Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~   作:蓋然性生存戦略

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一年前に始めた作業ゲーがいつの間にか3500時間くらいプレイしてる事実に震えてました。
たぶん人生で二番目に長くやってます。

あと主人公視点じゃないし、かなり短めです。


イベント:タンナ奪還戦5

ベトミナとタンナの上空で爆裂し続ける、長距離砲撃の応酬。

それは一見して、タンナ側が凌いで拮抗しているように見えていたが、しかしその実情は大きく異なっている。

 

「妙ですね……いくら第三席の魔力量が私より上とは言え、私への牽制に回し続けられるほどの魔力があるとは思えませんが……」

 

実際には、タンナ側から攻撃を仕掛けられ、その迎撃にシオンが周っているという状況。

 

当初の予定では、砲撃を一度ぶつけた後は様子を見て、適宜砲撃する予定だった。

しかし、予想外にも多くの砲撃がタンナから飛んでくる。

しかも、一発一発が『取り落とせば少なくない被害が出る』という威力のものだった。

 

「地脈の魔力を汲み上げているにしても、ベトミナとタンナでそう差はないはずです。であれば、他に要因があるとみるべきですが……」

 

シオンは少しの間、思考を巡らせる。

答えはすぐに出た。

大量の魔力を確保できる要因とは。

 

「敗れたか、寝返ったか。いずれにせよ、第二席が動力源として使われていると見ました」

 

今は行方不明の第二席、シエル=ヴァニタートゥムが関与していることは想像に難くなかった。

 

「となれば、純粋な魔力量では圧倒的に不利ですね……」

 

そして、シオンはその結論に至る。

シエル=ヴァニタートゥムという賢者は、無限にも思えるほどの魔力保有量を誇り、魔力の回復速度もバカげた速度を誇る。

人間大の魔力災害と言っても差し支えない、そんな存在である。

それが敵の手に渡っているのであれば、正攻法で争っていては確実に敗北を喫する。

 

「まだ試作段階ですが……使うしかないようですね」

 

故に。

覆す為の一手を打つ。

そうするしか、無かった。

 

 

一方で。

 

 

「……ん、そう。まあ、そうするしかない」

 

ベトミナでシオン=ジニアスが新たな術式を展開しようとしている頃。

長距離砲撃の打ち合いにて、コスモスは変化を感じた。

どうにも、相殺地点の間隔が遠い。

それは、コスモスの砲撃がよりベトミナ側で撃墜されている証左だが、しかしそれは決して吉報ではないことを、コスモスは理解している。

相対するシオン=ジニアスという賢者ならば、まだ防衛戦をむやみに下げることはしない。

違和感を感じさせないよう、巧妙に後退させていたようではあったが、コスモスは見逃さなかった。

 

「どうしたっすか、コスモス先輩」

「……相手が出方を変えるみたい。ちょっと備えるから、驚かないでね」

「了解っす」

 

尤も、どう出るかは分からなかったため、五千年封印してきたものを、一部開放することにしたが。

 

「……封印、限定解放。我が冠名は《無情》なり」

 

コスモスがそう呟いた瞬間、彼女の背に黒い翼が、右腕には黒蛇の文様が現れる。

全体的に純白を思わせる彼女とは対照的な色合いだが、しかし妙に様になっている。

 

「先輩、変身できたんすか!?」

「……どっちかと言えば、こっちが本性なんだけどね」

『ドンパチやってるね~、調子はど、う……コスモスちゃん!?』

 

そこへ、マスコット人形と化したシエルが現れる。

コスモスの姿を見て、酷く狼狽した様子を見せながら、コスモスに駆け寄った。

 

『コスモスちゃん!それは使わないって約束したじゃん!!()()()()()()()()()()()じゃん!!』

「……約束を守ってたら、いつまで経っても私はあの人を助けられない。だったら、私は咎人で良い」

『っ!!』

「……それに、今のシエルは捕虜。命の保証はしてあげるけど、余計な口を出さないで」

『……本気、なんだね。今度こそ』

「……いつだって本気だった。今回は巡りが良い。それだけ」

 

しがみ付いてくるシエルを引きはがし、コスモスは詠唱を始める。

 

『真名、()()

 我が名はコスモス。

 誕生より定められし約定と共に、この地に我が意を示す。

 我は咎人。

 《無情》を冠する第四の玉座。

 愛ゆえに、世界よ滅べ』

 

詠唱を終えたコスモスの口は、うっすらと三日月を描いていた。

 

二人の賢者が全力でぶつかり合うまで、あとわずか。

 

 

 


 

 

 

「コスモスの奴、限定的とはいえ封印まで解きやがったか……今回はいよいよヤバいか……」

 

ある場所で。

星の賢者第一席と称される女は、火のついた煙草を手に、独り言ちる。

 

「バチカルとエーイーリーは埋まった。シェリダーは見当たらないが……気配は感じる。どこぞで力を蓄えてんだろう。アディシェスは一旦良いとして、アクゼリュス、カイツール、ツァーカブはまだ産まれてない。ケムダーはそろそろ産まれそうな気配がするが……イーアツブスとキムラヌートは相変わらずだな。良い感じに調伏してくれると助かるんだが……最悪は私が出張らねばならんな。全く、恨むぞバチカルの小娘。コスモスをその気にさせやがって……その後始末は誰がすると思ってるんだ……どうせ丸投げなのだろうが」

 

口から紫煙を吐き出し、星呑の賢者は空を仰ぐ。

開戦は日の高い時間。

されど、見上げた先は、夜の帳に満ちている。

それもそうか。

そこは、異界なのだから。

 

「コスモスが抜けて、八芒封印も緩んでる、か。まあ当然だな。あのバカはコスモスの離反を考えてなかった。だから私とシエル、そしてコスモスに、封印の大部分を……はぁ……このやるせない怒りをどこに向ければいいんだろうな、私は」

 

そこは、星の賢者でも、一部の人間しか入れない禁所。

第三席までしか知らない、秘密の場所。

五千年前の因縁の、爆心地。

 

「まあ、それもこれもお前の独断のせいなんだが」

 

異界から、ベトミナとタンナの間で発生した凶悪な波動を感じ取りながら、今は眠っている男に、賢者は告げる。

 

「全部終わったら、()()()()()()()()言い訳だけは聞いてやるよ。終身刑なのは変わらんがな」




・第一席
最強で無敵の胃痛ポジ。
あらゆるとばっちりを無敵の超パワーで何とか処理している。
シエルは間抜けだし、コスモスは離反するし、コスモスの離反の理由で全部自分のせいにされてるし、なんかぽっと出の女がコスモスをその気にさせたし。
でも最強で無敵の大人なので何とか処理している。
そのうち爆発するが、いっそのこと爆発したほうがましかもしれない。

余談だが別にシオンたちが負けても第一席的には不都合は無い。
国の存続ではなく世界の存続に重きを置いているので、レオナがただの破壊者ではなさそうだと判明した時点で優先順位はかなり下がってたりする。
ベトミナまで滅びたところで、コスモスがそもそも離反してるから、そこ抑えても意味ないし……。

Q:じゃあなんで派遣したの?
A:国民感情とかの都合と、シオンに対賢者クラスの集団戦における実戦経験を積ませるため。

Q:もしかしてロクデナシの類ですか?
A:大事なこと以外は割と切り捨てがちなロクデナシです。
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