「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で-   作:カービィ改二

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第26話です。
最上のもとにあの四天王が迫る。


act.26「Launching -Second Half-(不沈艦の目覚め(後編))」

フルチューンのシビックで首都環状を疾駆し続け、遂には「究極の不沈艦」という通り名と巡り合った最上。

だが首都環状最速への頂を駆け上がる彼女の前に、あるドライバーたちが挑戦状を叩きつけようとしていたのだった…。

 

 

 

―――この日、最上はシビックを福住入口からコースインさせていた。

 

「(さて、今日もいってみようか)」

福住入口からコースインしたシビック。

ウォーミングアップがてら150キロまで加速させつつ、福住出口直後の右直角コーナーをスイスイと走り抜けていく。

多少なりとも加速したところで状態は問題ない。

そのまま150キロを維持しながらマシンの出力を調整しつつ走行するシビック。

すると、塩浜出口付近を通過したところで1台のマシンが後方から迫ってくる。

 

推奨BGM:STELLAR WIND(from jubeat knit APPEND&beatmaniaⅡDX18 Resort Anthem(APPEND FESTIVAL))

「(…早速1人お出ましだね)」

後方からやってきたマシン…全体的に青色に包まれつつも、ライト回りやボディの一部に銀色が目立つ…R35GT-R。

チーム「Free Way」のリーダー…「蒼い彗星」と書かれている。

どうやら新環状ルートのチームのリーダーのようだ。

深川線と言う直線区間が続くコースである以上、スピード勝負となる。

勝負を挑まれたのなら受けて立つまでなのだが…正直ストレート区間ではきついのかもしれない。

とはいえ見掛け倒しであったことも多々あるので何とも言えないのだが。

一応チームリーダーであるのだから、速いことには変わりないだろう…そうである以上油断はしない。

そう最上が認識したところで、左車線でテールトゥノーズの状態である2台のカーナビのカウントダウンが始まる。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「―――」

GOサインと共にアクセルを全開に踏み込み、シビックを加速させる。

後方のGT-Rも同じく後方に食いついてくるように加速する。

だが、スタートの加速の時点で…最上のシビックはリードを取っていた。

スタート直後の右高速コーナーで2台は互いに加速しているが、200キロオーバーの時点で既に車間は20m以上引き離されている。

みるみるうちに1m、また1mと車間は開く。

一般車を互いに避けつつ加速していく2台だが、最上が優勢であること自体は変わりない。

3速220キロ、4速250キロ…加速が止まらないが、そんな中でも後方のGT-Rは徐々に引き離されていく。

辰巳JCTまでの直線区間である以上、その状況は簡単には変わらない。

それは、相手がニトロを使っていても。

 

「(食いついては来ているけど、まだ相手は車を乗りこなせていない…いや、マシンの本気を出せていない?)」

ストレートでも最上は後方のGT-Rがじりじりと引き離されていることに気が付いていた。

GT-Rはシビックよりも明らかに格上のマシンなのに、それが食いついてこない。

GT-Rはノーマルでも500馬力以上ある…330馬力のシビックが普通は直線では敵わないのだ。

だがアクセルを全開に踏み続ける最上のシビックは4速270キロからシフトアップ、300キロオーバーまで加速。

そんな加速の中で後方のGT-Rは確実に引き離されていた。

既に車間としては40mは離されているだろう。

このまま油断さえしなければ勝利は間違えないという事は最上もわかっていた。

300キロオーバーの中で、最上のシビックは辰巳JCTへと接近していく。

 

「(まあ今日はどちらかと言うと直線重視らしいからね…効果覿面ってところかな)」

テキパキと前方の一般車を避けるようにハンドルを左右に曲げつつ操縦する最上。

この日、最上はシビックのセッティングを湾岸や横羽向きの最高速仕様にしていた。

チューナーに依頼してギア比を調整してもらっていたのだ。

この日の味付けとしては最高速度360キロオーバーとなるのだが、足回り自体は大きくいじっていないらしい。

都心環状線でも湾岸線でも躊躇なくシビックを乗りこなしている以上多少のセッティングの変更自体は慣れたものだ。

そうなると最上にとっては自然と余裕が生まれてくる。

 

