「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で-   作:カービィ改二

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お待たせしました。
「いつ環」1話投稿です。
本作は前作の反省を生かし…どちらかと言えば文章少なめに、シンプルにやっていく方針です。
新たなる音楽とともにお楽しみください。


もう1人の少女の目覚め編
act.1「Coincidence(偶然の出会い)」


推奨BGM

「箱根の時雨」こと時雨、そしてその相棒こと奈美子。

彼女たちは…首都高で伝説を作った、奈美子の父親が「首都高で何をしたのか?」を知るために首都高を走り抜けた。

10年前の最速、「ライジング・サン」と出会いによって父親がニューヨークにいると判明し、彼女たちは一路ニューヨークへと飛んだ。

 

時雨と奈美子が起こしたその嵐は収まり、再び首都高を混沌が包み込もうとしていた。

 

 

「令和首都環状を揺るがす12200トン」が、新たなる伝説を生む……

 

「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル

2025 -いつかあの環で-

 

 

 


 

 

 

推奨BGM:LIMITATION(from KEYBOARDMANIA3rdmix)

―――奈美子、時雨が首都高エリアで名を徐々に上げている時期。

都内某所、夕方。

住宅街から少しだけ離れた路地にある、ガレージ付きの一軒家。

1人が住むにしてはあまりにも広すぎるその家に、「彼女」はいた。

 

「(…ああ、いけない。仕事の時間だ)」

寝癖が付いてぼさぼさの髪の毛を整え、服を着替える彼女。

緑髪ショートヘアの、一見すると男にも言える出で立ち。

「航空巡洋艦」の少女こと最上本人である。

だが最上、というのは彼女の正確な名前ではない。

昔からそう呼ばれていたのであり、彼女も気にいっている。

何事もそつなくこなす、ということから「最上」…つまり、「もがみ」と呼ばれるようになったらしい。

そんな彼女は服を着替え、髪を整えて帽子をかぶる。

 

「さて、と…服も整えたし、行きますかぁ」

制服に着替えて帽子を被った彼女は、業務用のカバンを手に持ち…そのまま玄関へ。

玄関から外に出たところで鍵をかけ、彼女はガレージへと向かう。

白いボディに青いラインが入り、提灯が付いたクラウンアスリート。その車は緑ナンバーだ。

 

「(この時間帯なら、郊外も少しずつ人が増えてくるはず…今日は何処に行こうかな〜)」

そう、彼女の職業は…個人のタクシードライバーなのだ。

乗りなれているかのように彼女はクラウンに乗り込み、エンジンをかける。

ガレージを出たクラウンはゆっくりと住宅街から郊外へと走っていくのだった。

 

 

 


 

 

 

推奨BGM:Skyscraper(from beatmaniaⅡDX3rdstyle)

―――数時間後、晴海通り銀座付近。

23区の北側から都心部へ。

色々とお客を拾いつつ金稼ぎをしながら走っていたら、銀座に来ていた。

時刻は既に2時を回っており、最上はずっと不休で走り続けていた。

というのも、走り続けるのには理由がある。

 

「(はぁ~走るのが楽しくて、こんな時間まで走っちゃった。やっぱり、色んな所を走るのって楽しいなぁ)」

そう、最上にとって走りながらお金を稼げるタクシードライバーは文字通りの天職。

車の運転を仕事にしたいと考えていた彼女は高校在学中に免許を取り、そこからタクシー会社に就職。

会社ではその気遣いや行儀の良さもさることながら常にトップの成績を収めることで、「最上のタクシードライバー」とまで評されるほどに。

そんな彼女はつい最近になって会社を退社…現在はフリーのタクシードライバーなのである。

ちなみに現実においては最低10年は会社勤めが必要だが、彼女の場合はよっぽどの実績があったのと…本作の世界ではそこまでの時間が必要としないことを明記しておく。

そして同時に、この時点で今日の目標金額はとっくのとうに到達していた。

 

「(今日の目標はとっくのとうに達成したし、そろそろ…ってあれ?)」

ホルダーに置かれていたスマホに通知が入った。

 

「(予約?霞ヶ関かぁ…官庁勤めの人かな)」

タクシー配車アプリからの連絡により、霞ヶ関付近に多くの客がいることを把握。

この時間であれば、激務な官僚だろうか。

こんな遅くまで仕事なんてご苦労様である。

普通ならそれなりに遠いし、一般道路故に信号に捕まるかもしれないが…彼女にはある作戦があった。

 

