Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
……。
我ながら激情に駆られて動きすぎましたね。
反省しなくては。
待たせた上に何も言わず配慮してくださるのですから、より一層、全力でお相手しなくては失礼というもの。
幸いにして、先ほど伝えたものが、無事実行に移されました。
ですので、状況は未だ五分と言えます。
「ねえ、レオナ。もしかしてMP、魔力がないんじゃない?」
「ふふ、どうでしょうね」
「誤魔化すなんてらしくないね。いつものレオナなら、自信満々に否定するところだと思ったんだけど」
誤魔化せませんよね。
ですが問題ありません。
「ええ、ええ。確かに、今の私には私を支える魔力が空です。ですが、魔力がない程度、もはや何の障害にもなり得ません。場は整いました、私の、私たちの勝利です」
「へぇ?まだまだこれからだってのに?」
「ええ、勝利を確信しています」
なぜなら、伝言が果たされたということは。
「お待たせしました、陛下。第一騎士団、現着いたしました」
「呼ばれて飛び出てウチも参上!イーティさんっすよ~!!」
アインがこちらに到着し、なおかつイーティさんも即時の復活を果たすということです。
「なっ、あと40分は復帰できないはずじゃ……!」
「さっきデスペナが全部なくなったっす!しかもステータスも上がってるっす!」
「まさか……」
おや、賢者の方はすぐに分かったようですね。
「領主の権能を奪ったというのですか!!守護に充てられるべき力を!!」
「この領地を手にしたのは私たちです。どう扱おうが勝手でしょう。使えるものは使いますとも、有効的に」
イーティさんの物量が復活し、私を守る騎士団が到着し、私もまた強化されて陥落することはない。
ええ、ええ。
「改めて宣言しましょう。我が軍の勝利です」
フラグ?
知りませんね。
勝利は揺るぎません。
決して。
「あと1日。たったそれだけ早く到着すれば、もう少し結果は異なったかもしれません。ですが、その1日を詰め切れなかった。それが貴方がたの敗因です」
重ねて言うのであれば、外壁を突破しきれなかったのも、敗因でしょう。
もし、もしシオン=ジニアスにまだ余力があれば。
まだ異なる景色も……いえ、待ってください。
「ミネ!!コスモスさんに今すぐ防御をと!!」
ミネに緊急伝達を頼みます。
私なら、これが私なら。
穿つならば今です。
――ドガァァァァァンン!!
刹那。
瞬時に展開された防御壁と、秘されていた最後の一撃がぶつかり合います。
私が防いだ連射とは比較にならないほどの、渾身の一撃。
すべてはこの一瞬のために……?!
コスモスさんも途中で気付いたのでしょう。
恐らくミネが到着する前に障壁が展開されました。
しかし、それすら加味した威力の、凄まじい威力の一撃が襲い掛かります。
余波で吹き飛びそうです。
正に乾坤一擲、予想に反して絞り出してきましたね。
「……やってくれましたね。流石と褒めておきましょう」
「被害を抑えておいてよく言うよ」
被害は大きく、対地砲は壊滅。
あとはもう、白兵戦で決着をつけるほかないようです。
「《バチカル》」
「《バシリカ》ぁ!」
「《ウーリア》ッ!」
呟くのは同時。
10分間の蹂躙を始めましょう。
「《
「ちょ、いきなり?!」
「うぉあ!?」
まずは一撃。
初手で繰り出す大技で、ひとまず面倒な勇者を追い払います。
勇者の相手は後ででいい。
イーティさんがこちらに控えている以上、数の暴力はこちらに利があります。
対地砲が壊滅したことで、コスモスさんも動くはずです。
賢者の対処は次点。
まずは有力なプレイヤーを潰します。
「ネロ!!」
『GrrrrrroooaaaaaaAAAA!!』
ネロにミカさんたち勇者や賢者の牽制を任せ、タンナ組と称されるプレイヤー陣に突撃します。
私は一騎打ちが好きですが、乱戦も嫌いではありません。
「くそ、そう来るかよ!!」
「飛んでんじゃねえぞコラァ!!」
「三次元機動で狂わされるっ!」
「ミシェルちゃんの障壁ステップ真似されてる!!」
タンクに囲まれようがアタッカーが急襲してこようが構いません。
空は私のものですから。
やっと少し回復したMPをまた消費して、魔法を一つ。
「《クレド》」
ーーBooooomb!!
