Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~   作:蓋然性生存戦略

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ミシェル視点でお送りします


イベント:タンナ奪還戦1

イベント当日。

私はイベント開始地点である、ベトミナまで来ていた。

先行期間を含め、イベント開始から、一か月。

それくらいの期間があれば、プレイヤー総出で各方面への開拓も進んだ。

ここ、ベトミナは中央都の四方に存在する大都市のひとつであり、南に位置する場所だ。

 

そして、ベトミナには今、タンナ奪還のために設立された作戦司令本部がある。

集まった戦力は、総勢二万。

内訳はプレイヤーが半数、残りの半数は現地兵(NPC)

随分な人数が集まったものだと思う。

初イベントというのもあると思うけれど、この規模の戦闘は、どんなゲームを通しても中々見れない。

更にはイベントは土曜スタートの九日間を予定しており、大規模かつ長期の戦闘が見込まれている。

 

「よう、ミシェル」

「お、ウリ坊さんじゃん。早いねー、まだ開始まで一時間あるよ?」

「スパーリングをお願いしようと思ってな」

「良いよ、やろっか」

 

とは言え、独立特記戦力として数えられてる私は、実のところあまり関係がない。

本気のプレイヤーたちからは、さっさとレオナを見つけて足止めしてくれと、満場一致で任された。

いやまあ、最初からそのつもりだけどさ!?

そんなわけで、私以外の《勇者》であるウリ坊さんとスパーリングに興じている暇があるのだ。

彼も独立特記戦力として数えられており、私と行動することになるらしい。

いや従うんだけど、従うけど、本気の人達が本気の本気すぎて怖い。

自然と司令部みたいなのがプレイヤーたちの中に出来ててビックリしたよね。

主にタンナ陥落の時にいた人たちの熱量。

 

と、場所を映してスパーリングを始める。

 

「流石に重い、なっ!!」

「そりゃあ、先行した分の厚みがあるからね!!」

 

まずは一合。

私の大剣と、ウリ坊さんの戦斧が激突する。

どちらも大ぶりなきらいのある武器だけど、私達はステータスの暴力で軽く振るう。

出自のステータス補正で、本来はウリ坊さんの方が威力的には上になるはずなのだけど、まだ私の方が上みたいだ。

まあ、私の方が先行しているうえ、ウリ坊さんはそこまでイン率が高いわけじゃない。

私が平均十時間に対して、ウリ坊さんは長くても八時間だ。

仕方のないことだとは思う。

 

「やっぱ一本もとれねえか……」

「そりゃねー。ログイン制限がある以上、越えられない壁はあるよ。PayToWinはさせない方針らしいし。むしろSTRだけでも同等以上なのが怖いじゃんね」

「お互いデカブツ振り回してるからな」

 

ちなみに、このゲームは一日十二時間までのログイン制限がある。

つまりどんなに頑張っても《プレイ日数x最大十二時間》なので、私と同等以上のログイン時間を誇るプレイヤーはなかなかいない。

 

とはいえ、何のかんのと言って私と同等クラスのSTRを誇っているのは純粋に凄い。

レオナを相手するには……ちょっと物足りないけれど。

ウリ坊さんは悪く無いよ、レオナがおかしいんだよ。

多分、STR自体はそこまで高くない。

けど、余りにも速い剣速と正確性で、私の大剣を弾く技量がある。

その技量に対抗する技量があるかと言われれば、私もウリ坊さんも否とせざるを得ない。

頭の痛い話だ。

正直言って私一人の方がやりやすそうなのがなぁ~~……。

 

「ミシェル」

「ん?」

「お前顔に出やすいから気を付けろよ」

「えっ」

「自分一人の方がやりやすそうとか思ってただろ」

「ソンナコトナイヨ」

「顔見て言え」

 

あはは、バレてた。

ウリ坊さんで良かった。

ガッさんだったら喧嘩だ。

 

