「艦これ」いつかあの海で×首都高バトル 2025 -いつかあの環で- 作:カービィ改二
第4話です。
最上の前に現れる「Phantom9」第一の刺客。
己の前を走る存在など認められない。
断固、断固、断固…
―――過剰に凝り固まったプライドにより、混沌の闇に沈んだ魂たち。
新たな魂の出現は、闇に沈む魂を呼び覚ます。
熱を帯びる者たちは…光に集まる羽虫のように、新たなる走り屋たちに群がっていく。
―――都心環状線外回り神田橋入口。
連日首都環状へと足を運ぶ例のドライバー…最上。
蒼いスイフトスポーツの存在は徐々に話題になりつつあった。
だが最上はそんなことも気にすることなく、彼女はまた首都環状へとコースインする。
外回り方面へコースイン、そのまま神田橋JCTを左方向に進み、環状線をクルーズする。
「(さぁて、今日も今日とて…あれ?)」
すると、コースインしてゆっくりと加速していこうとした時だった。
後方からパッシングを受け取った最上。
加速しようとしていたが、アクセルを抜いて一定速度を維持させる。
相手の名前は…「ハッピーチャッピー」と書かれている。
推奨BGM:Karma(from beatmaniaⅡDX9thstyle)
「(待ち伏せ?)」
ローリング野郎の時と同じだった。
待ち伏せで挑戦を受ける機会がまた会った以上、どうやら自分は少しずつ名が知れ渡っているのかもしれない…そう最上は思った。
自分はただバトルで勝つことの快感を得たいだけだが、こうなるとは思わなかった。
だが一方で、バックミラーを見て相手の車を確認する。
「(縦長のワゴンかぁ…まあ、誰でもいいんだけどね)」
スバル・レヴォーグ…その2代目。
縦長のボクサーエンジンマシンであり、大型のワゴン。
馬力としては向こうの方が有利であるのは言うまでもないだろう。
だがこの環状線のテクニカルセクションにおいては…まだ最上に分がある。
軽量スポーティなマシンで相手を振り切るには…コーナーを素早く駆け抜ける必要がある。
コーナーワークでは最上に分がある…あとはどこで勝負を仕掛けるか。
それが今回のバトルのポイントだった。
2台が左車線で一定速度を維持し続ける中、カーナビにおいてカウントダウンが始まろうとしていた。
3
2
1
GO!
「(勝負を挑まれた以上、全力で相手するだけさ!)」
GOサインと共にアクセルを全開に踏み込み。スタートダッシュを決めるスイフトスポーツ。
先手必勝と言わんばかりに加速していく。
車間距離が徐々に離れるが、それでも振り切る、と言うレベルではない。
それとも追い抜こうと思えば追い抜けると思っているのか、追い抜いては来ない。
コーナーで勝負を付けようと思えば勝負を付けられる状態だった。
神田橋JCTから江戸橋JCTまでは2車線の緩いストレート区間が続く。
もしもこちらの最高速度が頭打ちになったら、向こうに分があるのは言うまでもないだろう。
もっとも幸いなことに…現状はこちらの方が有利のようだが。
「(はっ、速い…!)」
「(ふうん…少しは僕の車について来れるんだ)」
後方で徐々に離れるレヴォーグを引き離すスイフトスポーツ。
速度は160キロを出しているが、バトルである以上最上はアクセルを踏み続けることをやめない。
前方に一般車両がいればそれを見越してハンドルを軽く切って車線変更、タコメータのレブランプが光ればパドルシフトの右トリガーを引いてシフトアップ。
左右にスイスイと曲がるスイフトスポーツは、軽やかに一般車両を処理することが出来ていた。
神田橋から江戸橋方面に走る中で、前方に左高速コーナーが迫る。
コーナー入り口の左車線には一般車両のトラック。
それを避けるようにスイフトスポーツは右車線へ。
「(でも、この車の軽さには追い付けないかな?)」
一般車を追い抜いたところでアクセルオフ、そのままハンドルをくいと左に曲げる。
右車線から左車線へと移り、アウトインアウトのラインを描いてコーナーを駆け抜ける。
