「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
快進撃を続ける最上の前に、「幻影」の影が迫る…
FL5シビックに乗り換え、快進撃を続ける最上。
そんなシビックはチューナーの手によって日に日にチューニングされていき、その真価を確実に発揮していた。
今日も今日とてチームライバルたちを蹴散らし、リーダーたちへと挑んでいく。
そんな中で、Phantom9の新たなる刺客が迫ろうとしていた…。
―――「HARISEN Chop」を破った翌日。
最上のマシンは更にチューニングが施されていた。
高性能ECU装着とベースマップ強化、高性能トランスミッション装着、セミレーシングタイヤ装着。
首都高バトル原作における「パワーユニットLv6、トランスミッションLv4、タイヤLv4」と言うべきだろうか。
これで馬力自体は480馬力オーバーになった。
チューナー曰く「すぐに600馬力になる」との事らしいが、やはり少しずつマシンの真価を開放していくやり方なのだろう…ということは最上自身がよくわかっていた。
この日は新環状左回りルートを走っていたが、辰巳PAで勝負を仕掛けられていた。
推奨BGM:Virtual Sunrise(from SOUND VOLTEX Ⅱ -infinite infection-)
「(…PAでチームリーダーに勝負を挑まれるとは思わなかった)」
先行する紫色の80スープラ。
「A.S.F」チームリーダー、「新環状の大御所」。
最上がA.S.Fのドライバーたちを破ったことをきっかけに、彼から勝負を挑まれたのである。
「(A.S.Fのリーダー…たしかスープラ、だったよね。まあ、挑まれたなら断るつもりはないけど)」
最上としては挑戦を受けることに関しては全く問題なかった。
チームのドライバーたちを破ったのならばその親玉が出てくるのは自然の摂理。
とにかく今は速く走ることが目的である以上、勝負を仕掛けられた以上どんな相手でも受けて立つ…それくらいの気概でいた。
だが一方でこうも思っていた。
「(ヘアピン1つで追い抜けるかな…だとしたら)」
最上としてはバトルを挑まれた以上、早々に勝負所を定めていた。
辰巳PAを出た直後に現れる左ヘアピンコーナー。
コーナー中間で車線は2車線から1車線になる。
辰巳PAを出た直後にパッシングしたことにより、コーナーの半分程度のところ…2車線が1車線になりかけている部分でバトル開始になる。
80スープラが先行する中、テールトゥノーズの状態でカーナビにカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「(スタート直後から行く!いっけえ!)」
コーナー中間部という事なのか、加速に多少躊躇している前方の80スープラ。
だがそんなことはお構いなしに、最上はアクセル全開に踏み込んで早々に追い抜きにかかる。
それと同時にニトロスイッチオン、更に加速させる。
2車線から1車線に車線減少する区間であるのだが、シビックはあっさりとコーナー左側のゼブラゾーンにはみ出て加速を見せつけるかのようにオーバーテイク。
咄嗟の判断で瞬間移動のように移動したシビックは、ゼブラゾーンから畳みかけるようにあっさりと80スープラを追い抜いてしまった。
スープラを追い抜いたところで湾岸線からの合流、2車線区間へと戻る。
「(抜いたからには…追いつかせない!)」
前方の下り坂、ストレート区間を目掛けてシビックは加速し続ける。
適度にクラッチを切って2速から3速、3速から4速へと加速を繋げる。
速度は一気に4速200キロオーバーまで到達するが、加速はまだまだ止まらない。
右へ、左へと一般車をよけ続ける中でもシビックは加速する。
この時点でニトロをオフにしたとは言え、後方の80スープラとの車間距離は確実に開いていく。
「(カーブの立ち上がりと言うべきなのかな、そこではやっぱり僕の方が有利ってことか)」
最上の走りはどちらかと言えば勢い任せと言えばそれまで。
しかしコーナーの立ち上がりでも突っ込みでも勢いがあるので、相手によってはそれに圧倒されてしまう。
それほどなまでのマシンパワーがあるのだが、そんなマシンを最上は今やすっかり乗りこなしていた。
休憩込みとはいえ1日で150キロ以上走るくらいの入れ込みようなのだから、乗りこなすのも当然といえば当然なのだが。
長い長いストレート区間で6速まで踏み込み、速度は265キロまで加速していく。
そしてそのままアクセル全開のままハンドルを適度に左に切り、枝川直前の左高速コーナーを…左車線の立ち位置を維持しながら滑らかに駆け抜ける。
「(カーブ1つでぶっちぎることが出来るのって、正直快感なんだよね)」
最上にとってはそのマシンパワーに惚れ惚れとした感覚だった。
ストレートでも遠慮くなく踏めるし、速い。
