「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
原作で言うステージ3をクリアした最上ですが、ここから更にシビックにチューニングを施すことになります。
その速さとはいかに…
act.24「Ultimate(究極の速さを求める者)」
―――ライジングシーマン、噂のライターといった新世代の走り屋。不動心の龍馬、スティールハートといった元・十三鬼将のドライバーたち。ダーティーフォックスや砂塵の帝王、そして黒崎三兄弟といったPhantom9のドライバーたち。
それら全てに対して大立ち回りを振舞う新進気鋭のドライバー、最上。
そんな最上はFL5シビックに乗り換えたことにより、より多くのドライバーたちに勝利することが出来ていた。
だがそれでも最速への道はまだ距離がある。
黒崎三兄弟を倒した翌日、最上はチューナーの元へとシビックを預けてチューニングを依頼するのだった…。
―――チューナーのガレージ。
最上は愛車であるシビックの前で、チューナーと会話している。
2日間預けたことにより、シビックはこの時点でほぼフルチューンと言ってもいい状態だった。
「2日預けてもらったことで、チューン自体は仕上がっている。俺から見てもかなりのマシンになってるぜ…ほぼ完成形に近い形だ」
「見た目はあまり変わりないけど…やっぱり内側はすごいんだよね?」
「ああ。文字通りのヤバいヤツだ」
目の前に止まっているシビックは依然と変わりない…それこそエアロ自体はVARIS製のエアロとBLITZのリアウィングで控えめだが、黒崎三兄弟を倒した時よりも200馬力以上もパワーアップされていた。
馬力で言えば660馬力。
FFターボのマシンでここまでくれば物凄いものであるというのはわかるだろう。
「遂に僕の車もすごいところまで来ちゃったって感じだねえ」
「ククク…まあ今できる範囲、といってもここまでくればもうレーシングカーと遜色ないレベルだ」
「つまりサーキットを走る競技用の車両とあまり変わりないんだよね?すごいよ」
「お前さんが更なる速さを求めるからこそ、俺は妥協せずにここまでチューンした。倒すべき相手もみんな倒せるくらいの実力もあったからな」
「いやあ、アハハ。褒められているようで悪い気はしないね」
チューナーは最上がこれまでの相手達と戦っている間に前もって仕込んでいたため、チューニング自体はかなりスムーズに行われた。
タービン換装と高回転域の上限値向上、ECUベースマップの更新による排気効率向上、超高性能エキゾーストマニホールド交換、インタークーラーとラジエーターの高性能化、レーシングカーレベルのブレーキとクラッチとLSD、サスペンションやトランスミッションの装着。しまいにはロールケージ装着に伴うボディ剛性強化とレーシング使用タイヤ交換、3本分の大型ニトロ搭載。
原作で言えばほぼ出来る範囲のチューニングを施していた。
これもやはり、チューナーが最上の実力を認めたのもあるが…同時に最上が速さを求めた結果でもあるのかもしれない。
するとチューナーはあることを口にする。
「だが最近、お前さんはやけにスピードアップを求めるようになったように見えるが…何かあったか?」
「あれっ、わかる?実はそうなんだよね」
チューナーは最上がやけに速さに対して貪欲になりかけていることを気にしていた。
以前は首都環状を走るだけで満足していた彼女だが、ここにきてそれなりに速さを求めるようになっている。
これは一体どのような心境の変化なのか…それを聞き出したかった。
するとそれを聞いた最上がこう口にする。
「なんかさあ、最近僕について変な噂ばかり流れてるんだよね」
「噂?」
「悪どいことをしてるとか、闇ルートで車をチューンしてるとか。まあ、否定はしないけどさ」
「ほう?そりゃ何で?」
ここ最近、最上自身に多少なりとも悪い噂が流れてきていることは最上自身が知っていた。
噂のライターやライジングシーマン、愛のトルナードといった新世代の走り屋が話していたことが妙に気になっていたのだ。
尾びれが付きまくっている状況は最上自身でも気になってはいるのだった。
