「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
多くのプレイヤーが苦戦したであろうあの戦いが始まります。
スカールバレットの手下と十三鬼将四天王のドライバーたちを徐々に倒していく最上。
そんな中で、「新世代の走り屋たち」が湾岸線でレースをすることを聞かされる。
トランスドライブやチリツモ戦士らによる誘いを受けた最上は、そのバトルを受けて立つことを決める。
新世代の走り屋たちと最上のリベンジマッチが始まろうとしていた。
推奨BGM:gigadelic(from beatmaniaⅡDX11 ⅡDX RED)
箱崎PAを出発し、辰巳JCTまでフォーメーションラップ同然に連なりながら走行する8台。
各々がマシンを左右に揺さぶり、時に車線変更までしてタイヤを温めている姿はまさしく本物のレースそのものだった。
先頭はライジングシーマン、続いて噂のライター、愛のトルナード、トランスドライブ、プレイフルジェントルマン、シュワシュワストロング、チリツモ戦士、そして最後尾に究極の不沈艦こと最上。
大所帯な8台のレースを行うには、やはり湾岸線の直線区間がうってつけという事だろう。
辰巳JCTを通過し、湾岸線への直線へと迫っていく。
「(湾岸線に入ったらハザードランプを皆照らすと言っていた…)」
先行するチリツモ戦士のBRZのハザードランプはチカチカと点灯している。
このランプが消えた時、バトル開始の合図らしい。
辰巳JCTから湾岸線の3車線区間に合流しても、まだハザードランプはチカチカと明滅し続けている。
東雲付近を通過し、まだかまだかと最上も待ち構えていた。
そしてそのまま、有明出口横を通過しようとしていた時だった。
一番左の車線を走るシビックだが、前を走っていたBRZのハザードランプが消えた。
それは真ん中の車線を走っていたマツダ3も…どうやらバトルが始まるようだ。
先行するライジングシーマンのGR86が加速し始めると、それに連なってS2000やWRXも加速を始める。
どうやらバトルが始まったらしい…一台手前のBRZも加速を始めた。
「(ようし…僕も突撃するぞ!)」
先行するマシンたちが加速していくのを見た最上も、アクセルを踏み込んでシビックを加速させる。
湾岸線と言う直線区間向けのセッティングであるためか、1速60キロから2速160キロまでぐんぐんと加速していく。
「(コースは有明から大黒までの超直線区間。一番最初に大黒に付いた人が…レースの勝ち!)」
有明から大黒までの25キロ以上という、文字通りの長距離レース。
そしてその規模も8台参加とかなりの大所帯。
最上としてはそんな大所帯の最後尾にいる以上、1台1台確実に始末しつつトップに躍り出たいという算段だった。
「(くっ、速い…だが!兄貴…頼むぜ!)」
2速215キロ。極端な最高速セッティングに変えていた以上、馬力面で不利なチリツモ戦士のBRZはあっさりと追い抜かれてしまった。
次の相手はマツダ3…シュワシュワストロングだ。
チリツモ戦士のBRZとの車間距離は数十メートル程度と言うべきか。
「―――!」
シュワシュワストロングは後方からやってくるシビックをブロックしようとする算段に出た。
真ん中の車線を走るシビックの前に出たマツダ3。230キロオーバーと言うスピードの中でブロックに成功する。
後方からはチリツモ戦士のBRZも迫ってくる。
「(挟まれたか…ならば…)」
有明分岐を通過し、湾岸線方面へと走っていく3台。
後方のBRZと前方のマツダ3の間にシビックは挟み撃ちの状態となっているが、最上は殆ど動じていない。
250キロオーバーと言うスピードの中で、最上は左レバーを咄嗟に操作する。
シビックのヘッドライトがパッシングによって眩しく光る。
「(うっ…!?)」