おまけに踏んでも全くもって怖くない。
マシンに心酔するかのように最上はアクセルを踏み続けるが、同時にこれがとんでもない快感でもあった。
これまではパワー負けをすることも少なくなかったが、シビックに乗り換えたことで快進撃が続いている。
どうやら並みの280馬力級ですら最上にとっては敵でなくなりつつあるようだ。
まあシビックは数年前に発売された新車であるという事もあるのだが。
枝川出口横を280キロ近くまで加速して走り抜けていくシビック。
そのままカーナビにおける相手の体力ゲージが0となり、「WIN」の文字が表示された。
「(この調子ならまた速い人が出てくるのは時間の問題かな)」
福住方面に向かうシビックの中でアクセルを抜き、ブレーキを徐々に踏んで減速させる最上。
並みのドライバーやリーダーに対して圧倒できるその実力は、やはり首都環状の中心の一人と決めつけられても何らおかしくはないものだった。
―――数十分後。
深川線から都心環状線を経由したFL5シビックは、そのまま横羽線を南下…したかと思いきや、平和島でUターンしていた。
こちら側に敵がいるという事が分かった以上、殲滅しに行くまで…そう思ったのだ。
都心環状線、新環状ルート、横羽線、湾岸線と満遍なく倒しては来ているが、それでも取りこぼしは少なからずいるし、1日のバトルの数には限界もある。
仕事もあるとなると体力の限界だってあるのだ。
「(環状線から横羽線にやってきて、平和島でUターン。こっちの方に倒してない人がいたからやってきたけど、どうやら…)」
横羽線下りにおいては現状全ての矢印が緑色になった。
言ってしまえばすべての敵に一度は勝利している状態だ。
実際にはPAの敵も倒しており、今走っているドライバーたちは殲滅したという事だろう。
そうなった以上都心方面に向かった方がよいし、実際横羽線上り方面にも少なからず敵はいる、という2つの事から最上は平和島で早々にUターンするのだった。
だが、平和島PAからUターンして鈴ヶ森横の競馬場付近を100キロ台で走っているその時だった。
推奨BGM:No.13(from beatmaniaⅡDX10thstyle)
「(…鈴ヶ森からの合流?)」
競馬場横の入口…鈴ヶ森入口。
そこからコースインしてきたマシンが早々にシビックの後方へと付けたかと思いきや、いきなりパッシングを仕掛けてきた。
銀色に輝く、スーパーカーのような外観をするマシン。
最上はそのマシンにどこか聞き覚えがあった。
「(たしか…NSX?)」
ホンダ・NSX。
シビックと同じメーカーが発売しているスーパーカー…NC1型だ。
銀色に輝くそのマシンが、左車線を走るシビックの後方にいる。
「(同じメーカーの車だよね…まあ、何だっていいんだけどさ)」
最上自身シビックとNSXが同じメーカーの車であるという事は聞いたことがあった。
詳しい話は知らないが、NSXは結構速いらしい。
だがそれも乗り手次第だとはいうが…どちらにせよ興味はある。
ここで一つ腕試しといこう…そう思う中で、カーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「(どれ…)」
GOサインと共にアクセルを踏み込む最上。
だがアクセル全開ではなく、相手をどこか試すかのように8割程度踏み込み、ある程度加速してからアクセル全開へ。
すると、150キロまで加速していくその時だった。
「(おっと…並んできた)」
左車線を走っていた2台だが、NSXが右車線にはみ出したかと思いきやそのままサイドバイサイドに。
横羽線と言うストレート区間が多いコースにおいて、NSXはあっさりとシビックを追い抜こうとする。
だがそれでも最上のシビックもチューニングはされている。
アクセルを軽く踏み込めばその加速の差はかなり抑えられる。
勝島出口近くを走る中で、まだ最上には余裕があった。
なぜなら…
「(出だしの加速自体は向こうが上だ…でも、この先のカーブでどうなる?)」
勝島出口の先にあるのは右の中速直角コーナー。
アクセル全開ではダメだが、ある程度ブレーキを踏み込めば突破できるそんな右直角コーナーがある。
最上としてはコーナーで相手の実力を見定めるかのようにしたかった。
遅ければ追い抜けばいいのだし、速ければスリップに付けばよい…既に最上の中に策は練っていた。
ノーズの部分だけNSXがリードしたところで、2台の目の前にコーナーが迫る。
だが、その時。
インコースだったNSXが急に速度を落とす。
コーナー突入前に減速したのだ。
「(やっぱり…もらった!)」
NSXが減速してノーズをひっこめたのを最上が見逃すはずもなかった。
ブレーキをフラッシュさせたNSXに対し、最上はアクセルを一瞬だけ抜いたかと思いきやそのままアクセル全開でハンドルを強引に右に切る。