「ウリ坊さんが悪いわけじゃないんだけどねぇ……相手がバケモノ過ぎるっていうか」

「俺はソイツの事を知らないから分からんが、お前がバケモノと表現するのは余程だな」

「多分私が《バシリカ》使ってても素で平然と対応して来るよ」

「……は?冗談だよな?」

「ウソじゃないんだよね、コレが。それを可能にするだけの、隔絶した技量がレオナにはある。ぶっちゃけ頭数揃えても、勝てるかって言われたら、かなりビミョー」

 

ついでに言えば攻撃パターンの類も無い。

相手を倒すために、常にあらゆる状況に最適化された動きをして来る。

周囲の状況も含んで行動して来るので、うっかりすると戦場を巻き込んで盛大に死ぬ。

レオナの恐ろしい所のひとつだ。

 

「と、なると、司令部にも話を通しておかねえとな」

「いいの?」

「俺は別に、打倒レオナってわけじゃないからな。程よく楽しんでるだけだ、そこまで執着してるわけじゃない」

「そっか。こういっちゃあれだけど、助かるよ」

「構いやしねえよ。ガッツの奴はうるさいだろうが……」

「あー、まあね」

 

そんな感じで話しをしていたところ。

 

「目標、発見。ミシェル=ユスティーナ殿と見受けましたが、相違ありませんか?」

「あん?」

「あれ?」

 

なんというか、一口で説明するのが難しい容姿の少女が現れた。

青い礼装軍服と灰色の外套に身を包み、青銀の長い髪をポニーテールにまとめた、身長150㎝ほどの少女。

特徴的なのは、両側の側頭部から生えている角と、天使の光輪と呼ぶには禍々しい、頭上に浮いている赤い光輪。

ちょっと判断に困る外見をしている。

敵?

 

「先に回答しておきますが、敵ではありません。当方はシヅリ=アレイン。《星の賢者》と呼ばれる集団に第八席として在籍しています。ミシェル殿には、聴取を行いたいため、可能ならば同行を願います」

 

敵じゃないんだ、その外見で……いや、街中に平然といる時点で敵じゃないっぽいのは分かってたけど。

 

「あ?ミシェルだけか?」

「新しく誕生した魔王に対し、直接対峙してある程度戦いになった異邦人はミシェル殿だけと伺っています。そうなると、聴取に適した人物はミシェル殿以外にいませんので、ウリボー殿は対象外となります」

「ああ、そういうことか」

 

どうやら私だけ呼び出しっぽい?

応じるのはやぶさかではないけれども。

 

「んー、ウリ坊さんどうする?」

「行ってきてくれ。イベントとしてはデカめだろ」

「おっけー、行ってくるよ。それじゃまた後で」

「こちらです」

 

ウリ坊さんに確認を取って、私はシヅリさんに付いて行った。

しばらく歩き、設立された作戦司令本部の中央部、NPCの中でも偉い人が集まるエリアへと案内される。

緊張するなあ……。

 

「シオン殿。ミシェル=ユスティーナ殿を連れてきました」

「ご苦労様です」

 

案内された先にいたのは、青い髪の女性。

凛とした佇まいの、知的なオーラを漂わせる人だった。

 

「まずは招集に応じていただき、感謝します」

「時間潰してたとこだし、ちょうど良かったかも。キミがシオンさん、で良いんだよね?」

「星の賢者、第四席《星穿》シオン=ジニアスを指しているのであれば、私で間違いありません」

 

なんというか……話しやすいけど話しづらいね!!