闇夜の中のパッシングと言う威嚇行為…いや、閃光弾と言うべきか。
フラッシュ同然のハイビームでバックミラーを照らし、相手の目を暗ますという策略に出た。
まさかの攻撃に動揺したシュワシュワストロングは、動揺してハンドルをわずかながら右に切ってしまった。
真ん中の車線を走っていたマツダ3は右車線へと移動するが、その瞬間を最上は見逃すはずもない。
「(し、しまった!)」
「(もらったあ!)」
ある程度抑えていたアクセルを再び全開まで踏み込み、同時にニトロスイッチを押すことで急加速。
280キロオーバーまで加速させる中でシビックは前方のマツダ3を追い越すだけでなく、後方のBRZとの車間距離を広がらせる。
あっという間にマツダ3を追い抜き、逃げの姿勢に入る。
「(嘘だろ…バトル合図のパッシングを使って兄貴を追い抜きやがった!!)」
「(悪く思わないでくれよ…1番になるためには、君たちに時間を割くわけにはいかないんだ)」
25キロ以上と言う長距離レースとはいえ、できれば早めに勝負を付けたい。
そう思った以上、最上がアクセルを踏み込むのは無理もない話だった。
ニトロスイッチを再び押してニトロを切るが、この時点で300キロオーバー。
そんなスピードを急に出されてしまっては、後方の2人も追いつける筈もなかった。
「(速すぎる…あんなに速くなっていたのか…!)」
「(これは、もう俺達は敵ではないという事だろうな…)」
チリツモ戦士もシュワシュワストロングも、300キロ以上と言うスピードで疾駆していくシビックの姿を見届けることしかできなかった。
テレビ局横を通過した時点で既に車間距離は100m近く。
この先延々と直線区間が続くことを考えると、ここまで話されるともう追いつける筈もないと
「(先頭との距離は離れただろうけど、僕のスピードであれば…!)」
東京港トンネルに入ったシビックは、トップを追いかけて300キロ近い速度で疾駆していく。
―――大井JCT付近。
横羽線方面へのUターン手前の左高速コーナー。
ここを280キロオーバーで突破するシビック。
長距離レースという事もあり、基本的に短時間で終わるバトルとは異なりマシンマネジメントが要求される。
最高速度360キロオーバーと言う驚異のマシンであるシビックであるとはいえ、それを長時間維持すると間違えなくマシンの水温と油温が上がってしまう。
その為ある程度速度を抑えつつもじっくりと接近していく戦法を取っていた。
そして大井JCTの分岐を過ぎたところだった。
推奨BGM:焔華(from pop'n music peace)
「(ようし…追いついたぞ)」
前方に見える2台…青いコペンと黒いアクセラ。
トランスドライブとプレイフルジェントルマンの2台が競り合っている。
どうやら実力としては拮抗しているようだ。
しばらく先には残った3台の車の姿も見える。
だがどちらにせよあの2人も追い抜かなければ意味はない。
最上はシビックのアクセルを踏み込んで300キロまで加速させ、2台に接近させる。
「(追いついてきた…!)」
「(どうやら予定調和と言うべきですか…こうなったら、私たちでやれることをやるしかありませんね!)」
一方の2人も後方からシビックが迫ってくることに気が付いていた。
となると、共同戦線を張るというのも無理もない話。
もし後方から最上が迫ってきた場合どうするべきか、は考えていたが…ここでいざ実践という事になる。
2台が一番左の車線と一番右の車線をそれぞれ走る。
かと思いきや大井南PA付近の直線区間において、トランスドライブのコペンが一番右の車線へと移動し、プレイフルジェントルマンのアクセラは一番左の車線へと移動する。
かと思いきや2台は再び右の車線から左の車線へ、左の車線から右の車線へ。
その動きはまるでシンクロするかのように同じタイミングで車線移動をしているようだった。
