「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
遂にスカールバレットの手下たちが現れます。
そしてバトルを終えた最上の前に現れるドライバーたちとは…
首都高でも屈指のチームのドライバーたちを破る中で、十三鬼将の四天王たちから挑戦を受けた最上。
そんな中で最上はその先鋒、追撃のテイルガンナーの撃破に成功する。
彼を撃破したことに呼応してか、最上を狙うドライバーたち…十三鬼将四天王以外のそれらも最上を標的とし始めるのだった。
―――追撃のテイルガンナーを撃破した翌日。
この日は空港中央から湾岸線東行きへ最上はコースインしていた。
愛車であるシビックはまた好調に加速していく。
空港北トンネルにおいて、ウォーミングアップがてら250キロまで一気にかっ飛ばしてマシンの調子を確認する。
一旦250キロまで上げてからはアクセルオフ、そこからは一般車たちを避けつつも滑走状態同然にスピード任せで走行する。
水温油温の上りも少なく、調子自体は良いようだ。
「(さて、もうそろそろ倒していない車が…?)」
マシンの調子を確かめるかのようにそう認識した最上。
東海JCTを抜けたところだった。
横羽線方面から1台のマシンが合流してきたのが見えた。
そのマシンを目視した最上は、マシンを一旦減速させる。
推奨BGM:華麗なる一撃(from SOUND VOLTEX ∇)
「(1台きた…あっ、もしかしてこれが?)」
赤色に輝く宝石のような輝きを持つマシン…BNR32。
見た目からして実力者であることは間違えないだろう。
マシン自体は古いマシンだが、それでもどこか実力らしきものを秘めているようにも見える。
そのマシンの後方に付けてカーナビの通り名を確認する。
「(夜明けのガーネット…たしか、スカールバレット…だったかのの仲間だっけ?)」
夜明けのガーネット…スカールバレットの手下の1人。
女性ながらスカールバレットの取り巻きである以上、実力は高い。
言うまでもないが、スカールバレットに挑むためには彼女を撃破する必要がある。
そうである以上…最上としての選択はたった1つだった。
「(まあ、誰でもいいんだけどね!)」
BNR32の後方にシビックを付けてパッシングする。
バトル申し込みのサインである。
スカールバレットの手下だろうが、何であろうが最上としてはバトルすることには躊躇がない。
それは…それが自分にできることだと、思っていたからかもしれない。
3車線区間の1番左の車線を走るBNR32とシビック。
大井南出口が迫る中で、カーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
GOサインと共に1速60キロからアクセルべた踏みのまま加速させる。2速、3速とスムーズに加速するシビック。
BNR32もそれに応じるかのように加速していく。
3速まで加速するのはいいが、リードしているのはやはりBNR32だった。
「(出だしの加速は向こうが上か…)」
スタート直後の加速だけ見れば、例のBNR32の方が上だった。
多少最高速寄りのセッティングにしていたこともあり、最上のシビックは数メートルずつながら引き離される。
普通の走り屋なら引き離されてしまったら焦ることも珍しくもないだろう。
前方がクリーンな中でBNR32の後方に引っ付きながら追いかける最上。
だがそれでも全くもって最上は動揺をしていなかった。
「(まあ…湾岸線の勝負所は、スタート直後じゃないよね!?)」
スタート直後の加速では僅かながら引き離されたシビック。
だが230キロに到達したところでその形勢は一気にひっくり返ろうとしていた。
200キロオーバーからの加速でシビックはBNR32のテールにピッタリと食いついたのだ。
車間距離はほとんどない、文字通りのテールトゥノーズ。
料金所が迫る中で…シビックはBNR32を追い越すべく右車線へ移動。