「(それに…踏めないなら、ただのノロマなだけだよね!この先の直角カーブでお開きだね…)」

最上は相手の実力をどこか見切ったかのようにそう思った。

どんなに速い車でも踏めなければ決して速くはないのだ。

そんなことは幾多のバトルを乗り越えてきた最上がよくわかっているつもりだった。

そしてそうである以上…コーナー1つで勝負を付けに行く覚悟でいた。

辰巳JCTの分岐を通過し、目の前に右直角コーナーが迫る。

 

「―――!」

コーナーが迫る中で瞬時に一般車両の存在を確認し、クリアであることを見極めた最上。

300キロオーバーの中で咄嗟にアクセルオフ、からのフルブレーキング。

荷重が一気に前方へと移動する中でシビックは310キロから250キロまで減速する。

ここまでの急ブレーキとなると下手をしたらスピンしかねないかもしれないが、最上は限界を知っていたからこそそんな急ブレーキを踏み込めた。

これくらいならブレーキパッドも悲鳴を上げることはあるまい、タイヤもまだまだグリップするし、曲がれるだろう。

そう最上は直感していたのだ。

250キロから230キロ台まで減速したところでブレーキリリース、そのままハンドルを右に切って僅かにアクセルオン。

パーシャルスロットル状態のままシビックを旋回させていく。

 

「(ようし…)」

エンジンパワーを適度に与えられていたシビックはそのまま左車線から一気に右車線の内側まで旋回。

そのまま滑らかにコーナーを突破していく。

そして240キロから再びアクセルオン、前方の下り坂目掛けて加速させる中で…最上のシビックのカーナビに「WIN」の文字が表示されるのだった。

コーナーを脱出して湾岸線に向かう中で最上はカーナビの表示を認識し、アクセルをリリースする。

エンジンブレーキを利かせたシビックは250キロから滑走状態のまま…言ってしまえばハンドル以外何も操作しないまま走行していく。

 

「(どうやら、GT-Rだろうと乗りこなせていないなら僕の敵じゃないみたいだね)」

200キロオーバーのシビックの中で最上はふとそう思った。

最上はシビックに既に1500キロ以上乗っている。

たった数週間でこの走行距離となると、並大抵の走り屋に比べても明らかに走り込んでいる。

おまけに日ごろの仕事においてもタクシーに乗っている以上、車体に対する感覚は人並み以上と言っても過言ではないだろう。

日ごろから車を転がしているからこその車体感覚が、シビックを乗りこなす上で大きなアドバンテージとなっていた。

そしてそれこそが、最上が連勝街道を突き進むことが出来る大きな秘訣ともいえるだろう。

 

「(次は…スピードにも乗ってるし、このまま湾岸線に行っちゃおうか)」

湾岸線の3車線区間に合流したところで、最上はふとそう思った。

150キロ台で走行するシビックはそのまま湾岸線を走行していく。

 

 

 


 

 

 

―――数分後、有明JCT臨海副都心近く。

深川線から湾岸線へと合流したシビックは、有明JCTを直進して東京港トンネル方面へと走っていく。

クーリング中という事もあって速度自体は100キロを維持しているが、このスピードなら他のドライバーから勝負を仕掛けられても不思議ではない速度である。

 

「(さて、湾岸線も殆ど倒したけどどうかな)」

最上はこの時点で湾岸線の敵のほとんどを撃墜していた。

UNLIMITED、NeoLIMITED…そしてもう1つのチーム。

そのもう1つのチームのリーダーのマシンが、最上の後方に迫ってこようとしている。

有明分岐からテレビ局前、臨海副都心入口付近。

ここで後方から1台のマシンが迫ってくる。

 

推奨BGM:Thunderbolt(from beatmaniaⅡ19 Lincle)

「(路肩に止まっていた車が僕を探すように入ってきた)」

派手なステッカーが貼られた白色のZD8型BRZが、最上のシビックを探し求めていたかのようにやってきた。

まるで自分とバトルしたいかのようなそのマシン…カーナビにはチーム「CLUB GARUDA」のリーダー、「サンダーロード」と書かれていた。

このチームのドライバーたちは皆若者たちであり、同時にマナーも粗削り。

現状に何らかの不満を抱え、荒んだ心を持つ若者たちが中心となって結成したチームであるというのは伊達ではないのだ。

だが流石にチームメンバー全員を倒したとならば仇討のために勝負を挑まれるのは無理のない話なのかもしれない。

 