露骨なスラローム走法…その走りはそう簡単に前へ進ませまい、と最上をまるで翻弄するようだった。
だが、最上にとってはそれはあまりに無意味な策だった。
「(…そんなことをされるくらいなら、追い抜いちゃえ!)」
2台はシビックの前方でスラロームし、最上を翻弄するかのような走りを見せる。
だが最上にとってそれは全くと言ってもいいほど無意味だった。
2台が一番端の車線に行ったところを突けばいいだけの話。
「(…遅い!)」
トランスドライブのコペンが一番左の車線へ、プレイフルジェントルマンのアクセラが一番右の車線へ。
その移動の際に生まれる一瞬の隙。
それを最上が見逃すはずもなく、アクセル全開の中でニトロスイッチを押す。
後方にいたシビックがまるで針の穴に糸を通すかのように、颯爽と2台の間を真ん中の車線から追い抜きにかかる。
「―――!?」
「(しまった!)」
片方が通せんぼする…と思いきや、互いに端っこの車線にいたため、真ん中の車線を突っ切ったシビックをブロックすることが出来ない。
一気に320キロオーバーまで加速するシビックを、2台はただただ茫然と見届けるしかなかった。
ニトロを噴射し続けるシビックはそのままコペンとアクセラをバックミラーの遥か彼方へと追いやった。
「(ぬ、抜かれた…)」
「(私とトランスドライブさんが、こうも敵にされないとは…)」
トランスドライブもプレイフルジェントルマンも互いに愕然とするしかなかった。
コンビネーション攻撃がこうもあっさりと不発に終わるとは思ってもいなかったのだ。
それほどなまでにあのシビックのドライバーは成長したのかもしれないし、弱点を突かれてしまったのかもしれない。
何にせよ追いかけようとするのだが…すでにスピードに乗っているシビックは東海JCTのさらに先…前方100m以上先を突っ走り、完全に上位3台を追いかける態勢に入っていた。
こうなるともう否が応でも追いつけないことはわかるだろう。
「(湾岸線と言う直線区間である以上、追い抜いてしまえばもう勝ちも同然なんだ…後ろの人たちには二度と食らいつかせるものか)」
東海JCT手前までのストレート区間を300キロ以上のスピードでかっ飛ばすシビックを操縦する中で、最上はそう思った。
ここまでスピードを出してぶっちぎったのならもう追いつかせまい…そう思いつつ最上はずっとハンドルを握り続け、アクセルをある程度だけ踏み続けてていた。
スピードは既に300キロ以上に到達し、湾岸線の超ロングストレートでのバトルの真骨頂へと最上は飛び込むことになる。
―――空港北トンネル付近。
東海JCTを右方向…湾岸線方面に進んだ3台を追いかけ、最上はシビックを300キロ台で追いかける。
湾岸線の超スピード領域でアクセルをある程度だけ踏み続けてスピードを維持する最上。
すると、空港西トンネル手前で遂に3台のマシンの影を捉えた。
Arkadia(from beatmaniaⅡDX29 CastHour)
「(見えた)」
先行する3台のマシン…GR86とS2000とWRX。
先行するはGR86、次にS2000、最後にWRX…なのだが、その車間距離はほとんど差がない。
それぞれライジングシーマンと噂のライターと愛のトルナード。
最上が戦ってきたドライバーたちだ。
空港北トンネルに入って3台が徐々に迫ってくるのを見て、最上はアクセルを踏み込んだ。
どうやら巡航スピードもこちらの方が上だったようだが、それでも追い抜かなければ勝ちではない。
そうである以上、スピードを上げて勝ちに行くことを選んだ。
いずれ戦うのであれば、早めに争ってぶち抜くまで。
そう思いつつも空港北トンネルのナトリウム灯がオレンジに輝く中で、そんな空間を切り裂くかのようにシビックを接近させる。
「(も、もう来たばい…!)」
「(嘘だろ、後ろの4人がみんな調理されたのか…!)」
