いうなれば軌跡の裏道   作:ゆーう1

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おひさです。本編と大差ないから退屈かもしれません。


ラウラとフィーの答え

「後悔することだけは絶対にあり得ないと思うんだ。」

そういって小柄で可愛らしいとも言えるエリオットが笑顔で断言した。

その言葉には寸分の迷いすらなかった。

 

 

ケビンと別れた後、僕とラウラはリィン達と合流した。

素手に空は茜色になっており、リィン達はエリオットの家にいた。

 

エリオットの部屋に入るとたくさんの楽器がずらりと並べられていて一瞬目を疑った。

エリオットは趣味程度と自重していうがとてもそうは思えなかった。

 

エリオットは部屋で自分について語りだした。

音楽学校を目指したかったこと。

それを父に反対されて仕方なくトールズ士官学院に来たこと。

当時は父を恨んだりもしたと言った。

 

だけど

「ここに来たことは後悔してない。」

そんなことを笑って言うんだ。

むしろ来れて良かったと。みんなと出会えて良かったと。

僕にはそんなエリオットが眩しくてたまらなかった。

 

 

ーーー僕はあんなことを迷いもなく言えるだろうか?

 

 

頭にこびりつくように浮かんだ疑問を必死に消した。必死に消した。見なかったことにするように。

だって、だって僕にそんなこと言えるはずもないのだから。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

夜も遅くなり僕たちはエリオットの家を後にし、宿である元遊撃手商会に戻ることにした。

エリオットは久しぶりの実家ということで実家で一晩過ごすらしい。

ていうか、姉が離してくれなかった。微笑ましいですね。

 

「あれ、戻らないの?早く寝ようよ。もうダルい。」

早く寝たい

即刻寝たい

ノータイムで寝たい。

誰かを気遣うとかどうでもいいから寝たい。

 

 

「君ね・・・」

 

「ムンク、少しは空気を読んであげろよ・・・」

 

マキアスとリィンが呆れたように僕に視線を投げる。

いや、だってラウラとフィーが真剣な顔して立ち止まって宿に入ろうとしないし。

これ、絶対なにかしようとしてるじゃん?

僕としては早く帰って寝たいんだもの。

 

 

案の定というか当たり前かのようにラウラが言葉を発した。

「フィー。私と勝負してくれ。」

 

「・・・いいよ。」

 

 

ほらー、やっぱりなにかやるつもりだったよこの二人。

もう夜も遅いし止めたいところだがそれは出来そうもない。

仮にそんなことしたところで無駄だろう。

それだけ彼女らの瞳は真っ直ぐだった。

二人の瞳は真っ直ぐでここ最近の二人とは思えないほど。

エリオットと同じで揺るぎそうもないぐらい真っ直ぐだった。

 

 

この二人は一戦交えるつもりだ。

場所は住宅街から離れたところにあるマーテル公園。

ここならば夜であれば人もほとんどいないということで選ばれた。

 

ーーーー

 

「フィー、私がソナタのことを好きだからだ。」

うわー

ラウラとフィーを中心に百合の花が咲き誇ってるわー

男とか去勢されそう。

 

リィンとマキアスとか純粋な目で見てるからなんか申し訳なくなってきた・・・

 

公園に対峙するフィーとラウラ。

ラウラはフィーに語りかける。

フィーに納得していなかったこと。

猟兵という存在を頑なに認められなかったこと。

フィーも同じでラウラは日陰者ともいえる元猟兵である自分を受け入れることは出来ないと思っていることを吐露する。

 

フィーを理解したい、認めたいと思うラウラはフィーの過去が知りたいと言った。

その上でフィーのことをどう思っているかラウラは告げた。

 

 

「教えてもいいよ。でも、報酬は自分の手で掴み取るのが猟兵の流儀。それでいい?」

フィーはラウラの言葉にそう応えた。

 

 

 

人間関係は複雑だ。拗れて直そうとすればさらに拗れる。

素直になれないなら余計にだ。

だから、ラウラは裸の自分の心をそのままぶつけることにした。

ややこしい価値観や騎士道。そんなものを全て投げ捨てた真っ直ぐな気持ちをぶつけることにしたのだ。

 

 

 

「フィー私は正しに捕らわれすぎていた。気づいたんだ……なにも考えず正義なんて言葉に陶酔してたことに。」

 

「だから、思いっきり私と戦ってほしい。そうでもしなければ納得出来ないんだ。だから手を抜かないで本気のぶつかり合いをしよう。」

だからこそこの二人は戦う。

理屈ではない。

頭で理解していても納得できないことがある。

言葉だけでは本当の意味で心には響かない。

言葉だけでは表せないことだってある。

そんなときはなにも隠さず思いっきりぶつかるしかないのだろう。

 

「めんどい生き方してるなぁ・・・」

ぼやく。

だって僕にはそんな生き方とてもじゃないが無理だ。

 

 

「ふふっ ムンクお前のお陰でもあるんだ。だから私は誠心誠意全力で答えを見つけ出したいんだ!!」

 

 

「エリオットの真摯さに自分は何をしてるんだと恥ずかしくなった。

ムンクの問いには答えられなかったから。だから私なりの答えを見つけ出したい!」

 

