で、シビックは右車線から左車線へ…コーナー内側に切り込むように旋回する。
足回りはブレーキ除いてほぼノーマルなのだが、スムーズかつクイックなコーナーリングで左車線から右車線へと膨らむ…アウトインアウトのラインを描いたところで、そのまま上り坂を駆け上がる。
この時点で後方のZ32の存在を最上はすっかり忘れていたが、それでもカーナビにおいてZ32の体力ゲージはみるみるうちに減っていく。
シビックよりもコーナーリングスピードで劣っているというのは間違えないだろう。
「(今はあくまでウォーミングアップ、足回りもまだまだなのに…)」
上り坂区間になったところでハンドルをニュートラルに戻しつつそのまま再びアクセルオン。
その性能を誇示するようにFL5シビックは駆け上がる。
速度は170キロ台から200キロまで加速し、上り坂のてっぺんから下り坂に突入して210キロオーバーまで加速する。
以前乗っていたスイフトスポーツと似たような感覚で乗りこなせていた以上、最上としてはかなりの爽快感を感じていた。
ハンドルを曲げた時に感じるしなやかさ。アクセルオフでハンドルを曲げた途端、クイックに曲がるあの感覚。
FF車ならではのタックインを発動し、一気にコーナー内側へと駆け抜けていく感覚。
おまけに多少の上り坂も何のその、そのマシンスペックをフルに活かしてシビックは加速し続ける。
パワー面ではリミッターカットと冷却系強化だけなのだが、RX-8の時よりもはるかに性能がいいように感じた。
何度も書くがRX-8は滅茶苦茶手が込まれていたのに、FL5シビックはそれほど手を加えていない状態で、これなのだ。
「(バトルしてやっぱり思う…この車は、とっても良い!RX-8程手を加えてないのに、こんなに速く走れるなんて。もし今後チューニングしたら…どうなるんだろう)」
シビックは下り坂区間の加速を維持しながら新富町出口横を通過し、ストレート区間でもその加速は収まらない。
その性能を誇示するかのように、最上はアクセルを踏み続ける。
新富町出口横を走り抜け、シビックは左車線でアクセルべた踏み状態。
そのまま2つ目の橋脚を左側から通過し、銀座方面へとスパートをかける…かと思いきや、実際は2つ目の橋脚を抜けたところでバトルは終わっていた。
カーナビに「WIN」の文字が明確に表示されても、ストレート区間でアクセルを抜くことは…前方のS字コーナーが迫るまでやめなかった。
「(僕はこんな車を待っていたんだ…ここから先、どんな車になるのかな。楽しみが増えた気がするよ。今はただ…上がれるところまで上がってみせる!)」
銀座S字区間を140キロで走り抜けるシビック。
そしてそんなシビックのドライバー、最上。
彼女はこれまでの足枷が外れ、乗り込んだ車…FL5シビックを自在に乗りこなしていくことになる。
最上が本当に求めていた車と歯車が噛み合った時、彼女による首都環状の侵食、制圧はさらに加速する。
なおこの後最上は3戦ほど行い…再びチューナーの元へと向かった後には、足回りを中心にマシンを強化し始めるのだった。
(第16話End)