いうなれば軌跡の裏道   作:ゆーう1

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いや~~~UAが500近くまでいってて嬉しい!
意外にも読んでくれる人がいて嬉しいな!
そんなわけで今日は真面目かつ長め。


サボリと鬼教官

僕ムンクが在籍しているトールズ士官学院は士官学校ということもあって卒業後進路は多くが軍だ。

何が言いたいかというと、そのため武術やアーツ系の授業が多い。そしてこれらのものが特に嫌いだということだ。

座学なら寝て過ごせばいいが、実戦科目だとそうもいかない。内容もかなりハードだし何より疲れてクタクタになるから一番嫌な時間だ。

 

 

だが僕もここで引き下がるほど甘くない。

武術の授業では当然模擬戦がある。つまりだ・・・模擬戦中にわざと攻撃を喰らい気絶した振りさえしていれば授業をまるまるとさぼれるわけだ。

問題なのは攻撃をくらったら痛いことぐらいだ。我慢は一瞬!背に腹は代えられない!

 

 

 

「フフフ・・・。 僕ってなんて天才なんだろう・・・」

 

 

「ムンクくんなんかぶつぶついって気持ち悪いよ~?」

 

 

心無い言葉が聞こえた気もするがそんなのは無視だ。

模擬戦の相手と指定された相手をみる。

体格は十分。この相手なら僕は気絶しても問題ないだろう。なんて好都合。

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「あ~~~~やられた~~~~!!??」

 

 

よっし!うまい具合に吹き飛ばされた!後はうまく気絶したふりをすれば完璧!

 

 

「おい、ムンクの奴一瞬で吹っ飛ばされたぞ!?」

「いくらなんでも弱すぎだろ!!」

「うわ・・・気絶してるよ。」

 

 

 

いいぞ!クラスメートたちが僕の演技に騙されて声を上げる。結構いいフォローだぞ。

 

 

ふぅ・・・。後は授業が終わるまで気絶してればいい。誰も保健室に運んでくれないのは悲しいがそこは目を瞑ってあげよう。

 

トテトテと僕に近づいてくる音が聞こえる。

 

 

「あれれ~~~ムンクくん?気絶しちゃったの??情けないなぁ。」

僕の平穏をぶち壊す悪魔降臨。

だが今回はその悪魔も恐るにたらん!なぜなら僕は気絶したふりをしてるからな!流石に厄介事には巻き込まれないだろう。

というか僕は気絶してるんだから心配ぐらいしてくれてもいいんじゃないだろうか?

 

 

ん?また誰か近づいてきたぞ?なんか力強い足音だ。

 

 

 

「おい。ムンク、貴様気絶したふりをしているだろう?」

 

 

 

ひょ!!???

なんでバレたの!?僕の演技は完璧だったはず・・・。

というかこの声・・・ナイトハルト教官じゃないですか!?

 

 

やばいやばいやばい。よりにもよってナイトハルト教官にばれるとは。

武術を主に担当する教官は複数いるが中でも一番ヤバイのがナイトハルト教官だ。軍から来ているということもあり精神論丸出しの軍隊式訓練で悲鳴を上げる生徒が後をたたない。

 

 

落ち着け僕。まだバレてないはずだ。シラを切れ!!

 

 

「ほぇ~~ムンクくん気絶したふりしてるの?つんつん。」

そう言ってミントは僕のほっぺたをつついてくる。

お前は空気を読め!!

 

 

「お き て い る よ な ?」

 

 

ザンッ

 

 

「ひっ!?」

一際大きい剣が地面に思いっきり突きたてられたため思わず悲鳴を上げてしまう。怖すぎ。

 

 

沈黙

 

 

「ひ、人違いです」

自分でも馬鹿だとは思うがなんでこれを言ったんだろうか。

背中に冷や汗がぶわっと湧き出るのが分かる。

 

 

「いいからおきろ!!」

 

 

「はいいいい!!」

ナイトハルト教官の大地が揺れたかと思うほどの怒声に思わず背筋をピンと伸ばして立ち上がる。

 

 

「貴様、私の授業をサボろうとはいい度胸だ。」

あ、これやばい。教官の額に青筋出てる。

 

 

「稽古をつけてやる。かかってくるがいい。」

 

 

「えっ」

 

 

「いっておくが先程までみたく手を抜いたら軍隊式の地獄のメニューを受けさせてやろう。」

 

 

えっ 嘘だろ?どうしてこうなった・・・・。なんてこったこの授業の時間帯は寝て過ごすつもりだったのに。

嘆いていてもしょうがないか。やるだけやって地獄の特訓メニューだけは回避するしかない。

腕に籠手を装備する。一級品とまではいかないがそこそこ性能がいいものだ。なにより使い込んでいるので手に馴染んでいる。

 

 

「最低でも自分の流派の技ぐらいはだしてもらおう。」

 

 

「分かりましたよ・・・。」

そこまでバレていたかと内心舌を巻く。

今までの授業では出来るだけ自分の流派がバレないように立ち回っていた。特に禁忌の武術とかそういうわけではないが、やたらと手の内を晒すのも気が引けたからだ。

というのは建前で単純に疲れるからなんだけどね。

 

