「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で-   作:カービィ改二

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第23話です。
遂に黒崎三兄弟…最後の壁との戦い。

そして現れる新たなドライバーとは…


act.23「Showdown(決闘、黒崎三兄弟)」

十三鬼将、新世代の走り屋たち、そしてPhantom9…

様々な実力者たちを破ってきた最上。

新たなるステージが最上の前に迫る中で、チューナーは「黒崎三兄弟を倒せば車をチューニングする」という事を約束する。

黒崎三兄弟とのリベンジマッチ…それこそかつての彼らの愛車とのバトル。

果たして最上は勝利できるのか。

 

 

 

 

推奨BGM

―――芝浦PA。

黒崎三兄弟がそこにいるという話を聞きつけ、最上はシビックに乗って向かった。

そしてPAで立ち話していた彼らの元へと向かう。

その様子を見た黒崎三兄弟との会話が始まる。

 

「ごきげんよう、新顔さん…どうやら僕たちを探していたようなカオですね。お会いできて嬉しいですよ」

「あはっ、わかるんだね。今日はさ…君たちとバトルがしたくて来たんだ。受けてもらえるよね」

紅童子の言葉にどこか嬉々とした顔で最上は答えた。

するとその言葉に感心したのは金色般若だった。

 

「ほう、珍しいな…そっちから勝負を吹っ掛けてくるとは。ちょっとばかり感心したぜ。いいよな?雅路も兄貴も」

「いいでしょう、お相手します」

「俺も問題ない」

金色般若の言葉に、紅童子も鉄翁も同意した。

すると紅童子が言葉を続ける。

 

「ところであなた…今や、すっかり首都環状の中心人物になりましたね。神田橋のあたりをおっかなびっくり走っていた頃とは、見違えるようです」

紅童子は最上の活躍に感心しているようだ。

鉄翁も次いで口を開く。

 

「首都環状の歴史を作り上げたベテランの走り屋たちが次々と破られ、俺たち<Phantom9>も辛酸をなめさせられた。新世代の走り屋たちの間でも、お前は特別な存在感を放っている」

「存在感かあ。それはそれで嬉しいね」

紅童子と鉄翁が最上の実力に感心する一方で、金色般若はどこか不満げだった。

 

「しかしまさか、ルーキー風情がここまで急成長するとはな。賭けは雅路の勝ちってわけかよ…お前のせいで、雅路にいちごパフェを奢らなきゃなんねーだろうが!」

「…パフェ?」

「あはは、こっちの話なので気にしなくていいですよ」

金色般若の言葉にどこか呆れ気味に最上が返すと、鉄翁が口を開く。

 

「…しかし、俺達“黒崎三兄弟”倒したつもりになってもらっては困る。先日のバトルはあくまで腕試しだ。今度は俺たち三人の真の実力をもって、お前に挑ませてもらう」

「お前のために、とっておきのマシンを出してやるからよ。ありがたく思え」

「コースは都心環状線内回り。1対3のバトルとなります…よろしいですね?」

黒崎三兄弟がどうやら本気のバトルをしてくれるようだ。

その様子を見た最上は静かに頷いた。

 

「わかった、早速始めよう」

 

―――黒崎三兄弟との決戦が始まる。

 

 

 


 

 

 

―――芝浦PAを出た4台が、台場線へと合流する。

左車線を縦列状態で4台が走行する。

先頭を鉄翁、2番目を金色般若、3番目を紅童子、そして最後尾が最上。

1対3とはいうものの、実際は3台の連戦と言っても過言ではないだろう。

鉄翁のマシンはBNR34、金色般若のマシンはZ32、紅童子のマシンはZ33。

どれもカリカリにチューンされたマシンたちだ。

少なくともレヴォーグに乗っていたころに比べると段違いの実力だろう。

だがそれでも挑むべき相手であることには何ら変わりもない。

 

 

推奨BGM:紅焔(from pop'n music Sunny Park)

「(これに勝って、また車を速くしてもらおうか。勝つためには容赦しない!)」

正直最上にとっては黒崎三兄弟とのバトルはあくまで通過点でしかなかった。

自分の車を速くするための通過点…それでしかない。

チューニングで速くなるのならば、正直どうでもいいのだ。

まずは目の前の壁を確実に超えていく…

そう最上が認識したところで、カーナビのカウントダウンが始まる。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「「「「―――!」」」」

GOサインと共にアクセルを全開に踏み込む4人。

一番先頭の鉄翁のBNR34が加速していく中、金色般若のZ32も追従する。

 