だがそれでも最上自身は気になってはいても…その噂を否定したいという訳ではなかった。
何故なら…
「だってさあ、おやっさんって何となくだけど只者じゃないよね?才能ある人に対して、糸目をつけずに車を遠慮なくチューンしてくれるじゃないか」
「ククク…俺が闇ルートの正体って?正攻法で俺はチューンしてるが、まあ傍から見りゃそうかもしれねぇな」
最上は今付き合っているチューナー以外にチューナーを知らない。
それは言ってしまえば、最上が車を速くさせることができる人を例のチューナー意外に知らないということ…言ってしまえば比較対象が存在しないのである。
だがそんな最上にとっても、例のチューナーの実力は異常と見ていた。
それはやはり、例のチューナーがこれまでに2台も車を格安でチューンさせてくれていて…そしてその分速くなることがしっかりできたいたからかもしれない。
タダ同然とは言わないが、それでも格安で車を速くさせてくれている…これは普通に人ではないと最上が判断するのも強ちわからないことではないだろう。
そしてそんな「普通の人ではない」と考えた以上…闇ルートでチューンしたといわれても何ら不思議ではないのだ。
「でしょ?まあ、僕はおやっさんしか車を速くしてくれる人を知らないから頼るしかないんだけど。それに僕をここまで速くしてくれた、ある種の恩義もあるしね。あとまあ正直なことを言うと…ここまできたなら、速くなって実力を知らしめたいって思ってもいるんだ。速い人が全てって、どっかの人が言っていたくらいだしね」
「ククク…速いヤツが全て、か。あとまあ別に恩なんてどうでもいいぜそんなのはよ。俺が組んだ車でお前さんが速くなってくれるというなら十分さ」
「でもおやっさんも変な人だよね…突然首都環状に現れた新人に対して、糸目もつけずに車をバリバリチューンするんだもん。商売あがったりでしょ?」
「別にいいんだよ、俺は。本業でそれなりに稼いでいるしな。あくまで趣味の延長上だ」
「本当かい?表の文房具屋も、なんだかあまり人の出入りも見えないしさあ…」
「ククク…『能ある鷹は爪を隠す』って言うもんだろ?」
「でもわっからないなあ、おやっさんは…よくやっていけるよね」
「ま、俺にとっちゃ車のチューンはあくまで遊びだ。気にするな」
「ふーん、そっかぁ」
最上自身走りの知識はそれなりに会っても車を速くするための知識…チューニングやセッティングの知識はほぼないも同然。
だからこそチューナーに頼るしかないのが現状だ。
そしてそんなチューナーは糸目もつけずに車をガッツリとチューニングしてくれているというのだから…わからない人、と言われても無理もない話だった。
すると最上はあることを思い出したかのようにこう口にする。
「あと最近さ、久遠のポラリス…だっけ?あの子にも会えてないんだ」
「ん?そうなのか?」
「うん。首都環状を走るときはどうやら時間帯が違ったり、走るコースが違ったりするみたいでさ…」
久遠のポラリス。
最上が走り出した同時期に出会った首都高の噂のドライバー。
ここ最近最上はずっと彼女に会えていなかったこともあり、多少なりとも気にかけていた。
そして同時に…ある噂をも聞いていた。
「何かあの子についても、変な噂を聞くんだよ。速くなっているからか、色んな人から狙われてるとかさぁ。ちょっと心配だし、あの子の事を追いかけてみたいとも思ってるんだ。だったら速くなることは必要でしょ?」
最上自身、久遠のポラリスが腕を上げていること自体は聞いていた。
だが同時にそんな彼女を気に食わないと思ったドライバーたちが勝負を仕掛けているらしい。
タクシードライバーとして多少なりとも度胸のある最上自身ならともかく、どこか弱弱しさを感じる久遠のポラリスの事を、最上は多少なりとも気にかけていた。
するとチューナーはそんな最上にこう声を掛ける。
「久遠のポラリスが心配だって?ククク…案外心配性だな。アイツはお前さんが想像するほどのヤワな奴じゃねえよ。それに、お前さんが見てないところで俺の下にも来ているから、安心しな」
「あっ、おやっさんのところに来てるんだ?なら僕がそこまで心配する必要はないかな」
