「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
スティールハートら3人との戦い。
そして新世代の走り屋がまた1人迫る…
元・十三鬼将のドライバー…不動心の龍馬とルシファー大塚を破った最上。
そんな最上の前に彼らの師匠である「スティールハート」が現れる。
都心環状線と言う狭いコースでの1対3という戦いを、最上は制することが出来るのか…
そして、最上の前に現れる新たな「新世代の走り屋」とは…
―――箱崎PAから江戸橋JCT。
箱崎PAから都心環状線方面へと移動してきた4台だが、ここにきて1対3のバトルとなった。
複数人でのバトル自体はやったことがあるので最上自身不慣れという訳ではない。
だがそれでも実力者同士という事であるのならば…
速いヤツが全てをねじ伏せるまでというのは、最上にとってもわかっている事だった。
推奨BGM:encounter(from jubeat saucer fulfill)
「(勝負は単純…最後尾である僕が3台をぶち抜けば勝ちも同然。僕のマシンが振り切られたら負け…)」
4台でのレースだが、最上はその最後尾にいた。
スタートとしては江戸橋JCTでの都心環状線合流直後、呉服橋出口付近。
そこからは都心環状線区間なのだが、勝負のコースはそことなる。
呉服橋手前で最上はシビックのライトレバーを操作してパッシングさせる。
4台が左車線で連なる中でもバトルである。
「(何だっていいか。今は挑むだけ…)」
最上としては相手が何人かかって来ようと正直同じであると考えていた。
結局のところ誰が速いのかを決めるのであり、それが自分であるというのを証明する必要があるという事を嫌でもわかっていたからだ。
自分に挑んでくるドライバーがいるのならば、自分の実力を発揮して打ち負かす。
このやり方でずっと来たのだ。
そしてそのやり方はきっと最速を目指すまで変わらないのだろう。
ならば、と最上としては意識を引き締める。
そう認識したところでカーナビのカウントダウンが始まろうとしていた。
3
2
1
GO!
「―――!」
スタートシグナルと共にアクセルを全開に踏み込む最上。
前方の3台もそれぞれの走りをするべく加速していく。
だが前方の2台は最上のシビックを抑え込むように…右車線と左車線に陣取るBRZとS2000。
通せんぼをしているのは明らかだった。
「(通せんぼのつもりか…でも、遅い!)」
一度バトルをした以上、相手のマシンの性能自体はある程度見切っていた。
現状は明らかにパワーで勝っているシビックだが、抜こうと思えば抜けると最上は考えていた。
多少なりともプレッシャーを与えれば向こうが動揺するだろう…そう考えたのだ。
そう思った以上、最上はまず前方のBRZにシビックのノーズをかなりギリギリまで迫らせていた。
呉服橋出口近くの右コーナーを4台が連なる中で…シビックはBRZを完全にロックオンして離さなかった。
4台は連なったまま神田橋出口方面へと向かう。
メーターは一気に200キロオーバーとなり、マシンが接近し合う文字通りのドッグファイトとなる。
「(っ…このプレッシャーは…!?)」
不動心の龍馬自身、後方から迫るシビックから異様な程のプレッシャーを感じていた。
それはまるで、嘗て首都環状最速になったマシンのような…圧倒的な威圧感だった。
メーター230キロオーバー。
2車線区間である環状線と言うテクニカルセクションにおいてはかなりのスピードが出ているにも関わらず、最上も例の3人も一歩も引かない。
だがそんな中でシビックはBRZにずっと狙いをすまし続けている。
同時に前方ではS2000も右車線に居座り続け、そう簡単には追い抜かせないようにしている。
神田橋から竹橋方面へと走り抜ける4台の中で、最上はあることに挑もうとしていた。
「(カーブが連続する場所では、僕の方が速いんだ!いける…)」
神田橋から竹橋にかけては狭い区間ながらも跳ねるカーブ地帯。
コーナー自体は緩いのだが、多少なりとも減速するのが鉄則だ。
だがそれでは追い抜けない…そう直感した以上、攻め込む必要があるのは言うまでもない。
前方の80スープラが神田橋入口付近の右高速コーナーに飛び込み、それを追いかけるようにS2000やBRZも飛び込もうとする。
だが、その時だった。
「…!」
S2000がアクセルを抜いて減速、同時にBRZもアクセルを抜いて加速が鈍る。
その瞬間を最上は見逃さなかった。