サイドバイサイドから加速差を生かしてオーバーテイクにかかる。
加速としてはシビックが明らかに優れている以上…追い抜くのはあっという間だった。
加速差も相まって車間距離は徐々に離れていくが、それでも勝負を決める程ではない。
だが最上はある物の事を察していた。
「(この先の料金所…全力で突っ込めるかな!?)」
大井南出口の先にある大井料金所跡と横羽線への分岐。
流石に200キロオーバーで突っ込むとなると多少気が引けるだろう…そう最上は思っていた。
いや、バトル中に何度も料金所跡を通過したことがあるが、その都度ライバルたちは皆減速していたような気がする。
だが、最上自身はなぜかいつも平気だった。
それは恐怖と言う感情がどこかへ吹っ飛んでいるからか、或いは車との信頼関係が成り立っているかどうかはわからないが。
300キロ近くのスピードを出す中で、2台は料金所へと飛び込んでいく。
ドライバーである最上がアクセル全開のまま突っ込んでいくシビック。
その車は料金所のほぼ真ん中と言ってもいいレーンを…300キロというスピードで通過した。
「(ようし…抜けた!)」
アクセル全開のまま料金所を抜け、そのまま分岐を右方向…湾岸線へと直進するシビック。
その後方では、料金所跡に高速で突っ込むことに躊躇したのか…BNR32は失速してしまっていた。
300キロオーバーと言うスピードの中でもアクセルを踏み続けるシビックに対し、料金所手前でアクセルを抜いて失速してしまったBNR32。
ストレートでの馬力勝負となる湾岸線においてこうなると、もう勝負はついてしまったも同然だろう。
失速したBNR32を振り切らんと言わんばかりのスピードでシビックは320キロまで到達する。
車間はあっという間に30m、50mと幅が開き…ついには100m以上まで開こうとしていた。
「(やっぱり料金所に引っかかった…意外と大したことなかったな)」
最上はこれまでに何度も何度もバトルを重ねてきているが、その中で感じたのは「首都環状の走り屋たちは大抵料金所跡や都心環状線の橋脚にめっぽう弱い」ということだった。
延々と続く長いストレート区間の直後に突然現れる1車線区間。
言ってしまえば超高速で通過する車を切り刻みかねない一種のトラップ。
ここを250キロ以上…下手したら300キロや320キロ以上と言う猛烈なスピードで通過することに対しては多少なりとも躊躇してもおかしくはないという事なのかもしれない。
だが、自分は正直怖くなかった。
全力走行で突破しないと、勝てないことも少なくなかったからでもあるが…それでも最上は恐怖と言うものはあまり感じたことがなかった。
それは最上が普段からタクシーに乗って車体感覚を鍛えているからか、それともずっとシビックに乗ってマシンの性格を知り尽くしているからかどうかはわからないが。
料金所と分岐を抜け、前方に新幹線の高架と直前の右高速コーナーが迫る中で…最上のカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。
「(よし、早速1勝だ。今日はまだ走り始めたばかりだし、またしばらく走ろうか)」
ウォーミングアップ同然の状態でいきなり実力者を捻りつぶした最上。
右高速コーナーを通過したシビックは東京港トンネルに入ろうとしていたが、その時点でクーリング走行のために100キロまで減速していた。
だが一方でまだまだ走り足りない…そう思った最上は、シビックを操縦して湾岸線を北上させていく。
―――十分後。
湾岸線を北上したシビックは、辰巳JCTから深川線へと進路を変えていた。
現在の走行位置は枝川出口付近である。
スカイツリーが見える中でシビックは120キロでクルージングしている。
「(カーナビに青い矢印があったけど…もう近いよね?)」
この時点でシビックは先程辰巳PAでライバルの状況をチェックしていた。
新環状左回りルートには1台だけだがまだ倒していないドライバー…つまり青色の矢印がいたのを確認している。