「ああ、お前さんはお前さんの事に集中すればいいさ」
そう、例の彼女もやはりチューナーに世話になっている。最上と同じチューナーに車のチューンを依頼しているのだ。
おまけに定期的に顔を見せているようであるのならば、一応の消息は掴めているといってもいいだろう。
「アイツは今新しい車に乗り換えて、もの凄い勢いでライバルたちを倒してるぜ。まるで誰かさんを追いかけ、そいつに迫る悪意や悪い噂、恨み妬みを振り払おうと言わんばかりにな」
「へえ…まるでお偉いさんの護衛だねえ」
「ククク…そうかもな」
久遠のポラリス自身もどうやら最上の事を気にかけているらしい。
そして最上に対する悪い噂を払拭せんと…彼女も彼女なりに走り込んでいるという。
そんな様子を最上は「お偉いさんの護衛」と例えるのだった。
そのことを聞いたチューナーは、最上に対してこう言い放つ。
「さて、ここまでチューンしたら後はマシンのセッティングを煮詰めよう。しばらく走ってきて、お前さんが感じたことを教えてほしい」
「細かいところを整えるって感じだよね?いいよ」
現在のシビックはほぼフルチューン同然のチューニングが施された。
となると必要なのは、やはりマシンの細部に手を加えてマシン全体の性能を発揮できるようにすること。
その為のセッティングの手伝いをするとチューナーは言うのだった。
そして同時にこうも告げる。
「そしてもし…お前さんがこの車でこれ以上のパワーを求めるというのならば、その際は都度チューニングのお金を払ってもらう必要がある」
「これ以上のパワー?それにその都度って?」
「ここから先俺が出来るチューンは、その性能を出すのが1日しか持たない一時的なチューンがメインになる。ここまではそれなりの金額だったが、ここから先は都度それ相応のお金を払ってもらうことになるから注意するんだな」
チューナーはここまで最上のマシンを格安でチューニングしてきたが、ここから先は更なるチューニング…言ってしまえば有料オプションである。
「へえ、そうなんだ。まあ、これまで結構格安でチューンしてもらっていたからね。それくらいはいいよ。おやっさんがいろいろ手を加えてくれたのは本当にありがたいと思っているし…でもちょっと今は、この車で走ってみたいな」
「わかった、いいだろう。車のセッティング自体は手伝ってやるが、更なるチューンはお金を取るからな。忘れるなよ」
「うん、ありがとうおやっさん」
シビックを限界までチューニングした最上。
セッティングをしてマシンを煮詰めていくことを依頼し、再びシビックに乗り込んで新たなる勝負へと挑むことになる。
―――シビックを受け取って数十分後。
最上のシビックは都心環状線外回り銀座からコースインしていた。
60キロで走行するシビックは、獲物を探すべく首都環状を走行している。
「(さーて、丁度いいライバルは…っと、あっ)」
カーナビに映るのは、汐留トンネル付近にいる青い矢印。
いや、様々な方面に青い矢印があるのはわかるのだがそのライバルが一番近い。
どうやら先の黒崎三兄弟を倒したことで、新たなるドライバーたちが立ちはだかっているようだ。
汐留トンネルに入ったところでそのマシンが左車線を走っているのが見えた。
推奨BGM:Samba Ramba(from jubeat festo)
「(ピンクの…たしかスカイラインGT-Rかな。丁度いいや、相手しよう)」
外装を見る限りかなりカスタムされたBNR32のスカイラインGT-R。
どうやら新たなるライバルのようだ。
チーム「2Limit」の「ブランドハンター」と書かれている。
自分のマシンのスペックを確認したい最上としては、バトルをしたい気持ちが十分にあった。
汐留トンネルを出ようとしたところでBNR32の後方にシビックを付け、パッシング。
早速ではあるが勝負を仕掛ける。
「……」
前方のBNR32がハザードを出し、勝負を許諾する。
汐留トンネルを抜け、上り坂を上る中で2台は左車線を走りながらテールトゥノーズのローリングスタートをしようとしている。
カーナビのカウントダウンが始まろうとしていた。
3
2
1
GO!