だが、コーナーを走り抜けて3車線に広がったところで最上はあることに気が付く。
「(え…バックミラーの光が近づいてくる?…向こうのスピードが乗ってるんだ!)」
3車線のストレート、江戸橋JCT直前。
一番右の環状線へ行くのは問題ないが、上り坂区間で後方から先程のレヴォーグが追いかけてきている。
コーナーを160キロで走っていたのはいいが、実は最上のマシンはそこから速度がほとんど頭打ちの状態。
おまけにパワーが求められる上り坂である以上、速度を維持するのが精いっぱいだった。
そしてそんな上り坂を駆け上がる中で、後方のレヴォーグはその差を確実に縮めていく。
先程の左高速コーナーの時点で車2.5台分まで広がっていた車間距離は、車1台以下まで迫っていた。
このまま上り坂が続くなら確実に食らいつかれてしまうだろう。
「(でも、この先は…)」
だが少しずつ追いつめられる中でも、最上には焦りはなかった。
江戸橋JCTの先は右ヘアピンコーナー。
もしそこに飛び込めたら、後方との差をつけることが出来るかもしれない…そう最上は思った。
アクセルをずっと踏み込んで、ヘアピンコーナーに突っ込み気味に飛び込む。
「(さあ、ここからついて来れるかい?)」
左側を走るスイフトスポーツ。
目の前にヘアピンコーナーが迫る中で、最上はアクセルオフ…からブレーキを踏み込む。
速度が160キロから140キロまで落としたところで、ハンドルを一気に右に曲げる。
FF車両特有のタックインを発揮し、コーナーの左側から一気に右側へとスイフトスポーツを曲げていく。
ゼブラゾーン上を走って右側の壁にぶつかる寸前でアクセルを踏み込み、アンダーへと膨らませながら加速するスイフトスポーツ。
アクセルを踏み込んだままコーナーを立ち上がっていく。
ヘアピンコーナーを抜けたら再び3車線区間…今度は下り坂区間。
スピーディにコーナーを立ち上がれば、このストレート区間で明らかなアドバンテージがある。
そう思った以上、最上はただアクセルを踏み続けていた。
「(さあ、どうなる…?)」
先程のヘアピンコーナーを軽やかに駆け抜け、加速していくスイフトスポーツの中で最上はバックミラーをちらりと確認した。
先程までいたレヴォーグのヘッドライトは…明らかに先程よりも小さくなっていた。
どうやらコーナー1つで振り切ることが出来ているようだ。
それでも最上は油断しないようにアクセルを踏み続ける。
下り坂区間という事もあり、速度はあっという間に170キロ以上まで加速する。
「(うぐぐっ…俺も、落ちぶれたな……!)」
一方のハッピーチャッピー。
先程のヘアピンでは重い車重に振り回されて減速してしまったことが原因か、先ほどまでの余裕は完全になくなっていた。
アクセルを全開に踏み込んでいるのはいいが、コーナー脱出速度が遅かったこともあって既にスイフトスポーツは自分の視界の遥か先にいる。
いくらパワーで有利なレヴォーグとはいえ、車間距離が車4台近くまで広げられてしまってはもうマズいだろう。
アクセルを全開で踏み込んでも、もうレヴォーグはスイフトスポーツに追いつく見込みはない。
そう思ってしまったハッピーチャッピーは勝負を降りるのだった。
「(さっきの人はストレートではそれなりに速かった。やっぱり車の事が気になるな…)」
一方の最上。
京橋JCT横を駆け抜けたところで、カーナビに「WIN」の文字が表示されているのを確認した。
どうやら先ほどのコーナー1つで振り切ることが出来ていたようだ。
そのことに関しては安堵するかのように最上はアクセルを抜き、京橋付近の橋脚直前でブレーキを踏み込んで減速。
スイフトスポーツは速度を80キロ台まで落として橋脚の右側を走行、そこから新富町方面への左コーナーを駆け抜けていく。
バトルが終わったことに安堵した最上だったが、パワー差で負けていたことは最上にも少なからず影響を及ぼすのであった。
なおこの後、最上はしばらくの間環状線外回りを走っていくことになる。
―――数十分後、箱崎PA。
