やっと!やっとフィーさん登場!!
(ごめんね忘れてて)
「やはりフィー。我らは合わないようだ。」
青髪の少女は冷めた瞳で銀髪の少女を睨みつける。
その目はどこか落胆していて、そして責めるような瞳だ。
「・・・・・・」
それに対して銀髪の少女は悲しそうに、俯くだけだった。
7/17
午前中の睡眠という名の座学の授業が終わり昼休み。
最近厄介事の波に溺れそうである僕の数少ない休息である。
特に弁当などのものは作ることはないので適当に購買でパンを買い腹に押し込む。
当然であるがお腹が満腹になると何故か眠くなるよね。
眠くなった僕は最近のお気に入りである学院の中庭に移動する。
中庭には三人が腰けれるぐらいの長い椅子が設置されており横になって寝るのに最適なのだ。
「よっこらせっと。」
少しじじ臭いと感じる言葉を発して横になる。
あ~~幸せ・・・
食べた後に寝るのって何でこんなにも気持ちいいんだろうね?
もう、このまま寝て午後の授業はサボろうかしら。
「んあ・・・?」
けたたましい鐘の音に気づき眠気が覚める。
どうやら寝てしまっていたらしい。今は何時ぐらいだ?
「・・・・。」
いやそんなことより気になることがある。
何故か僕は地面に落ちていた。
どういうことだろうか?
寝相が悪い?いやそれはない。なぜなら僕の寝相は相当いいからだ。寝るとほとんど反応がないらしく死んでいるみたいだと評判がある。
自分が寝ていた椅子の方に目を向けるとそこには銀髪のやや幼目の女の子がいた。
「ん。ここ私の特等席。」
僕が起きたことに気づくと半眼でここは自分の縄張りだと主張する。
「え・・・いや、もう一個椅子あるんだからそっちで寝ればいいんじゃ・・・。」
ふざけたことに僕を地面に落とした犯人はこの子らしい。
というか地面に落とされて起きなかった僕もすごいな。
「ん。ここ私の」
あくまでこの椅子を譲る気はないらしい。
仕方なく反対側にあるもう片方の椅子の方に移動して横になる。
太陽の位置を見るともう昼過ぎか・・・。
授業はサボることにしよう。僕は悪くないよ?眠気がいけないんだ。
フィー・クラウゼル。
それが僕の反対側の椅子で寝ている少女の名前だ。
彼女はⅦ組の一員で、誠に遺憾ながら僕もつい先日Ⅶ組に入れられてしまった。
お互い特に面識はない。
だがクラスメイトになった以上見えてくることも少なからずある。
Ⅶ組に加入してからだがラウラとフィーの仲がハッキリ言って険悪だった。
正直驚いた。
なぜならラウラという人物は誰かを嫌うという行為をあまりしない人物だと思っていたからだ。
人あたりがよく人望があり、時に厳しくそしてそれ以上に優しいというのがラウラの学園における姿だった。
まぁ、僕にとっては鬼にしか見えないんだけどね。
「聞かないの・・・?」
「あ・・・え?」
いきなり声をかけられたせいで声がどもってしまう。
仕方ないじゃない、あまり人と話さないんだからー。
「ラウラとのこと・・・。」
「あー、うん。正直聞いていいのかどうか・・・。」
人にはそれぞれ事情があるわけで、しかもⅦ組に加入して一日ぐらいしか経ってない僕が聞いていい内容ではないと思った。
「ん、同じクラスである以上どうせバレることだから。私は元傭兵だったの。」
いきなりのカミングアウトに驚く。
傭兵ってまじか。小説中だけの存在だと思ってました。
ただ、なんとなくだが納得した。
ラウラはバリバリの騎士道精神とか掲げるタイプの人間だからおそらく傭兵というものが許せないのだろう。
だからここまで険悪な状態になってるのか。
人間関係って難しいね
「驚かないの・・・?」
「え、いや。驚いてはいるんだけどいまいち実感がね・・・。」
正直いきなり傭兵とか言われても実感が沸かない。あまり関わったことないしね。
「ふぅん、変わってるね。」
そういってフィーはくすりと笑う。
「普通だったら怖がったり蔑んだりするのに。」
「うーん、でも元でしょ?それに傭兵だからって人が変わるわけでもないしなぁ・・・。」
正直ここら辺の疑問は理解できない。
結局はその人であって肩書きではないと思う。
傭兵にもいい奴はいるし嫌な奴もいる。それぐらいの差しかないと思うのだ。
「ほんと変わってるね・・・。」
フィーは何か変わったものを見るような目で僕の顔をマジマジと見てくる。
断っておくが僕は珍獣じゃないぞ。
「でも、ありがと。私のことを傭兵のことを否定しないでくれて。私のいた傭兵団は私にとって家族みたいなものだったから。」
フィーはどこか嬉しそうに微笑む。その顔はどこか寂しげであり、どこか暖かさを感じるものだった。
あの後だがフィーは遅れながら授業に参加しにいった。
僕は当然ながら僕は中庭で睡眠を続行したのだが、途中でラウラに捕縛され挙げ句の果てに椅子に縄で縛られて授業を受けさせられたという。
もう色々ツッコミどころがありそうで何言えばいいか分からないけど、僕がドMとか変な噂立たないよね?