「―――!」
GOサインと共にアクセル全開に踏み込み加速していくシビック。
1速7000回転から2速にシフトアップ。
速度は60キロから一気に150キロまで跳ね上がる。
一方でそのスピードにおいて前方のBNR32は対して加速が伸びず…遅い。
加速する中でハンドルを右にすっ、と曲げてあっという間にサイドバイサイドに。
そしてアクセルを全開に踏み込みつつも一瞬だけリリース、クラッチを切ってシフトアップをしたところでシビックはBNR32を追い抜いてしまった。
「(あれ…遅い?追い抜いちゃった)」
ものの数秒もかからずにオーバーテイク。
以前はノーマルの時もあったのでその時に比べれば明らかに速くなっている…いや、かなり速くなっているという事は言うまでもないだろう。
加速差は圧倒的だった。
何もしないうちに車間距離は5m、10mとぐんぐん広がっていく。
だがそんな中で、前方にあるものが迫ろうとしていた。
「(直線じゃ意外と大したことないみたいだね。さて、次のカーブはどうかな?)」
汐留S字コーナー。3車線の広い左直角コーナーから右高速コーナー。
いくら相手がストレートで遅くてもコーナーでは速いという例だって十分にあり得る。
だがどちらにせよ油断はしない…自分のマシンがどれだけ速くなったかも確かめたいがために、一旦は全開走行で行く。
シビックフルチューニング…その真価を引き出すために、今は現状の力を発揮する必要があるのだ。
「(一番左の車線に一般車、ならば多少のマージンを持って…)」
240キロオーバーと言うスピードの中で、最上はコーナーの先に消える一般車両…一番左の車線のEK9シビックを見逃していなかった。
多少なりともラインは潰れるが、それでもアウトからインに全開に突っ込むことは可能だ…そう最上は認識する。
もう何度もシビックで走り慣れている以上、車のチューンが変わっても走り方全体を大幅に変える必要はない…そうも考えていた。
前方に汐留S字コーナーが迫る。
「(アクセルを緩めて…よっと)」
アクセルオフから一瞬だけブレーキを掛けたかと思いきやすぐにハンドルを左に切る。
アクセルもブレーキもリリースした状態で一番右の車線から一番左の車線目掛けて旋回するシビック。
一番左の車線…文字通りにクリッピングポイントを駆け抜けたところでアクセルオン、僅かに舵角を右に調整してアクセルを踏み込んで再び加速させる。
既に最初のコーナーを抜けていた一般車両を真横に加速していくシビック。
そのまま右高速コーナーもアクセル全開で突破し、200キロオーバーのスピードから更に加速していく。
コーナーを抜けて前方に浜崎橋JCTの分岐とレインボーブリッジが見えたところで、一旦バックミラーを確認する。
「(離れちゃうか…まあ、離れちゃったならもう次のコーナーまでに終わらせようか)」
とても自分の相手ではないと判断した最上は、データ取りよりも勝負を付けようとしていた。
当たり前であるがあまりに短期決戦であるとほしいデータも全くもってえれないのだ。
そうである以上、ダラダラと続けるよりかは速い相手を探して、何なら自由走行状態でマシンの感覚を掴めばよい…そう思うのだった。
速度は250キロに到達したところでアクセルをリリース、前方の右ヘアピンコーナーに向けてブレーキを早めに踏み込んだ。
それでも勝てる、と言う余裕からか…マシンの性能をまだ把握しきれていないからか、あるいは両方かはわからないが、それでも早めだった。
だが同時に、浜崎橋JCTを右方向に進んでヘアピンコーナー手前で減速する中で…シビックのカーナビには「WIN」の文字が表示されていた。
「(うーん…勝負があまりにも呆気なさ過ぎて、車の性能が引き出せてないなあ)」
バトルを終えて減速していくシビックの中で、ハンドルを右に曲げてシビックを旋回させていた最上はそう思った。
完勝とも言うべき秒殺ぶりだったが、最上にとってそれは逆に不満でもあった。
これからマシンをしっかり煮詰める必要があるのだが、そのためのデータ取りとしては秒殺で行われてしまっては困るのだ。
実践を踏まえてマシンをセッティングしなおして、首都環状に適したマシンに煮詰めていく。
それが今の最上の走る理由であり、バトルをする理由だった。
シビックはヘアピンを抜け、そのままモノレールの高架下を70キロで走り抜けていく。
「(まあ、いいか。環状線や新環状ルートをグルグルしながらどうするべきか考えよう)」
とはいえ、無数にいるライバルたちを前に…最上は実戦経験を積みながらマシンのセッティングを煮詰めていくことを決めた。
夜の首都環状にいるドライバーたちは決して少ないという訳ではないのだ。
そしてこの後最上は環状線や新環状ルートで数戦して、マシンのデータ取りと感覚調整に専念することになる。
自身の悪い噂の払拭と、久遠のポラリスを追いかけるための…最上の新たなる戦いが始まろうとしていた。
(第24話End)