初戦…ハッピーチャッピーとのバトルを終え、そのまま何回かバトルをこなすことで環状線外回りをぐるりと一周。
そして江戸橋JCTから新環状ルートへと抜け、箱崎PAへと最上のスイフトスポーツは入ってきていた。
ハッピーチャッピーとのバトル以降も何回かバトルはしていたので、流石に休憩を入れようと思った。
「ふう…」
ペットボトルのお茶を飲み、一息をつく最上。
するとスラリとしたスタイルの良い男が近づいてきた。
顔立ちもよくどこに居ても目を引くような、華のある青年だ。
青年が最上に話しかける。
「あなた…見ない顔ですね。どうせ、最近走り始めたばかりなんでしょう?あんまり気軽に走り屋を名乗られたくはないんですけどねぇ…」
華やかな顔立ちの男がそう言い放つ。
一見すると物腰柔らかな印象を受けるが、言葉の端々からは、こちらを嘲っている様子が窺える。
最上はどこか怪訝そうな顔で見ていた。流石にあまりいい気がしないようだった。
「あなたは一体?」
「僕が誰なのか?…その様子では、本当にご存じないようですね。やれやれ!」
最上が疑問を口にすると、男は呆れたかのようにそう口にした。
男が言葉を続ける。
「<Phantom9>の“黒崎三兄弟”を知らない者が、走り屋気取りとは!こういうの、“にわか”って言うんですよね。4年ばかりここを離れている間に、すっかりレベルが下がってしまったようだ…」
「…ファントム9?」
軽くむっ、とした最上だったが…彼の話は猶更わからなかった。
そんな走り屋がいるのか?
そう思っていると男はさらに口を動かす。
「紅童子。それが、首都環状での僕の名前です」
「紅、童子…?」
「これから走り屋を名乗るつもりなら、僕を探してごらんなさい。腕試しくらいには付き合ってあげますよ―――ついてこられるのなら、ね」
紅童子は「ファントム9」の一員であると名乗った。
どうやら彼はそれなりの実力者であるようだ。
彼はやはり最上を挑発するかのようにこう言葉を続ける。
「それとも…尻尾を巻いて逃げますか?新顔さん。なんなら今ここで腕試しくらいなら付き合いますが」
紅童子の安っぽい挑発に対しては、流石の最上も呆れていた。
だが同時に、彼に敵うのか?という事に関しては純粋に疑問であった。
そうである以上、最上が出す答えはただ一つ。
「バトルってことかい?そういうことなら是非、僕の走りを見てもらいたいところだね」
紅童子のバトルを受けて立つ。
それが最上の選択だった。
「…いいでしょう、コースは環状線外回りでいいですか?」
「どこでもいいよ」
「では、早速始めましょう。環状線に合流したタイミングでパッシングしてください」
休憩を終えた最上に、紅童子が牙を剥こうとしていた。
2台のマシンが深川線方面から江戸橋JCTを左方向に曲がる。
環状線との合流直前の左ヘアピンを、VMGレヴォーグとスイフトスポーツの2台がテールトゥノーズの状態で、一定速度を維持しながら走行していた。
紅童子と最上だ。
「(それにしてもまたワゴンかぁ…最近のトレンドなのかなぁ?)」
後方で紅童子のレヴォーグを追走する中で、最上はふと思った。
最上にとっては2回連続のバトルだが、よもやまたワゴンとバトルするとは思わなかった。
それも、先ほどは2代目のVNHレヴォーグだったがこちらは初代のVMGレヴォーグ。
流石に同じ傾向のマシンと2回もバトルするとなればマンネリを感じても仕方ないだろう。
「(まぁ、いいか。相手の人…自信ありそうだったし、僕も突撃するかな)」
最上としては口だけ達者に見えた紅童子の言葉が気になった。
自分の事が気になったのならばあのドライバーもそれなりの実力者なのかもしれない。
そう思った以上、自分としては勝負を仕掛けたいと思った。
勝ちたいという気持ちよりかは、口だけ達者に見えた彼に自分の実力を示したい…そんな思いがあった。
そんな思いを持つ中で、カーナビのカウントダウンが始まろうとしていた。
推奨BGM:RED ZONE(from beatmaniaⅡDX11 ⅡDX RED)
3
2
1
GO!
