「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
FL5シビックに乗り換えた最上の快進撃が始まります。
チューナーのアドバイスを元に、FL5シビックを購入した最上。
更なるステージへと進んだ最上は、チューナーの手助けと共にシビックで首都環状へ殴り込みをかける。
駆動方式こそスイフトスポーツと同様のFFターボであるが、これまでのマシンとはスペックが明らかに規格外なマシンを果たして最上は乗りこなすことが出来るのか。
―――最上がFL5シビックを購入してから3日が経った。
最上はシビックを購入して以来連日、仕事明けと同時に首都環状へ走りに出ている。
この日もまた芝公園入口からシビックでコースインしている。
「(さあ、今日も元気に行ってみようか)」
一ノ橋JCTを右方向に進むシビックの中で、最上は少しだけ張り切ってそう思った。
最近はタクシーをチューナーのガレージに置くようになった。
毎日チューナーの元へとシビックを託し、託している間にタクシードライバーの業務、そしてそのままタクシーでチューナーのガレージへと戻ってそのまま首都環状へ、首都環状から直帰というルーティンを繰り返していた。
一方でチューナーに託している間は「契約手数料」と称して、お礼代わりに「タクシーでの儲けの一部」をチューナーにそのまま渡していた。
3日が経った時のチューニングはクラッチやサスペンション、エキマニホールドのサーキット走行向けパーツへの交換、ECUのベースマップ改良と中速域トルクアップ、高性能LSDの装着、ハイグリップタイヤ装着、そしてマシンのボディ補強だ。
ゲーム内の表記でいえば…「クラッチLv4、サスペンションLv3、エキゾーストシステムLv4、パワーユニットLv4、LSDLv3、タイヤLv3、ボディLv3」というべきだろう。
元よりブレーキと冷却系…つまりインテーク系には手を入れていたので、比較的全体的に手が加わったことになる。
また同時に、RX-8で装着していたニトロシステムもそのままシビックに換装している。
因みにこちらもゲーム内の表記でいえば…「ブレーキLv3、インテークシステムLv4、ニトロシステムLv1」というべきか。
とはいえ劇的に強化されたのはサスペンションやブレーキと言った足回りが大きく、パワー面ではまだ発展途上というべき段階だった。
「(おやっさんに預けることで、確実にマシンが速くなってるのがわかる…)」
慣らし運転がてらシビックを160キロでクルーズさせる最上。
少しマシンのパーツをサーキット向けに変えることで、マシンの性能はあっという間に400馬力オーバーになった。元の性能が330馬力であることを加味しても、この性能アップはかなり大きい。
加えてチューナー曰く、「今後もっと凄くなるぞ」と言われているのだから、更にスピードアップや曲がりやすくなるのだろう。
同時に、「ある程度の実力者を倒せばマシンのパワーを最大限に生かせるようにしてやる」と言われている。
まだまだ自分には伸びしろがあるという事を示しているのかもしれない。
「(僕がここまで積み重ねた経験を認めてくれたのかな…なら、この車がもっと速くなれるように頑張らないとね)」
最上としては現状のマシンがRX-8やスイフトスポーツの時以上にかなり気に入っている以上…この車がどんどん速くなることに関しては大歓迎だったし、自分としてもとことん追求していきたいと思っていた。
ただでさえ至れり尽くせりな状態だが、それでまた速くなるのなら…と考えると、これは喜ばしい事というべきだろう。
「(前に比べるとシフトチェンジした時の失速が少ないし、水温や油温が変に上がりすぎることもなくなった。多少なりともマシンも軽量化してるみたいだし、やっぱり速くなってる…)」
RX-8の時に度々起きていた、長時間走行による水温油温上昇、そしてそれに伴うマシン性能の低下。
今回のマシンはやはりそこの部分も徹底されているのか、それとも最初からターボなので対策されているのか、長距離を走っても水温や油温が以前よりは上がりにくくなった。