それを倒すべく、最上はシビックを120キロで巡航させていた。
すると、目の前に1台の青色のマシンが迫ってくる。
それを確認した最上はマシンを60キロまでゆっくりと減速させていく。
推奨BGM:THE BRAVE MUST DIE(from beatmaniaⅡDX27 HEROIC VERSE)
「(あれだ…)」
後方から見た限り、青色の四角い形状をしたマシン…GDB-A型、つまり丸目のインプレッサ。
バックに付いたところで、カーナビには「紺碧のスナイパー」という名前が表示されていた。
その通り名の通り、インプレッサは紺碧に輝いている。
「(たしかこの車もスカールバレットの手下…)」
インプレッサの後方ウインドーに張られている「BIGGINS」のステッカー。
最上はそのステッカーとライバル名を見て、スカールバレットの手下であることを思い出していた。
先程の夜明けのガーネットの仲間、正確には同格のドライバーであるという事は間違えないだろう。
そうであるのならば、勝負を挑むまで…そう最上は認識する。
インプレッサの後方にシビックを付けたところで最上はシビックのライトをパッシングさせる。
「(スカールバレットの手下なのはわかるけど、まあなんにせよバトルするだけだよね)」
スカールバレットの手下である夜明けのガーネット自体は倒したが、それでも最上にとっては油断することはなかった。
あの勝負は相手の隙を突いたから勝てたのであって、コースもマシンも違う以上何が怒ってもおかしくはない。
そう思った以上、油断は絶対にしないで勝ちに行く…そう最上は認識した。
そんな認識をしたところで、カーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――」
GOサインと共にアクセルを踏み込む最上。
2速から3速、3速から4速へとリズムに乗って加速するシビックだが、前方のインプレッサの加速はほぼ互角。
同時に進路を全くもって譲ろうとせず、ブロックは固い。
200キロオーバーまで加速しても、車線移動で追い抜こうとするとそれを予見したかのようにブロックしてくる。
枝川から木場方面へと2台は走り抜けていくが、インプレッサのブロックは相変わらず固かった。
「(出だしは速い…けど)」
シビックはインプレッサにブロックされている。
しかし相手はニトロを装着していないのか、自信があるのか…ニトロを全くもって吹かそうとしていない。
加速で優位であることも影響しているのかもしれないが、それでもどこか動きが不自然だった。
だが同時に、スリップにピッタリとくっつけている中で最上はふとこう思う。
「(ニトロを使うまでのものじゃないし、きっと隙が無いわけじゃない…!)」
先程の夜明けのガーネットとのバトルでも先行されたこともあって、最上の精神的には幾分か余裕があった。
多少引き離されてもそれだけで勝負がつくという訳ではないのだ。
スタート直後の加速で引き離されるというのならば、やるべきことはただ一つ。
「(僕の車は基本的に200キロオーバーからの加速勝負とカーブでの接近勝負。スピードに乗った直線か急カーブでぶっちぎる!)」
スピードに乗ったところをぶち抜くか、急カーブで突く。
その為には今はとにかく食らいつく…それくらいの気概だった。
とはいえ下手にブロックされると接触しかねないため、最上は一瞬だけアクセルを抜いて車間距離をわずかに離す。
テールトゥノーズだった車間距離はあっという間に10m近くまでに広がる。
だが、福住手前の複合コーナー地帯で事態は急変する。
「(ん?ブレーキ?)」
先行するインプレッサがブレーキを掛けたが、最上にとっては違和感しかなかった。
最上が思っていたよりもブレーキングのタイミングが早いのだ。
それも、3連続コーナーの…ブレーキを掛けなくても平気な第1コーナーに飛び込んだ瞬間。
