「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
シビックで快調にライバルたちを倒していく最上の前に、Phantom9の3人が迫る…
FL5シビックに乗り換え、快進撃を続ける最上。
その実力に多くのドライバーが敗れ、そして彼女自身も一戦一戦で確実な成長を遂げる。
だがそんな中で、例の<Phantom9>のドライバーたちが迫ろうとしていた…
―――横羽線下り、平和島PA。
クレイジーモンキーを倒した翌日であるこの日もコースインしていた最上。
マシンセッティングを整えて移動しようとした途端、3台のマシンが最上の前に現れた。
知らない相手だが、最上にとっては車体に貼られたエンブレムに見覚えがある。おそらく<Phantom9>のメンバーだ。
お互いにマシンを降り、品定めをするように対峙する。
相手の3人組はクレイジーモンキー、ダーティーフォックス、そして砂塵の帝王と名乗った。
「アンタ、このあたりのチームを片っ端からツブして回ってるんだって?オイラたちとやってること一緒じゃね?ひょっとして、<Phantom9>をリスペクトしてたりする?」
「…リスペクト?」
「ハハ、冗談冗談!“キラキラ走り屋”のアンタは、アオハルを楽しんじゃってるだけでちゅもんね〜」
どこか挑発するように言葉を放つクレイジーモンキー。
だがここで最上はあることに気が付いた。
「でも、あなたは僕に負けたよね?何しに来たのさ?」
「うげっ!!」
そう、クレイジーモンキーは既に最上に敗れているのだ。
だがその言葉を聞いた砂塵の帝王とダーティーフォックスが白い目でクレイジーモンキーを見る。
どうやら2人はクレイジーモンキーが負けたことを知らないようだ。
「…今の話、本当か?」
「なになに?もしかして隠してたのぉ~?」
「そ、それは…ハッタリなのヨ、ハッタリ!!」
「いや、ドラレコもあるはずだけど」
しどろもどろになって釈明するクレイジーモンキー。
だがバトルの様子は常にドラレコで記録されている…畳みかけるように最上はそう言い放った。
「は、ハハ…アンタ、痛いとこ突いてくれるじゃねえか。でも、オイラたちは違うぜ」
「うわ、開き直った態度ダッサァ…」
「聞こえてるよぉ!」
「…それで、僕に何か御用?」
クレイジーモンキーが裏で敗北したという話を聞いた以上、彼の信用は失墜したも同然のようなものだった。
それでも平然と話を続けようとするその態度に、ダーティーフォックスはすっかり呆れていた。
するとその様子を見かねた砂塵の帝王が話を続ける。
「んん…首都環状のすべての走り屋を徹底的に痛めつけてやれってのが、うちのリーダー…2代目スネークアイズの命令だからな。当然、お前さんもその対象だ。まあ俺個人としては、お前さんや他チームの連中に対して、何か恨みがあるってワケでもないがね。悪く思うなよ」
「はあ…ところで、スネークアイズが2代目って?」
砂塵の帝王曰く、最上は狙われているらしい。
だが一方で最上としては気になったところに質問を投げる。
それに答えたのはクレイジーモンキーだった。
「あ、知らなかった?今のスネークアイズは、4年前にいた先代とは別人なのヨ。先代からチームと名前を継いだのが、新しいリーダーってわけ」
「へえ…そうだったんだ」
クレイジーモンキーが説明すると、ダーティーフォックスが呆れるかのようにこう口を開く。
「そんな話どうでもいいじゃん。この人って強いんでしょ?うちのチームに興味なーい?潰しちゃうより、そっちの方がよくなーい?」
「ちょちょちょ~、コイツ入れたら“ナイン”じゃなくなっちゃうじゃ~ん?誰かクビにしないとさぁ~~。<Phantom9>に一番要らないやつをさぁ~~」
「え〜。そんなの、負けたことをずっと黙っていたお前しかいなくな〜い?別に、オタクくんでもいいけどぉ」
「たは〜!ダーティーフォックスちゃん、キビシ~~!」
「いや、負けたことを黙っていたのならボスも許さないでしょ…」