「(遂に来たか…まあいいや、どうせバトルだし)」

後方のマシンに対して最上はあまり興味がなかった。

どんな相手であろうといずれ自分が勝負することと、今後実力者たちに立ち向かうためには倒す必要があるのは言うまでもないという事を彼女が分かり切っていたからか、それともずっと先を見越しているのか…そのどちらかであるのだろう。

勝負を挑まれたなら受けて立つまで…それくらいの気持ちだった。

一番左の車線を速度60キロのテールトゥノーズの状態で走る2台の前に、東京港トンネルが大きな口を開けているかのように迫る。

そんな中でカーナビのカウントダウンが始まる。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「―――!」

GOサインと共にアクセルを踏み込み、クラッチを切って2速から3速まで一気に加速していくシビック。

その後方で銀色のBRZは辛うじて食らいついてくる。

3速から4速、東京港トンネル区間でもアクセル全開のままシビックは加速していく。

その加速に食らいつかんとBRZも追いかけては来ているが…それでも車間距離は数メートルずつとはいえ確実に引き離されていく。

伊達にフルチューン同然のシビックには、流石にGR86やBRZと言うマシンでは分が悪いのだ。

僅かずつながらもシビックは後方のBRZを引き離していく。

東京港トンネルの直線区間で280キロまで到達しているが、すでにシビックは後方のBRZを振り切りかけている状態。

オレンジのナトリウムランプがキラキラと輝く中を水色のシビックが切り裂くように疾駆していく。

 

「(スタートで先手を取った…でも、じりじりと勝負を長引かせるわけにもいかないね)」

メーター300キロの中で、最上は後方のBRZを引き離しつつもそう思っていた。

この先の湾岸線は延々と続くストレート区間。

ニトロを使われれば追いつかれる可能性だってあるし、そこで自分もニトロを使えば食らいつかれることはないだろうが…遅かれ早かれマシンの水温油温が上がってエンジントラブルを起こしてしまう可能性だってあり得る。

そう考えるとなるべく勝負を長引かせたくないが、どうするべきか?

すると最上は、トンネル出口手前で突然あることを閃いた。

 

「(湾岸線のチームは基本湾岸線しか走らない…)」

湾岸線は言うまでもなく3車線が続くストレート区間。

求められるのは限界以上のパワーだ。

そしてもし自分が勝負を長引かせた場合…もしかしたらではあるが、シビックの方が音を上げてしまう可能性だってある。

では早めに勝負を付けるにはどうするか?

それが、最上をある行動に移す大きな要因となる。

メーター320キロ以上で疾駆するシビックの前に迫る、トンネル出口に存在する大井出口。

そして迫ってきた左高速コーナーをアクセル全開ながら僅かにハンドルを曲げてシビックをフルスピードで突破させる。

だがそんな中でシビックの前にはあるものが迫ってきた。

 

「(コース選択の主導権は僕にある…ならば変化球だ!)」

トンネル出口にある左高速コーナーを抜けると存在する、大井JCT。

直進するのが基本であるが、左に進めば都心環状線方面にUターンも出来る。

最上が撮った行動はあまりにも単純ながらも、普通はめったにやらない行為。

それこそが、大井Uターンを用いた都心環状線方面への移動だった。

左ウィンカーを出したシビックはそのまま大井JCTを左に進み、大井Uターンへの上り坂を駆け上がっていく。

先行しているマシンだけが分岐時のコースを選ぶことが出来る…言ってしまえば先行している最上だからこその特権だった。

 

「(嘘だろ…!?大井Uターンに舵を切りやがった…!)」

「(悪いけど、勝つためなら僕は何だってするつもりだよ)」

思いがけない展開に動揺するサンダーロード。

一方で躊躇が全くない最上。

普段は湾岸線をかっ飛ばしている以上、バトルで大井Uターンを使われるのはあまりにも想定外だった。

決してコーナーが遅いという訳ではないが、ストレート区間に比べると明らかに苦手である以上困った事態になってしまった。

ただでさえ加速で付いていけないのに、コーナー勝負に持ち込まれたら…いや、まだ分はある。

あのシビックがわざとこちらを選んだ…つまりあのドライバーはコーナー区間が苦手である可能性だってあるのだ。

そうである以上、否が応でも攻め込むしかない。

 

