「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
立ちはだかる2人のドライバー。そして…
クレイジーモンキー、砂塵の帝王、ダーティーフォックスというPhantom9のドライバーたちを破った最上。
その最上の前に今度は、「不動心の龍馬」を名乗るドライバーと、その仲間「ルシファー大塚」が挑戦状を叩きつける。
首都環状の実力者たちを次々と破っていく最上の前に、新たな壁が立ちはだかろうとしていた。
―――不動心の龍馬との出会いの翌日、夕方。
最上はマシンセッティングの見直しと更なるチューニングの依頼のためにまたチューナーの元へとやってきていた。
ガレージには既にシビックが止まっている。
そんな中で最上とチューナーが会話しており、最上は「不動心の龍馬とルシファー大塚、そしてスティールハートの話」を伝える。
「スティールハートが首都環状に戻ってきたか」
「うん。たしか十三鬼将のドライバー、らしいけど…」
チューナーは感心するようにそう口にし、最上も「十三鬼将のドライバーである」という認識はしていた。
チューナーが言葉を続ける。
「ああ、そうだ…奴の弟子のシタール兼山とルシファー大塚も知っている。お前に話しかけてきた『不動心の龍馬』は間違えなくシタールだ。ルシファーはしばらく武者修行で首都環状を離れていたそうだが、修行の間にマシンにボルトオンターボを付けたそうだな」
「その人たちってさ、速いの?」
「まあ、伊達に十三鬼将と呼ばれた奴らだしな。だが、お前さんが破ったクレイジーモンキーやら砂塵の帝王やらと同じくらいの速さ…と言えばどうだ?」
「じゃあ、僕なら勝てるかな?」
「どうだろうな…お前さんが油断しなければ、の話だろう」
「そっか…」
チューナー曰く例のドライバーたちは既に撃破した砂塵の帝王やらと同じくらいの速さらしい。
それくらいの速さならば…最上にはまだ勝算はある。
だがそんな中でチューナーは言葉を続ける。
「奴らを含め、十三鬼将の奴らが本格的に戻ってきたみたいだナ…ここからが首都環状の本当の戦いといったところだ」
「じゃあ、また車に…」
「そうだな…また一段階追加のチューンをしよう。ここまでくればストリートチューンでもかなりのレベルになるはずだ」
「いいね。速くなれるなら大歓迎だよ」
「お前さんが仕事に行っている間にまたチューンできるだろう。日が変わる頃に取りに来な」
「うん、それじゃあよろしくねおやっさん」
そう言って最上は外に止めてあった仕事用のタクシーに乗り込み…仕事へと繰り出すのだった。
―――数時間後。
最上は例のドライバー…「不動心の龍馬」を探し、新環状右回りルートを走っていた。
現在はレインボーブリッジ手前を都心環状線方面へ走っている。
「(ウォーミングアップついでにある程度走ったし、もうそろそろ…かな)」
この日、最上は福住からコースインしていた。
例のドライバーは新環状右回りルートにいると聞いてはいるのだが、まだ会えていない。
とはいえホームコースがここである以上会おうと思えば会えるはずなのだ。
今回はエアロパーツの付け替えとレーシングタイヤ交換がチューン内容らしい。
GRP製ボンネット、VARIS製フロントバンパーとリアバンパーとサイドステップ、さらにはBLITZ製リアウィング。
外装周りに全体的に手を入れたことで、またどこか印象が変わった気がする。
マシンの外観がいかつくはないが、それでもノーマルよりは多少の派手さはある。
それだけでなく、ボンネットにドライカーボン、更にはそれ以外のエアロにおいてもウレタンの素材を使ったことで15キロ程度ではあるが軽量化がされたという。
一方でタイヤ交換は言うまでもない。
連日の走り込みによって限界が来ていたストリートラジアルタイヤをセミレーシング仕様のそれに付け替え。
ストリートタイヤに比べると格段にグリップしやすくなったように思える。
そんなパワーアップしたマシンを最上はこの時点で既に手の内にしていた。
先程まで150キロで飛ばしていたが一旦クールダウンのために50キロまで落とす。
走り屋のマシンから一般車両に変貌したところで、目の前に迫るのはレインボーブリッジのストレート。