ダーティーフォックスとクレイジーモンキーが漫才みたいな会話を続ける中で、砂塵の帝王が最上に話しかける。
「ま、いずれにせよスネークアイズ坊ちゃんは、メンツを潰された相手をタダで迎え入れるほど甘くはねぇよ。お前さんは黒崎三兄弟に土をつけ、<Phantom9>の名に泥を塗った…その償いをしてもらう必要があるぜ」
「償い?」
「そーゆーわけだから、オイラたちも本気でやらせてもらうねぇ。上下関係ってモンをはっきりさせなきゃな」
ここまで4人は長々と話したが、結局のところバトルすることは避けられないようだ。
そう認識した最上は、呆れ気味にこう口にする。
「ダラダラ話してたけど…バトルってこと?まあ、別に今からでもいいけど…1対2でも何でもいいから、かかってきてよ。僕はあまり時間を掛けたくないんだ」
因縁を吹っ掛けられるのはあまりいい気がしないが、バトルと言うのであるならば…と最上は思っていた。
様々な走り屋たちから注目されている以上、バトルは避けられないということは最上自身がよく理解していたのである。
「ハハッ、わかってるじゃねえか!…ってあれ?1対2?」
クレイジーモンキーが疑問を口にした。
ここにいるのは4人だが、1対2ということは3人。
これは一体どういうことなのかと言おうとしたところ、納得したかのように砂塵の帝王がこう呆れるように言った。
「コイツがそう言うのも当然だろう?お前はコイツに負けたんだ」
「そーそー、お前みたいな負け犬君は後ろで見ていればいいんだよ~」
「ハァ!?オイラに指くわえて見てろってぇ!?」
「そうだ、見てな」
「いや、あの勝負はオイラは本気を出してなかっただけで…!」
「でも、負けたんでしょ~。あれだけかましておいて、負けていた事を隠していたわけだし~当然だよね~?ボスから怒られそ~」
「そ、それは…それにしても、あんまりだと思わな~い?」
「黙っていろ負け犬」
「うう…」
バッサリと言い切った砂塵の帝王やダーティーフォックスに対して落胆するクレイジーモンキーだが、2人はもはや彼が存在しないかのように最上と会話を続ける。
「コイツのことはもうどうでもいいから…俺やダーティーフォックスと勝負しろ。いいか?」
「…わかった。始めよう」
「んじゃ、よろしく~」
最上とPhantom9の2人…砂塵の帝王とダーティフォックスとの戦いが始まる。
―――負け犬であるクレイジーモンキーは平和島PAでお留守番の羽目になってしまったのだが。
―――vs砂塵の帝王・ダーティーフォックス
平和島PAからコースインし、空港西方面へと2台が向かう。
最上のFL5シビックが最後尾、砂塵の帝王のランエボ10とダーティーフォックスのFD3Sが先行する。
推奨BGM:Babel ~Grand Story~(from pop'n music19 TUNE STREET)
「(1対2のバトルくらいなら、まあ慣れてるけどね)」
最上にとっては1対2のバトルは初めてではなかった。
これまでのチームメンバーとの戦いにおいても乱入されることや連戦はあったし、複数人数とバトルしたことだってある。
だから正直あまり普段とやることは変わりなかった。
それと同時にある気持ちも抱いていた。
「(Phantom9だか知らないけど、まあバトル相手にあることは変わりないし…)」
Phantom9という実力者集団ではあるが、結局のところ「バトルをして勝ちに行く」と言うこと自体は結局のところ変わらないのだ。
実力があるの言うのならそれはそれで倒し甲斐があるし、自分の名声を広げることが出来る。
正直最上は名声とかは興味はないが、やはり彼ら彼女たちが走る理由を…頂点になることで知りたいと考えていたのである。
だからこそ、速い人は倒しに行く…それくらいの気概だった。
湾岸線からの合流地点において、ランエボが左車線、FD3Sが右車線を走り、シビックが左車線を走る中でカーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
スタートと同時に先行するFD3S、ワンテンポ遅れたランエボ。