無差別周囲爆破で一気に片付けます。
魔法耐性が低い方は消し飛びましたね。
そうでなくとも大ダメージ、壊滅的被害と言っていいでしょう。
ヒーラーは遠かったので比較的被害が少ないですね。
放っておけば立て直されてしまいますが、さすがにこれ以上は放っておいてはくれません。
賢者ともう一人の勇者にネロの対応を任せたミカさんが突っ込んできました。
「あなたの相手は私じゃんね、レオナ!!」
「もうしばし待っていただけると幸いですが」
「させないよ!!」
跳躍からの大上段。
ミカさんの大剣が私の脳天をカチ割りに来ています。
殺意が高いことで何より。
見え見えの攻撃、最小限の動きで避けるのは容易いことですが、ミカさんがそんな愚を犯すとは思えません。
あえて跳躍して大きく回避し、様子を見ます。
「《
なるほど。
直前での発動。
私が大きく避けてなお、地面を叩き付けた余波で、揺れを感じるほどの威力。
地に足をつけていたら足を取られていましたね。
翼があるので、足を取られても立て直せますが、それは致命的な隙となったことでしょう。
ただでさえMPがないのです。
一挙手一投足に意識を向けるべきですね。
「ですが」
身体能力は大きく私が上回ります。
今この瞬間だけは、速度も膂力も私が上。
つまるところは。
――ガキン!
左腕の籠手を用いて、ミカさんの追撃をいなします。
本来なら力負けして不完全ないなしですが、今は膂力も上回っているため、隙を晒すのはあちらです。
その間、右手に握るレイピアを引き絞り、ミカさんめがけて穿ちます。
「っ、のぉ!!」
しかし、さすがというべきでしょうか。
素晴らしい反応速度で回避を行い、ミカさんは距離を取りました。
私が今、魔法という武器を積極的に使えないために、追撃することもままなりません。
もどかしいですね。
「ふんふん。なるほど。やっぱり、今しかないね」
「なにがですか?」
「キミを倒すタイミング」
「さようですか」
確かに、現時点では絶好のタイミングでしょう。
今を逃せば、私はさらに強くなり、手に負えなくなる。
配下が稼いでくれる分も合わせて、私の経験値効率は他のプレイヤーを圧倒します。
そして、もともとステータスの絶対値が高い。
まあ、前提としてとても上がりにくいレベルではあるのですが……。
しかし、この先何度でも私を倒すタイミングなど訪れるはずです。
その全てを撥ね退ける所存ではありますが、人の力とは、その数と知恵です。
対して、こちらは少数精鋭。
数の暴力や、思いもよらぬ奇策で敗北を喫することもありましょう。
なにも今しかない、ということはないのです。
そして、譲るつもりはありません。
最後の、最後になるまで。
「果ての果てで、私を超えて見せてください、ミカさん。私はその時を待っています」
「今すぐ引きずりおろしてあげるよ!!」
威勢はいいですね。
尤も、私の勝利は揺るぎませんが。
レオナが頑張ってる。
私の予想が半端だったばっかりに、内部までやられた。
それでも、レオナは跳ね返している。
レオナを選んでよかった。
私の想定を、軽々と超えてくれる。
もう、御せるなんて思ってない。
対等以上の存在。
だからこそ、私も後ろでこそこそし続けるわけにはいかない。
たとえ、マオが出張ってきたとしても。
絶対にやり遂げて見せる。
「……シエル、おとなしくしててね」
『保証はしかねるよ』
「……知ってる」
ラーナーとシヅリ。
目下問題なのはこの二人。
シオンはもう動けない、今度こそ。
そして、どちらがより厄介かと言われれば、ラーナーだ。
戦場の中での対策に限れば、手段はない。
けれど、戦場の外に飛ばせばいいだけのことだ。