「―――!」
2台が環状線に合流したところでバトルスタート。
だがスタート地点は寄りにもよって江戸橋JCT先のロングストレート区間。
先行しているレヴォーグが先手必勝と言わんばかりに逃げていく。
スタートと同時に加速していくレヴォーグを、スイフトスポーツは必死になって追いかける展開。
ギアをカチカチと上げるが、それでも加速の差で差がついていく。
「(速い…やっぱり真っ直ぐの区間じゃ離されちゃう!)」
普通に考えればレヴォーグに圧倒的な分があるのは言うまでもない。
それもコーナー区間ならともかく、ストレート区間ならば当然だ。
相手の車はスポーツワゴン。重い車体を速く走らせるためには当然パワーが必要とされる。
軽量スポーティなこちらのマシンとは違って向こうは直線区間で速い。
下り坂区間において車間距離はじりじりと離されていく。
「(くそっ…このままじゃ負けちゃうよ)」
速度は160キロ以上出ているが、それでも引き離される。
おそらく速度としては180キロは出ているのかもしれない。
アクセルを全開に踏み込んでも車間距離は縮まらない。
トップスピードの伸びも明らかに向こうの方が上なのだ。
2台は車間距離が離れつつある中で京橋JCTを通過、2車線になって環状線方面へと走っていく。
「(でも…この先コーナー区間ではどうなるかわからない。今は耐えろ)」
劣勢状態ではあるが、最上は決してあきらめるつもりはなかった。
既に車間距離としては50m近く引き離されているが、それでも易々と逃がすつもりは全くもってない。
どこかに必ず勝機がある…何故か最上はそう信じてやまなかった。
右車線を走る2台の前に京橋付近の橋脚が迫る。
「(左から追い抜くか?それとも、後ろにつける?)」
この先のコーナーで追い抜くなら左の方がいいが、レヴォーグが橋脚を抜けたのと同時に左車線へかぶせてくるかもしれない。
だが、後ろにつけても追い抜けなければ意味がない。
どうするればいいか?
「(ええい、なるがままよ!)」
ハンドルを左に切り、橋脚手前で左車線へ。
レヴォーグは既に橋脚を抜けようとしているのを最上は視認していた…が、その時だった。
「(あ…!)」
一瞬の隙を見逃さなかった。
レヴォーグがブレーキランプを点灯。
速度を落としたのだ。
橋脚を抜けた直後のコーナーに対して、紅童子のレヴォーグは減速したのである。
だがそれこそが、最上にとっては起死回生の一手になりえるものだった。
「(…ここだ!)」
速度が150キロ台まで落ちたレヴォーグ。
一方のスイフトスポーツは170キロ近くを維持している。
アクセルを抜いた紅童子に対し、最上はアクセルを一瞬だけ抜いたかと思いきや再びアクセルオンでコーナーに突っ込んでいく。
「…っ!?」
紅童子としては油断していた。
ストレートで引き離したからそうやすやすと追いつかれないと思っていたが、まさか…
だがそう思った次の瞬間には、スイフトスポーツは左車線からレヴォーグを追い抜いていた。
「(ようし…抜いた!)」
一瞬の隙を見た最上は、その隙を狙っていたかのようにコーナーでアタックを仕掛けた。
コーナーの先はブラインドだったので、下手をしたら一般車にクラッシュ待ったなしだったかもしれない。
だが最上は賭けに出て上手くいった。
そしてうまく言った以上、最上はアクセルをただただ踏み続ける。
京橋付近の橋脚を通過、上り坂のコーナーを駆け上がってそのまま新富町方面へと疾走していくスイフトスポーツ。
速度は170キロ以上を維持し、後方のレヴォーグとの差を広げていく。
「(一瞬ストレートでぶっちぎられるかと思ったけど、こうやって追いつけているならまだなんとかなっているのかな)」
ストレート区間で速度が乗っていたスイフトスポーツの中で、最上はふとそう思った。
ストレート区間で差を開かされても、今のところは腕で何とかなる。
それが結果であることを彼女は認識した。
そんな認識の中で、後方のレヴォーグとの距離差はどんどん広がっていく。
「(この軽やかさ…今の僕の長所はこれだ)」
コーナーでの軽やかなフットワーク。
そしてコーナーリングの巧みさ。
最上はずっとアクセルを踏み続ける中で、ハンドルを左右に曲げて一般車をよけつつもそう思った。