「はぁ~~~、今日も散々な日だった~~~。」
チャイムが鳴り響き今日も一日の終わりを告げる。
体が無駄に疲れているのは気のせいではなく授業中寝れなかったからだ。
だって寝るとラウラが殴ってくるんだもん・・・。
ちくしょー、僕はラウラみたいにやる気は皆無なのになんで授業をまともに受けなきゃいけないんだ・・・
今教室にラウラはいない。授業が終わるとそそくさと帰ってしまった。やはりフィーと険悪になっているのが原因なのだろうか。
フィーも教室には居づらいのかすぐ出て行ってしまった。
机にうつ伏せになってる自分の体を起こし椅子から立ち上がる。
「お、ムンクもう帰るのか?」
教室を出ようとした僕にリィンが話しかけてくる。
「帰るよ・・・凄い疲れたし・・・。」
「いや、普通に授業受けただけだろ・・・。」
リィンは頬を人差し指でポリポリとかき困惑した表情となる。
こいつわかってないな。僕にとって授業というものがどれだけ苦痛なのかということを。
「いやいや、それが疲れるんだよ・・・。」
リィンと会話しているとⅦ組の男子一同がぞろぞろと集まってきた。
「あはは、ムンクは変わっているね。」
エリオットが僕を見て苦笑いする。
「あぁ、あまりみない個性的なタイプだ。」
エリオットの言葉にガイウスが頷く。
「ふん、ただの怠け者だろう。」
ユーシスは半眼で呆れたようにため息を吐く。そんな冷めた目で見ないでよ、心が折れる。
「君、ハッキリ言うな・・・。それとムンク、君ももう少し真面目に授業を受けたまえ!」
「うー、説教はラウラで十分だよぅ・・・。」
マキアスの説教に思わず耳を塞ぐ。最近はラウラにこってりと絞られているのだからこれ以上聞きたくない・・・。
「うぐっ、確かにラウラには可哀想なぐらい怒られているが・・・、いやしかし、それは君のせいだぞ!君さえ授業を真面目に受ければ・・・」
「まぁまぁ、ムンクもⅦ組にいきなりの所属だし色々疲れているんだろうし多めに見てあげてよ。」
エリオットが説教モードに入ったマキアスを静止させる。エリオットっていい奴だな・・・。
「とりあえず疲れたからもう先に帰るよ・・・。」
「あぁ、また明日なムンク。」
――――
廊下を歩いていると前にいきなり人影。
「やぁやぁ、ムンク君調子はどうですか?」
「えっと、トマス教官?」
うわぁ・・・この教官苦手なんだよなぁ・・・。
男にしてはやや長めに伸びた髪の毛に綺麗な弧を描く口元。そしてなにより特徴的なのが抜けているというか、間抜けに感じさせてしまうやや大きめの丸めがね。
この教官は帝国史の授業を担当していて、まぁとにかく話が長い。そして細かすぎて意味が分からない。
当たり前の話しながら、僕はこの教官の授業は5分も持たない。
だって、この人の話退屈で眠くなるんだもん。もはやこの人の授業は睡眠導入剤といえよう。
「ムンクくん少し話していきませんか?」
「あ、いや・・・疲れているんで・・・・。」
無難に断る。疲れてなくても断るけどね。
「まぁまぁ、そんなこと言わずにちょっとだけですから。」
にっこりとどこかつかみどころのない笑顔を浮かべる。
「いやだから・・・」
パチンッ
「んな!?」
冗談でも比喩でもなくいきなりあたりが真っ黒になった。
真っ黒な空間にほんの少しだけ弱々しい明かりがついていてそこに僕とトマス教官が二人だけポツンといる。
は?いやこれはどういうことだろうか?