マシン自体もどこか軽やかさを感じるようになったし、何より以前のRX-8よりも格段に使いやすさを感じる。
パワーの歯がゆさもないし、曲がるし、おまけにドライブモードという最新装置付き。
こんなマシンで敵をなぎ倒していけるというのなら…最上としてはこれ以上にない快感であることは間違えないだろう。
すると、飯倉トンネルに入ったところだった。
推奨BGM:ChaserXX(from beatmaniaⅡDX25 CANNON BALLERS)
「(ん…後ろに来てる?)」
最上のシビックを見たのか、停車帯から1台のS15シルビアが高速で接近してくる。
赤色と白色の目立つマシンである。
最上としては見覚えがあった。
たしかS15シルビアと言ったか…RX-8とほぼ同等クラスのマシンだったような気がする。
「(…シルビアかぁ)」
急速でシビックの後ろにやってきたS15シルビアからのパッシングを受け、カーナビを一瞬だけ見て相手の内容を確認する。
「CHANGEING STAGE」のリーダー、「夢幻の不死鳥」と書かれている。
どうやら数日前から倒していた、都心環状線外回りにおけるS15シルビア軍団のリーダーらしい。
だが相手が相手であるが故に、最上はあることを思っていた。
「(おやっさんに聞いた限り、RX-8と同じくらいのマシン。ならば…スタートから逃げる!一気に決めるさ)」
ここ数日、最上は首都環状を走るライバルたちの車の事を聞くようになっていた。
車と言っても軽自動車からスーパーカーまで様々だが、RX-8と同クラスのマシンとしてはS15シルビアが該当するらしい。
だがそれは言うなれば、FL5シビックに比べると明らかに格下というべきもの。
ではそんな格下から勝負を挑まれたならどうするか?
答えは非常に単純…パワーでねじ伏せることを優先するというものだ。
そんな戦法で挑むことを決めたところで、谷町JCT分岐を通過した2台のバトルが始まる。
カーナビにカウントダウンが表示されようとしていた。
3
2
1
GO!
「(それ…!)」
GOサインと共にアクセルを全開に踏み込む最上。
2速から3速、3速から4速へとクラッチを蹴りつつもシフトアップしていく。
後方のS15シルビアは多少なりとも食いついてくるが、それでもシビックの強靭な加速によって差がみるみるうちに開いていく。
谷町JCT分岐を過ぎると、すぐに赤坂のストレート。
それに照準を合わせたシビックはそのターボエンジンの真価を発揮するかのようにぐんぐんと加速していく。
谷町JCTから赤坂ストレートエンドまで加速する中で、あっという間にシビックは250キロまで到達する。
RX-8だったらストレートエンドで良くても210キロオーバーだったのに、これを上回る加速力だ。
現状はフルチューンではないマシンのセッティングを、ギア比を加速寄りにしていることも大きいのだろう。
赤坂ストレートエンドは右から左へと曲がる、霞ヶ関トンネル入り口手前の高速複合コーナー。
やろうと思えばアクセル全開でも突破できる高速コーナーだ。
「―――!」
アクセルリリースと共に「プシュー」というブローオフ音が車内にも伝わる。
後方のS15シルビアが離れたと直感したところで、左車線を走らせていたシビックは右へと一気に旋回を開始する。
ハンドルを右に曲げつつ右車線に飛び込み、トンネルに飛び込んだところで再びアクセルオン。
今度は左へと切り返し、霞ヶ関出口横を通過する。
速度は240キロ台を維持して、トンネル内のロングストレートへと突っ込む。
「(さあ、どうかな?)」
トンネル内でバックミラーをちらりと見ると、そこには先程の赤白シルビアの姿は非常に小さくなっていた。
もはや完璧に振り切り同然な程…それこそヘッドライトの小ささは米粒大だ。
この時点でカーナビにおけるS15シルビア側の体力はみるみるうちに減っていっている。
どうやら先の高速コーナー1つで圧倒的な差を付けることが出来たようだ。
「(あはっ。流石にRX-8と同等クラスのマシンじゃ、僕のシビックはもう相手にならないね。まあ、最初から油断しないためにも全開だったんだけどね)」