前方にBRZが迫る中でハンドルを咄嗟に右へと切り、左車線から右車線へ。
だがアクセルは全くもって抜かない。
左車線から右車線へと飛びだしたシビックは、減速したBRZを右サイドからあっさりとオーバーテイクした。
「…!?」
不動心の龍馬としては愕然とするしかなかった。
多少なりとも減速するであろうコーナーにおいて、例のマシンは全くもって減速しないのである。
それどころか、最初から勝負所を見越していたかのようにサイドからあっさりとオーバーテイク。
200キロオーバーのアクセル全開で高速コーナーに飛び込むことがどれ程恐ろしい事かは彼自身がよく知っている。
どんなにヨガで恐怖心を克服しようとも、それをゼロにはできないのだ。
だがあのシビックはそんな恐怖心が全くもって存在しないような…そんな走りをすることを龍馬は一度バトルした以上知っていた。
それでも対策のしようがないのだ。
BRZを追い抜いたシビックの前にS2000が迫る。
そんな迫る中で、シビックは右高速コーナーをインベタのラインで走り抜ける。
「(抜かれたか…!だが、次のコーナーは…)」
後方に食らいつくシビックを見て、ルシファー大塚はインコースに攻め込んでくると認識した。
何せ次のコーナーは左高速コーナー…右車線が多少傾いているコーナーだ。
そうである以上、右車線ではなく左車線からインベタで攻め込んでくるだろう…そう認識した。
右から左へと跳ねる連続コーナーである以上、リズミカルな走りが必要なのは彼自身もよく理解していたのだ。
そう認識した以上、ルシファー大塚はアクセルを軽く抜いた上でハンドルを左に曲げて右車線から左車線へとS2000を移動させる。
だが…次の瞬間だった。
「(左車線に移動した?もらい…!)」
左コーナーで左車線に移動したS2000を見て、最上は前方がクリアになったのを認識した。
一般車もいないことを確認した以上…アクセルをしっかりと踏み続けて右車線をキープする。
最上はハンドルを左にわずかに曲げ、右車線を走らせていく。
それも、全くもってアクセルを抜くことなく。
ルシファー大塚は左コーナーでインコースに攻め込んでくると見込んでいた。
だが実際、最上は右車線を走り続けてがら空きになった右車線から追い抜きにかかっていた。
アクセルを抜いたルシファー、アクセルを踏み続ける最上。
跳ねる右車線においてハンドルをしっかりと握り、アクセルを踏み続けることでシビックは先の龍馬と同じように右サイドからオーバーテイクしてしまった。
あまりにもあっけない追い抜きだったが、高度な情報戦の中で、最上はルシファーの一歩上を行ったのである。
「(ようし…このスピードを維持して)」
2つのコーナーを抜け、さらに数メートル先にいるスティールハートのマシン…ピンクの80スープラに肉薄するシビック。
先程アクセルを全く抜かなかったことで、その車間距離を確実に接近させることが出来ていた。
「(2人が抜かれた…!?こうもあっさりと!!)」
「(…遅い!)」
竹橋JCT分岐手前で80スープラの後方へとシビックは接近していた。
インコースである左車線を走る80スープラ、ルシファーを追い抜いた後右車線を走るシビック。
80スープラの斜め右後方を走るシビックは、コーナーリングスピードの高さを生かすかのように80スープラへと接近していく。
80スープラよりもシビックの方がスピードに乗っていたこともあり、追い抜きは確実とも思われる。
だが、竹橋JCTを通り抜けようとした次の瞬間だった。
シビックの前に80スープラが移動してこようとしていた。
進路を潰してブロックしようとしたのである。
「―――!」
後方からシビックが迫る中で、スープラを右車線に移動させることで狙ったかのようにブロックしようとしたスティールハート。
だが最上はそれを見越していたのか、シビックを左車線に移動する形で上手く躱す。
互いに同タイミングで車線変更することでラインが交錯するが、ここまでずっとアクセルを抜かなかった最上のシビックはやはりそのスピードを維持してスティールハートのマシンの左サイドに捻じ込んだ。
そして捻じ込んだかと思いきや…左サイドからあまりにもあっさりとオーバーテイク。
250キロ以上のスピードを維持して、竹橋JCTから北の丸方面へと走り抜けていく。
「(くっ、スピードを維持している状態だ…こんなのじゃ離されちまう!)」
「(あれぇ…全然普通に追い抜けちゃったなあ…)」
スティールハートを追い抜かした後、最上はふと思ってしまった。