「(…こうなったら私が相手をする!)」
3人は各々「遂に来たか」と思った。
まあ有明の時点では最後尾だったが、丁度半分ともいえる場所で追いつかれたら皆驚くしかないだろう。
それほどなまでにシビックは速くなっていた。
3台とも互いに300キロ以上のスピードを出しながら逃げるも、シビックはそれ以上の速さで接近してくる。
するとその時だった。
2番手だった噂のライターがアクセルを抜いたかと思いきや…ピンクの煙幕を発生させる。
だがピンクの煙幕を放った瞬間、後方のWRXにもそれが襲い掛かる。
「(くっそう、噂のライターのスモークはこっちでも不利だ…!)」
「(何してるの!早く追い抜いて)」
アクセルを抜いた噂のライター。
真ん中の車線を走っていたS2000の後方にWRXがいたのだが、煙幕発動から数秒してWRXは右車線から追い抜いた。
かと思いきや再びS2000は加速し、3台は300キロ以上のスピードで空港中央付近を通過していく。
一瞬だけ290キロになるも、すぐに300キロ台と言うスピードで3台が最上の行く手を通せんぼするように走っていく。
先頭のGR86は左車線、S2000は真ん中、WRXは右車線。
「ここから先はいかせまい」と言わんばかりの布陣だった。
煙幕を浴びる中で、最上は一瞬だけアクセルを抜くも先行はさせまいと言わんばかりの状況である。
「(やっぱり速い…この3人は段違いだね)」
煙幕を浴び続ける最上だが、動揺はほとんどしていない。
彼女としてはトップ3人の速さは確かなものがあることをわかっていた。
だからこそ、侮れないし油断も出来ない。
このまま煙幕を浴び続けていたら間違えなく追い抜けない。
拮抗状態のままでは間違えなくトップを奪うことは出来ないだろう。
それにいつまでも勝負を続けていてはマシンも限界が来てしまう可能性だってある。
そうである以上…最上としては勝負を仕掛けに行く。
空港中央を通過して湾岸環八方面へと4台は疾駆する中で、最上は遂に動き出す。
推奨BGM:Crescent:Letter(from GITADORA FUZZ-UP)
「(でもまあ…こんなことも、あろうかと!)」
湾岸環八先のトンネルに飛び込もうとしたところで、最上はハンドルに取り付けられていたニトロスイッチを再び押す。
先程使いつつも残していたニトロを噴射させ、シビックのスピードを加速させる。
ニトロを使った加速により、300キロ出ていたシビックは330キロオーバーまで加速していく。
煙幕の発生源…S2000が迫る中で最上はシビックを右車線から追い抜きにかかる。
S2000に対してシビックはまるで獲物を捉えた狼の如く襲い掛かってきた。
「(な、何?その加速は…!?)」
S2000の右サイドに突如として表れそのまま追い抜いたシビック。
310キロは出ているS2000だが、シビックは明らかにそれ以上のスピードで追い抜いてしまった。
シビックはそのまま斜め右手前にいたWRXに対しても、S2000とWRXの間を縫うかのように車線変更する形でオーバーテイクしたのである。
しまいには左車線にはGR86…ライジングシーマンもいるのだが、それをも勢い任せのまま相手にしないかのようにオーバーテイクしてしまった。
「(スピードが違いすぎる…!?)」
「(…とどめだ!)」
「(は、速すぎる!)」
愛のトルナードもライジングシーマンも皆最上の狂気じみた速度に愕然とするしかなかった。
そして先行する2台を最上はそのままオーバーテイク。
3台の間をまるでスキーのスラロームのように華麗に突破してしまった。
最後尾スタートの勢いを生かしたまま遂に最後尾からのトップへの返り咲きに成功してしまった。
オレンジのナトリウム灯が輝く中で、シビックは川崎浮島方面へと350キロオーバーと言うスピードで後方のマシンたちを突き放す。