だがそれはまるで最上と相手をするかのように…いや、最上を前へ行かせまいと足止めするかのようだった。
それでも体力ゲージは減っていない。
ギリギリの位置を維持しているというべきだろうか。
クラッチを切ってシフトを2速から3速、そこから加速し続ける。
「(青い車が先に行ったけど、1台1台調理すればいいだけの話…)」
車間距離がそこまで広がっていないと認識した最上は、「一人一人始末する」というやり方で挑む。
1対2は基本的に自分が不利であるという事は、これまでの戦いにおいても経験した以上理解はしている。
だからこそ、ここで必要なのは賢いドライビングだ。
走りを見たところ両方が一気に襲ってくるわけでもない以上片方ずつ始末すればいいだけの話だ。
湾岸線からの合流区間を経て空港西トンネルへ。
FD3Sが先行するが、その後方20m程度のところでシビックとランエボが争っていた。
互いに230キロ以上のスピードで飛ばしているが、それでも車間距離が広がることはない。
ランエボとシビックの車間距離はテールトゥノーズの状態を維持したまま、左車線を走り続ける。
「(コイツ…!)」
砂塵の帝王にとっては先行しているのはいいが、それでも後方からプレッシャーを感じる。
それも、並大抵の走り屋ではないそれであった。
スネークアイズが注目するのも無理もない話である。
なぜならそのスネークアイズとほぼ同等の迫力を持っているのを、感じることが出来たのだから。
空港西トンネルを走り抜ける3台だが、砂塵の帝王は徐々にプレッシャーに押されつつあった。
「(この先の直角コーナーで勝負を付けるか…いや…)」
最上としては前方のランエボが少しずつ動揺しているのを見切っていた。
だがどこで追い抜くか?
この先にもストレート区間が続く以上、先行するFD3Sに逃げられる可能性もあるのでは?
だったら多少無理をしてでも強引に追い抜くか?
鉄壁のブロックは遅かれ早かれ崩すことは出来るだろう。
だが時間をかけてはならない…多少の博打となってでもいいから追い抜きに行く。
そう最上は決心する。
3台は連なったまま空港西トンネルを抜け出し、空港西出口方面へ。
「(この先のコーナーで内側に攻めるか…?)」
空港西出口直後にはアクセルオフで抜けられる右コーナーがある。
ここで内側まで攻めることが出来れば多少は事態が変わるかもしれない。
250キロオーバーの中で最上はふと思った。
とはいえ、インコースを攻める以上向こうがブロックしてくる可能性があるのは言うまでもないのだが…
だが、次の瞬間最上はあることに気が付く。
「(内側がガラ空き?…ここだ!)」
右コーナーなので本来はインベタで抜けられるのだが、なぜか前方のランエボは左車線を走っている。
それも、アウトインアウトのラインを描くとした場合でも明らかにアウトコース。
これは一体どういうことなのかはわからないが、最上は左車線から右車線へとシビックを移動させて追い抜きにかかる。
前方のランエボは未だに左車線を走っているが、アクセルを抜いたのかみるみるうちに車間距離が狭まっていく。
コーナー突入直前には左車線がランエボ、右車線のセンター寄りがシビックと言う形で陣取っている。
アウトコースであるランエボが不利なのは言うまでもないだろう。
だが、次の瞬間だった。
「(おおっと…!)」
「―――っ!?」
コーナーに飛び込む寸前に最上は多少動揺した。
何とコーナー出口には…右車線にはNAロードスターがいたのである。
砂塵の帝王は右コーナー中間にNAロードスターがいることを見越して左車線を走っていたのだ。
だが最上も咄嗟の判断で、元々右へ曲げていたハンドルをわずかながらセンターに戻すことでシビックを中央線を跨ぐように移動させた。
しかしそれは同時に左車線を走っていたランエボとの隙間は数十センチと言うレベルにまで接近する羽目になる。
それでも最上は全くもってアクセルを抜くこともなく、速度差を生かして隙間から強引にオーバーテイク。
とんでもなく強引な追い抜きだが、同時にランエボは右コーナーにおいてアウトへと膨らむ格好となる。