「(まあ、いいか。この際首都環状をかっ飛ばしていけばすぐのはず!この仕事が終わったら帰ろうかな)」

首都環状。

深夜の首都環状はバトルが盛んだが、一般車も走れないわけではない。

だが一方で、バトルがあまりにも盛ん故に…会社勤めだった時に同僚や先輩・後輩といったドライバーたちは皆首都環状を走ることを避けていた。それはやはり暗黙のルールであったからかもしれない。

実際自分もあまりそこを走ることは気乗りがしなかった…のだが、個人ドライバーとして独立してからはもうどこを走ろうと個人の勝手。

今は少しでも早くお客を拾い上げる必要がある…そう思った彼女は、近くの首都高銀座入口へとタクシーを走らせるのだった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

推奨BGM:Crosswind(from jubeat)

―――数分後、神田橋入口付近。

最上が操縦するクラウンタクシーは60キロで走行しながら、霞ヶ関へと向かっていた。

固定していたスマホの通知はまだ来ていた以上、やはり霞ヶ関あたりでお客が複数いるようだ。

これならば少しペースを落としても大丈夫かもしれない…そう思った。

 

「(やっぱり首都環状はバトルが盛んだからか、あまり走ってる人が少ないなあ…)」

最上が個人的に車を走らせることは少ない。

運転が好きであるのと同時にお金を稼ぎたいからタクシードライバーになったのであって、彼女はマイカーを持っていない。

だから都心部を走るのも神奈川を走るのも、基本は今のクラウン…個人タクシーに乗っている時だ。

首都環状は昼は無料開放の一般道路、夜はシティサーキット。

そんなこともあって昼間の首都高は何度か走ったことがあるが…それでもお客の乗り心地の事を考えると、彼女としてはあまり気乗りしなかった。

走ると言っても、昼間も夜も基本は迎車や客探しの移動のため。

お客を乗せて走ることなんてものは前の会社でもそうだったが故か…今の最上にとってもご法度だった。

まあそもそもあまり首都高や首都環状を使った移動を求める客が少ないという事もあるのだが。

環状線へと合流したクラウンタクシーは、そのまま左車線を維持して竹橋JCTへと走っていく。

 

「(少し急がないとね…)」

速度計は50キロから70キロまで加速し、竹橋JCTへ。

そのまま左車線を維持して都心環状線方面へと走っていく。

だが、竹橋JCTを左方向に進もうとしたところで目の前にあるものが見えた。

 

「(あれは…スポーツカー?)」

黄色い古めのスポーツカー。

たしか、ハチロク…と言っただろうか。

エアロは大きく改造されている…走り屋、という部類のドライバーだろうか。

夜の首都高だからそんなドライバーがいても珍しくはないのだが…

左車線を走っている以上、マシンが迫ってきている。

こうなれば…

 

「(今は客がいるからね。追い抜こう!)」

先客がいる以上、今は追い抜くべきだ。

そう思ったからには、最上はウインカーを出して右車線へ。

本来ここは進路変更禁止区間だが…シティサーキットとなった以上関係はない。

今は霞ヶ関へと急ぐのが先決だ。

そう思ったところで、最上は軽くアクセルを踏み込んだ。

 

「うわっ、びっくりした!」

黄色のハチロクのドライバー…「弱気のチャレンジャー」。

ボーっと運転していた彼の右横を、個人タクシーのクラウンが追い抜いていく。

驚いたあまりハチロクのアクセルを踏み込んでしまっていた。

だが、その次の瞬間だった。

 

推奨BGM:CaptivAte2 ~覚醒~(from beatmaniaⅡDX16 EMPRESS)

「あっ…」

驚いたあまり、うっかりハンドル左側に取り付けられているレバーを引いてしまった彼。

そうなったらどうなるか…?

ハチロクトレノのフロントライトが普通以上に眩く光る。

それも…追い抜いたクラウンタクシーに対して。

 

「(パッシング?煽ってきた?)」

パッシング。

首都環状でそれを受けるという事はどういうことなのか…ということは、会社勤めの際に散々聞いていた。

首都環状エリアでは、「走り屋」同士によるバトルが盛んであるという話は聞いている。

そして自分に対してそれを向けられるという事は…相手からの挑発であり同時に挑戦状であるという事。

だが、タクシードライバーである最上にとってそれはあまりにも迷惑だった。

何せ相手は走り屋であり、自分はただの一般人。

言ってしまえば弱い者いじめだ。

ではもし、そんな状況に遭遇したらどうするか?

