Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
私はすり抜けで符玄きました、うぉぉぉぉん!!
タンナ防衛戦の一日目が終わり、会議室としている部屋で、私達は集まっていました。
初日の感触を確かめ合うためにです。
「首尾よく初日決着とはいきませんでしたね。イレギュラーも多くはありましたが」
「まあまあ、うまくいけばいいなって感じだったじゃないっすか。ウチ的にはオッケーっす!」
手作りのお菓子をつまみながら、私は所感を述べます。
ミカさんと接敵するのは想定内だったんですよ。
不意打ちを喰らうのは想定外でした。
その上、援軍として賢者がどっちも一緒に来ることは予想していませんでした。
てっきり本隊の方にどっちかは残るものかと。
「……順調にいけば、三日後にはここから見える範囲にまで進軍してくると思う」
「なら妨害は差し向けて時間を稼ぎましょう。コスモスさん、アレの調整は終わりそうですか?」
「……三日あればなんとか。妨害の成果次第では万全」
朗報ですね。
アレさえ完成してしまえば、雑兵など一網打尽です。
今回出向いて来てる賢者では、対応も難しいでしょう。
あとは残った高級ユニットをチクチク虐めるだけです。
「なんとしても妨害に励まなければなりませんね。イーティさん、動けそうですか?」
「はいっす。このイベント……攻防戦の間はバリバリ動けるっすよ!!」
「ありがとうございます。では、ここから数日間は妨害行動に全力を尽くします。アイン、貴女もそのつもりで指揮してください」
「御意」
では、溜まりに溜まっている
そう言えば、初日に召喚したあの子も召喚したいですね。
今なら十全に支配下に置けそうですし、私の乗騎としてもちょうど良いでしょう。
それはそれとして、です。
「そう言えばですが、少し趣が変わりましたね、コスモスさん」
「……うん。封印してた力、かな」
コスモスさんの姿が、変わっていました。
右腕に蛇の文様が現れたり、黒い翼が生えたりと、全体的に黒が増しましたね。
まるで堕ちて来た天使のような……。
「そう言えばコスモスさん、無情とか言ってたっすね」
「ふむ。そういうことですか」
「……そういうこと」
「まあ深くは追及しませんよ。私とコスモスさんは今、対等な盟友ですからね」
「……ん」
大体封印の中身が把握できました。
封印の中身を考慮したら第三席で止まってるのは割とおかしいというか、第一第二席次の方々の本来の実力がうかがえますね。
まあ、第二席の方は今こちらで動力になっているんですが。
「では、私は妨害の準備をしますのでこれで」
「了解っす。ウチも準備するっすね」
「……ん、私は作業してるね。これを見張らないといけないし、一応」
『これとか言うの酷いよコスモスちゃん……』
でももうお人形なのですよね。
コスモスさんが抱きかかえると愛らしさが増しますね。
何となくコスモスさんの頭を撫でたくなったので撫でて……
「……レオナ、私は子供じゃないのだけど」
「すみません、つい」
ちょっと怒られてから部屋を出ました。
向かう先は、タンナ中央の広場。
ここならば、大きな眷属を召喚しても問題はないでしょう。
「さぁ、あれからひと月。今こそ貴方を私の従者として迎え入れましょう。私の乗騎、《ボーンドラゴン》、改め」
溜まりに溜まったリソースを吐き出し、初日のあの時、一時的に呼び出した眷属を召喚、創り出します。
足りなかった部分を入念に埋めて、骨だけではなく肉も付けて。
「《ネクロスドラゴン》」
『死霊術によって生み出された竜種』と言う意味を持つらしい、その名を呼びます。
アンデッド扱いではないらしいのがボーンドラゴンとの最大の差別点ですね。
『GrrrrrooooOOOOOOO!!』
「久しいですね。お元気でしたか?」
『Grr……Gr!』
「それは何よりです。さて、此度ですが、正式に貴方を従者として迎え入れたいと思います。異論はございますか?」
『GrrR!!』
「ふふ、私も楽しみにしていました。これからよろしくお願いしますね。名前は……ネロとしましょう」
『GrrrraaAA!!』
さて、ネロを呼び出したことでかなりの資材と言うか死体が消えましたが、戦力増強としては十分です。
雑兵にネロを倒し切るだけの力はありませんし、倒し切れたとしてもネロは私の眷属なので復活します。
賢者が迎撃に出るでしょうが、私も含めた戦闘の余波で留まらざるを得ないでしょう。
この勝負、私の勝ちです。
「早速ですが、初陣と参りましょうか。つかぬことを聞きますが、戦闘はお好きですか?」
『GRRR!!』
「奇遇ですね、私もです」
楽しい戦闘になると良いですね。
「してやられたじゃんね」
「思いっきり遅延行動に出るとはな」
「おかげで経験値は稼げたけどさあ」
「何か準備してますよって言われてるようなものなんだよなあ」
「でもだからっていきなりボスクラスのドラゴンを産み出してぶつけてくるのは違うと思うの」
あれから五日ほど。
侵攻は思うように進まず、レオナが投入した新戦力と、仕掛けられた罠の数々によって、タンナが見える地点まであと少しというところまでしか進んでいない。
妨害がなければ三日ほどでたどり着いた道程が、だ。
しかし仕方がない部分もある。
エーイーリーの能力が判明し、蟲相手には防戦寄りに戦っていたこと。
レオナが新しく連れてきたドラゴンに、戦力の中核を割かざるを得なくなったこと。
そもそもレオナが嬉々としてドラゴンや蟲と共に前線に突撃してくること。
タンナからの砲撃も激しくなっていること。
それらの理由が複合的に合わさり、この道程はここまで遅延させられた。
レオナの楽しそうな笑い声が恨めしいと零したのは誰だったか。
きっとピンク頭の天使に違いない。
「で、どうするわけよ。流石に防衛設備万全にされました!!とかだったらお手上げだけど」
それはそれとして、プレイヤー達は頭を悩ませていた。
防衛設備を万全にされる。
これが意味するところは、ただでさえ消費させられた時間を、完全に使い切るということを意味する。
元から時間という区切りを設けられており、その時間以内に攻略できるかどうかがこのイベントの成否なのだ。
このままでは、間違いなく勝てない。
そう考えたプレイヤー達は、どうにか突破口を開けないかと模索する。
「異邦人の皆様方。当方より提案があります」
そこへ、シヅリ=アレインからの提案があった。
「これでは間に合わないことは確実でありますから、司令部に掛け合い、賭けに出ようと思います。つきましては、異邦人の中でも選りすぐりの戦力がついてきてくださると助かります」
賭けに出る。
もはやそれしかない。
シヅリも同じ思いだったようで、計画を話す。
「シオン殿の極大魔法の《連射》によって、敵の防備を貫き、立て直すまでの間隙を突いて、タンナまで突入します。この連射はそう長い時間可能なモノではありませんし、何度も使える手ではありません。なので一度きりの作戦です。いかがでしょうか」
この距離まで詰めることができたからこその提案。
相手の思惑を上回る急襲による電撃作戦で、勝利を掴もうというところ。
プレイヤー達は乗った。
一も二もない。
やらねば負ける、それだけだ。
「では選出をお願いします。明日、進軍開始と同時に決行します」
そして、ここで防ぎ切らなければ負ける。
レオナ達がそれを確信していたのも、また事実だった。