いうなれば軌跡の裏道   作:ゆーう1

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投稿随分遅れて申し訳ありません。
ちょっと最近諸事情により忙しくて・・・・

そんなわけで最新話どうぞー


初めての特別実習

帝都ヘイムダルに到着し列車からおりるとまず大きさに圧巻された。

流石帝都というべきだろうか。駅ですら規模が段違いに大きい。

トリスタの駅とは比べ物にならないほどだ。

 

「―――時間通りですね。」

ソプラノの声ともに一人の女性。

軍服で包まれその肢体は女性特有の特徴を残しつつ軍人の威圧感というものがにじみ出ていた。

それでいて絶世の美女だ。安直な表現だがそうとしか言いようがない。

卵形の輪郭に氷のように輝きを放つ瞳。

サイドテールにされた髪型もよくにあっており思わず見惚れてしまう。

 

「あなたは確か・・・クレア大尉でしたよね?」

 

「確か鉄道憲兵隊か。」

反応を見るにどうやらリィン他数名は知り合いらしい。

 

この人だれ?

こそこそとミントに耳打ちする。

 

「えっ!?知らないの!?」

 

「泣く子も黙る鉄道憲兵隊クレア=リーヴェルト。通称氷の乙女だ。」

とユーシス。

アイアンメイデンといいなんで処女ってこう神格化されるんだろ?

そしてなんでそれの男版である童貞はこうも蔑まれるのか。氷の童貞とか聞いた瞬間恥ずかしくて穴に潜りたくなる。

なんて全くどうでもいい思考の渦に埋もれていると視線が向けられていたことに気づく。

「あら、聞いていた人数より二人ほど増えているんですね。」

 

「あ、はい。最近になって二人ほど増えました。」

 

視線が僕に定まる。

まるでからだの隅までなめ回すように視線は上から下までゆっくり移動した。

正直ゾッとした。ここまであからさまに見られると不快以外なにものでもない。

なによりほんの少しではあるが殺意みたいなものを織り混ぜていることも不快な点だ。凄いね、殺意って感じられるんだね。小説の中だけかと思っていた。

考えるにこの殺意は僕を品定めするためのものだろう。

なんて無駄なことを・・・。

「ふむ、なかなかおもしろい人材ですね。期待してますよ。」

 

どこに面白さを感じたのか疑問でしょうがない。何その頭?ポンコツなの?

言っておくが僕に期待したところで粗大ゴミがでるぐらいだ。

おまけに生ゴミもつけておいてあげよう。

 

「あのあなたが今回の特別実習の課題を・・・?」

アリサが恐る恐る質問する。

え、この人そんなすごい人なの・・・?

 

「いえ、あくまで今日は場所を提供するだけです。正式な方は・・・。あ、いらっしゃいましたね。」

 

「やぁ、丁度良かったな。」

 

「そ、その声は・・・!?」

慌てふためくマキアス。

 

「マキアスの父、カール・レーグニッツだ。」

壮年のどこか柔らかさを感じる男性だ。

物腰やしゃべり方にも柔かさを感じられる。

 

「と、父さん!?」

驚くマキアス。

まじか、マキアス父降臨。

世の中って結構狭いものだな。

 

中略

 

いきなり話が飛んでしまうがしょうがない。なんで中略したかって?

あの後会議室みたいなところに案内されて色々と話を聞いたのだが僕の頭の中には全くと言っていいほど話の内容が入っていない。

いつもの如く僕の頭はスリープモード入っていたため話は全くと言っていいほど聞いていなかった。

 

なに?こんなところで寝ていたらラウラに殴殺される?

あぁ、うんその疑問は最もなことだ。しかし僕も馬鹿ではない。

 

 

そう僕の技能は常日頃進歩している。

普段教室では腕を枕の代わりにしてうつ伏せになり寝ていたがそれでは教師や鬼(ラウラ)に怒られてしまう。

悲しいかな・・・そんな人の睡眠を阻む蛮行に僕はいつも屈していた。

しかしだ!!

行動までは屈していたとしても心までは折れていなかった。

なのでその対策として僕はついに・・・・

 

座ったまま熟睡できるようになったのだ!!!!