すると、レインボーブリッジの5分の2を通過した時だった。
推奨BGM:極東史記(GuitarFreaksV4&DrumManiaV4 Яock×Rock)
「(一台出てきた…)」
目の前には、路肩から加速してきた赤色のZC6型BRZ。
おそらく例のドライバーに違いないだろう。
コースインしてきた例のドライバー…「不動心の龍馬」。
最上の事を待ち構えていたに違いあるまい。
そのマシンの後方に付けて確信した。
カーナビにも同じ名前が出ているので間違えないだろう。
「(なんだっていいけど、早速始めようか)」
50キロと言う低速で前方のBRZに追従する中で、最上はシビックのライトをパッシングさせる。
2台が左車線を走る中で、カーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「(スタート直後から一気にいく…!)」
GOサインと共にアクセルを全開に踏み込み、シビックを加速させる最上。
スタート地点はレインボーブリッジの真上。
文字通りのロングストレート区間において、最上はスタートダッシュと言わんばかりにアクセルを踏み込み…あっという間に速度が200キロ近くまで到達する。
前方にBRZが迫る中で、右車線にはみ出たシビック。
FFターボ特有の加速性能を生かすことで、後付けターボのBRZよりも素早く…サイドバイサイドへ。
かと思いきや次の瞬間。
「(ようし、追い抜いた…って、後ろに付いた?)」
アクセルを抜いたのか、サイドバイサイドになったところでわずかながらも失速したBRZ。
だがそれはあくまで、不動心の龍馬の作戦のうちである。
シビックが追い抜いたところで、そのままBRZがシビックのテールに付く。
「(相手の様子を見て、隙があれば追い抜く…それがわしのやり方ぜよ…)」
後方から追いかけて、粘った末に追い抜く…それが不動心の龍馬が得意とする戦法だった。
鋼の精神力でテールに張り付いてまずは相手の走りをじっくりと観察。一瞬の隙をついて相手を抜き去る。
それが彼のやり方だ。
だがそんな中で、最上はあることを考えていた。
「(…どんなにチューンされていても、所詮はBRZ…ならば、ねじ伏せる!逃げちゃえ!)」
そう思いつつもハンドルを左に曲げて車線を左へと移す最上。
シビックの後方にBRZが食いついても全くもって最上は動揺していなかった。
いくら相手が実力者であろうと、マシンには限界と言うものがある。
そしてそれが本来NAのBRZであるという、FL5シビックに比べれば格下のマシンであるのならば猶更。
レインボーブリッジを渡り切ろうとしていた2台。
左車線に移ったシビックを追いかけ、BRZがずっとテールトゥノーズの状態で食らいつく。
そんな中で2台はそのまま右直角コーナーへと突っ込んでいく。
「(コーナー1つで勝負を付ける!)」
前方にコーナーが迫る中で、2台の速度は220キロ以上は出ていた。
だがそれでも最上はアクセルをリリースしただけでブレーキを踏み込むことはなかった。
アクセルオフのままハンドルを右に曲げ、左車線から右車線へ。
アウトインアウトのラインを描くようにフルスピードで攻め込むシビック。
だが、それと同時に…後方のBRZが徐々に離れていく。
おそらくコーナーに突っ込む寸前にブレーキを踏み込んだのだろう…
ここのドライバーたちはどうしてもコーナーに突っ込む寸前にブレーキを踏み込む癖があるという事を最上自身既に見抜いていた。
そして同時に、自分はそのドライバーたちよりも素早くコーナーに突っ込んでも平気であるという事も気が付いている。
そうであるならば…コーナー勝負であることは言うまでもないだろう。
「(こやつ…隙がない!速い…ッ!?)」
オーバースピードで容赦なくコーナーに突っ込んでいくシビックに対し、BRZはどこかタジタジになっていた。
それはやはり、最上のコーナーリングがあまりにも速すぎるという事の証拠なのかもしれない。
ブラインドコーナーでも高速コーナーでも遠慮なしにアクセルを踏み続けるその様子は、やはり実力者としての貫禄とも言うべきだろう。
前方のシビックはギアを上げて後方のBRZを振り切りにかかっていた。