ノーズをひっこめたNSXの手前に出たかと思いきや、そのまま左車線から右車線へと畳み込む形でオーバーテイク。
速度は230キロは出ているのだが、それでも遠慮することなく最上はアクセルを踏み続けている。
コーナー1つでスピーディに切り込んだシビックだが、そのままのスピードを維持して直線区間を走り抜けていく。
一方でコーナー突入時に失速したNSXは加速してもそのロスを挽回することが出来ず、車間距離はあっという間に50m以上引き離されていく。
シビックはそのまま京浜運河沿いのモノレール並走区間を260キロ以上のスピードで疾駆していく。
「(何というか、皆こうだよね。カーブの前で結構減速している感じ。僕は突っ込むことが怖くないけど、正直感覚がおかしいのかな?)」
最上にとってコーナーに突っ込むことは決して怖い事ではなかった。
それは度胸があるというよりは、一種の神経が麻痺しているというべきか…
とはいえ首都環状をここ数週間ずっと走り込んでいる事もあり、経験も積んでいるのは確かだ。
シビックと言う、最初に乗っていたスイフトスポーツと似た挙動のマシンに乗っていることで…彼女の才能をフルに引き出していることもあるのかもしれない。
彼女にとって相性ピッタリのマシンに乗ったことが、やはり大きいのかもしれない。
「(…いや、これが普通なんだろうね。『速い』って言われる人たちの中では。なら僕にとっては、逆に都合がいいかな)」
280キロオーバーでアクセルを踏み続ける最上。
前方に迫る一般車やライバルカーを右へ左へとハンドルを丁寧に曲げて滑らかに避けていく。
だがそんな彼女の願いは…今はただ、単純に速く走りたいというもの。
そんな思いが心の奥底で燻る最上にとっては、「異端者であること」は逆に好都合だと思った。
異端者であれば、普通のドライバーとしては埋没することはない。
速くなれるというのであるのならば、それほどまでに好都合なことはないのだ。
そう最上が認識したところでシビックは時速285キロに到達するのだが、そこでカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。
「(でも上には上、かあ。GT-Rもそうだけど、まだ最速になるためには…ってところかな)」
勝負がついて300キロオーバーからゆっくりと減速させていく中で、最上はふと思った。
今のシビックの上には更にスペックのあるマシンがいる。
GT-R、NSX…言うまでもないスーパーカークラスのマシンだ。
もし自分が「その領域」に踏み込むことになるというのならば、いずれ乗り換えることになるのだろうか…
最上はそう思うのだった。
横羽線上りの残党を狩りながら北上するシビック。
天王洲、芝浦を通過し、浜崎橋手前へとやってくる。
京浜運河沿いのライバルと天王洲のライバルを2人倒したところで、クーリング走行に入っていた時だった。
台場線からの合流を経て浜崎橋を右方向…都心環状線へと進もうとすると、後方からパッシングを浴びる。
推奨BGM:超獣戯画(from GITADORA Tri-Boost)
「(台場方面からの合流?まさか僕にバトルを…?)」
後方からやってきた黄色のマシン…ランサーエボリューションファイナルエディション。
随分とチューンがされているような、あまりにもド派手な「サル」のようなマシンだ。
カーナビには「クレイジーモンキー」と書かれている。
どうやらチームには所属していない実力者らしい。
実際「Phantom9」とは書かれていた。
「(クレイジー、モンキー…?Phantom9かぁ…)」
最上にとっては正直、相手の事はどうでもよかった。
バトルとなればどんな相手でも受けて立つのがここでのルールだという事は嫌でも理解していたからだ。
実力者を倒せばまた自分の名を上げることが出来る…それくらいの気持ち。
とはいえ勝負を仕掛けられたのならば受けて立つまで。
そんなどこか軽い気持ちでありながらも、勝負を受けるつもりだった。
2台がテールトゥノーズの状態の状態のまま都心環状線内回りへと合流…3車線となったところで、カーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
3車線区間でアクセルオン、シフトアップを含めて速度は一気に3速160キロまで加速する。
後方のランエボも食いついては来ているが、スタート直後の出だし勝負ではほぼ互角と言うべきだろうか。
だが3車線区間で前方に汐留S字コーナーが迫る中で最上はふとあることに気が付く。
「(後ろから挑発しに来ている)」
蛇行運転とまではいわないものの、後方のランエボは明らかに自分を追い抜きに来ている。
テールトゥノーズの状態のままではあるが、そんな中でパッシングをして意識を散乱させようとしている。
何が何でも隙を作って、追い抜こうとしているのだろうか。
「(でも、そんな走りで僕が動揺すると思ったら大違いだよ!)」