スピードに乗りすぎていたから減速したのか、それともそうでもしないと曲がらないと判断したのか…そのどちらかではあるのだが、何にせよコーナーの突っ込みで、シビックは右車線を走っていたインプレッサを左側から追い抜いてしまった。
「(追い抜いたからには差を付けるまで…)」
1つ目と2つ目のコーナーはブレーキ不要だが、3つ目の左直角コーナーは流石にブレーキが必須。
とはいえシビックの場合軽くブレーキを踏み込めばそのまま突破出来てしまうのだが。
だが安定性の高い4駆のインプレッサの事だから攻め込んでくる可能性はいくらでもある。
2つのコーナーを抜け、目の前に左直角コーナーが迫る中で最上はアクセルオフから軽くブレーキを踏み込み、そのまま左側の壁…左サイドのゼブラゾーンを狙ってシビックを旋回させる。
タックインを発動したシビックは270キロから230キロまで減速するが、ゼブラゾーンへと旋回する中で最上はアクセルをある程度踏み込んでエンジンパワーを前輪に与え続ける。
一定の速度を維持しつつシビックはそのまま豪快なアウトインアウトのラインでシビックはコーナーを突破する。
コーナーを脱出する中でアクセルを再び全開に踏み込みつつバックミラーを確認すると…後方のインプレッサは既に20mは引き離されていた。
そしてそのインプレッサの姿はバックミラーからどんどん小さくなっていく。
「(あれぇ…意外と、カーブでも遅い?)」
福住方面へと加速していくシビック。
そんな中で最上は後方のインプレッサがコーナーの立ち上がりが遅いと認識した。
実際、シビックの旋回速度はインプレッサのそれよりも明らかに速かったのだからそれは当然なのだが。
それでもその旋回スピードを生かせばコーナーでもきっちりと立ち上がれるはずなのに…そこがアキレス腱なのか、遅い。
その遅さを、最上は見逃すはずもなかった。
コーナー出口が遅いのなら、そこでぶっちぎる…あまりにも単純だがそれが勝つための近道だ。
「(僕が速いだけなのか、相手が遅いだけなのか…わからないね)」
紺碧のスナイパーはコーナーで相手の隙を突くという、文字通り狙撃手のような走りが得意なのだが…最上に対しては全くもってと言うほど意味をなさなかった。
彼の実力以上に最上がコーナーを攻め込みすぎていたのか、それとも根っから敵うような相手ではなかったのか…それは最上にも彼にもわからない。
だが何にせよ、最上が紺碧のスナイパーを出し抜いたというのが言うまでもない事実だった。
福住出口手前の右直角コーナーを300キロ近くのスピードで旋回し、福住出口横を通過したところでシビックのカーナビには「WIN」の文字が表示されるのだった。
「(はあー。まあでも、この程度だったかなぁ)」
箱崎PA手前でカーナビの表示に気づき、シビックを減速させる最上。
そんな中で紺碧のスナイパーと夜明けのガーネットが同格であることを思い出していた。
先程夜明けのガーネットをぶっちぎったのだから、全くもって勝ててもおかしくはないのだが…正直骨が足りない。
十三鬼将程のカリスマは存在しない、とも思うようになっていた。
そう思うようになったこともあってか最上は再び、「強い相手と戦いたい」と自然に思うようになる。
―――十分後。
紺碧のスナイパーとのバトルを終えた最上のシビックは、都心環状線外回りへと向かっていた。
カーナビを確認したところ、外回りにまだ倒していないドライバーがいることに気が付いたからだ。
倒してないドライバーがいるなら倒すまで…そう最上は思っていた。
時速100キロ程度で走行するシビックは浜崎橋JCTを右方向に進み、芝公園近くまで走行する。
「(この先に一台いる)」
都心環状線外回りと言う比較的狭くてテクニックが要求されるコースに、自分が戦うべき相手がいる。
最上はそう思っていた。
そしてそう思った以上…次の相手を求めてシビックを走らせる。
すると、芝公園出口横を通過しようとしたところだった。
推奨BGM:BOMBER!BOMBER!BABY!(from pop'n music High☆Cheers!!)