「(ぐうっ…!!)」

ハンドルを左に切ってシビックを追いかけるサンダーロード。

大井Uターン手前の上り坂をまるでエスカレーターに乗っているかのようにスイスイと加速するシビックだが、目の前には右ヘアピンコーナーが迫っているのが間違えない。

それでもかなりのスピードで突っ込もうとしている。

前方のシビックは上り坂を上り切ろうとしたところで、ブレーキランプを点灯させた。

 

「(追いつける!?)」

前方のシビックがブレーキを掛けたことで一気に車間距離が迫る。

どうやら前方のシビックは多少早めにブレーキを掛けたようだ。

これならもしかしたら追いつけるかもしれない…そう思ったサンダーロードはアクセル全開のままシビックに接近し、限界スレスレでブレーキを踏み込もうとする。

だが直前に迫ろうとしたところで、ブレーキをリリースしたシビックはタックインを決めるように一気に右旋回。

まるで闘牛士が迫ってくる牛をひらりと避けるかのように…いや、まるでBRZを誘惑するかのように、華麗に右旋回してヘアピンコーナーの内側に迫る。

 

「(っ…!!)」

ブレーキング勝負で、自分が追い付けない。

いや、相手に乗せられた結果オーバースピードで突っ込んでしまった。突っ込みすぎている。

そうサンダーロードは直感的に認識した。

そして認識した次の瞬間、ヘアピンコーナー手前の上り坂を上り切ったところでBRZの前輪は跳ねてしまう。

前輪の接地感が無くなった直後、制御不能となったBRZはそのままスピン状態で右回転を始める。

 

「(しまっ…!!)」

上り坂を上り切った直後に前輪が跳ねてしまったことで、150キロオーバーというスピードで右回転を始めるBRZ。

ハンドルを左に必死に切り続けつつもブレーキを踏むことによって、逆方向を向くかのように停止させた。

一応マシンスペック自体はかなりチューニングされていること自体は間違えないようだ。

だがそれでも限界を超えたBRZはスピンで停止するという事態に陥ってしまった。

そしてこの時点において、シビックはもうすでに2つ目のコーナーへと疾駆し…100m以上は引き離していた。

 

「(クソッ、たれ…!)」

負けを認めるようにそう思ったサンダーロード。

そう思ったところで、BRZのカーナビには「LOSE」の文字が表示されるのだった。

スピンしたことでバトルはほぼ終わってはいたが、それでもシステム上は体力がなくなるまで続いてはいたのである。

 

「(はぁ~なんか呆気ないほどだよ。ここまでくると、意外と大したことない人が増えちゃうなあ…)」

一方で、大井Uターンの2つめのコーナーを抜けて1車線区間を減速しながら走行していたシビックのドライバー…最上。

最上自身、自分のシビックがとんでもない速さになっていることはここ数日の連戦によってしっかりと実感していた。

だがそれは同時に、並大抵の実力者くらいなら軽くひねり倒せてしまうほどの速さであるという事も彼女自身分かってはいるつもりだった。

一応今回は湾岸線から大井Uターンという滅多に使われないルートを使ったことによる作戦がちなのではあるが。

そう思いつつも、シビックは横羽線上りへと合流する。

クーリング走行という事もあって、既に速度は70キロまでに落ちていた。

 

「(まあ、それだけ僕の車が速くなっているってことなのかもしれないけど…やっぱり多少は骨のある人と戦いたいよね。でも今の状態で都心環状線に戻るのもなぁ…)」

自分の速さを自覚し始めている最上としては、もっと速いドライバーと戦いたいと自然と思うようになっていた。

横羽線を北上するシビックで最上は静かに思った。

このままいけば都心環状線ルートへと戻ることが出来る。

だが最高速セッティングとなっていると聞いている以上、カーブが連続する都心環状線では思い通りに操れないかもしれない。

すると、200キロオーバーで巡航していた最上のシビックの前にあるものが現れる。

 

「(あっ、芝浦の出口だ。ここで降りちゃえ)」

目の前に見えた芝浦出口。

すぐ近くに下り入口もあることを知っていた最上は、ここでUターンすることを決めた。

 

 

 


 

 

 

―――数分後、横羽線下り平和島PA。

サンダーロードとのバトルの後芝浦出口で降り、そのまま横羽線下りへUターンした最上はトイレ休憩と水分補給をしていた。

すると一息ついていると、人目を引くマシンが目の前を横切って行く。

 