 

ふざけていられるはここまでだ。頭の中のスイッチをONに切り替える。生半可な意識で立ち向かっては全治一ヶ月の大怪我とかにもなりかねない。

構え目の前の相手を睨みつける。

 

 

「ほう、何らかの流派を収めているとは思っていたが泰斗流か。」

構えただけで流派が分かるとか流石だな、この人。

 

 

「といっても正規の手順を踏んで収めたわけじゃないですよ。」

正当な手順を踏んで会得したわけでもない。とある天才に教えてもらっただけだ。

実力で言えばおそらく初伝にも至らないだろう。

それに僕に使う安いようアレンジも加えてある。

 

 

「おもしろい。私に一撃でも入れられた地獄の特訓メニューはなしにしてやろう。」

 

 

「それってとてつもなく難易度高くないですか?」

かの有名な第四機甲師団に所属してしかもエースであるナイトハルト教官に一撃入れるって相当無理ゲーな気がするんですけど・・・・。

 

 

「ふん、それぐらい乗り越えて見せろ。」

そう言って剣を構える。

隙という隙が全くない。服越しからでも分かる鍛え抜かれ精錬された肉体が分かる。

 

 

正直、あの鍛え抜かれた体から繰り出される剣技に籠手を付けてるとは言え拳一つで立ち向かうとか嫌すぎる・・・

 

 

「やるしかないか・・・。」

 

 

「その意気やよし!」

その言葉を合図にナイトハルトが地面を壊れるぐらい強く蹴り飛ばす。

たったそれだけの行為でお互いの間には10メートルもの距離があったはずなのに数十センチまで縮まってしまう。

 

なんとか無理矢理体をひねって剣戟を躱す。

この間合いでは確実にやられてしまう。地面を強く蹴り距離を取る。

追撃に備えるがナイトハルトの追撃はない。

つまりは試されてるというわけだ。だったらやるしかない・・・。

 

 

「はああ・・・・。」

体を駆け巡る生命力とも言えるものを意識的に活性化させる。

血脈がうねり熱でもあるのか錯覚するほど体があつくほてる。

 

 

龍神攻

 

 

僕の技の起点であり、ある意味全てだ。この技があるから僕の技は全てが成り立つ。

龍神攻は生命力を一時的に爆発的に増大させ、身体能力をブーストさせるものだ。

東洋ではこれを気というらしく、体は鋼のごとく固くなり筋力も向上する。

 

 

「カッ!!」

 

龍閃

 

龍神攻の発動とともに気の塊を打ち込む。

龍閃はカマイタチのようなものだ。足に気を溜め打ち出す。僕がもつ技の中で唯一と言っていい遠距離技だ。

 

 

 

「ふんっ」

当然ナイトハルトは剣を軽く振るだけで龍閃をかき消す。

 

がそれは囮だ。

 

 

龍閃は接近するための目くらましだ。

いきなり接近してきた僕に対しナイトハルトは目を少し見開く。

今度は僕が攻撃する番だ。

 

主に腕に気を集中させる。

 

 

零剄

 

 

体を最大限にひねり勢いよく拳を前につき出す。

高濃度に拳に集中した気は爆発的な火力をもたらす。

イメージとしては高濃度の気を拳を介してゼロ距離で相手に直接打ち込む感じに近い。

 

 

ガンッと金属特有の高温が鳴り響く。

防がれた。

 

「狙いは悪くないが牽制の威力が低すぎるな。あれでは牽制にならない。」

涼しい顔して拳を剣で受け止めている。

 

 

「ぐっ」

くっそ!!タイミングはバッチリだったのに!!

 

 

それからは一方的な展開になった。ナイトハルトの剣技は凄まじく防戦一方な展開となった。

何しろまず根本的な威力が違う。

どのぐらい差があるのかわからないぐらいある。軽く見積もっても三倍はあるだろう。

 

 

「どうした?こんなものか?」

挑発してくる。

つまりは「いつでも、お前を倒せる」と挑発してきているのだ。

 

 

だったらこっちもやるしかない。

 

 

ブウウウン

アーツ発動時特有の起動音が鳴り響く。

アーツとは今や当たり前のものとなったが魔法のようなものだ。導力という神秘のエネルギーを使った戦術オーブメントという機械を使い魔法を発動する。

 

 

「ほう、アーツか。」

 

 

「ファイアボルト!」

発動させるのは低級火属性アーツだ。

直径50センチを超える火の玉が形成され、獲物へと発射される。

 

 

「ぬるい!」

剣をひと振りでアーツをかき消す。龍閃のときもそうだがほんと化物だな。普通アーツは剣なんかでかき消せるものじゃないんだが。

 

 

がここからが僕の本領だ。

 

死角を狙うようにもうひとつの火の玉が走る。

 

 

「むっ!?」

流石に驚いたようだ。しかし死角を狙ったというのに打ち落とすとかどんだけ化物。

 