後方のZ33とシビックのバトルからスタートだ。

「最初の相手は自分だ」と言わんばかりに紅童子のZ33がシビックの前に立ちふさがる。

前方の鉄翁と金色般若が先行して逃げていく。

どうやら1人1人相手する必要があるようだ。

 

「(最初の相手は君か…)」

最上としては正直どんな相手でも問題なかった。

黒崎三兄弟とはいうものの、結局のところ3人まとめて倒してしまえばよい…それくらいの気持ちなのである。

Z33とシビックはテールトゥノーズの状態のまま浜崎橋JCTへと走り抜けていく。

200キロオーバーの中で、2台は接戦を繰り広げていた。

 

「(このZ33にピッタリとくっついてくる…)」

紅童子のZ33の後方にピッタリとくっついてくる。

だが同時にそれだけではない「何か」があることを、紅童子は気が付いていた。

以前戦った時にはなかった、迫力を後方のシビックは纏っていた。

それはまるで、スネークアイズと同じくらいの…下手をしたら、それ以上にもなってしまってもおかしくないくらいのそれである。

そんな迫力が、後方のシビックから感じ取れていた。

2台は右車線を走りながら浜崎橋分岐を右へと向かう。

 

「(仕掛けるポイントはわかってる…この先!)」

最上自身、既に勝負所はわかっていた。

ずっと同じやり方で、隙を付いてきた。

コーナーでは明らかに自分が速いという事を最上自身も自覚していたのだ。

後方にピッタリとくっついた状態で、Z33が右車線から左車線へと移動する。

都心環状線内回りとの分岐直前には左高速コーナーがある。

最上自身、最初からそこを突くつもりでいた。

 

「(後方のシビックを振り切るしかない…!)」

紅童子自身、どこか焦りを感じていた。

だがそれでも追い抜かされなければいくらでも勝機はある。

向こうのマシンにZ33が太刀打ちできないとは限らないのだ。

そう思った以上、一瞬だけアクセルを抜いてハンドルを左に曲げる。

230キロオーバーで走行する中、Z33は右車線からコーナー内側の左車線へと飛び込む。

クリアな状況でありながらアウトインアウトのラインを描き、そのまま突破しようとしていたのだ。

だが、次の瞬間だった。

 

「(立ち上がりが遅い…まず一匹!)」

「―――っ!?」

Z33の右サイドに突如として表れた水色のシビック。

言うまでもなく最上のシビックだ。

そんなシビックが外側から…まるで大外刈りを決めるようにZ33の追い抜きに取り掛かっていた。。

左車線のアウトインアウトのラインを描いたZ33に対し、シビックは右車線を走りZ33がインコースに攻め込んだ瞬間を外側から狙った。

そこからZ33が左車線から右車線へと膨れる寸前には…アクセル全開で突っ走っていたシビックはZ33の右サイドにそのボディを捻じ込んでいた。

隙間は10センチもない。

そんな思いもよらぬアタックに、紅童子は動揺のあまりアクセルを抜いてしまった。

そしてアクセルを抜いたことで…本来伸びるはずの加速が、伸びない。

いや、加速はしているのだがアウトインアウトの際に一瞬だけアクセルを抜いた時に比べると、明らかにスピードが伸びていない。

アクセル全開で大外刈りを決めたシビックはそのままみるみるうちに車間距離を広げていく。

車間距離はあっという間に数メートルまで広がる。

 

「(くっ…!でもたかだかコーナー1個!次の汐留で食らいつく…!)」

紅童子自身、コーナー1個でぶち抜かれただけでは心が折れる筈もなかった。

都心環状線に合流したら、最初に汐留ランプウェイ直前のS字コーナーがあるのだ。

高速コーナーでぶち抜かれても中速コーナーや低速コーナー、ヘアピンと言ったコーナーであのシビックが絶対的な優位であるとは限らない。

都心環状線内回りに合流して3車線、そこから新交通システムの高架を潜り抜けてS字コーナー。

ここで食らいつく…そう思っていた。

前方数メートル先のシビックがS字コーナーへと飛び込んでいく。

 

「―――!」

前方のシビックはブレーキを一瞬だけフラッシュさせたかと思いきや、一番右の車線から一気に一番左の車線へと突っ込む。

FFならではのタックインを発動させたのか、200キロオーバーと言う猛烈な速度でコーナーへと突っ込む。

一台でも一般車両がいたら自己ってもおかしくないスピードである。

どんな相手であっても多少のマージンは残している紅童子にとってはあまりにも速い、速すぎるというべきもの。

そんな状況下でもあのシビックは平然とコーナーへと突っ込んでいくのだ。

最上は基本的にコーナーリングにおいて他のライバルよりも素早く走り抜けることが出来るという特性があっても、それでも易々と倒せるものではないはずである。

それが、紅童子に対しては圧倒するかのようなスピードでコーナーを掛けていくのだ。

 