ラーナーを捕捉、逃げられないように拘束術式を展開。
転移術式を叩き付けて、大陸北端まで弾き飛ばす。
術式構築速度で私に勝てる賢者はいない。
私が第三席に就いていたのは、ひとえに手札を運用する上での構築速度故だ。
たとえマオが相手でも、不意打ちであれば一方的に術式を叩き付けることくらいできる。
「……じゃあね。あとはシヅリだけど……」
対空砲も対地砲も使わなくていいのなら、私は別のことができる。
戦場の呪詛を強制的に浄化。
呪いが集まらなければシヅリは強いだけの魔法戦士でしかない。
その程度であれば、レオナのペットで事足りる。
イーティとアインも小粒に対してよく働いてくれている。
戦況は圧倒的な優勢に傾いた。
あとはミスや奇襲に注意するだけ。
『……ねえ、コスモスちゃん。本気なのはわかってる。わかってるけどさ。私はやっぱり、今の世界を壊すのは反対だよ』
「……どうでもいい。メビウスがいない世界なんて」
『……そ、っか』
「でも」
『?』
「レオナだけは、どうでもよくない。たとえ私の夢が潰えたとしても、あの子の夢だけは、壊させない」
『……なんでさ』
「あの子は私のために怒ってくれた、私を案じてくれた。私の打算を知ったうえで受け入れてくれた。だからそれに報いる。それだけ」
『……ほんっと、昔から変わらないね』
「……なにが?」
『悪い人に惹かれやすいとこ』
「うるさい」
『そげぶっ』
うるさいマスコット人形は黙らせた。
あとは万が一にも負けないように注意を払う。
これは、レオナの一歩であると同時に、私の一歩でもあるのだから。
「……《
こんなところで敗北なんて、させてやらない。
おや?
突然MPが回復しましたね。
いえ、これは回復というよりも、何か書き替えられたようで。
譲渡、もしくは共有でしょうか。
おそらくは後者でしょう。
私の知る私のMP最大値と数値が大きく異なります。
バカみたいに多いですね。
と、なれば。
「《クレド・マグナ》」
「えっ!?」
空へ飛びあがり、魔法を連打します。
卑怯?勝てばよかろうなのです。
「さすがはコスモスさんです。私の期待に応えてくれます。私のやりたいことを、的確に汲んでくれます。よく見てみれば、賢者たちも無力化されているようで。ふふ、やるべきことをわかっていますね」
「うそーん!」
「ですので、おとなしく負けてくださいな、ミカさん」
「くっ、これで終わりと思わないことじゃんね!!覚えてろ~~!!」
有り余るMPで魔法をありったけ叩き付け、ミカさんを含めた殲滅を完了。
バチカルの残り時間的に、あまり戦線に残るのは得策ではありませんね。
アインとイーティさんに任せて、裏方に回りましょう。
今回手に入れた
「ただいま戻りました、コスモスさん。先ほどのはコスモスさんが?」
「……うん。うまく殲滅したようでなにより」
本拠地に戻ると、コスモスさんはなにやら忙しそうにしていました。
賢者を完封した上で自ら砲撃してますね。
「忙しそうですね」
「……これくらいは、朝飯前。レオナが頑張ってくれたから、余裕がある」
「そういうコトにしておきましょう」
「ホントなのに……」
私はそこまで自惚れてはいませんよ。
今回、事が上手く運んだ大きな要因はコスモスさんの存在ですから。
コスモスさんがいなければ、あらゆることが上手く運びませんでした。
おかげでコスモスさんに回す仕事ばかり増えて申し訳ない気持ちです。
「私はしばらく動けません。コスモスさん、お願いしますね」
「……ん、任せて」
今回は勝利しました。
それはゆるぎない事実です。
ですが反省すべき点もありますし、何もかもが思い通りというわけではありませんでした。
まだまだ、気を引き締めましょう。