ラインどりも基本的には一番右の車線をし続け、コーナー内側にべったりと張り付くようなラインを描いていく。
寸分の狂いもない走りとなるともう後方のマシンたちはもう手も足も出ないと言ってもいいだろう。
20m、40m…瞬く間に車間距離は開いて行った。
「(速い…手も足も出ねえ…!!)」
「(あんな状態になってしまっては、こちらもお手上げね…)」
「(ば、化物ばい…けったいな速さしよる…)」
愛のトルナード、噂のライター、ライジングシーマン…皆殆どお手上げも同然だった。
ギア比としては300キロとちょっとが限界と言うスピードの中で、あのシビックは間違えなく360キロ以上は出せる状態。
それはやはりニトロ前提なのかもしれないが、あそこまでやられてしまってはもう手も足も出ないと言っても過言ではないだろう。
だが、川崎浮島の料金所跡が迫る中でここである異変が訪れる。
シビックがトンネルを抜け、料金所跡へと突っ切っていく次の瞬間だった。
「(な、何だ!?スピードが、落ちていく…!?)」
浮島方面へのトンネルを抜け出す直前、愛のトルナードのWRXは突然スピードを落としていく。
それと同時に、ボンネットからは白煙が吹き上げていた。
メーターを見ると…ある現実が彼の前に表れた。
「(水温油温共に130度以上…!?オーバーヒートだ…!!)」
そう、ここにきて有明から延々と300キロ以上と言うスピードでかっ飛ばしていたことによって遂にマシンが悲鳴を上げた。
普通であれば300キロ走行ならパーシャルスロットルなりアクセルを抜くなりして調整するのも必要なのだが、有明から大黒までと言う長距離レースである以上抜くことはほとんどできなかった。
そして目の前を見ると…愛のトルナードのS2000も、ライジングシーマンのGR86も皆ダウンしたのか速度を落としていく。
白煙は上がっていないにせよ、マシンを限界までかっ飛ばしたことで皆遂に悲鳴を上げてしまったようだ。
有明から湾岸環八までの全力走行が、3台の水温や油温を蝕む要因になるのは無理もない話だった。
それほどなまでに最上の走りは相手に負担を強いる走りだったのかもしれないし、同時に最上からのプレッシャーも少なからずあったのかもしれない。
エンジンルームから白煙を上げた愛のトルナードのWRXはハザードランプを出しながら一番左の車線…路肩に迫るかのように減速していく。
一方で残ったライジングシーマンと噂のライターもアクセルを抜き…最上の速さを認めるように、失速していくのだった。
「(おやっさんに用意してもらった加速装置にここまで助けられるとはね)」
一方こちらは料金所跡を抜け、東扇島方面へ330キロ台で疾駆するシビックを操縦する最上。
330キロ走行の中でも、最上のシビックは平気だった。水温は97度、油温も108度とあくまで高めとはいえ正常範囲。
それはやはり、おやっさんというチューナーがマシンをしっかりと限界までチューンしてマシンが熱にしっかりと強い仕様になっていたからかもしれない。
そしてそれと同時に、スタート直後にシュワシュワストロングとチリツモ戦士に多少なりとも通せんぼをされたことにより…速度が抑制されて水温油温の上昇が防げたのもあるのかもしれない。
とはいえマシンマネジメントもそれなりに高いものであるという事は言うまでもない事実だろう。
アクセルをある程度踏み込みつつ330キロを維持したシビックは、そのまま大黒JCT方面へ走り抜けていく。
「(こうもやられるとはな…)」
「(やっぱり、あいつとポラリスは別格ばい…)」
「(見事だわ…まさかここまでとは思わなかったけど)」
愛のトルナードも噂のライターもライジングシーマンも、最上のシビックが出す最高速度…360キロオーバーと言う超猛烈なスピードにはとても太刀打ちできるものではなかった。