最上としては明らかな格下であると思っていたが、どうやらそれは間違えではなかったようだ。
とはいえ彼女自身バトルをする時は必ず全開で挑むようにしていた。
どんな相手にも見くびらない、というのが彼女のポリシーとなりつつある。
それはやはり、軽自動車でも早いドライバーは速いという事を身に染みて実感しているからだろうか。
だが一方で、こんなことも思っていた。
「(まあ聞いた話じゃ、僕のシビックはあのポラリスのスカイラインGT-Rよりも素のパワーがあるんだってね。そりゃあ相手にならないか…)」
霞ヶ関入口直後の左直角コーナー手前でブレーキを掛けて減速させる中で最上はそう思った。
実際FL5シビックの馬力は330馬力。
一般的なスポーツカーの馬力である280馬力を大きく上回るものだ。
時代が違うとはいえ、ここまでの差があれば…他のドライバーを圧倒できてもおかしい話ではない。
そう認識したところで最上はブレーキリリースからハンドルを左に曲げる…のだが、その旋回寸前においてカーナビには「WIN」の文字が表示された。
どうやらバトルに勝利したようだ。
ブレーキを余計に強めて減速させる中で、最上はゆっくりとハンドルを左に切って車線をはみ出さないようにゆっくりとコーナーリング。
そのまま三宅坂JCT方面へとゆっくりとシビックを走らせるのだった。
三宅坂JCTを走り抜けたシビックはそのまま千代田トンネルから都心環状線外回りを走行していく。
―――夢幻の不死鳥とのバトルから数分後。
都心環状線外回りからコースインしていたFL5シビックは江戸橋JCTを左方向に進み、深川線方面へ。
箱崎JCTを抜け、そのまま福住方面へと走っている。
すると、隅田川上を通過している時だった。
推奨BGM:WICKeD CRφSS(from REFLEC BEAT groovin'!!)
「(…後ろから来てる。パーキングからの合流?)」
後方からやってくる1台のマシン。
おそらく場所からしてパーキングエリアからの合流だろう。
自分の存在が知れたのか、最初から探していたというべきか。
後方に迫ってくる1台の赤いマシン。
明らかにどこかで見たことのあるヘッドライト形状…どころか、マシンだった。
「(まさか…僕と同じFL5のシビック?)」
「TOKIO JUNGLE」のリーダー、「MJ6Feet6」。
数年前に前のリーダーからその座を譲ってもらった実力者。
そんなチームリーダーが乗るマシンは…最上と同じFL5シビック。
だがマシンの色は赤色で、エアロに関してもかなり手が組まれていた。
「(僕と同じくらいの性能か、それとも…)」
最上としては相手をやはり試す方向にあった。
相手のマシンがどれだけチューニングされているか、そうでないか。
自分と同じマシンに乗っているドライバーであるならば猶更気になる。
スタート直後の加速でまず相手がどう出てくるか…そこが勝負だと最上は認識した。
隅田川上から下り坂を下ったところで、カーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
GOサインと共にアクセルを全開に踏み込む最上。
相手のシビックから逃げるべく、一目散に加速していく。
同じマシンで仮にチューニングがほぼ同等であれば、加速自体はほぼほぼ互角のはず。
そう思いつつアクセルを全開に踏み込む。
クラッチを切って2速から3速、3速から4速へと素早く切り替える中で、前方には右直角コーナーが見えていた。
だが一方で後方をちらりと見ると…少しだけ相手の赤いシビックが離れているように見えた。
「(…遅いかあ)」
一般車をスイスイと追い抜かす中で、最上としては相手のFL5シビックに対してどこか幻滅したようにそう思った。
どうやら相手の車は自分と同じで最高速仕様か、はたまた自分のマシンよりスペックが下なのだろう。
だが少しずつ距離を離すだけでは膠着状態も同然…そう思った以上最上は早めに勝負を仕掛けることにした。
「(ダラダラと勝負するくらいならさっさと決着をつけた方がいいね。この先の直角コーナー区間をこの車なら、攻めれる!)」