「(いた。この車はたしか…ダイングスターだっけ)」
最上は目の前に接近してくる青色のマシンに見覚えがあった。
確か十三鬼将四天王の…ダイングスターと言っていたか。
夢見の生霊たちと共にいたドライバーの1人。
見かけからしてかなり大きいマシン…三菱GTOに乗っている。
見た目と文字通りのハイパワー超ヘビーなマシン。
例の十三鬼将四天王の1人であるのならば、自分は容赦しない。
追撃のテイルガンナーも倒した以上、次のターゲットも必ず倒す。
そう思った以上、減速しつつもGTOの後方にシビックを付けてパッシングをするのは自然だった。
「(勝負を挑まれている以上、受けて立つまで…)」
様々な相手とバトルする中で、最上は勝負に対して自然と「受けて立つ」というマインドが備わっていた。
それはやはり、様々な人間から注目されていることや、おやっさん…つまりチューナーから限界までチューニングされたマシンでどこまで戦えるのかを確かめてみたかったり、降りかかる火の粉を振り払いたいと思うなど、複数の要因が重なっていた。
だがシビックをほぼフルチューンまでチューニングした以上…勝負には勝ちに行くし、挑戦状は受けて立つし、自分の走りを見せつけるくらいの気持ちでいた。
前方のGTOに後方からピッタリと食らいつきつつも、2台が芝公園入口に迫る中で互いのカーナビのカウントダウンが始まる。
3
2
1
GO!
「―――!」
GOサインと共にアクセルを踏み込む。
スタート直後の加速においては互いにニトロを使わず様子見と言ったところ。
ギアを2速から3速、3速から4速へと引き上げる中で、加速自体は多少なりともシビックの方が上…なのだが、リードを許さんと言わんばかりにGTOが後方をブロックしている。
200キロオーバーで一ノ橋ジャンクションに迫る中で、2台はテールトゥノーズの状態の拮抗状態で走行していく。
「(狭い都心環状線でこの巨体、どうやって追い抜くか…)」
最上自身、GTOとは何度も何度もバトルしてきている。
その都度気になったのはその巨体ぶりだ。
一応これまでは馬力が低かったりドラテクが大したことなかったことも珍しくはなかったのだが…伊達に十三鬼将四天王と言われているのならば話は別。
おそらくマシンの事をよくわかっているだろうし、油断をすることは出来ない。
そう思う中で目の前に一ノ橋JCT直後の右直角コーナーが迫る。
メーターが230キロ以上出ている中で最上は一瞬だけアクセルをリリースして軽くブレーキを踏み込んでハンドルを右に曲げる。
だがここで最上は前方のGTOにある変化があることに気が付いた。
GTOがコーナーに突っ込みすぎたのか、アンダーを出して外に膨れたのだ。
ブレーキこそ踏んではいたが、ここでまさかのオーバースピードである。
「(内側が開いた?ここだ…!)」
ヘビーなマシンによるオーバースピードでの突っ込みによって生じた一瞬の隙を最上が見逃すはずもなかった。
スタート直後の加速を維持しながら加速するシビックは、そのままアンダーに膨れて隙が生まれていたGTOを左サイドからオーバーテイク。
スタート直後の加速を生かしての大逃げ同然の行動だった。
右直角コーナーを240キロオーバーで走り抜け、飯倉トンネル方面へとシビックは加速していく。
「(あっさり追い抜けたなぁ。あの車は見た感じ結構重そうだけど…もしかして足を引っ張っている?)」
どうやらその巨体のマシンをいくら軽量化していたところで重量が足を引っ張っているようだ。
加速差で前に出た以上、勝負は一気に最上優勢にひっくり返る。
もしこのまま優勢ならば…と思った最上は、飯倉トンネルを走行する中でニトロスイッチを押した。
250キロ台だったシビックは、都心環状線と言う狭いコースにおいてあっという間に280キロまで到達する。
普通であれば都心環状線の狭いコースでこのスピードは文字通りの狂気そのものなのだが、最上にとっては平気だった。