「(は、速い…!?)」

普通であればきっちりとブレーキを決めるはずのS字コーナー。

そこを前方のシビックは一瞬だけブレーキを掛けたかと思いきやタックインを決めてコーナーの内側へと飛び込んでいく。

その姿は首都環状の実力者の一人である紅童子にとっても、あまりにもスピードがあるものだった。

 

「(追い抜かせたからには、食らいつかせないよ)」

一方こちらは余裕しゃくしゃくで逃げていく最上。

最初のコーナー直前で一瞬だけブレーキを掛けたかと思いきやアクセルオフでハンドルをきっちりと左に曲げ、そのままコーナー内側へと突っ込む。

そしてそのまま次の右直角コーナーが迫るのだが…ここで最上は一瞬だけアクセルオン。

前輪にエンジンパワーが伝わったかと思いきや最上は再びアクセルを抜いて一瞬だけブレーキを踏む。

一瞬だけ推進したかと思いきや、再び右へと旋回するシビック。

オーバースピード気味に突っ込むことで後輪が多少なりとも悲鳴を上げる。

グリップを失いかけて右から左へと膨らむのだ。

だがそれでも最上は何も慌てていない。

 

「(外に膨れるというのならば…こうだ)」

外に膨れるという事ならばオーバースピード気味。

だがそれでも最上はマシンのタイヤグリップが回復すると読んだのか、一瞬だけアクセルを抜いてハンドルを更に曲げる。

一番右車線から最初の左コーナーで一気に一番左車線へ。

そこから次の右直角コーナーに向けて一瞬だけブレーキを踏んでハンドルを右に曲げる。

後輪が滑り始めたところでアクセルを僅かに緩めてマシンパワーがタイヤに伝わりすぎないように調整する。

ハンドルを微調整しながらアクセルも同時に調整。

その調整していく中でシビックは一番左の車線に膨らみかける。

 

「―――!」

一瞬だけ減速したシビックはそのまま汐留ランプウェイ直前へ。

僅かながら後輪を滑らせたシビックはグリップを回復させ、多少ドリフトさせつつも一番左の車線まで膨らみすぎることなく、一番左の車線と真ん中の車線の中間部を200キロ近くと言うスピードで突破。

シビックはそのまま汐留分岐を右へと直進。

後方のZ33のヘッドライトがシビックのバックミラーから消えつつある中で、最上はアクセルを踏み続けていた。

速度の差もあってZ33はあっという間に振り切られた。

 

「(スピードが違う…違いすぎる!)」

一方こちらはコーナーに突っ込んでいたZ33。

前方のシビックがわずかながらドリフトさせていたが、正直言って自分のZ33ではあそこまで明らかにアングルを抑えたドリフト…スピード重視のドリフトは出来ない。

ただでさえハイパワーなZ33である以上、ドリフトして乗りこなせなければ意味がないのである。

だがそれでもアクセルを踏むと、マシンパワーがありすぎるためにアンダーステアを誘発して一番左車線へと投げ飛ばされてしまう。

そうである以上、紅童子としては嫌でもアクセルを調整しながら…シビックとは違って殆どアクセル全開で突破することは出来なかった。

そんな2台のドライビングの差もあり、シビックはあっという間に汐留分岐から汐留トンネルへ。

一方で多少なりとも減速したZ33はまだ汐留分岐を通過した直後だった。

ここまでくればもう結果は言うまでもないだろう。

2台のカーナビの体力ゲージは…紅童子のそれがみるみる減っていく。

もはや勝負はついたというべきだろう。

前方のシビックは何も気にしていないかのように汐留トンネルを走り抜けていくが、Z33はまだトンネルにも入っていなかった。

 

「(くっ、兄さんたちお願いします…)」

もはやニトロを使っても追いつけない…

カーナビに「LOSE」の文字が表示された直後、紅童子は白旗を上げるかのようにアクセルを抜いて失速していく。

 

 

 


 

 

 

―――シビックが汐留トンネルを抜けた直後。

推奨BGM:GOLD RUSH 2025(from beatmaniaⅡDX33 Sparkle Shower)

 

「(見えてきた)」

汐留トンネルを抜けたシビックの前に迫るのは、金色のZ32と黒鉄色のBNR34。

どうやら先行したのは良いが、最初の壁を破ることを待っていたようだ。

銀座出口付近にあるS字コーナーを走り抜ける2台。

その2台にシビックは肉薄しようとしていた。

 

「(来やがった…!雅路のヤツはダメだったか)」

「(こうなったら不本意だが、2人で相手するか…)」

銀座付近のS字コーナーを走り抜ける2台。

その後方からシビックのヘッドライトが迫る。

 