箱崎から福住方面までは高速区間の後に右から左へと続く連続直角コーナー区間がある。
箱崎方面からスピードに乗ったマシンがどのようにして飛び込むのか、というところではテクニックを要求される場所であるのは言うまでもないだろう。
そこが勝負どころだと最上は見切った。
一気に200キロオーバーまで加速する中で目の前に右直角コーナーが迫る。
「(この車なら…曲がる!)」
左車線からアクセルオンのままノーブレーキで突っ込む青いシビック。
コーナー突入直前にハンドルをぐいと右に曲げ、一気にコーナーの内側へと攻め込ませる。
左車線から右車線、更にゼブラゾーンまで突っ込んだ青いシビックは文字通りのアウトインアウトのライン、220キロオーバーで走り抜けていく。
とはいえ流石にオーバースピードなのか、右端のゼブラゾーンを抜けたところで徐々に外に膨らんでいく。
だがそれも最上にとっては計算ずく。
徐々に膨らみつつあるシビックをコントロールし、右車線の中に抑える。
そして中に納まったところで…次の左直角コーナーが迫る。
「―――!」
右車線に膨らんだところで、一瞬だけアクセルをリリースしたかと思いきやすぐにハンドルを強引に左に切り返す。
左にハンドルを曲げた事で今度は右車線からスピードに乗ったまま左車線、再び左コーナーの内側まで攻め込む。
連続コーナー地帯でもほとんどアクセルを抜かずにコーナーの内側へベッタリと攻め込んでいく姿は、多少なりとも狂気を含んでいるだろう。
だがそれでも最上自身には恐怖と言う言葉が存在しなかった。
それは車を信じているからか、恐怖と言う感情が麻痺しているのか、首都環状で経験を積んできたからかはわからないが…何にせよ、コーナーに突っ込むことに対してほとんど躊躇することが無くなっていた。
230キロオーバーで右直角コーナーを走り抜ける青いシビック。
そのままコーナー出口が迫る中で、青いシビックは左車線から右車線へと膨らんでいく。
ハンドルを調整しながら外へと膨らませた青いシビックは、右車線を走行しつつそのまま福住出口方面へのストレートを駆けていく。
速度は230キロ台だが、まだ加速は止まらない。
「(後ろは…うん、いない)」
240キロオーバーで福住出口横を通過したところで、最上はバックミラーを確認する。
先の赤いシビックの存在はコーナー2つであっさりと点になっていた。
バックミラーに映るヘッドライトの光も小さい。
2つのコーナーだけでどうやら車間距離は100m近くは離せているようだ。
カーナビの相手の体力ゲージはあっという間に減っていく。
「(まだ僕ほど車を手懐けてないというところか…まあ、僕の方が速かったってことかな)」
前方の右直角コーナーに向けて左車線に移り、アクセルを抜いたかと思いきや再びハンドルを右に切り込んでアクセルオン。
左車線から右車線へと…コーナー内側へと240キロオーバーで攻め込む青いシビックだが、攻め込んでいく中でカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。
ものの数十秒という超短期決戦…そんな戦いを制したのはやはり最上である。
チームリーダーでさえもパワー差…力技でねじ伏せてしまうのだが、最上としてはこれも悪い気がしなかった。
それはやはり、これまでスイフトスポーツやRX-8の時に感じていた事…言ってしまえばパワー差に泣かされることが無くなかったからだろうか。
「(まだまだ走り足りないなあ、次行こうか)」
福住から塩浜方面へとクーリング走行…240キロオーバーから100キロ前後まで減速する状態の青いシビックだが、その車内において最上はふとそう思うのだった。
―――数十分後。
新環状ルートから湾岸線、東海JCTを経由したシビックは横羽線上りへとやってきていた。
新環状ルートから湾岸線方面へ走る中でも、最上は遭遇したチームメンバーたちを次々と撃墜していた。
その勢いはバトルするたびに増していくかのよう。
東海JCTから横羽線方面、羽田トンネルにやってきたところで後方に一台のマシンが迫る。
またしても最上への挑戦状のようだ。
「あれは…」
羽田トンネルに入ったFL5シビックに追いついてきたのは…黄緑色のマシン。
