なおリィンの影は薄い模様
ちょっとしたラブコメにある話だ。暴力系のヒロインに追い回される主人公みたいなものが時々あるだろう。
そして、僕は今大剣を担いだ青髪美少女に追われている。
だからこう思うわけだ。ラブコメなんて滅びろ。
「まててええええ!!!」
全力疾走しながら後ろをちらりと見てみるがもう怖い。いうなれば鬼の形相。怖い、それと怖い。
「待つわけないでしょ!!?というか学院で大剣振り回さないでよ!?」
「そなたが私と素直に戦えばよいのだ!!」
なにその原始人的思考。脳筋にも程があるよ!
「それがいやなんだよ!確実にリンチされるじゃん!!
ちょっ!?今やばかった!!かすった、かすった!?」
まじでヤバイって!これ死んじゃう!!
「いいから我が剣の餌食となれ!!」
「嫌すぎるよおおお!?誰か助けてえええ!!」
なんでこんな目に・・・。
何?女神さまは僕のこと嫌いなの?僕もあんたのこと嫌いだよ!!!
「ええと、あれラウラだよね?どういうこと、ガイウス?」
「分からないな。しかし、追われてる方の男中々の身のこなしだ。」
「そんな冷静に分析してないで、助けてあげようよ!!」
「うむ、風の導きだ。」
「こっちこっち!!」
「ん!?」
声がしたかと思うと襟首を掴まれ宙に引き寄せられた。
落ち着いて辺りを見渡すと自分は体育倉庫裏にいることが分かる。逃走中影から僕のことを掴んで体育倉庫に引き込んでくれたのか。
ラウラに追われてないことを考えると上手く隠れることができたということか。
「はぁはぁ、えっとた、助けてくれてありがう。」
「うん、大丈夫?」
「怪我がなくて良かった。よくラウラの剣から無事なまま逃げれたものだ。」
二人共赤い制服を身につけているところⅦ組なのか。
一人は小柄で赤というより朱色の髪の毛がよく目立つ。体の特徴から男だと理解できるが童顔で中性的な顔つきだ。
もうひとりは落ち着いた男というのが特徴だ。背は高く体格はいい。帝国であまり見ない褐色の肌や腕に刻んである民族模様などから帝国民ではないのかもしれない。
「ええと、き、君たちは?」
「ぼくはエリオット・クレイグ。」
「俺はガイウス・ウォーゼル。よろしく頼む。」
「ぼ、ぼくはムンク。大丈夫?ラウラさんはもう追ってこない?」
正直ラウラのおかげでⅦ組には恐怖しか沸かない。
「今のところは。なんとかアリサに抑えてもらってるから大丈夫とは思うけど。」
その曖昧な言い方には不安しか感じません。
「あぁ、ラウラも意固地だからな。安全とは言い難い。」
「な、なんだって!?くぅっ!なんでこんな目に!?この後ぐーたらラジオを聞いて過ごす僕の野望は!?」
「あ、あはは。な、なんか、ラウラが怒る理由も分かる気がするね、、、」
「あぁ、ラウラとは性格が正反対とも言えるな。」
「そんな冷静に言わないでよ!なんとかしてよ!」
醜い?そんなことより自分の身が大事なんだ・・・。
「そこかあああああ!!!」
聞きたくない怒声が耳に飛び込む。
「なんでえええ!!?」
もう勘弁してよぅ。
「ごめなさーい!抑えきれないわ!凄い剣幕で!!」
金髪の少女が申し訳なさそうに声を上げる。
「に、逃げ場が!?」
目の前に迫るラウラがもう鬼にすら見える。もう青鬼。
「もう逃げられないぞ!!」
「くぅ、もう終わりか!!?」
まずい、このままでは殺されてしまう!
こうなったら・・・・
「って、ガイウスとエリオットは!?」
「ごめーん!もう僕たちには無理だよ。」
「ああ、風の導きだ。」
いつの間にか離れたところへ避難しているガイウスとエリオット。そりゃないっすよ・・・。
というかなんだよ風の導きって!助けて!
「くらえ!地裂斬!!」
「ぎゃああああ!!」
地面に衝撃が走り僕の足元で爆発する。
その衝撃で宙に放り出される。
何この浮遊感一周回って気持ちいい。
「トドメだ!」
ラウラは跳躍し大きく大剣を振りかぶる。
まずいって!僕死んじゃうよ!!?
「鉄砕刃!!」
「ぐぇ!?」
身体中痛くて思考が回らないが地面に這い蹲る僕の姿はさぞグロテクスなものになっているだろう。
「なんで・・・僕がこんな目に・・・。」
あぁ、意識が遠のく・・・
「かゆ・・・うま・・・。」
「何言ってるの!!?」
意味不明な言葉を残して僕の意識はブラックアウトした。
もうやだこの学院。
後日談ではあるがしばらくムンクの夢には正体不明の青鬼が出てきて暴れまわっていたらしい。
感想・批判募集してます。
ほぼ初めての作品みたいなものなんで色々不安ですw