それは彼女が首都環状を何十回、下手したら百回以上は走っているからか…最上はただアクセルを踏み続ける。
前方に一般車がいても、涼しい顔でハンドルを左右に丁寧に曲げて一台一台を避けて処理していた。
飯倉トンネルから谷町JCTの分岐、そして合流を経て赤坂ストレート。
ニトロを切りながらも、僅かな直線で310キロという狂気じみたスピードを出している。
そんな中でも最上は全くもって涼しい顔だった。
「(あの人は…車を乗りこなせていない?それとも僕の車が速いだけ?)」
赤坂区間のストレートでふと最上は思った。
感覚がマヒしているのか、車との信頼が成り立っているか。
おそらくそのどちらかではあるものの、最上にとって実力者とのバトルは全くもって躊躇しなくなっていた。
実力者にも十分太刀打ちできる程にシビックがチューニングされていることの証明でもあるのだが、同時に最上自身がバトルにすっかり順応しどんな相手でも太刀打ちできるようになるまで成長していることの表れでもあった。
320キロ近くで霞ヶ関トンネル手前に接近しようとする中で、最上はアクセルをリリースしてブレーキング。
270キロまで落としてハンドルを右に全開に切る。
そしてアクセルをある程度踏みながら左車線から右車線へと移動、アウトインアウトのラインを描くようにトンネルに飛び込んだところで…カーナビに「WIN」の文字が表示されるのだった。
トンネルに突っ込み、霞ヶ関出口横を通過してロングストレートに入ったところで…最上はカーナビにようやく気が付いた。
「(…本当に"四天王"だったのかな?)」
霞ヶ関出口を通過後、シビックを減速させる中で最上はふとそう思った。
最上にとってダイングスターの走りはどこか十三鬼将四天王であるのかいまいちわからない節があった。
実際のところそう思われても無理もない話ではあるのだが、実はダイングスターが首都環状に戻ってきたのは数年ぶり。
つまり長期のブランク明けなのだ。
ダイングスターはメンタルに弱く、敗北をかなり引きずるという悪い癖がある。
その癖して都度車を売り払って首都環状を離れたかと思いきや、情熱を取り戻して首都環状へカムバック…なんていうことが常習化していた。
今回、最上が挑んだ際も…数年ぶり。
ここ2ヶ月足らずで彗星の如く連勝街道を突き進んだ最上と違って、こちらはいくら実力者とはいえ数年ぶりのカムバック。
最上とは実力や性質面でも大きく違うというのは無理もない話だった。
下手をしたら先程のガーネットやスナイパーよりも遅く感じる。
「(実力者との直線勝負でもカーブでの勝負でも、このシビックなら結構何とかなりそうだね)」
最上はマシンスペックにどこか安心したかのようにそう思った。
そう安堵したかと思いきや、最上はそのままシビックを都心環状線外回りへと巡航させていく。
―――箱崎PA。
ダイングスターを倒した後都心環状線外回りを一周した最上のシビックは、江戸橋JCTで深川線方面に向かってそのまま休憩がてら箱崎PAへ。
PAのサービスであるニトロ補充とタイヤ交換を済ませ、マシンをクーリングさせている。
箱崎PAは異様なまでに混雑していた。
普通車の場合10台とちょっと程度しか駐車できない小さなPAが、ここに来てほぼ満車ときたのだ。
一体何があったのかは最上も知らないが…何かが起きようとしているのではないかとは最上はふと思った。
飲み物を買うために箱崎PAを歩いていると、チリツモ戦士とシュワシュワストロングに偶然出会った。
さらに、彼らに加えて見知った顔ぶれが集まってきた。
プレイフルジェントルマン、噂のライター、トランスドライブ、愛のトルナード、ライジングシーマン…最上も含め合計8人の大所帯だ。
「よお、究極の不沈艦。久しぶりだな」
「あっ、どうも…」
挨拶に来たチリツモ戦士とシュワシュワストロングに対し、軽く会釈した最上。
思い返せば彼らと一体どれくらいの期間会っていなかっただろうか?
