Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
別の作品描いてたりゲームしてたりモチベが消し飛んだり入院してたりしました。
入院以外言い訳はしません。
「……ほぼ、間違いなく、確実に。時間がないから、強引な手を使って来るはず」
最終日。
最後のブリーフィングで、コスモスさんはそう言い放ちました。
私も同意見です。
「具体的にはどんなもんっすか?」
「……相手にシオンがいることを考えると、極大魔法の連射かな。多分、何発かは外壁で受けることになりそう」
「耐えきれそうですか?」
「……壁に穴が開く程度で済めば良い方かも」
このタンナの外壁は、そう頑丈なものではありません。
正確にいえば、極大魔法を何発も受けられるようにはできていないのです。
極大魔法は、端的にいえば地形が変わる魔法です。
そんな威力のモノを何発も受け止められる前提の壁の方がおかしいでしょう。
基本的に防御力は攻撃力に対して、インフレレースで劣るのですから。
「であれば、迎撃以外にありませんね」
「……アレの用意はできてる、いつでも行ける」
「それは重畳。であるのならば、私も遠慮なく出撃できるというものです」
「そういえば今更なんすけど、アレってなんすか?」
「まだ説明していませんでしたね。簡単に言えば最終兵器、盤面をひっくり返す切り札といったところでしょうか」
無論、対抗策は用意してあります。
魔王らしいものを、ですが。
私とコスモスさんが『アレ』と呼ぶもの。
「この街を陥落させたときに、領主が使ったものがありまして。それを我々にも転用できないかと」
「ほえー……」
「ということを相談したら、コスモスさんができると言ったので、やってもらいました」
「コスモスさんスゲー!!」
「……ふふん」
「というわけで、切り札としてこちらの陣営に強力な支援効果の付与が期待できます。楽しみですね」
そう。
私がタンナを墜としたときに使われた、無法なバフ。
アレをどうにか再現ないしはカスタムして流用したものが『アレ』です。
使えるなら使いたいですよね。
というか魔王の拠点なのですからそれくらいはあって然るべきでしょう。
「ともあれ、外壁の破壊程度なら許容範囲としましょう。内部への致命的な被害が出なければ良し、最悪撃退できれば良いものとし、それを前提に相手の突破口を塞ぎます」
『シオンちゃん泣いちゃうよ、やめたげてよぉ』
「泣いて解決するなら泣けばよろしいでしょう」
『無慈悲だぁ』
そもそも泣き疲れて眠り、間抜けにも捕まったのは貴女ですよね、シエルさん?
「さて、そろそろ最後の戦いです。コスモスさん、後ろは任せました」
「……ん」
では、参りましょう。
タンナ陥落を一歩目とするのならば。
このタンナ防衛戦を二歩目としましょう。
「聳え立て、咎の導。此なるは骸で築く神の塔。怨嗟とともに産声を挙げろ!!《
外壁に立ち、私が持てる、最大の防御魔法を発動します。
祭壇を用い、贄を捧げ、膨大なMPを注ぎ込んで、それは聳え立ちます。
天高く、そしてタンナの街の外周よりも幅広く。
堅牢な楯として、この塔はここに在ります。
既に相手は発射寸前のはずです。
突如として出現したこれを迂回することは難しいでしょう。
ですが悲しいことに、極大魔法の連射を全て受け止めるだけの力はありません。
せいぜいが被害を少し抑える程度です。
腐っても上位戦闘力を保有するNPC、攻撃力という観点で見れば私はまだまだ及びませんので。
それでも、やらないよりはマシですのでやります。
外壁が壊れるのと、外壁の内部も壊れるのでは、天と地の差がありますからね。
「さ、て……どこまで耐えられるでしょうかね」
極大魔法。
それは、地形すら変えてしまう、超威力の魔法。
当然のことながら、消費MPは膨大という言葉すら温いほどの量であり、それを連射するというのですから、その凄まじさは語るまでもありません。
一般的な魔法使い系プレイヤーの20倍を誇る、今の私のMPを以てして、3発撃てれば御の字と言ったところ。
まあ尤も、極大魔法など、本来現時点では必要無いのですが。
コスモスさんの予想では、どんなに多くとも12連射。
それ以上はシオン=ジニアスの限界を超えることになるそうです。
コスモスさん曰く、この奪還戦は民衆へのパフォーマンスである可能性が高いらしく、第一席が指示を出しているのならば、無理はしないはずとのこと。
であれば、3~5発は外壁で受けられればいいと言ったところ。
それくらいであるのならば、まあ、なんとか、ギリギリ、苦しいですが。
なんとかしましょう。
これくらいできなくては、何が魔王だという話です。
「さて、来ましたか」
彼方より訪れる、12の極光。
コスモスさんの予想通りですね。
さて、《万魔の屍塔》でどれほど防げるか。
効果のしょっぱいMP回復ポーションをがぶ飲みですよ、全く。
―――――――!!!
音にならない音が、この地を揺らします。
ひとつ、ふたつ、みっつ……マズいですね、6発耐えられるでしょうか。
なんとか7くらいまでは耐えたいところですが……。
――パキリ
ダメそうですね。
ですがまあ、6発は耐えました。
7発目は耐えきれず、外壁に直撃するでしょう。
コスモスさんが頑張って防御してくれるとは思いますが……内部へのダメージは避けられないでしょうね。
そうなると、迎撃にも影響が出るのですが……。
「任せてくださいっす」
「イーティさん?」
そんな事を考えていると、イーティさんが前に出てきました。
事前の打ち合わせの予定にはないはずですが……。
「我が冠名は《愚鈍》なり」
おや?
愚鈍、つまるところエーイーリーが冠する概念ですが……。
「我が名はイーティ。
異邦より来たりし運命を伴い、この地に我が意を示す。
我は咎人。
《愚鈍》を冠する第二の玉座。
果てなき暴食の果てに、世界よ滅べ……なんて。
全部喰らいつくすっす!!
《
塔の裏側から、イーティさんが大技を放ちました。
当然、私の塔が耐えられるはずもなく。
呆気なく崩れ去った塔の向こう側の攻撃とぶつかり合い、相殺していきます。
いえ、これは相殺ではなく……。
「食らっている?」
「正解っす。とはいえ、食べきれる量じゃないっすね!!受けられるだけ受けたら、抱え込んで敵陣で自爆するっす!!」
「それは……」
「切り札の詳細、聞いたっす。発動すれば即復帰できる、そうっすよね?」
「ええ」
「なら、今はちょっと苦しくなるっすけど、あとで巻き返せるっす、多分!!」
「……感謝します。我々の勝利のために、死んでください」
「美味しいごはんを報酬に求めるっす!!」
「当然です」
イーティさんが足りなかった分の防御を補い、外壁に許容範囲内のダメージを受け、当初の予定通りに事は進みます。
得難い仲間が来てくれましたね、本当に。
「コスモスさん、準備をお願いします。ネロ、出番ですよ」
『GrrrraaAA!!』
あれだけ派手な攻撃をしたのです。
本命は少数精鋭による侵入、及び首級の確保。
であれば。
「私はここにいますよ。コソコソとしていないで出てきたらどうですか?」
そう声をかければ、見覚えのある顔が続々と出てきますね。
知らない顔もいますが。
なんか天使っぽい方もいますね。
ミカさんと同類の勇者でしょうか。
ミカさんほどの腕前とは言いませんが、それに準ずる力はあって欲しいですね。
「やろっか、レオナ!」
楽しい楽しいレイドの時間です。