友達少なそう(偏見)。

 

「早速本題へ移りましょう。現時点で、異邦人たちの作戦として組まれている、貴女と《光焔の勇者》による魔王への対処ですが、貴女はどれほどの確度で可能だと考えていますか?忖度なしで、正直に答えていただきたい」

 

誤魔化しは……ダメだよね。

多分、シオンさんの采配が変わるし。

 

「んー、厳しいかなって。確実に勝てるとは口が裂けても言えないなあ」

「そうですか……もし、仮に現在判明している勇者全員で挑んだ場合はどうですか?」

「負け筋が増えるかな★」

「そうですか」

「あれ?驚かないんだね」

「可能性として考えてはいたので」

 

そう言って、シオンさんはパラパラと資料を捲っていく。

 

「続けて問いますが、貴女の客観ではなく、主観で考えた場合、勝率はどれほどあると思っていますか?」

「一割あれば御の字かな」

「そうですか。相手の能力などの情報はどうでしょうか」

「んー……多彩な魔法を使って、剣技も交えて戦ってる印象が強いかな。どちらかと言えば魔法の方が得意かも。でも剣の技量も隔絶してた」

「多彩な魔法というのは?」

「多分だけど、四大元素属性は全部使ってた。他にも色々」

「剣の技量については?」

「多分だけど、彼女あんまり筋力無いんだよ、私に比べたら。それでも剣閃をズラされたりとかしたから、多分技量が高い。何か特殊な能力を使ってない限りはね」

「なるほど……参考になりました」

 

この後にも色々と質問されたけど、全部レオナに関することだった。

本気で対策練る気かな。

難しい顔をしているけれど。

 

「質問は以上です。退出してもらっても構いません。何かそちらから質問はありますか?」

「えっと、難しい顔をしてるけど、そんなにヤバイ?」

「状況が許すのならば、万全を期して第五席を呼び寄せたいくらいにはヤバい、と評して良いでしょう」

 

そっかー、そんなマズいのかあ……。

 

「貴女を含め、勇者がかの魔王へ抗しきれないのであれば、最悪の場合、我々星の賢者は相手の特記戦力に掛かり切りということもあり得ます」

「そして後は単純な物量合戦。ただし、相手はレオナの眷属が大半、死を恐れないアンデッドの大群。文字通り死兵が相手……半数がこちら側の世界の兵士ということを考えると……」

「ええ、そうです。数では上回っていても、基本的に防衛側が有利。想定される損害は大きいです」

 

改めて説明されると、今回のイベントはかなり苦しい内容になりそうだなー。

このひと月で、上澄みのプレイヤーは現地の一般兵よりはよほど強くなっているけれど、そのほとんどがタンナ組だ。

あの時、タンナで最後まで抵抗したプレイヤーは1000人ほどだと言われている。

その全てがこのイベントに参加しているはずもないので、多くても参加プレイヤーの内、800人ほどだろう。

上澄み全体で見れば1000人行くかどうか。

復帰まで時間がかかると見込まれているとはいえ、無限復活する防衛戦力を相手に、1000の兵力でどれほど抗し切れるかは、未知数だ。

 

「プレイヤー……異邦人の司令部にも伝えておくよ。動き方が変わって来るしね」

「ええ、構いません。ただし、一般兵には悟られないようにお願いします」

「了解。それじゃ、私は行くよ」

「時間を取らせました。改めて、感謝を」

 

私はその場を去って、司令部に連絡を入れる。

と言っても、主にタンナ組のプライベート掲示板だけども。

 

 

 


 

 

 

456:ミシェル=ユスティーナ

というわけでイベントの戦況が早くも劣勢かもしれない

 

457:リオン

知ってた

 

458:マガンサツ

俺達の魔王がそんな簡単に仕留められるとは思ってない

 

459:ポーションマン

ぶっちゃけ「何とかなるやろ」感出してるあいつらを殴りたい

 

460:ブルドウガ

なんとかなるわけがないんだよなあ

 

461:ドチャシコ=エルフスキー

で、実際のとこウリ坊さんと組んでやれそう?

 

462:ミシェル=ユスティーナ

ウリ坊さんを肉壁にして後腐れが無いならワンチャン?

 

463:リオン

同じ勇者でも差があるとは思ってたけど、そこまで?