そう疑問を口にしようとしたところで、今度はシュワシュワストロングが口を開く。
「オウッ!炭酸足りてるか?お前は特別だ、2本やる」
そう言って彼は2Lの炭酸飲料を2本も最上に手渡した。
「え、はあ…」
「アニキ…2Lもあるデカいペットボトル、急に渡されても困るって。しかも2本…」
「あはっ、別に僕はいいよ?相変わらず元気っぽいしさ」
「…あんたもあんたで大概だな」
最初こそ多少困惑した最上だが、「こういう人だった」ということを思い出すと軽く笑みをこぼした。
そう言って一旦地面にペットボトルを置いたところで、今度は別の紳士的な男が話しかけてきた。
「ボンソワール!ブエノス・ノーチェス!また来て次週!どうもどうも、お噂はかねがね!最近ますますご活躍のようですね」
「ああ、どうも。やっぱりあなたもいたんだね」
プレイフルジェントルマン…やはり新世代の走り屋の一人だ。
最上は名前を忘れていたが、一応新世代の走り屋の1人であることはわかっていた。
すると、彼は気になることを口にする。
「なんでも、新人の走り屋を叩きのめして再起不能にしたとか…?見かけによらず、おっかないんですねえ」
「あれっ…また変な噂が出てるんだ」
「なんて、冗談、冗談。アナタがそんな人ではないことは、よーくわかっていますよ」
「そうなのかい?」
最上の噂に関してはどうやら彼ら彼女たちは信じていないらしい。それこそ最上自身を信じているようだ。
プレイフルジェントルマンがそう言うと、今度は例の諜報員が現れて口を開く。
「ふふ、そういうこと。安心して、みんなわかってるから…つまらない噂だわ」
「ああ、そうなんだ…それはどうも」
どうやら噂のライター自身、かなり最上の事に関しては根回しをしてくれているらしい。
そのことに関しては最上は多少なりとも感謝するしかなかった。
するとここで、トランスドライブがあることを告げる。
「…あ、あのっ。私たち、これから湾岸線を一緒に走るんですけど…良かったら、あなたも…一緒にどうですか?」
「えっ、今から?でも、どうして皆で?」
トランスドライブからの宣告、それこそ「湾岸線下りでの一大レース」。
しかしなぜ彼ら彼女たちはつるんでいるのか…?そこは最上にとってはわからなかった。
するとトランスドライブが説明するように口を開く。
「久遠のポラリスちゃんと知り合って、お話しして…気づいたんです。独り立ちするっていうのは、一人きりで行動するってことじゃなくて…自分の居場所を、自分で決めることなんだね…って」
「へえ…そうなんだ」
最上が多少納得すると、今度は愛のトルナードが口を開く。
「俺たちはチームに入ってねぇから、大勢で走る機会は滅多にないんだが、前から興味があったんだ。日頃の俺は“運命のレディ”を探して、首都環状をさすらう旅人だが……時にはこんな風にダチとつるんで、心の隙間を埋めるのも悪くねえ」
愛のトルナードがそう口にした。
彼自身、新世代の走り屋たちでつるんで走るというのも彼なりに悪くないと思っているようだ。
「湾岸の“風”言いよーと。今夜は最高んバトルがでくる!」
ライジングシーマンもまた、勝負に乗り気のようだ。
バトルを通じて出会った彼らの間には、いつからか友情が芽生えていた。
その様子を見たチリツモ戦士は少し照れくさそうに、しかし心から嬉しそうに笑った。
「皆で一緒に走ってたら、すっごく楽しくてさ…ひとりで色々考えて悩んでたのが、ばかばかしく思えてきたんだ。アニキの言う通り―――それだけでいいんだよなって。な、あんたもこないか?」
チリツモ戦士による勧誘…実際それは最上にとって悪い気はしなかった。
彼ら彼女たちには多少なりとも縁がある。その縁を反故にするのもどうかとおもったのだ。
それに、首都環状屈指のドライバーたちを破ってきた自分の実力を示すいいチャンスだとも思ったのだ。
そうである以上、返事は一択だった。
「そうだねえ…今日はそろそろ引き上げようとしていたんだけど、最後の最後…付き合うよ」
「よっしゃ、決まりだな。コースは湾岸線…辰巳から大黒までのレースだ。長期戦になるだろうが、そこのところはよろしく頼むぜ」
チリツモ戦士の言葉に対し、最上は軽く頷いた。
最上と新世代のドライバーたちの一大レースが、首都環状の湾岸線と言う世界屈指の超ロングストレートコースで幕を開けようとしていた。
(第27話End)