「(ありえねえ…ふざけるな!!)」
砂塵の帝王としては愕然とするしかなかった。
インコース…右車線に一般車がいたのだが、それを意に介さないかのようにコース中央スレスレを陣取ったかと思いきやサイドバイサイド。
そこから外側に膨れたランエボを見越したかのようにシビックは強引に内側からオーバーテイク。
空港西出口直後の右コーナーであっさりとランエボは追い抜きを許してしまった。
シビックはそのまま前方を走るFD3Sを目掛けて走り抜けていく。
推奨BGM:九尾狐夜行(from GITADORA OverDrive)
「(ランエボが…抜かれた!?こうなったら…)」
一方のダーティーフォックス。
正直この先の羽田から大師までの区間でニトロを使って逃げ切ろうと思っていた。
だがよりにもよって空港西付近で砂塵の帝王がオーバーテイクされるのは予想外だった。
FD3Sの後方に迫るシビックだが、ダーティーフォックスはそれを察知してFD3Sをシビックの目の前に移動、強引にブロックする。
そしてブロックするのと同時に、シビックの後ろには先程追い抜いたばかりのランエボがピッタリとくっついてきた。
「(挟まれた…?)」
前方のFD3Sと後方のランエボにピッタリと挟まれる形となったシビック。
その状態のまま羽田出口手前の左直角コーナーへ3台は飛び込んでいく。
直角コーナー手前でブレーキをかけるFD3S、それとほぼ同じタイミングでブレーキを掛けるシビックとランエボ。
ブレーキングからアクセルオン、そこからハンドルを曲げて右車線から左車線へと突っ込むFD3S。
そのまま羽田出口横を走り抜けていく。
アウトインアウトのラインを描いたFD3Sだが、シビックとランエボもそれに食らいつくように追従していく。
シビックの前方をブロックし続けるFD3S、後方からプッシュし続けるランエボ。
傍から見れば、最上は前門の虎後門の狼と言うべき状態かもしれない。
だがそんな状況の中で、最上は決してピンチだとは思っていなかった。
「(挟まれたからには…ここから先は直線区間。揺さぶってみるか…)」
最上は2車線区間において、シビックのハンドルをクイックに左右に曲げて強引に車線変更する。
それも2度3度どころの話ではなく何度も、である。
シビックが車線変更するのと同時にワンテンポ遅れてFD3Sとランエボも車線変更する。
シビックが右車線へ行けば2台も右車線へ。シビックが左車線へ行けば2台も左車線へ。
「(コイツ…一体何を!?)」
ダーティーフォックスとしては驚くしかなかった。
露骨すぎる揺さぶり。
ストレート区間で右へ左へと車を揺さぶらせ、相手の動揺を誘っているかのようだ。
羽田出口から大師料金所方面へと3台は連なって走行するが、真ん中のシビックに対してFD3Sとランエボは踊らされているかのようだった。
ボクシングで言うデンプシーロールのように、シビックは左へ右へと揺さぶり続ける。
シビックが左車線から追い抜こうとするならばFD3Sもワンテンポ遅れて左車線へ。
逆に右車線から追い抜こうとするならばFD3Sもワンテンポ遅れて右車線へ。
その繰り返しである。
「くうっ…」
前方を走るダーティーフォックス。
だが自分を翻弄・愚弄するかのようなシビックの走りに、後方に意識を持って行かれてしまう。
リードしているはずなのに、相手の走りに振り回されてしまっているのが現実である。
速度差がほとんどないのか、オーバーテイクを許すことはないが…それでもどこか油断をしたら差し込まれてしまうかもしれない。
予知して前もって別の車線に移動するのもよいが…それはそれで追い抜きを許すリスクもある。
今はただシビックが車線移動したらそこから追い抜かさないように強引にブロックするのが精いっぱいの状態であった。
FD3Sがシビックを必死にブロックし続ける中で3台は大師橋横を通過。
そんな状態の中で3台の前にあるものが迫る。
「―――!」
大師出口、大師PAと旧・大師料金所跡。