「(見えてきた…このまま行っちゃえ!)」

先行する2台はほとんど差がない。

このまま2台をぶち抜けるかもしれない…そう最上は思った。

銀座出口付近のS字コーナーを抜け、新富町方面へと走るシビック。

車間距離は数十メートルまで迫る。

だがここで前方にある変化が訪れる。

左車線を走っていた2台だが、Z32が右車線へ。

一瞬だけブレーキを踏み込んだかと思いきやBNR34とほぼ並びかけようとしていた。

 

「(このまま2台で挟み込むぞ)」

「(並走させれば追い抜かせない、ってことか)」

左車線、BNR34。右車線、Z32。

2台がほぼ同じスピードでシンクロしながら並走している。

2車線と言う狭い区間である都心環状線ではそれが十分な通せんぼになっていた。

新富町方面へと走る2台はストレート区間で完全に並走状態となっている。

そんな中で2台の後方にシビックは確実に迫っていた。

 

「(通せんぼか…左から行くか右から行くか?)」

最上自身、多人数でのバトル自体は慣れたものである。

だから多少の通せんぼくらいで動じることは何もなかった。

並走状態なら多少後方からプッシュすれば動じることも珍しくないのだ。

240キロオーバーで並走するBNR34とZ32だが、それ以上にシビックは速かった。

新富町出口が迫る中で、車間距離はみるみる縮まる。

 

「(来るぞ…!)」

「(追いついてきやがった…速い!)」

後方数メートルまで迫ってきたシビック。

BNR34とZ32のドライバーは互いにアクセルを全開に踏み込むも、車間距離はほぼ一定をキープし、後方にずっと食らいつかれていた。

ストレート区間を走り終え、新富町出口横へ。

速度は250キロを超えている。

そんな中でZ32の後方にシビックはピッタリと食いついていた。

新富町横を抜け、1つ目の橋脚を通過する。

 

「(ピッタリとくっついてきやがる…!)」

「(抜かすことが出来ないなら、最低限きっちりとくらいつく)」

橋脚寸前、Z32の後方にはシビックがピッタリと食いついてきていた。

あのシビックから感じられるプレッシャーは間違えなく只者ではなかったからだ。

あのスネークアイズと同等と言ってもいいくらいの圧倒的なプレッシャーを感じる。

それくらいなまでの実力と貫禄が、あのシビックのドライバーにはある…そう思わざるを得なかった。

金色般若自身動揺していたが、それに対して最上はそれをあざ笑うかのように冷静だった。

2台が通せんぼする中で、Z32の後方をシビックが走り続ける。

橋脚を抜け、京橋出口寸前の上り坂へ。

状況は変わらずBNR34とZ32が先行する中で、シビックがZ32の真後ろにつけて追従する。

だが、3台が京橋出口横を通過しようとした瞬間だった。

 

推奨BGM:Million Doller(from beatmaniaⅡDX31 EPOLIS)

「(おっと危ない)」

「(離れた?…っ!?)」

京橋出口寸前、最上はアクセルを抜いてブレーキを踏みつつ軽くハンドルを左に曲げる。

速度は250キロ台から230キロ台まで減速するが、シビックは安定しながら僅かに旋回する。

この先には下り坂と右高速コーナー、そして橋脚があるのだ。

相手の妨害工作に動揺するほど最上は弱い人間ではなかった。

だが、同時に…金色般若は後方のシビックが離れたことに違和感を感じるのと同時に、次の瞬間にはある感覚に襲われる。

突如としてマシンの感覚が無くなった。

 

「(タイヤの感覚がない…!?オーバースピード!?)」

京橋出口から2橋脚までは下り坂、そして橋脚寸前に右高速コーナー。

京橋出口付近が頂上だとして、そこから橋脚まで一気に下り坂になるのだ。

これは一体どういう事を意味しているのか…というと、下手にオーバースピードに突っ込むと、車が跳ねてしまうのだ。

最上は一瞬だけブレーキを踏んだことでしっかりと減速したのだが…プレッシャーに襲われていた金色般若はブレーキングポイントを逃し、オーバースピードで突っ込んだことでZ32が跳ねてしまったのだ。

結果としてどのようなことになるのか…というと、着地まで車の制御が全くもってできなくなってしまう。

 

「うわああああああっ!!」

一瞬だけ跳ねたZ32だが、250キロオーバーで跳ねたことで空中でマシンは一切の制御不能に。

着地する寸前に右にハンドルを切ったのは良いのだが、結果としてマシンは制御が効かずに一気に右を向いてしまう。

グリップを失ったZ32は右車線から左車線に飛び出そうとする中で右回転を始める。

慌ててブレーキを掛けてもマシンは回転を止めずに、左車線を突っ切る。

そして次の瞬間。

 

ガリガリガリガリ…ガッ!