…答えは1つだけである。

 

「(なら…逃げちゃおう!)」

パッシングこそがバトルの合図。

そのこと自体は最上も知っていた。

夜の首都高において、走り屋のバトルはパッシングで始まる。

そんなことは、首都高を時々走る彼女でも知っていた。

バトルを仕掛けられたのなら、もうやるべきことは限られている。

面倒ごとに巻き込まれる前に…逃げるまで。

それに今は、お客が待っているのだ。

パッシングを受けた以上ハザードを付けて一瞬だけスローペースに落とす。

速度が60キロとなったところでテールトゥノーズ。

すると、ハザードが消えたハチロクトレノが後方から接近する。

バトルが始まったようだ。

 

「(煽られたなら、逃げるに限るさ)」

後方からゆっくりと加速してくるハチロクトレノ。

それを見越したかのように、最上もアクセルを踏み込む。

北の丸トンネルに飛び込む直前、3.4リットルのDOHCエンジンが…彼女の意志に従うかのように咆哮する。

テールトゥノーズの状態だったが、アクセルを全開に踏み込んでいたこともあって徐々にハチロクとの差を開いていく。

 

「(…速い!?)」

誤って一般車両にパッシングをしてしまったとはいえ、弱気のチャレンジャーは愕然とするしかなかった。

だが相手のスペックの事を考えると無理もない。

何せクラウンアスリートはノーマルでも315馬力。

せいぜい100馬力台のハチロクトレノでは加速に差があっても全くもって無理もない話なのである。

必死になってアクセルを踏み込み続ける弱気のチャレンジャーだが、そもそものマシンスペックが違いすぎることを考えると…振り切られても無理もない話だった。

左車線から右車線へと移ったクラウンタクシーは、そのまま

 

「(アクセル全開で踏み込み続けていたけど、どうかな~)」

最上のタクシー歴は長いが、この車はまだ購入して半年程度。

だが一方でほぼ毎日半日以上乗っているというのであるならば、自然と経験値も積めるものである。

北の丸トンネルに入り、スイスイと逃げていくクラウンタクシー。

逃げるが勝ちと言わんばかりに最上は遠慮なくアクセルを踏み込んでいく。

 

「(ずっと乗っているから、この車のことはわかってる!)」

最上は自分のマシンのスペックの事をしっかりと把握していた。

アクセルで加速するだけならだれでもできるが、どこでどうブレーキを踏めば減速するのか、どれだけハンドルを曲げれば曲がるのか…というのは、ずっとこの車に乗っていた最上だからこそわかっているものだった。

とはいえノーマルマシンであるのでやはり加速には限界もあるのだが。

それでも遠慮なく150キロ以上出すことが出来ているのは、彼女がこの車の事をよくわかっているからか。

前方に右高速コーナーが迫るが、最上はハンドルを軽く曲げた上でアクセル全開で突破していく。

 

「(信じられない…首都環状って、一般車もこんなにレベルが高いのか…!?)」

一方、北の丸トンネルに入っても130キロ台しか出ていないハチロクトレノ。

いくら整備が施されていても、ノーマル同然のマシンでは明らかに不利だった。

ドライバーである弱気のチャレンジャーは愕然とするしかなかった。

ついうっかりバトルを仕掛けた個人タクシーだったが、あっという間に置いてけぼりに。

クラウンタクシーは彼の視界から消え、あっという間に勝敗が付いた。

 

「(くそぅ…)」

ドライバーである弱気のチャレンジャーはそう負けを認めるかのようにアクセルを抜くのだった。

よりにもよって一般車両に勝負を仕掛けて敗北するなんて思ってもいない事態だった。

 

「(…置いてけぼりにしちゃった?)」

一方の最上。

皇居のお堀の横を走るクラウンタクシーの中で、最上はバックミラーを確認。

煽られた以上逃げるに限ると思ったあまりアクセル全開で踏み込み続けていた。

そして、バトルに勝った。

こんなことになるとは思わなかった。

先程煽ってきたハチロクトレノは完全に姿を消していた。

 

「(はあーよかった。まあ、丁寧かつ速く走るのには慣れているからね…)」

安堵した最上は、アクセルを抜いてブレーキを踏み込んで減速させる。

速度は170キロ台から80キロ台まで減速した。

そしてそのまま右車線を通りながら千代田トンネルへとクラウンタクシーは飛び込んだ。

煽られた以上どうなるかと思っていたが、今回ばかりは彼女に分があった。

やはりノーマルでも300馬力以上を誇るクラウンアスリート。

そんなタクシーなのだから、パワー差で圧倒してもおかしくはない話なのだが。

後方に安堵した彼女は、自然とアクセルを抜いていた。

アクセルを抜いた時点で速度は170キロ…スピードリミッターギリギリまで加速していたことを考えると、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。

ノーマルマシンという事もあって水温も油温も上がりまくっていたが、それでもクーリング走行で徐々に下がっていく。

そんな中で分岐を左に向かい、着実に霞ヶ関へと歩みを進める。

だが一方で最上には、ある違和感を感じていた。

 