 

といわけで僕は会議室での話を一切聞いていない。

話を覚えていなければラウラに撲殺される可能性も拭えないので取り敢えずミントに話した内容を確認する。

ミントに聞いたところ、マキアスの父親がトールズ士官学院の常任理事だったとか。

そことなく権力絡みな危険な香りがするので触れないようにしておこう。

後は拠点となる場所の地図を渡されたとか。

しかし意外というのも失礼な話だがミントってしっかりしているよね。

見た感じ頭の中はお花畑で広がっているものだと思っていたが人の話はしっかり聞いているようだった。

じゃあ、なんで普段僕の話は聞かないんだ?とかいう疑問はひとまず捨てておこう。どうせ、ろくな回答は帰ってこないだろうし・・・・。

 

微妙な虚無感に包まれているとエマいきなり近づいて耳打ちしてきた。突然のことにどきまぎしてしまったのは内緒だ。

「お願いしますね、ラウラさんのこと。」

 

「え、いやそーいうのはリィンに頼むんじゃ……」

どう考えてもこのクラスの中心はリィンだ。

 

 

 

「ふふっ ラウラに関したらムンクさんのほうが適任ですよ。」

それはストレス発散のサンドバッグになってこいという意味なのだろうか?

違うよね?僕嫌だよ?

その可能性を強く否定できないことが悲しい。

 

「ついでに新たな方向を開拓してくれると……リィン×エリオット、いやムンク×リィンですかね……いや、逆ですかね……ぐふふ夢が広がりますねぇ!!」

 

聞かなかったことにした。

涎を垂らして発情期の猫のように興奮している委員長なんて僕には見えない。

なんだろう委員長の頭が日に日にお腐れになっている気がしてならない。

ついに僕にまで範囲を伸ばしてくるとは……

 

 

「ムンク!俺たちも目的地に向かおう。」

リィンに呼ばれたことを好機と考えて委員長から急いで逃げた。

 

A班B班と別れた後は渡された地図の場所に行くべく僕らは導力トラムという導力車で移動した。

トラムで移動する中次々と移りゆく景色は帝国の首都ともあって中々に壮観なものだったがここでは割愛する。

トラムでの移動中マキアスが墓穴を掘って猟兵団の話をしてしまったためまたラウラとフィーが険悪な雰囲気になってしまった。

そんな話したところで何の実にもならないし、なにより僕自身が疲れてしまう。

 

 

 

まず最初に向かったのはエリオットの自宅だ。

拠点となる場所の近くということで顔を出してはどうか?というリィンの提案の元エリオットの実家によることとなった。

せっかく故郷に帰ってきたのだ。実習中とはいえ家に顔を出すぐらいは許されるだろう。

 

「はー、久しぶりの家だなぁ・・・少し緊張するな。」

 

「ははは、エリオットも学院でたくましくなったんだから家族を驚かしてあげよう。」

 

「あははリィンそんな冗談言わないでよ・・・。」

 

「ん、最初の頃のエリオットはもやしっ子だった。」

 

「ひ、ひどいよ!フィー!!」

 

中々に毒舌なフィー。

そして案の定ではあるがラウラはフィーが話している時は会話に参加しない。

その状況にマキアスはどうしたらいいかわからずオロオロしているけどもう僕何もしなくていいよね?

ほら、触らぬ神に祟りなしって言葉もあるぐらいだし。

 

 

「それじゃ、行くよ。」

エリオットが恐る恐るドアをノックするとオレンジ色の髪が目に入った。

出てきた女性は僕たちを見た瞬間、いや正確にはエリオットを見た瞬間その丸い瞳を大きく見開き目尻にジワリと涙が浮かべる。

そして思いっきりエリオットを抱きしめた。

 

「あ、あはは。ただいま姉さん。」

恥ずかしさを誤魔化すためかエリオットは頬を人差し指でかき苦笑いする。

 

「お帰り!エリオット!!」

 

 

___

 

「ね、姉さんそろそろ離れてよ!!」

「ええ~~~まだエリオニウムが足りないよう~~~。」

 

「変な物質勝手に作らないでよ!!」

 

感動?の再会を思う存分味わったエリオットの姉フィオナは僕たちを客室に案内してくれた。

 

エリオニウムとかなんだか凄そうな物質だな。

もしかしたムンニウムとかもあるのかもしれない。あんまりいい響きじゃないな・・・。

仮にあったとしたらこれを摂取した人間はやる気が削がれ無気力になること間違いなしだろう。

あれ?もしムンニウムが発見されたら世界中の人が無気力になって、争いも起こらなくなりそうじゃない?