首都環状自体は既にサーキットと化しているので料金所の機能は存在しないが…それでも料金所自体は残されている。
レーンの中央部分に突っ込めばそれこそ大惨事待ったなし。
現状270キロ以上のスピードが出る中で、あの料金所へと突っ込んでいくのは下手なヘアピンを攻め込むよりも度胸が必要。
下手にスピードが出ている中で料金所に突っ込んでいくのは、やはり度胸が必要なのである。
それは実力者であるPhantom9のドライバーであっても、元・十三鬼将であっても、新世代の走り屋であっても…いや、誰でも250キロオーバーで料金所を通過するとなったら恐怖を感じるのが一般的なのだ。
流石のダーティーフォックスも料金所が迫る中で、アクセルを抜いた。
一方のシビックもアクセルを抜くだろう…と思われた。
だが、次の瞬間だった。
「(もらった!)」
「―――っ!?」
大師料金所直前、一番右のレーンを通過しようとしていたFD3S。
だが、それを見越したかのように…シビックはその1つ隣のレーンへ。
それと同時にダーティーフォックスは度胸試しに失敗したのか料金所直前でアクセルを抜いた。
一方の最上は全くもって関係ないといわんばかりにアクセルを踏み続ける。
数キロ程度とはいえ失速するFD3S、それと対照的にアクセルを踏み続けるシビック。
2台がそんな状態となった場合、どうなるかは言うまでもないだろう。
料金所の通過と同時に2台が並走状態になったかと思いきや、シビックはFD3Sを左サイドからあっさりと追い抜いてしまった。
料金所を抜け、ダーティーフォックスがシビックのリアを視認したところ…マフラーからは青い炎が吹き出ている。
ニトロを使って加速しているのだ。
本来一般的なドライバーであればだれでもアクセルを抜く場所で、最上は全くもってアクセルを抜くことなく料金所を通過させたのである。
「(乗せられた…走りにまんまと乗せられるなんてぇ~聞いてないよぉ~!)」
あまりにも度胸頼りなドライビング。
しかし一方で「ダーティー」と呼ばれる自分の走りをまるで罵るかのような、そんな強引なドライビング。
おそらく向こうのドライバーは最初から大師料金所で仕掛けるつもりだったのだろう。
まんまとやられてしまったことはダーティーフォックスとしては筆舌に尽くしがたい屈辱だった。
「(前へ出れたからには、二度と追いつかせるもんか)」
ニトロをふかし続けるシビックのハンドルをしっかりと握る最上。
300キロに迫るスピードの中でも、最上はしっかりと前だけを見続けていた。
追い抜いたからにはもう二度と後方は見ない…それくらいの気概だった。
大師料金所から浜川崎方面へ疾駆するシビック。
大師料金所からしばらく走ったところにある右高速コーナーをアウトインアウトのラインでシビックを走らせたところで、その後方のFD3Sとランエボは米粒大までに小さくなっていた。
「(あんなの追いつけないよ~)」
一つの判断の差によって、完璧に置き去りにされてしまったダーティーフォックス。
前方のシビックがもはや点となってしまった以上負けを認めるしかなかった。
「(これは、とんでもない奴だな…クレイジーモンキーが敗れたのも無理ないな…)」
一方、砂塵の帝王自身も実力を認めるようにそう思うのだった。
2人の視界からシビックの存在が消えかけようとしている中で、FD3Sとランエボのカーナビには数秒の差異こそあれどほぼ同じタイミングで「LOSE」の文字が表示されるのだった。
対戦相手の2台を置き去りにし、シビックは横羽線下りを300キロオーバーを記録しつつ疾駆していく。
―――大黒PA。
Phantom9という強者とのバトルを終え、一旦大黒PAで休憩を入れた最上。
すると、休憩を入れて車に乗り込もうとしていた時だった。
「失礼。おんしが『音速の闘将』いう走り屋かえ?」
「(方言…?)え?ああ、うん。そうだけど…あなたは?」
突然、和装の男に土佐弁で話しかけられたことで面食らった最上。
一体何者なのか、と最上が問うと男が説明し始める。
「わしは<Be Legend>が一員、不動心の龍馬。先のバトル、とくと見せてもらった」