7台全てを始末したシビックは、栄光のウイニングランをしっかりと披露したまま大黒PAへと向かっていく。
―――大黒PA。
チリツモ戦士たちをぶっちぎり、レースの勝者となった最上。
勝者の余韻に浸るかのように、大黒PAで車を降りてお茶を飲みつつ休息をとっていると…見慣れた顔の2人組に声をかけられた。
その顔立ちと背格好、服の趣味、車の趣味、瞬きひとつする仕草さえよく似ている双子の兄弟…新興チーム「ROULETTE GUY」のリーダーであるルーレット野郎1号と、副リーダーであるルーレット野郎2号だ。
彼らと最上はバトルをして知り合ったため、一応顔見知りである。
「やあ!見てたぜ、さっきの大規模チェインバトル」
「サイコーだったな、抜きつ抜かれつのデッドヒート。キレイにつながった8台のマシン…湾岸線の走り屋みんながくぎ付けさ」
ルーレット野郎1号とルーレット野郎2号が、最上に話しかける。
彼らをしても、先のバトルは圧巻そのものだったようだ。
…ちなみに首都環状の各PAにはライブモニターが用意され、各地のバトルをモニター越しに見学可能であることを記しておく。
「ああ、どうも。やっぱり君たちも見ていてくれたんだね?」
「まあな。それにしても、最近は彼らがつるんでいるところをよく見かけるな。一部は元から仲が良さそうだったけど、気が付いたら随分と大所帯になってるじゃないか」
「いやあ、そうなんだよね。僕もちょっと驚いちゃったよ…何があったんだろうね?」
最上としてはやはり例のドライバーたちがなぜ皆で走るようになったのか…?少なからず疑問だった。
するとルーレット野郎2号が何かを思い出したかのようにこう口を開く。
「聞いた話じゃ、なんでも久遠のポラリスを中心にまとまってきたらしいぜ」
「あっ、そうだったんだ?」
「へぇ…あの無口な子が?そんな社交性を持ってたとは、意外だな。俺たち、未だにぜんぜん話してもらえないけどね」
ルーレット野郎1号がそう言うと、ルーレット野郎2号も反論するかのようにこう口を開く。
「龍士が軽薄そうなカオしてるのがいけないんじゃないか?」
「武虎も同じカオだろ。それに究極の不沈艦だって、ロクに会話の続いた試しがないらしいぜ」
「あ、あはは…」
「そりゃ御愁傷様。それで、今日のチェインバトルには肝心の久遠のポラリスは参加してたのか?」
「実は、今日は会えてないんだよね…」
どうやらルーレット野郎1号は久遠のポラリスの行方は知らないようだ。
最上も「チューナーの元は訪れている」と言う話は聞いていたが、それでも首都環状にはここ数日現れていないらしい。
そして例のバトルにも久遠のポラリスが参加していないことを聞いたルーレット野郎2号が口を開く。
「ふーん…やっぱりいなかったんだ。最近、彼女を全然見かけなくなったよ」
「えっ、そうなのかい?じゃあしばらく首都環状に来てないってこと?」
「ああ。PAにも来ていないみたいだし。あのコのR33を最後に見たのは、いつだったかな。久遠のポラリスほどの走り屋なら、どこにいても目立ちそうなものだけどなー」
「だよねえ…」
ルーレット野郎1号曰く、しばらくの間久遠のポラリスは首都環状に訪れていないらしい。
最上はそのことを聞いてふとあることを思い出す。
「(きっとおやっさんのところに車を預けたり、車を乗り換えたんだ…でもR33じゃないとしたら、何に車を乗り換えたんだろう…まさか?)」
チューナーは「久遠のポラリスがチューナーの元を訪ねている」という事は話していた。そして「車を乗り換えた」という事も話していた。
では、そのマシンとは何なのか?…最上にとっては1台だけその心当たりが浮かんだ。
まさかあの車に乗り換えたとでもいうのだろうか?
だが、今後様々な実力者とのバトルを控えている今は、それをあまり深くは考えないようにするのだった。
(第28話End)