ストレートで不利でもコーナーで何とかなる可能性はある。
そのことに気が付いただけでも、大きな収穫だった。
だが一方で、最上はあることも考えていた。
「(でもわかることがある…この車じゃ、もっと速い車には追い付けない。きっと、僕より速い車たちはたくさんいる。今のままじゃ、倒せない人が現れる)」
新富町から銀座までの高架下区間で、最上はふと思った。
弧のスイフトスポーツと言うマシンには限界がある。
先程のマシンのような相手にはいずれ太刀打ち出来なくなる。
それこそ、普段から使っているタクシーのようなマシンが欲しい。
そう最上は思うようになっていた。
だが目の前に左から右へのS字コーナーが迫る中でこうも考える。
「(もし速い車に追いつきたい場合、僕はどうすればいいんだろう…?またこういう車を改造できるお店に行くべきなのかな?それとも車を乗り換えちゃった方がいいのかな?)」
目の前にS字コーナーの左コーナーが迫る中で、スイフトスポーツを右車線に映したかと思いきやアクセルオフ、底から軽くブレーキを踏み込む。
ブレーキリリースと同時にハンドルを左に切り、左車線へと一気に移るようにFF特有のタックインを発動させて素早くコーナーに飛び込む。
左にハンドルを切ったかと思いきや今度は右に切り返し、アクセルオン。
ハンドルを素早く切ったことで、マシンがそれに答えるかのように一気にコーナーを立ち上がる。
2つのコーナーを1つのコーナーに見立てるかのように、スイフトスポーツは颯爽とS字コーナーを立ち上がっていく。
だが一方で…もし今後首都高を走り続ける、それこそ紅童子のようなドライバーとバトルすることになる以上、早めに車を乗り換えるべきなのではないか?そう最上は思った。
だがそれはどうすればいいのか?改造できる店があるのか?
車の店は当てがある。
だが車を改造してくれる店の当てはない。
どうすればいいのだろうか…そう最上が思う中で、カーナビには「WIN」の文字が表示されていた。
その文字を軽く見た最上は、汐留トンネルに入ったとこでアクセルを抜くのだった。
「―――少し、見くびっていたか…」
一方、こちらは振り切られた紅童子。
こちらはS字コーナーを抜けようとしていたところ。
こちらの画面には案の定「LOSE」の文字が表示されていた。
先程の橋脚区間で余裕を持ったことが、どうやら逆に隙を与えてしまっていたようだ。
多少自分が見くびっていたのかもしれないし、奢り高ぶっていたのかもしれない。
そう認識したところで、バトルはあまりにもあっけなく幕切れを迎えるのだった。
―――芝公園出口付近。
バトルを終え、紅童子と連れ立って芝公園出口へ。
マシンから降りてきた彼は、先ほど話した時とは別人のように思えるほどにこやかで、同時に馴れ馴れしい態度で話しかけてくる。
最上は不思議とその態度に違和感を抱いていた。
「健闘でしたね、新顔さん…おやおや、そんなに警戒しないでくださいよ」
「別に警戒も何も…あれが僕の実力さ。どうだった?あなたが納得してくれたらいいけど…」
「ええ、あなたを“にわか”呼ばわりしたことについては謝罪します」
「あはっ、そうかい?ならいいんだけど」
「あなたの走りにはセンスがある。この僕に臆することなく、バトルを挑む気概もお持ちだ」
最上としては、実力をわかってもらえただけで十分だった。
そんな中で紅童子は最上の実力を認めたかのようにそう口にする。
「ここ数年間、しばらく停滞気味だった首都環状にも新しい風が吹き始めた……ということですね。あなたには、これから楽しませてもらえそうだ!」
「…新しい風?」
「いずれにせよ、あなたとはまたバトルすることになるでしょう。その時を待っていますよ…新顔さん?」
紅童子はそう言い放つと、再びレヴォーグに乗り込んだかと思いきや足早にその場を去っていった。
「一体何だったんだろう?」
最上はその態度にポカンとするしかなかった。
紅童子の態度は、一見すると親しげだが、その眼差しは獲物に狙いを定めたハンターのように鋭かった。
逃れられない悪意のようなものを感じていた。
だがそれでも、彼がどこか強がっているかのようにも思えた。
首都環状に渦巻く因縁の渦に、最上はいつしか囚われていくことになる。
(第4話End)