推奨BGM

「(あれは…?)」

黄色のNSXだ。

思わず目で追っていると、やがてNSXから降りた男がこちらへと向かって来た。

男は、目の前に立ち塞がるようにピタリと足を止める。

やけに陰湿そうな男は、最上に興味があるようだ。

 

「ケケケケ…どうだ、俺の“S Zero”。イケてるだろ?羨ましいだろ?あんたのマシンは、ん~っ?ん~っ?」

「はぁ…?」

男は最上のシビックをジロジロと見てやまない。

最上はその様子に疑問しかなかった。

このドライバーは一体何者なのか?

そう思っていると男は車を見てこう口を開く。

 

「…多少はイジってあるみたいだな」

「はあ」

「まあ、マシンをイジりまわしたところで肝心のテクニックがついてこなきゃあ…ねぇ…“十三鬼将四天王”の夢見の生霊サマが、ほんとの走りってモンを教えてやろうかぁ?」

「えっ、十三鬼将?あなたが?」

男から言い放たれた言葉、「十三鬼将」。

最上はその言葉に興味を持った。

首都環状でかつて名を馳せたドライバーたち、その一人だというのだろうか。

夢見の生霊…どうやら実力はあるようだ。

 

「ケケケ…興味あるみたいだな」

最上が夢見の生霊に興味を持ったところで、さらに3人の走り屋が現れた。

シャドウアイズ、追撃のテイルガンナー、ダイングスターと名乗る3人は、夢見の生霊の語る“四天王”のメンバーであるようだ。

 

「やめな、そういう絡み方。誰も頼んでないんだよ。あとキモイ笑い方もやめろ」

「君の陰湿な性格は最早フォローのしようもないが、僕たちまで同類だと、彼に思われては困るからね」

「第一、もう十三鬼将は解散したからないつまでも名乗ってるの、ダサいだろ…」

シャドウアイズ、追撃のテイルガンナー、ダイングスター…3人が各々夢見の生霊に忠告する。

だが夢見の生霊としては全くもって意に介していないようだった。

 

「あん?んな似合ってねえサングラス得意げにかけてるような奴にダセェとか言われたくねえよ」

「ううッ…心にくる…こ、これは目つぶし攻撃を防ぐために…うう…」

ダイングスターは夢見の生霊の言葉にガクリとして落ち込んだ。

見かねたシャドウアイズが言葉を続ける。

 

「似合ってないのは確かだわ。でも、今そんなことはどうでもいいの…究極の不沈艦。アタシたちとバトルしなさい」

「えっ、あなたたちと?」

「結構長い間、首都環状を留守にしてたけど…いつのまにか面白くないことになってるじゃないの」

「はあ。でも、どうして僕の事を?」

シャドウアイズは最上に対して宣戦布告とも言うべき態度をとる。

やはり彼女も、彼らも最上の実力に興味があるようだ。

しかしなぜ彼ら彼女は自分の事を知っているのか?

そう最上が疑問を口にすると、口を開いたのは追撃のテイルガンナーだった。

 

「ブラッドハウンドの奴と久しぶりに話したが……君を迅帝の再来だとか言っていた。ともに十三鬼将を名乗っていた元・同志ではあるが、共感はできないな」

「あの人が僕の事を…でも、どうして迅帝にそこまで?」

「うう…迅帝は、オレたちの“黄金時代”なんだ……」

「はあ」

追撃のテイルガンナーとダイングスターが互いにそう言った。

どうやらブラッドハウンドは自分の事を高く買っているのかもしれない。

 

「アタシたちの認める“伝説”は、たった一人だけ。そして…彼のライバルに相応しいのはこのアタシ」

「いや、それはこの僕だ」

「オレ…」

「ま、そ~ゆ~色々を、今から新人クンに教えてあげようってことさ……当然、やるよなぁ?新世代の走り屋さんよぉ」

やはり最上と戦いたいというのは4人の共通認識であるというのは言うまでもないだろう。

そして十三鬼将という実力者であるというのならば…最上が言う言葉はたった1つだけだった。

 