「だからいくぞ!フィー!」

 

「分かった、ラウラ。私も全力ですべてをさらけ出すよ。」

 

ーーーーー

 

 

戦いの火蓋が切っておとされた。

最初に仕掛けたのはフィーだ。

フィーの凄まじい高速連撃。一撃が飛んできたと思うとすぐに次の一撃が飛んでる来る。

何よりも厄介なのがその動きが捕らえられそうにフラッシュグレネードなどの搦め手を使ってくることだ。

 

だがラウラも決して負けてはいない。ラウラには協力無比な一撃がある。どれだけ追い詰められようが逆転を許してしまうような。

実際フィーが手数で押しきろうとすると、ラウラは大剣を叩きつけて逆にフィーを追い詰める。

 

 

「やるね、ラウラ。」

 

「フィーこそっ!!」

戦いは更に激化する。

 

お互いの実力は拮抗している。

このままではお互いに拉致があかないと感じているはずだ。

 

 

ピリッと空気の振動が頬をよぎった。

次だ、お互いに次の一撃で全て決めるつもりだ。

 

「父に教わった奥義を見せよう!」

 

「私も団長に教わった取って置きの戦技を見せる。」

ーーーーーー

 

 

「そこまで!!」

リィンの掛け声とともに戦いは終わった。

お互いに限界まで戦い、息も絶え絶えになり仰向けに地面に倒れる。

 

 

「す、すごいな。これはどっちが勝ったんだ!?」

マキアスにはどちらが勝ったのかわからないようだ。

僕も分からない。

それだけお互いの実力は拮抗しているように見えた。

 

 

 

「私の負け。猟兵の得意分野である夜間戦闘で互角だったから」

 

「むぅ・・・」

ラウラは納得していないようだが、フィー言い分には一理あった。

言い分通りフィーの戦闘スタイルで

ある奇襲は視野が狭まる夜間にこそ生きるもの。

これが昼間であったならラウラは押しきっていたかもしれない。

フィーとしてはプライドが許さないからこそこの結果(こたえ)なのだろう。

 

「真面目だなぁ、僕なら絶体譲らないや。」

思わず呟いてしまった。

しまったと思いはしたが時すでに遅し。

呆れたような視線が僕を攻めるように集まる。

いや、ほら僕プライドとかそういうのは犬に食わせた系男子ですし?

 

 

こほん・・・話が横道にそれた。

 

 

そうしてフィーはポツリポツリと過去を語り始めた。

自分がいつの間にか戦場で捨てられていた孤児だったこと。

そんな時に猟兵団に拾われたこと。

そしてその猟兵団が何よりも大切な家族になったこと。

自分が戦場で戦うこととなった経緯。

猟兵団の団長が戦死して団がバラバラになって途方にくれた。

そんな時にサラに拾われてトールズ仕官学院にくることになったらしい。

 

 

語るフィーの表情はとても柔らかくて猟兵団がどれくらい大切な存在だったのか感じとれた。

 

 

「そうか。」

ラウラが短いけど、確かな言葉を一言。

その言葉は端的なものではあったが様々な感情が込められていた。

ラウラはようやくフィーを認め、受け入れることが出来たのだ。

そしてそれはフィーも同じだ。

 

 

 

 

ともかく決着はついた。

お互いの表情はとても晴れ晴れとしておりもうわだまかりなどないことだろう。

お互いが朗らかに笑みを浮かべている。

まぁ、これでここ数日のギスギスとした空気がなくなるだろう。

少なくとも安眠は出来そうだ。

あー、やっと寝れる。だいたい夜遅くになんでこんなことしなきゃいけないんだよー。

どうせ明日も早いんでしょ?

明日はお休みとかにならないかな?

なりませんよね。滅べ明日。

 

 

ともかく寝れるそんな幸せに浸っていたその時ーーー

「これならもう戦術リンクもきれることも無さそうだな。」

 

「あぁ、むしろより強固になっているだろうな。頼もしい限りだ。」

リィンとマキアスの会話が耳に飛び込んできた。

いや、変哲もないありふれた会話なのだが・・・

どうも嫌な予感しかしない。

うへぇ、僕の危機感知センサーがビンビン反応してるよぅ。

 

 

「ところでフィー。試してみたくないか?」

ラウラが何か意味ありげな笑みをフィーに投げ掛ける。

 

「うん、そうだね。ちょうどおあつらえ向き…………もあるしね?」

 

 

「散会!!!」

 

ガシッ

 

逃げようとした僕の両肩に手が乗せられる。ていうか捕まれてメキメキ悲鳴をあげてる。

 

「ムンクは日中サボっていたのだから体力は有り余っているだろう?」

表情こそ笑っていても目が笑ってないラウラさん。こわいっす。ちびる。

 

「サンドバックが逃げちゃダメ・・・」

 

サンドバッグ!?今サンドバッグっていった?

 

いや、待て。今日はリィンとマキアスがいた。彼ら常識人なら止めてくれるはず……っていない!?

 

 

え?なんでラウラとフィーはこっちに武器を構えてるの?

え?リンクを試したい?

やだよ!?僕やだからね!?嫌だって!!!

 

え!ちょっ!

 

ぎゃあああああああああ!?

 


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