印象的な流星的なボディと、あまりに縦長なヘッドライト。
この形状は、車の事をあまり知らない自分でも知っている。
間違えない…例のドライバーたちのリーダーがやってきたに違いない。
推奨BGM:osaka EVOLVED -毎度、おおきに!- (TYPE1)(from DanceDanceRevolutionX3vs2ndmix)
「(GT-R…!ここ最近バトルすることは多かったけど…)」
日産・R35GT-R、そのMY17式。
黄緑のボディにド派手なステッカーを張った、なにわナンバーのR35GT-Rが勝負を仕掛けに来ていた。
「(この、『HARISEN Chop』…だったかな。遠征してきた人たちなのかな)」
チーム「HARISEN Chop」のリーダー、「西長堀ジャスティス」が勝負を仕掛けに来ている。
このチームは元々大阪の阪神高速を走っていたチームで、どうやら遠征に来ているようだ。
実際チームメンバーは皆大阪の人々らしく、通り名にも「西長堀」だけでなく、「波除」「天保」「堺」「大浜」「津守」「汐見橋」のように、大阪の地名が含まれている。
それはあまり旅行をしたことのない最上にとっては不思議な違和感を感じていた。やはり聞き馴染みのない地名だったからだろう。
とはいえ首都環状を走っている以上…戦うべき相手であること自体は何も変わりがないのだが。
羽田トンネルに入ってテールトゥノーズの状態になったところでカーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
羽田トンネルの左車線を走る2台が同時に加速を始める。
だが、左車線で加速しているシビックに対し…R35は右車線に移動し加速していく。
そしてそのままサイドバイサイドになる。
「(っう…速い!やっぱりGT-Rの初動はすごい…!)」
スタートカウント直後の加速において、早々にサイドバイサイドに並ばれている。
2台はそのまま並走しながら羽田トンネルを走り、空港西出口方面へ。
前方には空港西出口横の右高速コーナーが迫る。
アクセルを全開に踏み込みながらクラッチを蹴り上げ、シフトを3速から4速へとシフトアップ。
互いに220キロオーバーと言うスピードで走る中で、前方には空港西出口とその直後の右高速コーナーが迫る。
目の前に右高速コーナーが迫る中でずっとサイドバイサイドを維持し続けている…かと思いきやその時。
「(んっ…GT-Rが引いた?)」
インコースを走るR35がわずかながらノーズをひっこめた。
アクセルを抜いたのか、コーナーに鳴れていないのかはわからない。
だが、アクセル全開で左車線を走り続けるシビックにとってはまたとないチャンスだった。
ノーズをひっこめたのを見逃さなかった最上は、そのままアクセル全開を維持しながらハンドルをくい、と右へと曲げる。
左車線から右車線へと車線変更し、アウトインアウトのラインを描くように高速コーナーを攻め込んでいく。
右高速コーナーでテールトゥノーズの状態だが、コーナー脱出と同時にシビックは左車線へと膨らみ再び加速する。
VTECターボの快音を響かせ、240キロオーバーまで加速する。
「(…全くもって相手にならないわけじゃないんだ。車をひっこめたのは…きっと向こうはまだコースに慣れていない!)」
最上は相手のR35がノーズをひっこめたのを、自分とは違って経験不足から来ているのではないか…と思った。
実際それは正解である。
「HARISEN Chop」はつい最近首都環状に遠征に来たが、実は最上よりも首都環状歴が浅い。
やってきたのは最上が鉄翁とバトルをしていたころであるので、本当に1ヶ月も経っていない…首都環状歴はほぼ毎日走っている最上よりも浅いのだ。
ここに来て最上と遠征ドライバーたちの間では、首都環状への経験の差が生まれることになった。
コースに不慣れなうちはやはり、走りにおいて妥協してしまうのは無理もない話なのかもしれない。
一方で最上はあることにも感づいていた。