「アーツの連続発動?いやそれにしては早すぎる。まさか・・・・!」

 

 

「正解ですよ。というかこれで一撃入ってたら良かったんですけどね・・・。」

 

 

「そんな甘いわけないだろう。しかしアーツの同時発動か・・・。随分器用なんだな?」

 

 

「裏技みたいなもんですよ。知り合いに少し詳しい人がいましてね!!」

 

 

「しかしせっかくのアーツも大した威力がないなら宝の持ち腐れだ。」

 

 

「それはやってみなければわかりません・・・よ!」

 

アーツを起動させる。今度も二つだ。しかし同じものではない。

発動させるのはファイアボルトとアクアブリード。

火の塊と水の塊が違う方向からナイトハルトに襲いかかる。

 

 

「ええい!そんなもの効かん!」

迎撃態勢に入る。

しかしそれが狙いだ。

そもそもナイトハルトにぶつかるように打ち出してはいない。

 

 

ナイトハルトの目の前で二つがぶつかるようにしてある。

するとどうなるか?

 

 

「くっ 視界が!!?」

 

狙いどうり二つがぶつかると白い靄のようなものが発生した。

そう狙いは火と水で発生する水蒸気で視界を奪うことだ。

 

 

「もらった!!」

そこに先程より気を込めた零剄を打ち込む。

 

勝った。そう思った。だが僕の拳に感触はなく、世界が反転した。

全身が真っ二つ引き裂かれると錯覚するぐらいの衝撃と感じたら、一瞬暗闇が訪れ気がつけば地面に横たわっていた。

何が起きたか分からない。分かるのは口に広がる土が混ざった鉄の味ぐらいだ。

 

 

「悪くはなかったな。及第点はくれてやろう。」

 

僕の意識は落ちてしまった。

 

 

 

 

――――

わりと賑わっている都市だ。

人々は露店を開き商売に興じる。はたまた心ゆくまで見物し、食を楽しみ満面の笑顔を浮かべる。

または、落ち着いた喫茶店に腰掛けコーヒーの深い味わいを楽しみつつ、お喋りに興じる。

どこにでもあるような、それでいて幸せに溢れた都市だ。

 

ただ一点。一点だけ違和感がある。

少年だ。黒髪で珍しい少年。

この都市の人々とは相反してとてもとても絶望した顔をしている。泣きはしないただただ絶望している。

そんな彼に声をかける人は誰もいない。

 

 

「ここはどこ?」

 

 

「わからない。似ているけど全然違う。」

 

 

「帰りたい。もうこんなとこ地獄だ。帰りたいよぅ・・・。」

 

 

「僕はなんでここにいるんだ・・・・。」

 

 

少年はその暗く絶望しきった瞳を見開き、悟ったようにぼそりと呟く。

 

「あぁ、ここに僕の居場所はなにもないのか・・・・。」

 

 

 

―――――

 

 

「うわぁ!!はぁはぁ・・・夢か・・・。なんで今更こんなもの見たんだ。なんて気分悪い・・・。」

 

 

「いててて、くそなんでこんな体がいたいんだ・・・・。」

体を起こすと全身に鈍い痛みが走った。

 

 

「あ!ムンクくん起きた~~~。」

 

 

「ミント・・・?あ!そうか僕はナイトハルト教官にやられたのか・・・・。」

まだぼんやりとしていたがだんだんと思考が戻ってきた。

 

 

「うなされていたみたいだけど大丈夫?」

 

 

 

「うなされていた・・・?あ、あぁ・・・!あんな目に合えばうなされもするよ・・・。」

本当は少し違うが言葉を濁す。実際ナイトハルト教官にボコボコにされたせいでもあるし。

 

 

「いや~~~、ムンクくんって結構強いんだね!ナイトハルト教官相手にあそこまでやるとは思わなかったよ!」

 

 

「というかなんでミントがいるの?」

 

 

「ほえ?だってここ保健室だよ?」

辺りを見渡すといくつものベットが置かれており少し離れた机には保健室担当のベアトリクス教官が優しげに微笑んでいた。

 

 

「おや?目が覚めましたか。ナイトハルト教官にも困ったものですが一応加減はしてくれたみたいですね。どこも怪我がなくて良かったです。」

いや、全身痛いです。

 

 

「あ、後ナイトハルト教官から伝言だよ~~~。目が覚めたらグラウンド100周しろだってさ。」

 

 

「は?」

ナニイッテルノコノコ

 

 

「だからグラウンド100周だって。仏頂面で「筋は悪くない。だが打ち込みがたらん」とか言ってたよ。」

 

 

「よ、よし!聞かなかったことにしよう・・・僕は気絶してて何も聞かなかった・・・。」

 

 

「ああ、後サボったら地獄の軍隊式メニューやらされるってさ!今日は座学は受けなくていいからやれだってさ。」

 

 

「うそでしょおおおおおおおおおおおおお!!!?」

 

 

校舎に僕の悲痛な叫びが響き渡るのだった。

 




うーん。少し長すぎる気が・・・
もしかしたら二話に分けて再投稿するかも

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