 

スキール音が響いたかと思いきや、橋脚にフロントバンパーをぶつけたZ32はそのまま擦らせ続け、橋脚を塞ぐかのように横滑りし続けていく。

そして接触の反動から今度は左を一気に向いたまま左回転を始める。

速度は一気に下がってしまうが、これだけでは済まない。

通せんぼするかのように停車しようとすると、サイドからBNR34が迫ってくる。

 

「(何やってるんだよ、バカヤローっ!!!)」

グリップを失ったZ32は右車線から左車線へとスピンしながら膨れて橋脚を塞ぐような形で回転し続ける。

そしてあろうことか、左車線を走っていたBNR34の前に飛び出してスピンしたことで…後続のBNR34は橋脚に飛び込む寸前に通せんぼを受けてしまう羽目となった。

おまけに左車線から右車線へと移動するほどの制動力もない。

前方でスピンながら車線をふさぐZ32に動揺した鉄翁は、慌てて全開でブレーキを踏み込む。

右回転をし始めたZ32はそのままアウトへと膨れ、橋脚の左側へ。

スピンしながらの大きなクラッシュは避けられたが、同時にBNR34の前方を通せんぼする形となってしまった。

フルブレーキングからサイドブレーキを掛けて強引にスピンさせることで、BNR34はあわやZ32と接触…となりかねない状況で強引にマシンを橋脚の中でハーフスピンさせて停車させる。

金色般若のZ32の前で、BNR34は間一髪停車してクラッシュを免れた。

 

「(…これで終わらせる!)」

一方、オーバースピードで突っ込んだZ32や通せんぼでタイムロスをしたBNR34に対し、涼しい顔で右車線から橋脚を抜けたシビック。

橋脚内で完全に停止した2台をオーバーテイクし、ほぼ勝利は決まっているも同然の状態。

橋脚を抜けたところでニトロスイッチを入れ、勝負を付けようとしていた。

180キロ台まで減速していたシビックは、江戸橋ジャンクションまでのストレートで一気に200キロオーバーまで加速しようとしていた。

八重洲線との合流…3車線区間に入ってもニトロスイッチを入れていたことでその加速は止まらない。

速度は上り坂区間で250キロまで加速しつつ、一番右の車線へ。

だが、上り坂区間が終わろうとしていたところで最上はアクセルを抜いた。

 

「(これなら箱崎までに終わるよね)」

最上自身、都心環状線ではなく新環状ルートへと行こうとしていた。

それはやはり勝負はもうすぐに付くだろうと判断したからだろうが、多少なりともスピード勝負をしたいと考えていたからかもしれない。

江戸橋JCT寸前で僅かながらジャンプしたシビックはそのまま一番右側を走行して深川線方面へ。

前方にはヘアピンが見えているが、そこを目掛けて走る中でアクセルを抜いてブレーキを踏み込む。

速度は250キロから170キロまで減速しようとしていた。

そしてヘアピンを攻め込もうとした寸前において…最上のシビックのカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。

 

「(畜生…こんなこと、ありえねぇ…)」

「(呆気ないな…まさかここまで俺達が蹂躙されるなんて)」

一方、こちらは通せんぼの状態から回復できていない2人。

金色般若や鉄翁としては最上の実力があまりにも上がりすぎていることに驚くのと同時に、彼女がとんでもない力を手に入れているという事を嫌と言うほど痛感するのだった。

 

 

 


 

 

 

―――箱崎PA。

推奨BGM

 

最上のシビックが先に入っていたが、黒崎三兄弟のマシンが後から3台共々入ってくる。

Z32のフロントが接触により多少塗装が剥がれて凹んでいたことを除けば、Z33もBNR34もノーダメージである。

互いに駐車して車から降りてきたところで、最上と黒崎三兄弟が対峙する。

 

「なるほど、これがあなたの実力ですか…僕たちの力をすべて出し切ったつもりでしたが、負けてしまいましたね。勝負はあまりにもあっけなかった。しかしまさか、政則兄さんと雅和兄さんを片方のスピンに巻き込ませる形で一網打尽にしてしまうとは…」

「ふふっ、これが僕の実力さ。わかってもらえた?」

「ええ、十分な程に」

紅童子は実力を認めるように言ったが、金色般若も口を開く。

 