あまりにもいきなりすぎる展開で頭が停止してしまう。
「は・・・?え、いや・・・へ!?」
「アハハハ、いい反応ですねぇ!」
動揺しまくる僕とは逆にトマス教官はどこまでも落ち着いている。
そしていつもにこやかに笑っているその目は鋭く見開かれていてどこか冷たさすら感じさせてしまう。
そう考えると――
「これはアンタの仕業か・・・。」
「あ、バレちゃいましたぁ?」
「とまぁ、冗談はさておき。先に名乗りましょう私は七曜教会・聖杯騎士団所属守護騎士第二位。《匣使い》トマス・ライサンダー。それが私の正式な身分と渾名です。」
「聖杯騎士団・・・・!?」
「あれ?知ってました?これかなりの極秘事項なんですけどねぇ・・・。まぁ、アインとのつながりがあるのですから知っててもおかしくないですが。」
「アインさん・・・?アインさんは今どこに!?」
「それはわからないですよ~。あの人は神出鬼没ですし。貴方ですら会えないのに僕が会えるわけないじゃないですか~。」
「あぁ、うん。そうだよねぇ・・・。」
納得。あの人の足取りがそう簡単につかめるわけないよなぁ・・・
「おっと話が横道にずれましたね。今回わざわざ能力まで使って接触した理由はちょっとした忠告です。先日の旧校舎とⅦ組関連のね。」
「何が言いたいんですか・・・。」
トマス教官の言いように顔が強ばる。
「ええ、まず単刀直入に言いますとⅦ組にあなたとミント嬢を入れさせたのはこの僕です。」
「は・・・・?どういうことだよ!!!?僕はともかくミントはどう言う意味だよ!!」
「『僕はともかく』ですか・・・。いやいや自覚があってなによりです。そう、あなたの力は異常でありこの帝国においてイレギュラーだ。この先を考えるといささか認識不足が否めない。」
「話をそらすな!!ミントをどうしてⅦ組にいれた!!?そしてなんで僕の力を知ってる!!?まさか旧校舎での一件見ていたのか!?」
何もせず旧校舎の一件をただ静観していただけと言うならば大きな問題だ。ただ僕の力を見るためだけに複数の生徒を見殺しにしたということになる。
「まぁまぁ、そうたて続きに質問されては答えれませんよ。まず一つ旧校舎の件については本当に申し訳ありませんでした。あの時何故か私はあの旧校舎にはなかなか入れなかったことを差し引いても私の監督不届きです。」
トマス教官は謝罪の意で頭を深く下げる。
そこまでされては流石にバツが悪い。
「それとミント嬢のことですが・・・言いづらいことですがおそらく体のいい人質ということなのでしょう。」
「ふざっけんな!!!!!!!!!!!」
思わず叫ぶ。
人質だと・・・?
ふざけているのか?単なる学生なのに?なんであいつがそんな目に会う必要がある。
今にも殴りかかろうとしそうな腕を必死に抑えてトマス教官を睨みつける。
感情が今にも爆発しそうだ。
「いや、これに関しては私も反対したのですが・・・上は牽制にもなると・・・。それにもともとミント嬢には高い魔導の素養がありました、学院で一位二位を争うレベルの。元々ミント嬢がⅦ組に加入する話は出ていたのです。」
「くそっ・・・。上ってことはあんたじゃどうにもできないってことか・・・。」
上って言葉が出た以上おそらく現状は何も変えることができないということだろう。
トマス教官はあくまで上の支持を受けただけで何かを変える権限はないということなのだろう。
「おや、以外にも冷静なんですね。とにかく今回話し合いの場を設けたのは君に今の現状を理解してもらうためです。あなたの力はあまりにも異質で警戒されているいうことを肝に銘じておいてください。」
勝手に話をまとめられたがどうにも煮え切らないことだらけだ。頭では理解しても心が反発する。
「とりあえず今日はお開きにしましょうか。」
「ちょっと、まて!ま―――」
パチンッ
トマス教官が指をならすとすでに自分は黒い空間ではなくもとの学院の廊下に戻っていた。
いきなり明るい空間に出たということもあり光が妙に眩しく、少し目眩を感じてしまう。
「それではムンクくん、さよなら。授業中は寝てばっかじゃダメですよ~学生の本分は勉強なのですから。」
「うぐっ」
そういうとトマス教官は背を向け職員室の方へ行ってしまった。
いきなり色んなことを聞かされたいうこともありその場で立ち尽くしたまま頭の整理を行う。
要は僕の力は警戒されていて、その抑制としてミントが送られたということか。
内容を頭の中で確認するだけでもハラワタが煮えかえりそうだ。
あぁいいさ。あまりこういうセリフはキャラではないがあえて言わせてもおう。
「上等だよ、トールズ士官学院。もともと何かあるからこの学院に来たんだ。何を考えてるか分からないけど立ち向かってやるさ。」
さぁ、物語がどんどん動き始めてきました。今後ムンク君はどうなるのでしょうね?
ただ一つ言えることは彼に安息の場所はない。
あ、後勘違いして日にち間違えてました修正しときます