そしたら晴れて世界平和だ。そうか・・・僕は凄い存在だったんだね。

 

「ムンク・・・何をボーッとしている!」

 

「いや、世界平和について・・・。」

 

「ええい!其方は何をいっているのだ!シャキっとせい!!」

ラウラに怒られた。

いや本当に世界平和について考えていたんだけどなぁ・・・。

凄いんだよ?ムンニウムって。

 

 

「うふふ、ムンクくんはエリオットの手紙通りの怠け者さんね。」

 

「あはは、それはね。手紙にもそうとしか書きようがないからね。」

エリオットめ何てことを手紙で書いてくれたんだ・・・。大方内容は間違っていないだろうけどさ。

 

エリオットは軽い冗談も言いつつ姉との談笑を楽しんでいた。本当に中のいい家族だと思う。

 

家族か・・・

 

「・・・・・」

 

「ムンク。どしたの?」

ぼーっとしているところをいきなりフィーに話しかけられたので思わずビクッてなった。

あんまり人と話さないからいきなり話しかけられたら困る。

 

「なんか凄い遠い目をしてたから。」

 

 

「いや、仲いい家族だなって。」

 

「うん、そだね。」

そう呟くフィーは微笑ましそうにしていた。そしてどこか寂しさみたいなものもがあった。

 

「あ、そうだ。姉さんここの近くに宿とかホテルみたいなものない?」

 

「えええ!!?ここに泊まらないの!!??」

その時のフィオナの表情といえばすごい物っだった。まるで世界が明日終わってしまうかのような表情をしていた。

 

「お姉さんはショックでしょうがないです・・・あれ?でも変ねえここの近くに宿なんてあったかしら?」

 

「一応渡された地図ではここら辺の近くなんですが・・・。」

リィンは困惑して地図を取り出して現在地を確かめる。

「ふむ、あの優秀な御仁がその程度のミスをするとも思えないが・・・。」

 

「ちょっと、地図を見せてくれないかしら。」

 

フィオナは渡された地図を見ると

 

「ここ、前遊撃士協会があったとこよ。」

 

 

 

 

―――

 

「ここが遊撃士協会か・・・。」

外から見ると単なる民家にしかみえないけどなぁ。

 

「正確には元・・・だ。」

 

「取り敢えず中に入ってみよう。」

入ると以外にも中は綺麗に片付いていた。

使われていないというからホコリがかなり溜まっているだろうと思っていたが管理が行き届いているらしい。

部屋を見回すと遊撃士の象徴である守る籠手のマークがあったのだからここは元遊撃士協会で間違いないのだろう。

 

「しかし、遊撃士か・・・。数年前までは結構見かけたけどな。」

 

「あぁ、一応彼らは撤退したんだ。」

首を傾げるリィンにマキアスが答えた。

なんでも数年前ここで火事が起きてそれ以降遊撃士は帝国からほとんど撤退してしまったらしい。

噂では火事は事故ではなくテロだとか。物騒な世の中だなぁ・・・。

 

 

「それじゃ取り敢えず依頼でも確認しようか。」

 

それていた話を戻して特別実習の方向に持っていくリィン。

何気なところだがこういうところでリーダーの資質って見えるよね。

こういう何気なく仕切るような人がリーダー的な立ち位置に収まるんだろうなぁ

 

「帝都郊外の手配魔獣」

「帝都地下道の手配魔獣」

「手作り帽子の落し物」

「夏至祭関連取材の手伝い」

 

 

「うげぇ・・・魔獣退治が二つもあるのか・・・。」

 

「あはは、ちょっと今回は苦労しそうだね。」

苦笑を浮かべるエリオット。

 

「うむむ、何から手をつけるべきか・・・」

腕を組み悩むマキアス。

 

「ふむ、ならば一番手のかかりそうな魔獣退治をやらぬか?一つは郊外でもあるし面倒だ。先に片してしまったほうがよいだろう。」

とラウラが提案。

 

「それもそうだな。よし!まずは魔獣退治からだ!!」

そんなわけで特別実習初めての依頼は「帝都郊外の手配魔獣」となった。

正直魔獣退治とか嫌だなぁ・・・。疲れるし痛いし。

 




今回は依頼を一つ減らした上に更に一つ付け加えています。
まぁ、この後の展開にご期待ください。

そういえばリィンハーレム決めてないや・・・・どうしよ・・・

その点ムンクは何も考えないでいいから安心だよなぁ
だってモテないし。

そんなわけでここまでお読みいただきありがとうございました!次回もよろしくお願いします!

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