彼女は気が付いていないのだが、彼らがコーナー手前でアクセルを抜いたりブレーキを軽く踏み込んだりしたのに対し…最上はずっとアクセルをべた踏み状態で走り抜けたのだ。
コーナー手前での多少の減速も、ここでは一気に勝負に響く。
北の丸出口から北の丸トンネルへと走り抜けるシビックは、その直線区間でニトロを噴射させる。
速度は一気に270キロまで乗った。
一方のスティールハートもマシンのニトロを噴射させるも…元からスピードに乗っていたシビックには追い付くことが出来ない。
車間距離は広がる一方だった。
スティールハートの視界からシビックはトンネル内の右高速コーナー先へと消えた。
一般車を避けつつ最上のシビックを追いかけるも…元よりスピードが出ていたそのマシンにはもう歯が立たないも同然だった。
「(天晴だ…!これだから首都環状は面白い…)」
スティールハートは負けを認めるようにそう思った。
そしてそれと同時にカーナビには「LOSE」の文字が表示されるのだった。
3人を破ったシビックは再び都心環状線の闇の中へと消えていく。
―――十分後。
「(…湾岸線まで来ちゃった)」
あの後環状線を走り抜けた最上は、浜崎橋JCTから台場線方面、レインボーブリッジを経由して有明までやってきていた。
何となく…ではあるが、こっちの方に来たかったからと言うべきだろうか。
正確にはカーナビにおいて、湾岸線方面から北上してくる青い矢印があったからだ。
どうやら自分がまだ倒していない相手がいるのだろう…そう最上が認識するのは簡単だった。
有明JCTを左折し、湾岸線東行きへと合流。
すると120キロで走行するシビックの目の前に、あるマシンが迫ってくるのが見えた。
推奨BGM:RIZING YOU UP(from beatmaniaⅡDX16 EMPRESS(CS))
「(あの車は…?)」
前方を走るマシンは派手な外観をした…BRZかGR86。
形状はともかく、そのボディペイントは見たことのないマシンだった。
だがそれでも青い矢印という事は…どうやらまだ倒していないドライバーらしい。
そのマシンの後方に接近しつつもシビックを減速させ、マシンの情報を取得する。
「(ライジング、シーマン?)」
見慣れない名前だった。
だがおそらく自分の事を待ち構えている実力者なのだろう…そう最上は認識した。
矢印の色は青、形状は実力者を示している。
倒していない実力者という事だ。
ともあれここで出会ったからにはバトルするべき相手であることは間違えない…そう認識した最上は、例のマシンの後方にシビックを付けてパッシングする。
「(BRZやGR86なら、パワー差では負けない…!ニトロで逃げてさっさと勝負を付けよう…)」
最上は相手のマシンについてどこか高をくくっていた。
自分のシビックではやはり性能差があるという事をわかっていたからかもしれない。
だがそれでもそうであるというならば、勝負どころはもうわかっている。
一気に加速して大逃げするつもりだ。
そう戦略を立てたところでカーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
GOサインと共にアクセルを全開に踏み込み、同時にニトロスイッチを入れる最上。
だが相手のGR86もそれを見越していたのか…GR86のマフラーから青い炎が吹き出ている。
どうやら向こう側もニトロを使っているようだ。
3車線区間の湾岸線の直線区間において、ドッグファイトとなる2台。
そんな2台はテールトゥノーズの状態でありながらも、互いにスピードを220キロオーバーまで跳ね上げる。
湾岸線のストレート区間から辰巳JCTへと向かう。
「(速い!流石にニトロを使っているだけはある。でも…)」
2台は辰巳JCTを通過し、GR86が先行したまま深川線方面へ。
260キロオーバーの中で2台はもつれ合う。
互いにニトロを噴き出しながら、辰巳PA直前の上り坂を駆け上がる。
「(この先にある罠…さあ、どう来るかな)」
テールトゥノーズの状態で最上は、深川線へと分岐した直後の「罠」の存在に気が付いていた。
そしてそれを見越してか…最上はアクセルを一瞬だけリリースし、ニトロスイッチを切った。
結果としてニトロを噴き続けているGR86との車間距離はわずかながら広がる。
「―――!!」
だが、最上がアクセルをリリースしてGR86と車間距離を取った瞬間だった。
GR86の目の前に、辰巳PA横の1車線区間が迫る。
そしてそこには…通せんぼをするかのように1台のNDロードスターがいた。