「(どうやら素の性能が格上であることを考えても、チューニングした僕のマシンよりはバランスが悪いって感じかな。大阪からやって来たばかりだからか、まだ首都環状に慣れていないみたいだ)」
FL5シビックのノーマル馬力は330馬力。R35GT-RはノーマルMY17で570馬力。
数字だけ見れば明らかにGT-Rの方が上だ。
だがそれでも…最上のマシンはそれに加えてチューニングがされていることに加え、首都環状歴も粗削りながらかなり走っている。
スイフトスポーツ、RX-8、そしてFL5シビック…様々なマシンに乗ってきてはいるが、それでも「首都環状」というフィールドを走り続けてきたという条件は変わらない。
その経験の差と、マシンへの順応度。
この2つが最上がバトルを有利に運ぶための大きな要因となっていた。
R35がたった1つの高速コーナーで失速したことで、FL5シビックとの車間距離はみるみる開いていく。
「(どんな相手だろうと僕は倒しに行く!この先の直角コーナーと料金所跡で勝負だ…)」
空港西出口から次の羽田出口までには左直角コーナーがあり、さらにその先の大師方面には料金所跡もある。
この2つを使えばもう勝負は付けられるだろう…最上はそう地の利を読んでいた。
向こうが踏めないところでも、自分は踏める…そんな不思議な自信が彼女に身についていた。
一般車両を避けるべく左車線から右車線へと移ったFL5シビックの前に左直角コーナーが迫る。
「(勝負をつけるぞ…いっけえ!)」
後方のR35との車間距離を確かなものにするため、最上は前方の左直角コーナーへと攻め込んでいく。
コーナー直前でアクセルオフ、からブレーキを一瞬だけ踏み込んだかと思いきやハンドルを左に切り込み、再びアクセルオン。
230キロ以上のスピードでコーナーへと突っ込む。
FFならではのタックインでコーナー内側へと移り、やがて左車線の内側まで突っ込んでいく。
アクセルオンのままで突っ込んだことにより、コーナー内側のクリッピングポイントを抜けたかと思いきやそのまま右車線へ。
タイヤをギリギリグリップさせつつ、アウトインアウトのラインを描いてコーナーを脱出する。
右車線の右側にある羽田出口をそのまま通り抜け、アクセルを踏み続けたまま加速していく。
「―――」
コーナー脱出時に、もともと左へと曲げていたハンドルをニュートラルに戻してアクセルべた踏み状態をキープし続ける。
250キロオーバーから加速し続けるシビックの中で、最上はしっかりとハンドルを握り続けていた。
パンピーな路面では多少の油断が事故へとつながることは、首都環状を走り続けている最上自身が嫌と言うほどわかっていた。
そして本気で走り続けることで…相手へ圧倒的なアドバンテージを付けることも出来ている。
FL5シビックが大師方面へと疾駆する中で、カーナビにおける相手の体力ゲージはどんどんと減っていき…やがてカーナビには「WIN」の文字が表示された。
ものの1分近くという短期決戦だったが、最上の実力は確かに結果として返ってきていた。
「HARISEN Chop」を殲滅した最上のFL5シビックは、バトルの余韻を維持したまま横羽線を南下していくのだった。
FL5シビックというニューマシンに乗り換えた最上が首都環状で快進撃を続ける中で、PAでは噂話が流れていく。
「<Juicy Heaven>のドライバーが敗れた」
「他のチームも結構やられている」
「そのドライバーは都度通り名が変わるが、PAで見たところ『普通の兄ちゃん』だった」
「ここ何年かは縄張りが棲み分けられていたが、例のドライバーの存在によってそれがかなり荒れている」
「負けてしまったチームのドライバーの中には血眼になって例のドライバーを探している」
「あの12時過ぎのシンデレラも、久遠のポラリスもヤツの前に倒された」
―――首都環状の中心に、最上はいる。
だがそれは同時に…
「奴について悪い噂を聞くようになった」
「裏ルートで闇パーツを使っている」
「情報屋から買った個人情報で走り屋を脅している」
「バトル中の動画をWebサイトに上げている」
「掲示板を荒らしている」
「陰湿な嫌がらせをしている」
噂話においても、光と影がくっきりと露になっていく。
(第17話End)