「ふん。まあ、ルーキーにしては上出来じゃねえか」

「あはっ、素直に嬉しいよ。まあでも、流石にあのミスはどうかと思ったけどね」

「…チッ、返す言葉もねえよ」

「あれ大丈夫だった?なんか随分激しくぶつかったみたいだけどさぁ」

「ああ、思った以上にダメージはなかった」

「俺も問題ない。ぶつかってはいないからな」

「そっかあ。まあクラッシュがないだけよかったよ」

金色般若や鉄翁も最上の実力を認める中で、紅童子が口を開く。

 

「うちのリーダー…2代目スネークアイズは、あなたのような走り屋が台頭することを期待しています。なにせ…迅帝をおびき出すエサとして、うってつけの存在だ」

「迅帝をおびき出すエサ?」

最上としては気になった。

自分がエサ、とはどういうことか?…すると説明するように紅童子が言葉を続ける。

 

「どうやら迅帝は“新たな挑戦者”にしか興味がないらしいんですよねぇ…彼を闘いの舞台に引きずり出すには、生贄となる“今もっともアツい走り屋”が必要なんです」

「アツい走り屋、かあ。よくわからないけど、それって僕に当てはまる?」

迅帝が速い走り屋を求めているという事は最上もわかった。

そしてそれに当てはまるかどうか…というのは彼女自身も気になっていた。

すると紅童子が言葉を続ける。

 

「…あなたには確かに素質はある。だが、まだ足りない」

「そっかあ…」

紅童子曰く、首都環状最速のドライバーである「迅帝」を首都環状へ呼び出すためには…最上のような実力者が必要だそうだ。

最上もその実力者には近づいているそうだが、まだ足りないそうだ。

すると金色般若が口を開く。

 

「しかし…これで<Phantom9>も、残すところはあとNAMAHAGEひとりだけか。クソッ…情けねー」

「え、なまはげ?それって?」

金色般若の言葉に疑問を持った最上。

なまはげ、とはあのなまはげだろうか?

するとその様子を見た鉄翁が口を開く。

 

「ふむ…お前さんはNAMAHAGEのことを知らないようだな」

「うん。有名な人?」

「<Phantom9>のメンバーとして活動するようになった頃から、いくつかの名前を使い分けていたらしいからな。掴みどころのない男だ。かつての名はパープルメテオ。迅帝以前に首都環状の頂点に立った、伝説の時代の走り屋さ」

「パープルメテオ…今のNAMAHAGE、そんな走り屋が?」

「ええ。そして、彼は迅帝の師匠でもある。そう…自らの弟子と敵対するスネークアイズの側についた、いわば裏切り者なんです。面白い方でしょ?」

Phantom9の最後のドライバー、NAMAHAGE。

どうやら首都環状でもトップクラスの実力者らしい。

 

「迅帝の、師匠…」

最上はふとそんな走り屋にも興味を持つのだった。

 

 

 


 

 

 

箱崎PAで黒崎三兄弟と会話していると、突如入口の方からマシンの音が響いてきた。

随分と獰猛そうなマシンのエンジン音が入口に響いてくる。

 

「ん?あの車は…」

「まさか…!」

4人がエンジン音の方向を振り向く。

PAに入ってきたのは…どこか風格漂う赤いランエボ10だった。

左右のサイドに張り付けられた髑髏のステッカーがあまりにも印象的な、そんな威圧的なマシンである。

 

推奨BGM

「あれは…!」

「このタイミングで…」

「えっ、誰?有名人?」

「アイツは…」

黒崎三兄弟が動揺する中で、最上だけが普段と変わらなかった。

すると、車から降りてきた裕福そうな白人の男が最上の方へやってきた。

彼はそのまま最上に話しかける。

 

「あなたが究極の不沈艦ですね?<Phantom9>のほとんどのメンバーを撃墜した実力者だとか」

そのドライバーはアメリカ訛りの男。

アクセントに多少の訛りはあるものの、聞き取りやすい流暢な言葉だ。

 

「いずれスネークアイズとも対決するつもりなのでしょう?…ならば、私たちは目的を共有する仲間たりうるのです。私が初めて首都環状を訪れたのは、スネークアイズにリベンジマッチを挑むためでした」

「はあ…ところで、あなたは一体?」

ペラペラと自分のことを話す白人の男に、最上は困惑気味に質問する。

一体何者なのか?