おそらく外観からして一般車両だろう。
正確には路肩もあるので1車線+0.5車線なのだが…ここを全速力で走り抜けることはかなりの度胸が必要であることは言うまでもない。
狭い区間で強引に追い抜こうとすれば事故になることは間違えないだろう。
いくら実力者であるライジングシーマンでも前方の1車線地帯にビビッてしまったのか、アクセルをリリースしたかと思いきやブレーキを踏み込む。
だが、ブレーキを踏み込んだ次の瞬間だった。
「(…ここだ!)」
GR86がスピードを落とした瞬間を最上は見逃さなかった。
アクセルを全開に踏み込みつつGR86の左サイドへ接近したかと思いきや、そのまま左サイドから針の穴を縫うかのようにオーバーテイク。
そのまま路肩から車線を塞いでいたNBロードスターもおまけでオーバーテイクする。
一方で動揺したGR86も最上のシビックと同じラインを描いて間一髪路肩からNDロードスターを追い抜くも…減速したことによるスピード差により、車間距離は開いていく。
前方のシビックはそのまま辰巳PA直後の左ヘアピンコーナーへと突っ込んでいく。
「(ハンドルを残したままそのままブレーキを…っと!)」
NBロードスターを追い抜く際に多少右に曲げていたハンドルを、ブレーキを踏み込むのと同時に一気に左へと曲げる。
左車線からPA出口合流直後の右車線へとはみ出たが、ブレーキを踏み込んで一気に左へと方向転換。
260キロオーバーから190キロまで減速させ、最上がアクセルをある程度踏み込んだ状態でありながらシビックはコーナーに突っ込んでいく。
右車線から左車線、ゼブラゾーン上を突っ走りそのまま1車線区間へと膨らむシビック。
文字通りのアウトインアウトのラインを描き、シビックは円弧を描きつつコーナーをそのまま立ち上がる。
左へ全開で曲げていたハンドルを僅かにセンターに戻し、ゼブラゾーンから車線区間へ膨らみ…湾岸線西行きからの合流車線へと膨らんだところで再び加速する。
「(は、速い…!!)」
後方から追いかけるライジングシーマンだが、先ほど一般車に手間取ったタイムロスはあまりにも大きかった。
おまけに得意コースである湾岸線を離れ、基本バトルはあまり行わない深川線に入ったことで…得意コースから離れてしまった。
これでは湾岸線では本領を発揮できる空力も思った通りの力を発揮できないのは言うまでもないだろう。
ストレート区間からコーナー区間に入ったことで、その苦手な部分が一気に露呈する形となってしまった。
ヘアピンコーナーを慎重ながら走り抜けるGR86だが、前方のシビックは既にコーナーの遥か先のストレートを250キロオーバーのスピードで疾駆していくのだった。
「(経験値じゃまだまだ、ってところかな)」
後方のGR86の存在をふと思いだした最上だが、この時点で車間距離は100m近くは広がっている。
そしてそんな事になった以上、最上は相手の実力に対しては「実力は確かにあるがそれでもまだまだ」…という烙印を押すのだった。
そんな烙印を認識したところで、最上のシビックのカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。
―――数分後。
バトルを終えて入った箱崎PAで休憩がてらタイヤの具合を確認していると、3人組の走り屋に声をかけられた。
1人は豪放磊落を絵に描いたような、壮年のむくつけき大男…先ほどのGR86から降りてきたドライバーだ。
もう1人は対照的な、洒脱な雰囲気で甘いマスクの男。
そしてもう1人は、知的で洗練された印象のキャリアウーマン風の女だ。
「おお、音速の闘将しゃんやなかと。お目にかかれてうれしか」
「あなたはもしかして、さっきバトルした…『ライジングシーマン』かな?」
「いかにも。わしゃライジングシーマンちゅうもんばい」
最初に最上へ話しかけてきたのはライジングシーマンだった。
そしてそのまま横にいた2人も紹介する。
「そちらん2人は愛のトルナードしゃんと噂のライターしゃん」
「はあ、よろしく。ところで…あなたは何か方言を話してるみたいだけど、東京じゃないよね。どこの人?」
最上は紹介されたドライバーも気になったが、同時にライジングシーマンの口調も気になった。
すると彼はこう答えた。
「わしはこう見て九州は博多からやってきたもんで、首都環状には詳しゅうなかけん。おふたりに案内してもろうとーと」
「博多から?そうなんだ」
どうやらライジングシーマンは九州出身であり、首都高はまだ不慣れらしい。