マシンの性能をフルに活かすように…シビックはみるみる加速していく。
一本の弓矢のように、的確でありながら同時に素早く…そして何も恐れないように。
コーナーへの侵入から脱出の間で、車間距離はあっという間に40m以上は引き離された。
「(速い…いや、速すぎる……!)」
コーナーの立ち上がりは明らかにシビックの方が上。
減速してしまったBRZはあっさりと置いてけぼりを食らう。
そんな中で不動心の龍馬はニトロスイッチを押してニトロを使うが…それでも前方のシビックの速度には追い付かない。
それほどなまでに、向こうのシビックはコーナーに突っ込んでいたのだ。
そして芝浦PAへ走る中において…シビックのマフラーからも青い炎が吹き出ているのが見えた。
おそらくストレート区間で差を付けようとしていたのは向こうも同じだったのかもしれない。
一旦引き離された車間距離はそう簡単には縮まらない。
それはやはり、相手のマシン性能が明らかに格上であるという事もあるのだろう。
速度は200キロ以上は出ているが、それでも車間距離は広がるばかり。
「―――」
芝浦PA横を通過し、その先の左から右への複合高速コーナーにおいても前方のシビックは全くもって減速することなくコーナーに突っ込んでいる。
おそらくメーターで260キロは出ているだろう。
そんな中でもあのドライバーはコーナーに突っ込むことに躊躇いを感じていないような…そんな走り。
度胸があるというよりは、神経が麻痺しているような、自分たちの経験以上の何かを持っている…そんな、強い何かを秘めた走りである。
スピード任せながら、それでも的確にマシンコントロールできる技術はもう申し分ない…そう不動心の龍馬は思った。
相手の戦略を見るやり方が逆に相手の大逃げを許してしまう結果となってしまった。
「(見事なり…あそこまでの実力なら、文句もあるまい…)」
不動心の龍馬は負けを認めるようにそう思うのだった。
そう認めるように思ったところで、BRZのカーナビには「LOSE」の文字が表示される。
彼が負けを認めるのとほぼ同じタイミングで、勝負はあまりにもあっさりと付くのだった。
前方のシビックはBRZの視界から消え、そのまま浜崎橋JCTへと走り抜けていく。
―――数分後。
最上のシビックは不動心の龍馬のBRZを完璧に振り切り、汐留JCTを通過していた。
汐留トンネル方面に走るシビックは、次の対戦相手を求めて巡行していた。
だが速度は50キロ程度と遅く、まるで誰かを探すかのようだった。
「(さっき確か、青の矢印のドライバーを追い越したよね…?)」
そう、先ほどのバトルにおいて最上は別のドライバーを追い越していたことに気が付いていた。
青色であった以上、まだ破っていないドライバーであることに違いない。
だとしたら…と思いつつも、シビックが汐留トンネルに迫る下り坂を走っている時の事である。
推奨BGM:Elysion ex machina(from jubeat Ave.)
「(後ろから1台。この車は昨日いた…たしか、ルシファー大塚!)」
後方から接近してくる漆黒のマシン。
汐留トンネルに入ったところで、最上は後方からパッシングを浴びせられた。
カーナビを見て確認したところ、書かれていた通り名は…不動心の龍馬の古い知り合い、ルシファー大塚。
漆黒のそのマシン…S2000は間違えなくそのドライバーに違いないだろう。
「(横羽線を上ってきていたが、まさか浜崎橋で合流する形になるとはな…!いや、好都合だ)」
そう、ルシファー大塚は先程横羽線を上がってきていたのだ。
そして浜崎橋JCTを右方向…都心環状線内回りへと向かうシビックを目撃していたのだ。
それを追いかけてきて、やっとバトルと言う形となる。
「(ここでバトルできるなら、勝負…!)」
最上としても例のドライバーの実力は気になっていた。
勝つかどうかはわからないが、それでも挑むだけの事はある。
叩きつけられた挑戦状を受けるべく…先行しつつもバトルには応じる構えを出すべくハザードを出す。
そして2台が汐留トンネルに飛び込もうとしたところでカーナビがカウントダウンを始める。
3
2
1
GO!