挑発するかのような走りに対しても、最上はどっしりと構えていた。
相手の挑発には乗らず自分の走りをとことん貫く…それが最上のマイペースな走り。
バトルの時においても自分の走りを貫くという、一種のマイペースさが最上の強みにもなっていた。
目の前には汐留S字における最初の左コーナーが迫る。
「(…自分のやり方を貫けば、僕ならいけるんだ!)」
自分の走りを貫くことこそが速くなる秘訣であることを、ここ数週間ずっと首都環状を走り続けることで最上は気が付いていた。
直線で速いドライバー、カーブで本領を発揮するドライバー、正統派ドライバー、邪道なドライバー。
これまでにかれこれ200戦以上はしているが、本当に様々なドライバーがいる。
だがそんなドライバーたちに対して、最上はずっと「自分の走り」を貫き続けてきた。
惑わされないこと、自分らしさを示すこと。
それが首都環状で速く走るための秘訣であることを彼女は気が付いたのだ。
相手が自分を動揺させるくらいなら…それに惑わされることなくさっさと逃げればよい。
そう最上は思った。
180キロで走るシビック、それに追従するランエボ。
緩いコーナーという事もあってスピーディに走り抜ける2台だが、次のコーナーは流石にブレーキを掛けなければならない。
「―――」
アクセルオフからブレーキを一瞬だけ踏み込み、160キロまで減速した上でハンドルを右に曲げて再びアクセルオン。
一番左の車線へと移っていたシビックだが、今度はインコースへと攻め込んでいく。
一方でランエボもそれに食いつくかのように…正確には最上以上にハンドルを曲げてインコースへと突っ込んでくる。
だがハンドルの舵角はどちらかと抑えめで、コーナー内側までは攻め込まない。
真ん中の車線へと移るシビックだが、次の瞬間。
「(ここだ!)」
アクセルを抜いた瞬間、更に右へと曲げるシビック。
旋回時のタックインである。
一瞬アクセルを抜くことでさらに旋回させ、ハンドルの舵角を抑えつつ瞬発的な速さで回頭。
マシンはコーナー脱出時の勢いを維持したまま加速する。
一方で後方のランエボは、そのタックインに油断したのか加速してもついて来れず…2台の車間距離を離す切欠になった。
コーナー2つで車間距離は離れ、そのまま汐留JCTから汐留トンネルへの下り坂ストレート区間。
コーナー脱出時のスピードが速かったシビックは、そのままストレート区間でもアクセル全開で駆け抜けていく。
後方のランエボはコーナー脱出速度の差もあって、みるみるうちに離されていく。
「(この車の走り方、もう結構板についたかな)」
汐留トンネルに入り右高速コーナー。
一般車両を避けつつ走り抜けるシビックだが、加速は収まらない。
都心環状線と言う比較的狭いコースで240キロ以上まで踏み込み、そのままの勢いで汐留トンネル出口の左高速コーナーも脱出する。
この時点で既に後方のランエボとの車間距離をかなり引き離しており、数にして50m近くは引き離している。
普通の相手の多くがアクセルオフで減速するような高速コーナー…汐留トンネル内の2つのコーナーでもアクセル全開で駆け抜けていく最上の走りは、やはり異質というべきなのかもしれない。
最上のシビックはトンネルを抜け、銀座方面へ。
だがアクセル全開でシビックを走らせる中で、最上はふと考え事をしていた。
「(それにしてもPhantom9かぁ…遂に実力者のお出まし、だね。まあ、僕としては寧ろ待っていたってところだけど…)」
最上としてはチームのドライバーたちを多く倒してきた以上、そろそろ来るのではないか…と思っていた。
シビックに乗り換えて以来敵と言える敵がどんどん少なくなっている。
GT-RやNSXといった明らかな格上のマシンにも挑むことや挑まれることも多くなったが、それでも例のチューナーがチューンしただけあってどんどん倒していけてしまうのだ。
以前のスイフトスポーツやRX-8の時に比べると明らかにパワーで食らいつけている。
280馬力級のマシンならともかく、GT-RやNSXといった国産トップクラスのスポーツカー・スーパーカーにも引けを取ることはない。
普通であれば400馬力級のシビックでは、それ以上の馬力を誇るGT-RやNSXに力負けしてもおかしくはないのだが…それでも比較的容易に勝つことが出来るのは、首都環状への順応とマシンとの相性などがあるからなのだろうか。
そう最上は振り返るのだった。
そしてそれらの思いを頭の中で巡らせる中で、シビックは銀座手前のS字コーナーから銀座出口横を通り抜けていく。
それと同時にカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。
Phantom9のドライバーの1人「クレイジーモンキー」を倒した最上の前に、実力者たちが現れるのは時間の問題であった。
(第18話End)