「ああ、さっきのバトル見てたんだ?それはどうも。それで、<Be Legend>のドライバーさんが僕に何か用?」
不動心の龍馬…元・「シタール兼山」…元十三鬼将の1人である。
そんなドライバーが最上に話しかけに来ていた。
「先のバトルをみてわしは直感した…元・十三鬼将の名にかけて、おんしにバトルを挑むぜよ」
「やっぱり、バトル?まあ、別にいいけど…ってあれ?」
最上と不動心の龍馬が会話していると、遠くから空気を震わす甲高いエンジンサウンドが聞こえてきた。
不動心の龍馬も気をひかれたようで、2人そろってPAの入り口に注目する。
「あの車は?」
そこへ現れたのは、悪魔がまとう衣のような漆黒のS2000だった。
最上たちの近くに駐車したS2000から降りてきた人物が、こちらへ向かって真っすぐに歩いてくる。
スマートな風貌であり、どちらかというと物静かな印象の男だ。
しかし、歴戦の走り屋が持つ特有の闘争本能が、隠し切れないプレッシャーを周囲に漂わせていた。
「しばらくぶりに首都環状に戻ってみれば…早速、かつての相棒に再会できるとはな」
「あのー…どちら様?」
最上とS2000のドライバーに面識はない。
だが、不動心の龍馬はその存在に対してガタガタと感動のあまり震えていた。
そして言葉を放つ。
「お…おんしはルシファー大塚!?あ、あ、あ、会いたかったぜよ~~~~!!!!」
感動のあまりルシファー大塚の元へ駆け寄り握手を交わす2人。
その姿にどこかルシファー大塚も喜び気味に口にする。
「ははっ、大吾…久しぶりだな」
「うむ!…いや待てよ。おんしが戻んて来た…ということは!?」
何かを察したかのように不動心の龍馬は言うと、ルシファー大塚も言葉を続ける。
「ああ、スティールハートさんも一緒だ。新時代の走り屋ってやつにお目にかかりたくてね」
「おおっ、そうじゃったか!」
「俺たちだけじゃなく、他の元十三鬼将の連中も続々と集まっているらしい。んで、そこにいるのはたしか『音速の闘将』…だったな?」
「えっ?ああ、うん。そうだけど」
ルシファー大塚が最上に目を向け、話しかける。
「音速の闘将」…それが今の最上の通り名のようだ。
「お前さん、随分と話題だぜ。俺達、元十三鬼将の間でもかなり噂になっている」
「へえ…そうなんだ」
「俺やスティールハートさんとしても、バトルをしてほしいところだ」
「…それを伝えに来たの?」
「ああ。今は様子見で首都環状に来たから、すぐじゃなくていいが…」
ルシファー大塚としても最上には興味があり、バトルをしたいと考えているようだ。
すると不動心の龍馬が言葉を続ける。
「しかしそんなことになっちょったがかえ…こりゃあまっこと、“首都環状の夜明け”ぜよ!そういうことやったら、わしは<Be Legend>を脱退する!」
「おいおい、そんな急で大丈夫か?」
「“走りの道は一つということはない、道は百も千も万もある”。うちのリーダーは話の分かる人やき、快く送り出してくれるはずぜよ…じゃが今は少し、思い出がてらおんしと話がしたい」
不動心の龍馬としては、今は久々に会った盟友と話がしたいようだ。
すると不動心の龍馬が最上の方を向いてこう言った。
「音速の闘将よ、バトルをするつもりじゃったが一旦お預けぜよ。じゃがスティールハート先生に挑みたいがやったら、まずはわしらを倒してみーや!準備が出来たら、まず新環状右回りに来るがよい!」
「は、はあ…じゃあ、一旦僕はこれで」
「それはまあ…いいとして、大吾…少し見ない間に、随分キャラが変わったな…」
バトルの話を聞いた最上は、思い出話に浸る不動心の龍馬とルシファー大塚の前から静かに去るのだった。
砂塵の帝王、ダーティーフォックスを倒した最上。
そんな彼女の前にまた休む暇もなく「元十三鬼将」の「不動心の龍馬」…もとい「シタール兼山」と「ルシファー大塚」が挑戦状を叩きつけることになる。
様々なチームを倒すという快進撃を続ける中、最上の前にまた挑戦状が叩きつけられるのだった。
(第19話End)