「…いいよ。僕も骨のある人と戦いたいって思ってたんだ。早速相手するよ」

「ケケケ…いい根性だ。とりあえず最初はお前らに譲ってやらあ」

「…じゃあ、僕から行こう。横羽の下りはホームコースだ」

そう言って立候補したのは追撃のテイルガンナー。

彼はやはり横羽線の実力者という事もあり、早々に立候補した。

 

「いいよ、始めようか」

最上としてはどんな相手でも正直構わなかったが…不思議ととにかくバトルをしたいと思うようになっていた。

 

 

 


 

 

 

―――vs追撃のテイルガンナー

 

推奨BGM:Invitation from Mr.C(from SOUND VOLTEX Ⅲ GRAVITY WARS)

平和島を出て、横羽線下りがバトルコース。

四天王との戦いは1対1のバトルがメインだ。

その先鋒として、追撃のテイルガンナー…赤色のFD3Sとのバトルとなる。

平和島PAを出た2台がそのまま左車線を走行していく。

左車線を走る2台…先行するのはFD3S、シビックはその後方に付いている。

 

「(強くなりすぎるのも考え物だけど、やっぱりこういう人がいることを考えるとね…)」

最上自身、ここまでチームリーダーたちには殆ど無傷どころか完封勝ちが多かった。

それほどなまでにシビックは仕上がっているのだ。

そんなマシンは下手をしたらオーバースペックなのかもしれない…とは時たまに思った事はある。

だがそれでも、十三鬼将やPhantom9といった実力者が自分の前に立ちはだかるというのならば、ルールは無用。

勝つために変なことを考える必要はない。

自分のマシンの性能を限界まで発揮して、壁を粉砕すればいい。

そう最上は思うようになっていた。

そう思っている中で、カーナビのカウントダウンが始まる。

 

3

 

2

 

1

 

GO!

 

「―――!」

GOサインと共にアクセルを踏み込む最上。

前方のFD3Sもスタート直後から一気に加速していく。

60キロだった2台はあっという間に150キロ、東海JCTへ200キロオーバーへと加速していく。

平和島PAを出た2台はそのまま東海JCTへと走行していくが、2台の車間距離は直近数十センチまで接近していた。

 

「(加速で食いついてる…真横に捻じ込むぞ)」

「(付いてくる…!?向こうの加速の方が、速い…!)」

VTECターボのシビックが、ロータリーターボのFD3Sに食らいついている。

数十センチまで接近したかと思いきや、シビックは加速を維持してFD3Sの真横へとノーズを突っ込んだ。

湾岸線からの合流を通し、モノレール横の区間。

それでもアクセルをずっと踏み続けていることもあり、羽田トンネル手前でシビックはFD3Sを追い抜いた。

 

「(ようし…抜いた!)」

「(加速で追い抜かれた!…だが、追撃戦こそが僕の走りだ)」

サイドの隙間数十センチというスレスレを走り抜け、そのままトンネル内のストレートへと飛び込んでいく。

だがそれでもテイルガンナーは諦めていない。

首都環状のレースと言うのはストレートだけが華ではない。

コーナーで遅ければいくらでも後方から差せてしまうのだ。

270キロオーバーというスピードでじりじりと車間距離が開いていくが、それでもまだコーナーが速いという可能性はあった。

5速280キロ…まだまだ加速が止まらない中で、最上のシビックは羽田トンネル出口の右高速コーナーを右車線のインベタのラインで走り抜けていく。

一方のテイルガンナーもそれに食らいつかんとインベタの走りをするが…速度差もあって僅かながら引き離される。

そしてトンネルを出た先にある空港西出口…その右直角コーナー。

ここがテイルガンナーとしては勝負所だと考えていた。

おそらく向こうはストレートで速いだけなのかもしれない…だとしたらコーナーで突き刺す。

そう彼は認識していたのだ。

 

「(さあ、どうだ?)」

前方数十メートル先にいるシビックは空港西出口横のコーナーに攻め込んでいく。

だが…基本はアクセルオフだったりブレーキを踏むであろう所を、シビックはまるで高速コーナーを駆け抜けるかのように右車線を走り抜けていく。

後輪がわずかながらにスライドするも、それでも右車線を維持し続けている。

一方のテイルガンナーは流石にオーバースピードと認識してしまったのか、アクセルを緩めてしまった。

それでも右車線を維持し、何とか前方のシビックに食いつかんとする。

だが結果はどうなるか…は言うまでもない。

コーナーリングスピードが速いシビックは、後方のFD3Sを更に引き離さんと加速していく。

 

