Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~   作:蓋然性生存戦略

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第二席の処遇

前回のあらすじ。

契約が終わったと思ったら、第一席か第二席か分かりませんが襲撃してきました。

なぜか勝手に撃沈してメソメソ泣いていましたけど。

泣き疲れたのか、寝ちゃいましたね。

 

「で、どうしますか」

「……ん、封印する」

 

それでなのですが。

正気を取り戻したコスモスさんが、襲来してきた賢者こと、シエルさんを拘束しました。

それはもう、厳重に。

 

まさか身ぐるみ剥がしたうえで、ぐるぐる巻きにするとは思いませんでした。

あまりの躊躇の無さに驚きましたね。

 

「……とはいえ、封印しても、マオがこっちに来るのは時間の問題だし……」

「ところで、この方はどなたなので?」

「……第二席、シエル=ヴァニタートゥム。暴力の化身……のはずなんだけど」

「どうやらコスモスさんの知らない一面があったようですね」

 

この方が、第二席ですか。

なんというか、その。

いきなり大物が釣れたと言いますか。

確かに負けてたはずなのに、なぜか勝っている釈然としない気持ちと言いますか。

途中からアンウェルカムなBGMの幻聴が聞こえてきたのは、気のせいではないはずです。

 

まあ、それはさておき。

 

「さて……時にコスモスさん、つかぬことをお伺いしますが」

「……なに」

「この世界では、生命体を生きたまま加工することは可能でしょうか?」

「……できるよ。そして、私はその技術を有している」

「もうひとつ、よろしいでしょうか」

「……なんでも言って」

「生きたまま加工する場合と、死体を加工する場合では、どちらの方がより性能が良くなりますか?」

「……工程次第。だけど、呪物として運用しないのであれば、生きたままの方が良い」

「なるほどなるほど……良い知見を得られました」

 

この、偶然手元に転がり込んできた、星の賢者第二席という特級の素材を、どう扱いましょうか。

正直な話、どう扱っても私としては万々歳なわけですが……。

 

「……私としては、殺してしまった方が良いとは思う。リスクとリターンを考えた場合、殺して素材にした方がリスクはない」

「私としては、多少のリスクは許容して最大限リターンを取りたいところですが……」

「……シエルが本調子を取り戻したら、それこそ手を付けられなくなる」

「シエルさんの実力をよく知るコスモスさんがそう言うのであれば、そうなのでしょうね……」

 

とはいえ、です。

数字や実利だけを見るのであれば、どう扱おうと万々歳ではあるのですが。

私の個人的な主義を含めると、不都合が生じるのですよね。

シエルさんには生きていてもらった方が都合がいいのです。

 

「ではこうしましょう。(ゴニョゴニョゴニョ)。私も無理にとは言いませんし」

「……分かった」

 

誰だって、トゥルーエンドの方が好ましいでしょうし、ね?

 

 

 


 

 

 

「ん、ふゎぁあ……知らない天井だ~~」

 

目が覚めたら知らない場所だった件について。

うーん、どう見ても独房。

何か悪いことしたっけな?

……なーんてね。

わたし、シエル=ヴァニタートゥムは、現実逃避をしたかっただけだった。

 

いやぁ、久しぶりにやっちゃったなあ……。

私もまだまだ甘ちゃんだったってことか。

 

「身ぐるみは……剥がされてる。この布は……ただの布じゃないね。封印用だコレ。どうしようもない、かあ」

 

抜けようと思えば抜けられるだろうけど、その前に気付かれて始末されるのがオチなのは目に見えている。

つまるところ、打つ手はなく、客観的に見れば、私は自信満々に独断専行で敵地に突っ込んで捕虜になるとかいう、無様な愚か者である。

泣きそう、泣いて許されると思うな、間抜け。

帰ったらマオちゃんに怒られる……そもそも帰れるかな……。

なんとかして生き延びないとな……。

 

なんて思っていたら、扉が開いた。

 

「おや、もう目が覚めたのですか。先程眠りについてから、まだ二時間ほどしか経過していませんが、調子はいかがでしょう?」

「……さっさと封印強化をしておいてよかった……あんまり目を話してると抜けられちゃいそう」

「そうですか。では、それなりに対処しないといけませんね?」

 

扉からは、コスモスちゃんと、コスモスちゃんの契約者ちゃんが入って来た。

二人とも無表情だから何考えてるのか分からない。

 

「単刀直入に言いますと、あなたの処遇についてですね、シエルさん」

「煮るなり焼くなり、好きにしなよ~~、どうにでもできるでしょ?」

「まあ、それは純然たる事実というか、自分からまな板に乗っかって来た愚かな魚がいたと言いますか」

 

ふーん、煽って来るじゃん。

事実だから何も言えないけど。

 

「それはともかく、です。私は貴女へ、脅迫に近い提案をしに来ました」

「言いなよ、どうせ選択肢はないんでしょ」

「はい。簡単な話です。抵抗せず、生きたまま私たちの礎になっていただけませんか?」

 

何を言っているんだろう、この子は。

そんなの、飲むわけが……

 

「ナメたこと言ってくれるじゃん。それなら死んだ方が……」

「その場合ですと、貴女の意思に関係なく、貴女の死体から礎を創り出すだけですので」

「……」

「生き恥を晒すか、死して尊厳を奪われるか。貴女にとってはこの二択でしかありませんし、私にとっては少々リターンの多寡が変わるだけです」

 

そう言えばそうだった。

コスモスちゃん、禁忌の生体加工技術持ってたね。

死体で好き勝手されるより、生き恥晒す方がマシな気がしてきた。

 

「一応聞いても良いかな」

「なんでしょう?」

「生きたまま加工された場合って、どう扱う予定?」

「そうですねえ……装身具にするには危険ですし……」

「……精々、都合のいい動力源。拠点の防衛設備の動力源になってもらう」

「そっかー……」

 

私の抵抗もガン無視できる用途。

生き恥を晒しても甚大な被害が及ぶ気がしてきたよ。

抜け目なくて涙が出てくる。

私はどうすればいいんだろう。

いやまあ、どう考えても死体になる方がマズいんだけど。

……とりあえずいっか、電池扱いで……。

 

 

 


 

 

 

「というわけで、無事拠点の良質な動力源を確保です」

「……まあ、拠点の防備に不安があったのは確か。レオナの提案は間違ってはいない」

「含むところがありそうですね、コスモスさん」

「……少しだけだけど、シエルには生きていたもらった方が良いと、そう思っているように感じられた」

「まあ、間違ってはいませんね。本命ではありませんし、生きていたらより良い、くらいの気持ちです」

「……何故?」

「大したことではありませんよ。ただ……ほんの少しだけ、不憫に思っただけですよ」




・だいたい何でもできるコスモスさん
だいたい何でもできる。
他の賢者が特化型で君臨しているのに対し、こいつだけ引き出しの多さで勝負している。
できない事は運動だけ。

・シエル=オオマヌケ
捕虜になった時点で死んでも生きてもマズいじゃん!と板挟みになった結果、やはりメンブレして抵抗する気を失った大間抜け。
拠点の動力源として都合のいい生体電池として用いられることが決定した。
余談ではあるが、可逆変化らしい。
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