すると「おやいけない」と言うかのように彼はこう言った。

 

「おや失礼…ご挨拶がまだでしたね。私はジェイムズ・ビギンズ…首都環状での名はスカールバレット。それなりに名の知れたHASHIRIYAなんですヨ」

「スカール、バレット?はあ」

白人の男はスカールバレットと名乗った。

どうやらそれなりの実力者のようだが、「HASHIRIYA」という言葉遣いには最上も気になった。

男は言葉を続ける。

 

「しかし、私のホームグラウンドはビジネスの世界にあります。貴方も聞いた事がありませんか?最近は、この国でも“ビギンズ・グループ”のオーナーとして知られているんです」

「…あー、どっかで聞いたことあるような。たしか、自販機にあったような?」

最上自身、あまり世間の事には関心がないのだが…たまに自販機を見ると「BEGINS BEVERRAGE」の文字が書かれていたような?

その言葉を聞いたスカールバレットが、一瞬だけ感心したかと思いきや口を動かす。

 

「いかにも。私は、首都環状には大きなビジネスチャンスがあると考えています。やり方次第で、世界中から人が、企業が、カネが集まる。人々は私の箱庭でスピードに熱狂し、勝利の栄光に浴する。HASHIRIYAたちの楽園が築かれる…いかがですか?私の配下となれば、あらゆる栄華を手にすることができるでしょう」

スカールバレットとしては最上をスカウトしたいと思っていた。

彼の元に行けば、かなりのメリットがあるといっても過言ではないだろう。

 

「……」

「おいおい、いきなりのスカウトかよ…」

「…さて、どう出るか」

その様子を見ていた黒崎三兄弟も興味を持っていた。

だが、最上の回答は意外なものだった。

 

「うーん…すぐには答えられない、かな。僕は別にビジネスとかそういうのはちょっと…首都環状はあくまで趣味で嗜む程度だし、一人で自由に伸び伸びとやっている方が楽しいんだ」

最上自身、派閥争いやビジネスには関心がなかった。

彼女にとって首都環状を走ることはあくまで趣味の一つであり、同時に自由に走りたいと考えていたからである。

その言葉を聞いたスカールバレットだが、断られることは目に見えていたのか…動揺することなく言葉を続ける。

 

「…ふむ。あまり興味がないようですネ。残念です。ですが利用価値がないのなら排除するのみ。危険の芽は若いうちに摘んでおく、それが私のモットーです」

「…じゃあ、バトルしたいってこと?」

「いえ、すぐには挑みません、まずはあなたの力を示すのです。私の仲間たち…紺碧のスナイパー、沈黙のカシオペア、夜明けのガーネット。彼らを破ってごらんナサイ。走り続けていれば、きっと会えるでしょう」

「はあ」

最上の実力にスカールバレットは興味があるようだが、同時に実力を示してほしいそうだ。

手下のドライバーたち3人を倒せば彼もバトルに応じてくれるだろう。

すると話し終えたスカールバレットが今度は黒崎三兄弟の方へと目線を向ける。

そしてこう口にする。

 

「ところでそこのあなた方…たしか<Phantom9>の黒崎三兄弟、でしたネ?」

「…そうだが」

「このままいけばいずれこのドライバーはスネークアイズと戦う事になる、私が目星をつけていて、倒しかねない…そのことを坊ちゃんにお伝えしてくれますか?」

スカールバレット自身、最上がいずれスネークアイズを倒すのではないか…と強く期待している一面もあった。

そしてそれを二代目のスネークアイズに伝言で伝えてほしいというのだ。

何のためかはわからないが、何か意味はあるのだろう。

 

「俺達が、か?」

「チッ、一丁前にパシリかよ?」

「…まあ、いいでしょう。あなたもスネークアイズとは浅はかならぬ因縁があることは知っていますからね」

「フフッ、素直でよろしいですネ。お願いしますよ…ではこれにて失礼」

黒崎三兄弟としては伝言自体は決していらないものではなかった。

スカールバレットとスネークアイズの間に因縁があることは知っていたし、一応知っている顔だからだ。

スネークアイズへの伝言を伝えると、スカールバレットは再びランエボ10に乗ってこの場を後にするのだった。

場には再び最上と黒崎三兄弟が残された。

すると先の最上の発言に感心したのか、金色般若が声を掛ける。

 

「お前、随分とまあ言い切ったな。アイツと向き合ってああ言うようになるなんてな」

「なんとなく、だよ。でも聞きたいんだけど…あの人が言っていた事、本当?スカールバレット、って言ってたよね?」

「ええ、本当ですよ。うちのリーダー…いえ、先代のリーダーとあのスカールバレットには因縁があるんです」

「スカールバレット…奴はスネークアイズにリベンジするためにわざわざこの国にやってきた野郎だ。何でもアメリカで勝負をして敗れたらしい…先代のスネークアイズが倒されて以来帰国していたそうだが、まさかここにきて現れるとはな」

黒崎三兄弟としてもスカールバレットの存在は知っていたが、ここ最近は顔を出していなかったようだ。

そのことに関しては金色般若も驚いていた。

するとここまで黙っていた鉄翁が最上に対して口を開く。

 