 

464:実家のような安心感

平均ログイン時間と先行組のアドバンテージがデカいよ、流石に

 

465:脆くて壊れやすい

(中の人の年齢もあると思う。ウリ坊さん多分世代が)

 

466:マガンサツ

それはもうどうしようもない奴だろ……良い人なんだけどな

 

467:ウルフェンロード

逆に言うと全盛まっしぐらのミシェルちゃんにある程度打ち合ってる辺り凄いんだけどな

 

468:リオン

まあしゃーないか。さっきウリ坊さんからも連絡来たしね。当初の予定を変えて、ミシェルちゃんに頑張ってもらうことになるんだけど

 

469:ミシェル=ユスティーナ

あんまり期待はしないでよ?初日の時点で既に大きく経験値に差がついてるし

 

470:ポーションマン

それはそう

 

471:アルバ

確か検証班から「高次知的生命体」であればあるほど取得経験値が多いって検証結果が出たんだっけ?

 

472:だんでらいおん

ついでに言えば眷属は時間が経てば復活するし、眷属が倒した相手の経験値は主人にも入るって検証結果も出てるぞ。あとプレイヤーも高次知的生命体扱いだぞ

 

473:アンディ=アンラッキー

タンナであれだけ大量虐殺すれば、そりゃ経験値も美味いか

 

474:ニュータイプ

え!?つまり戦争で生き延びるたびに強くなるってことですか!?

 

475:エデソ

そうだよ

 

476:ポーションマン

流石に上限はあると思いたい

 

477:ウルフェンロード

なお、燦然と輝く転生の文字

 

478:狂人A

Lv100になってもまだジワジワ強くなるコンテンツが存在するという恐怖

 

479:まるでダメなお兄さん

ま、まあ、転生したら一時的に弱くなるから……

 

 

 

 


 

 

 

報告すべきはしたし、一旦切り上げる。

開始までもう間もなくだ。

エントリーは済ませたし、少し先行しよう。

レオナを見つけて、相手をしないといけないし。

私は駆けだして、タンナへと足を向けた。

 

少しして、イベント開始時刻。

 

——Boooooooooooooooooooooooooom!!

 

ベトミナとタンナの間の空に、巨大な花火が咲いた。

 

「初手超遠距離砲撃とそれを迎撃する砲撃とか、スケールおっきいなあ……」

 

それは、双方からの超長距離攻撃だった。




・シオン=ジニアス
口調が主人公と被っている気がしなくもない星の賢者第四席《星穿》。
超長距離砲撃を得意としている賢者で、主に要所の防衛、もしくは攻城戦における砲撃手を担当することが多い。
性格は生真面目であり、ちょっと迂遠な言い回しをすること以外は優等生。
地味に最年少の星の賢者であり、500年も生きてない。
第一席からの信頼も厚く、次期第一席候補としてちょくちょく勉強している。
そのためか、今回のように無茶振りをされることも多め。
割と不憫枠。

・シヅリ=アレイン
生真面目とかそういうのを通り越して堅物感のある星の賢者第八席《星呪》。
呪術全般を得意としている賢者で、本来は攻撃ではなく呪物の管理や対呪術的防御に回ることが多い。
ちょっと面倒くさい気質ではあるが、基本は素直。
容姿から複雑な出自であることは察せられるが、細かいことは第一席と第三席しか知らない。
余談ではあるが、彼女の得物は聖槍と魔導書であり、槍は第三席から、書は第一席から譲り受けたものである。

・司令部(プレイヤー側)
サービス初日のタンナ攻防戦で最後まで抵抗した者達が結成した組織というか、集まり。
主に鍵付き掲示板でやり取りしており、板の正式名称は《対魔王レオナ対策作戦司令部》。
やる気に満ち満ちている最上位層プレイヤーが多い。
経緯の関係上、先行サービス組がほとんどであり、例外はウリボーなどごく少数。
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