「―――!」
トンネルに入ったところでGOサイン、アクセルを全開に踏み込んで加速させる。
2速から3速へ、鋭い加速をするシビック。
咄嗟にアクセルオフからクラッチを蹴ってギアを切り替えつつも、前方の右高速コーナーへとシビックとS2000は連なった状態で飛び込む。
加速としては2台とも互角と言えるだろうか。
だが一瞬でも油断すればシビックは追い抜かれてしまうかもしれないというリスクもあるのだが。
「(後ろに食いつかれてる…でも、抜かさせない!)」
最上自身、相手の加速の良さ自体は予見出来ていた。
チューナーからボルトオンターボを施されているという事を聞いていたこともあるのだろう。
S2000は本来ターボが装着されていない、つまり相手のマシンは後付けターボなのである。
それでもその加速の良さから、後方に食らいつけていた。
追い抜きにかかろうとしているS2000だが、その進路を予測するように最上もシビックをマシンを移動させ…追い抜こうとするところでブロックする。
前方の一般車両を避けつつ、2台はずっと連なった状態…テールトゥノーズの状態を維持し続ける。
トンネルを走り抜ける2台はすぐにトンネル出口付近の左高速コーナーも200キロオーバーで走り抜けていく。
「(くっ…やるな!)」
追い抜こうとしても前方のシビックは進路をブロックしてくる。
まるでS2000の予見するかのように左に右に揺さぶりをかけても全くもって追い抜けない。
決して大型と言うボディではないとはいえ、流石に前方を塞がれては追い抜けないのも無理がないだろう。
トンネルを抜けた2台はテールトゥノーズの状態を維持しながらそのまま銀座出口付近のS字コーナーへと接近していく。
「(僕はカーブで速いんだ…ならば!)」
最上自身、首都環状で何度も何度もバトルをしてきてある傾向を掴んでいた。
それは、自分の方が常に一歩先にコーナーへと飛び込んでいけるという事。
言ってしまえば、コーナーリングスピードが一般的なそれよりもはるかに速いのだ。
それを最上も何度もバトルする中で気づき始めていた。
そんな中で前方にS字コーナーが迫る。
「―――」
「っ…!」
アクセルオフからブレーキングでシビックを減速させる最上。
一方で同じくブレーキを踏み込んでS2000を減速させるルシファー。
シビックの速度は220キロから180キロまで落ちる。
一方のS2000もほぼ同じくらいのスピードまで速度が落ちる。
速度が落ちたところでハンドルを左に曲げる2人。
最初のコーナーである左コーナーをアクセルオフで抜けたかと思いきや、そのままハンドルを切り返したかと思いきやアクセルオンでシビックを加速させる最上。
新品に近いセミレーシングタイヤを履いていたことで地面に対ししっかりグリップするシビック。
シビックが最初のコーナーを抜けたところでアクセルオンで加速し、そのまま銀座出口横の右コーナーを加速しつつ旋回する。
だが一方で、後方のS2000はここで
「(っ…踏み込むと、後輪が暴れる!)」
アクセルを踏み込もうとするも、思うように踏み込めないルシファー。
下手にパワーを与えようとすると後輪が暴れるのだ。
ボルトオンターボの弊害であるドッカンターボ。
下手にアクセルを踏み込むとターボが邪魔をして挙動に支障をきたしかねないのだ。
その影響からか、最上のシビックはスムーズに加速しているのに対し…S2000は思うようにアクセルを踏み込めず、パーシャルスロットル…つまり半分以下しかアクセルを踏み込めずにいた。
「(カーブで踏み込めてなかったんだ、差を開けてる!)」
コーナーでアクセルを踏み込めていた最上、一方で踏み込めていなかったルシファー。
首都環状の走り屋たちはやはりコーナーではあまり踏み込めないという傾向があるのか、それとも元からターボを取り付けていることの違いからか、最上自身コーナーでもアクセル全開に踏み込めていた上にマシンが暴れることなく操縦出来ていた。
一方のルシファーのS2000はターボ化の弊害か、コーナーでも思い通りのアクセルワークが出来ていない。
本来ならアクセルを全開に踏み込むべきところだが、全開に踏み込むとボルトオンターボの弊害が出てしまいかねない…結果として思った通りに踏み込めないのだ。
コーナーの走行ライン自体はほとんど同じで、アウトインアウトのラインを描いていたのだが…アクセルを踏み込めていないという事は、コーナー通過速度に大きな違いがあるという事。
結果として2つ目のコーナーを脱出した時点で40キロ以上の速度差が生まれていた。
そのまま道路下区間のストレートへとアクセル全開で走り抜けていくシビック。