「スカールバレットが言った通り、その部下というべき奴らが3人いる…またいくらかチームを倒して、首都環状で名を上げればいずれ勝負を仕掛けてくるだろうな。そしてその先にはきっとNAMAHAGEも…せいぜい気をつけろ」

「う、うん。わかった」

鉄翁曰く、スカールバレットの手下3人とスカールバレットを倒せば、NAMAHAGEが現れるという。

鉄翁の忠告に最上は静かに頷くのだった。

 

 

 


 

 

 

―――翌日、夜。

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最上はまたチューナーの元へと訪れていた。

整備ガレージにシビックを入れた最上がチューナーと会話している。

 

「ふむ…黒崎三兄弟を倒したところで、『スカールバレット』が現れた、か」

「うん…なんか変な人だったよ?先代のスネークアイズと少なからず因縁があるとかなんとか?仲間たちを倒せばバトルしてやるとか?」

最上にとってスカールバレットは「変な人」だった。

いきなり自分の事をべらべらと話だし、挙句スネークアイズと因縁があるだとか、挑戦状を叩きつけられるとは思ってもみなかったのだ。

すると、最上の話を聞いたチューナーが声を掛ける。

 

「ヤツの仲間か」

「たしか、カシオペア?だっけ?」

「沈黙のカシオペア、だな。あとは紺碧のスナイパー、夜明けのガーネット。そいつらがスカールバレットの手下だ」

「へえ、そうなんだ。それにしてもスカールバレットって、スネークアイズと関係があるなんてね」

「奴と先代のスネークアイズに因縁があるのは事実だ。先代のスネークアイズがアメリカ修行に行った際、スカールバレットとバトルをしたそうだ」

「それで、スネークアイズが勝ったと」

「ああ。それ以降奴はスネークアイズに執着せんとこの国に来た。奴は大企業の御曹司でな、今でこそランエボに乗っているが…以前はコンセプトカーに乗っていたそうだぜ」

チューナーもやはりスカールバレットとその手下たちの事は知っていたようだ。

すると最上が気になったことを口にする。

 

「コンセプトカー?それって?」

「わかりやすく言やあ、正式販売されていないとんでもないシロモノということさ」

「へえー、そうなんだ」

スカールバレットは以前、ランエボ10が正式販売する前のコンセプトカー…「Concept-X」に乗っていた。

だが正式販売になって以降は、今のランエボに乗り換えたらしい。

チューナーが言葉を続ける。

 

「そんな奴にお前さんが標的にされたなら…また一つ壁が現れたということだろうな」

「何だかまた変な人に狙われちゃったなぁ…まあ、いいんだけどね」

最上にとってはまた実力者に目を付けられてしまったと感じていた。

そして同時にその実力者は、普通の人ではないという事もなんとなくではあるがわかっていた。

だが一方でチューナーはこれ幸いと言うかのようにこう提案する。

 

「だがこれで、車のチューンの口実は出来たな。奴らを倒すには、俺がこのシビックを完全武装形態にまで仕上げてやろう」

「本当かい?」

「ああ。俺も男だしな、約束は守るさ…」

「おやっさん、ありがとね」

黒崎三兄弟を倒すというノルマを達成したことで、チューナーはまた最上の車をチューニングするらしい。

今回はどうやらかなり手を加えられるようだ。

するとチューナーがこう口にする。

 

「ここから先は更なるステージだ。生半可な実力なんかじゃ敵う筈もない奴らがウジャウジャ出てくるぜ…」

「じゃあ、やっぱり僕の車は速くする必要があるんだね」

「まあ…勿論技術も必要になるがな。だが俺が組んだ車を乗りこなせれば、きっとお前さんの勝機はいくらでもあるはずだ」

「そっか…信じるよ、おやっさん」

最上もチューナーもシビックをより速くするという方針で同意した。

最上自身、チューニングすることに関してはもう躊躇がないようだ。

ここまでくれば限界まで踏み込むことになるというのは間違えない。

 

「さあ、始めよう。この車を限界まで仕上げようじゃねえか!」

チューナーの一声で、最上のシビックは更なるステージへ…限界までチューニングされることとなる。

 

 

 


 

 

 

全ての魂を生贄に捧げよ―――

復讐の闇に潜む者の命により、繰り返し襲い来る刺客たち。

 

振り払う度、振り払う度、標的にされた魂は純度を増してゆく。

それは悪夢の再演…失われた伝説を蘇らせる儀式。

 

執念の鎖は、哀れな生贄の喉笛に食い込み、決して離そうとしない。

(第23話End)

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