「(…直線区間でもコーナーでも引き離される!?馬力自体が違うって言うのか…?)」

コーナーでもストレートでも差がどんどんと開いていく。

ニトロを使ってもこの先の羽田出口手前の左直角コーナーで確実に減速する以上、数秒だけのためにむやみに使うことは出来ない。

コーナーを脱出したFD3Sだが、前方のシビックは既に羽田出口手前の左直角コーナーへと飛び込もうとしていた。

この時点で既に40m以上引き離されてはいるが、それでもまだチャンスはある。

アクセル全開で何とか食いつかんとするテイルガンナー。

一般車を避けつつもシビックに少しでも引き離されんと追いすがる。

だが…

 

「―――!?」

羽田出口手前の左直角コーナー。

そのコーナー手前で、右車線を走るシビックは一瞬だけブレーキをフラッシュさせた。

かと思いきや、そのままのスピード…目視にして270キロは出ているであろう猛烈な速度でタックインを発動して一気に左車線へ旋回。

左側の壁へと一気に接近させるような、ゼブラゾーンを躊躇なく走り抜けるようなスピードでコーナーに突っ込み…そのまま脱出する。

FFマシンならではの「タックイン」という特性を完璧に生かしたかのような、とんでもなくスピーディで鮮やかなコーナーリングを披露する。

そのスピードは、後方で追いかけていたテイルガンナーにとっても通常の倍以上にも感じられた。

それを追いかけるようにFD3Sもコーナーに飛び込むのだが…こちらはブレーキングをした上でほんのわずかに後輪を滑らせる。

そのまま右車線から左車線へと旋回するのはいいのだが…シビックよりは浅い走行ラインを走り、コーナーリングでも差が生じていた。

240キロ以上と言うスピードの中でコーナーを攻め込むのはいいのだが…タックインを発動したシビックに比べるとその走行ラインは浅めと言うべきか、攻め込むことが出来ないものだった。

 

「(同じラインに乗れない…!速い…速すぎる!!)」

インコースギリギリまで攻め込んだシビックに対し、インコースに攻め込む程度だったFD3S。

国内最高級のコーナーリングマシンと言えども、チューニングカー同士となるとそうとは限らないようだ。

羽田出口横を通過したところでテイルガンナーは、最後の抵抗と言わんばかりにハンドルに取り付けられていたニトロスイッチを押す。

だがコーナーを脱出してニトロを使ったのはいいのだが、既にこの時点で前方のシビックは100m近く引き離された…言ってしまえばはるか彼方。

こうなるともう勝負はついたも同然と言っていいだろう。

おそらく向こうもニトロを使う場所は前もって決まっていたに違いない…彼はそう思うのだった。

 

「(ダメだ…向こうもニトロを使っている。負けた…)」

ストレートの加速勝負でもコーナーリング勝負でも、そしてニトロ勝負でも食いつけないと判断した以上…テイルガンナーの心が折れるのは必然だった。

そして彼自身の心が折れたような音を感じたところで、FD3Sのカーナビには「LOSE」の文字が表示されていた。

 

「(何だかなあ…少しは骨はあったけど、まだチームリーダーに毛の生えた程度かな)」

一方の最上は、シビックを310キロオーバーでかっ飛ばす中でふとそう思った。

テイルガンナーは決して遅いドライバーではない。

まず間違えなくチームリーダーたちよりは速いドライバーだ。

だがそれでもほとんど前を取られることなく圧勝してしまった。

そうなるとやはり、実力自体は「滅茶苦茶速い」というよりは…「多少チームリーダーに毛が生えた程度」と最上が判断するのも無理もない話では合った。

そう思う中でシビックは大師料金所跡を通過し、カーナビの「WIN」の文字を確認してそのまま300キロオーバーからアクセルオフの状態のまま自然と減速していく。

 

「(でもやっぱり、速くするようにしたのは間違えじゃなかったんだね)」

最上は今の自分に敵う相手はほとんどいないのではないかと思うようになっていた。

実力者相手にもほとんどKO同然で勝っているとなれば、そう思うのも無理もない話なのかもしれない。

追撃のテイルガンナーに勝利した最上のシビックは、そのまま大黒PA方面へと走り抜けていくのだった。

(第26話End)

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