一方でそれを必死になって追いかけるS2000。
ストレート区間で青い炎を噴き出すシビック。
一方でS2000もニトロを使うも…速度差は縮まることがなく、車間距離があっという間に60m以上まで引き離されていく。
「(追いつけない…!パワーは互角だが、差が広がっては…!)」
元々NAのマシンと元々ターボのマシンでは、やはり差がついてしまうのは無理のない話なのかもしれない。
それも、ターボを付けたのがここ最近となれば…自分の経験値不足も影響しているのだろう。
ストレート区間で270キロオーバーまでかっ飛ばすシビックだが、S2000も追いつかんと言わんばかりに加速させる。
だがコーナー脱出時点でスピードに乗っていたシビックだが、S2000はスピードに乗っていないことで大きなアドバンテージと化していたのは言うまでもない。
そしてその車間距離を生かしたまま…シビックはストレートの先、新富町方面へと消えていく。
結果としてカーナビにおける体力ゲージはみるみるうちに減っていく。
「(複合コーナーで踏み込まなかったことが、こうも足枷になるとは…)」
ルシファー自身負けを認めるようにそう思ったところで、カーナビには「LOSE」の文字が表示された。
たった1つの複合コーナーで、勝負と言うのはあまりにもあっさりと付いてしまうのだった。
―――数分後。
バトルを終え、後ろから追いかけてきた不動心の龍馬とルシファー大塚と共に箱崎PAに入る。
すると、2人から噂を聞いていたという走り屋の男が待ち構えていた。
男はスティールハートと名乗った。
「そっか、あなたがスティールハート…」
「不動心の龍馬やルシファー大塚から俺の事は聞いてるな?まさか俺の愛弟子を2人とも倒しちまうとはな…」
「はあ」
「面白い奴だ。裏切りのジャックナイフから話を聞いた時は半信半疑だったが、これだけの実力者に出会えるとはな。首都環状へ戻ってきた甲斐があった」
スティールハートは最上の事は聞いていたが、やはり愛弟子を破ったという事はそれなりの実力者であるという事を認めてくれたようだ。
「そう言われると、僕も嬉しいよ」
「ところで…お前に1つだけ質問したい」
「ん、何?」
神妙な顔でスティールハートが口を開く。
「4年前に姿を消した迅帝が帰って来た。奴の師である男と共に…それとほとんど時を同じくして、お前が現れた」
「迅帝…ここで最速って言われる人だよね?そうなのかい?」
スティールハートは迅帝のカムバックと最上の首都環状デビューとほぼ同じタイミングであることを告げる。
「ああ。これは偶然の一致か、それとも、首都環状の魔物が呼び寄せているのか…お前はどう思う?」
「うーん、どうだろう?僕も走り始めたのはほんの偶然なんだよね。だからさ、走り出した時期は偶然だと思うんだ」
「偶然…か。それがお前の答えか?」
「そうだねえ…僕はそう思うよ」
「そうか…」
最上は迅帝のカムバックと自分が首都環状に現れたタイミングは偶然だと語った。
その答えに対してスティールハートはどこか納得したかのように反応した。
すると次に口を動かしたのは不動心の龍馬だった。
「音速の闘将よ、先はええバトルやったにゃあ。おんしはまっこと、新時代の風雲児ぜよ。それに比べてわしときたら、先生らとの再会に浮かれて相手を侮るとは、修業が足りんかった。ヨーガの修行を再開し、苦行精進した方がええかにゃあ…」
不動心の龍馬は最上の実力を認めるようにそう言ったが、その様子を見たルシファー大塚は呆れ気味にこう口にする。
「お前が物事にのめり込みやすいタイプだってことは知っていたが…前は“インドブーム”で、今は“龍馬ブーム”なのか?…まあ、役者向きの性格なのかもな」
「ははっ、僕は嫌いじゃないよ?面白い人だなって」
ルシファー大塚がそう言うと、最上としても「嫌いじゃない」と語った。
スティールハートも同じ事を思っていたらしい。
だが同時にこうも告げる。
「ハハハ、再会したばかりの三人が演じる即興劇だが、俺たち師弟のコンビネーションを見せてやろう。他の連中への土産話にさせてもらうぞ。音速の闘将、俺たちとのバトルでその実力を確かめさせてくれ」
「バトル…だよね?いいよ。今からでも…」
スティールハートとの対決、そして例の2人との再戦…それが最上の次のバトルである。
そのことに関して最上は全くもって躊躇いはなかった。
「よし…勝負は都心環状線内回りだ。マシンを整えたら始めよう」
その言葉を聞いた最上は軽く頷き、PAのニトロ補給装置を通してシビックのニトロを補充する。
スティールハートとその弟子2人とのバトルが、遂に幕を開ける。
(第19話End)