先程辰巳PA横で減速したのもコースがよくわからなかったから…というのであれば、十分納得できる理由だ。
すると、愛のトルナードが最上に話しかける。
「なああんた、久遠のポラリスを倒したんだろ?上には上がいるもんだねぇ。俺らもあの子とバトルしたが、手ごわい相手だったのにな」
「あっ、そうなんだ?まあ…あの子の車がまだあまり速くない時期にバトルしたから、何とも言えないけどね」
「速くない時期?そうだったのか」
愛のトルナード自身、最上が久遠のポラリスを倒したことは知っていた。
だが最上にとってそれは「彼女が本気を出してはいない」という事だと思っていた。
何故なら最上と彼女が走り合ったのは…最上がスイフトスポーツやRX-8という格下のマシンに乗っていた時期だからである。
そう言ったところで、今度は噂のライターが最上に話しかける。
「ところで知ってるかしら?最近の首都環状は、貴方と久遠のポラリスの話題で持ちきりなのよ」
「え、僕とあの子が?」
「ああ。ミッドナイトローズが久遠のポラリスをすっかり気に入って、“首都環状女子の会”に招待したとか。あんたがユウウツな天使の助手席に乗って、コーナー3つで失神したとかな」
「はあ」
「あんたが、屈強な男どもが揃う<STRONG FORMATION>とバトルして、ぎったんぎったんにしただけじゃ飽き足らず、11人全員ずらりと土下座させ、詫び入れさせなさったっちゅう話もきいとりますばい。」
「えぇ……?」
最上としてはよくわからない噂だった。
だが彼らはまだまだ言葉を続ける。
「大黒PAにデカい鉄板を持ち込んで<HARISEN Chop>と“粉もん対決”したとか聞いたけど、何考えてんだ?」
「マシンには自動小銃ば仕込んどって、いざとなったら銃撃戦もしなさるっちゅうん。ほんなこつね?」
あまりにもわけのわからない尾びれが付きまくった噂話。
流石の最上もタンマを掛けるしかなかった。
「ちょっ、タンマタンマ!なんか随分と変な噂が流れてるんだねえ。こんな僕を見て、本当にそうだと思う?そりゃあ、あのシビックは確かに速いかもしれないけどさぁ」
「む…そりゃ、確かに…」
最上自身、流石に噂の数に困惑するしかなかった。
自分はただバトルに挑んでいるだけなのに、まさかここまで大きくなるとは思ってもいなかったのだ。
するとその動揺する最上の様子を見かねた噂のライターが話しかける。
「…そうよね、流石に根も葉もないデマよね」
だが彼女がそう言ったところで、最上は不思議なことを口にする。
「まあ、人気者ってこんなもんなのかもしれないし。悪い気はしないけどね」
「ええ…いいのかよ、あんたはそれで?」
「いやあ、噂の中心人物なんてそんなもんだと思うんだよね。でもそれって、僕がそれだけ話題になっているってことじゃないか。そういうの、結構好きなんだよね。ミステリアスって言うか。そういうのって何というかカッコいいというか」
「はあ…」
噂のライターとしては驚きしかない。
ここまで噂が大きくなっても、彼女は「大きくなりすぎた噂を楽しんでいる」。
普通は困惑して火消しに走ったりするのかもしれないが、最上自身はそんな状況を楽しんでいるかのようだった。
するとそれを見た彼女がまた話しかける。
「ちょっと噂に尾ひれがついてるみたいだけど…ここで会ったのも何かの縁だし、あなたの本当の姿…取材させて頂戴」
「僕の事を?うーん、まあいいけど…大した話はないよ?」
「それでもいいの。あなたの本当の姿を知ることが、大切だからね」
「はあ」
噂のライターとしては最上の事が気になった。
流石に「本当の姿を知りたい」なんて言われたら断る道理もない…そう思った以上、最上は取材に応じることにした。
するとその様子を見た愛のトルナードが声を掛ける。
「何ならさ、取材が終わったら俺や噂のライターともバトルしてくれないか?そうすれば少しは噂とかも晴れるだろうし」
「うーん…まあ、ちょっと今は強い人たちと走ってきたからすぐは無理だけど、いいよ。そしたら何かわかるかもしれないしさ」
「本当か?助かるぜ」
愛のトルナードとのバトルを約束し、最上は噂のライターの取材を受けるのだった。
―――時を超えてなお変わらぬもの、絆を通じて受け継がれ、永遠となるもの。
それは、狂おしいほどの走りへの情熱。
伝説の時代を駆け抜けた古き魂たち。
熱狂が、彼らを首都環状へ呼び戻す。
まだだ…まだお前が見たことの無い世界を見せてやろう。
新たな旋律が紡がれ始める―――――。
(第21話End)