「(でも…なんだろう?この、少しだけ熱くなったかのような気持ち…)」

最上の中に生まれた、ふとした感情。

バトルをしたことで、彼女の中に不思議な感情が芽生えようとしていた。

バトルに勝つこと、による爽快感。

今までそんなことは感じたことが全くなかった。

あまりにも新鮮な感覚だ。

 

「(こういうことを求めて、走り屋の人たちってバトルをしていたのかな…)」

相手を打ち負かして勝つこと、というのははっきり言って爽快だった。

この爽快感を求めて、走り屋たちはバトルをしていたのか。

シティサーキットで名声を上げるためだけではなく、一種の爽快感を得るためにバトルをしていたのか。

最上にとってはそう認識した。

そしてそれは、あまりにも不思議な感情だった。

何故首都高を走るのか…何故バトルに明け暮れるのか。

彼女は、疑問を解決したいと思うようになっていた。

だが、80キロで走り続けるクラウンタクシーは前方の右コーナーへと接近していく。

 

「(おっと、霞ヶ関だ)」

目の前に迫る霞ヶ関出口寸前の右直角コーナー。

ここを抜ければすぐ霞ヶ関。

そう思った彼女は、ブレーキを踏み込んで右ウインカーを出したかと思いきや…ゆっくりとハンドルを右に曲げてそのまま霞ヶ関出口へと向かうのだった。

 

 

 


 

 

 

推奨BGM

―――1時間後、東京郊外。

霞ヶ関で客を拾った最上のタクシーは、終電を逃した官僚を乗せて東京23区西部…場所としては荻窪方面へと到着していた。

 

「どうも…」

「毎度ありー」

一軒家の前で停車し、お金を受け取った最上。

霞ヶ関から数十分運転しただけで1万円以上稼げるのだから、夜のタクシーも楽な商売である。

しかしお客の顔色は悪かったのは、やはりそんな職業であるからなのだろうか。

霞ヶ関の省庁勤めの人間だったり、大手法律事務所の弁護士だったり、外資系のコンサルタントだったり、更には商社マンだったり…お金をもらえるのはいいかもしれないが、体を壊すのはどうかと思う。

そう考えると、運転に気を付ける必要があるとはいえ…好きな時に働いて好きなだけお金を稼げる個人タクシードライバーと言うのは、人によってはとんでもない職業なのかもしれない。

種別を再び空車へと変えた彼女は、小道から大通りへと出てそのまま自宅へと車を走らせる。

そんな中で彼女はある感覚を抱きつつもあった。

 

「(今まで僕は夜の首都高や首都環状を走ったことがなかったけど…あんなことが盛んに行われているんだ。そりゃあ、会社側も『首都環状に行くな』なんて言うよね…)」

この日最上は、それまで禁じられていた空間へと飛び込んだ。

そして、偶然にもバトルを受けて…勝った。

偶然の出会いが切欠で、彼女は…バトルするという事がどういうことなのかを知った。

禁断の果実を齧った瞬間だった。

 

「(首都環状でバトルをするって、どういうことなんだろう…?あの爽快感のために、走り屋は首都環状を走るのかな…?)」

首都高でのバトルとは、一体どういうことなのか?

何が走り屋たちを熱狂させるのか?

何が自分を魅了したのか?

最上にとっては疑問だった。

 

「知ってみたいな、僕も」

偶然のバトル、偶然の勝利。

それが、仕事には一途であるものの…何にも燃えることのない彼女の心に、火を点けようとしていた。

(第1話End)




作者のカービィ改二です。
念願だった新作、「いつ海×首都高バトル」…その第1話、いかがでしたでしょうか。
既に書いた通り、本作は最上の物語…それも時雨がアメリカに渡っている間の物語です。
そしてそうである以上…BGMも思い切って一新してみました。
カーレースに合うBGMはもっぱらユーロビート…であると思う方は少なくないのではないでしょうか?
しかしそれではあまりにもありきたりすぎる…ならばと考えた結果、作者の趣味の一つである「音ゲー」…BEMANIシリーズのそれを推奨BGMとしてみました。
これだけでも作風と言うのはガラリと変わると認識しているのですが、いかがでしたでしょうか。
基本的に本作はレースBGMをBEMANIシリーズの楽曲(主に作者が遊んでいるⅡDX、DDR、ポップンあたり)から収録していく方針です。
また、ユーロビートに限らずハウスやポップス、トランス、更には音ゲーコアと呼ばれるジャンルの楽曲まで幅広く入れていきたいと思っています(勿論ボス曲も入れる見込み)。
今年いっぱいは連載していく予定ですが、BGM含めて楽しんでいただければと思います。
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