Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
シングルタスクの作者です。
ひと段落したのでこちらも書いていきます。
頭痛が痛い。
そう表現したくなるような案件です。
まさかミカさんがこちらにやって来るとは……。
いえ、イーティさん曰く、クエスト目標がこちらにあるというのであれば、いずれは直面した問題でしょう。
今来るか後で来るかの差でしかありませんから。
それよりも、一番の問題は。
「泊めて欲しいって思ったりするわけじゃんね」
「……」
なぜこうも能天気なのでしょう。
一応敵同士なのですが?
「あと手料理が食べたい!!」
この前殺し合った仲ですよね?
ミカさんどういう神経してるんですか?
まあゲームだからというのもあるでしょうがこう、多少は気まずいとかありませんか?
私はあります。
「……ミカさんがそれでよいというのであれば、やぶさかではありませんが」
「やったじゃんね」
なし崩し的に城に泊めることになりました。
何故こうも断りにくいのでしょうか。
悪意が欠片も感じられないからでしょうか……毒気を抜かれると言いますか。
まあ良いでしょう。
寛容さを見せるのも、時として必要でしょう。
「何か問題を起こせばつまみ出します。私が直々に、です」
「わかってるって。郷に入っては郷に従えって言うしね」
「さようですか」
全く。
こちらもさして暇ではないのですけどね。
経験値を稼ぐために経験値が必要なのです。
分かりますかこの負の連鎖が。
しかし峠を越えてしまいさえすれば……。
……そういえば今、弱体化してますね、私。
転生したので。
……。
…………冷や汗というものをゲームの中でも体験するとは思いませんでした。
コスモスさんに守ってもらうしか……。
なんたる不覚でしょう。
「滞在予定は決まっていますか?」
「一週間くらいかな。それくらいあれば終わるし」
「一応、アインと共に行動するよう心掛けていただけると幸いです。私はミカさんを好敵手として快く思っていますが、敵同士ですので」
「わかったよぅ……お堅いなあ、レオナは」
「ミカさんが緩いのですよ」
はぁ。
とりあえず何かお菓子でも作りましょうか。
おやつ時ですしね。
イーティさんは相変わらず何かしら頬張っていますが、それはそれ。
ホットケーキでも作りますか。
この世界にホットケーキミックスなんて便利なものはありませんので、小麦粉からですが。
「ひとまず、ホットケーキなどいかがでしょう。急な来訪ですので、手の込んだものは作れませんし」
「手の込んだものも食べたーい」
「また後日」
「やったー!!」
手のかかる妹を持ったような気分です。
いえ、私は一人っ子なのですが。
「飲み物はどうしますか?」
「ホットミルクで」
「ウチも同じので」
「分かりました」
この世界にファンタジー製コンロがあって助かりました。
さしもの私も、原始的な火加減を調整しながら調理する腕前はありませんので。
現代っ子の悲しい所ですね……。
「……レオナ、私も」
「おや、コスモスさん。珍しいですね」
「……《焔剣の勇者》が懐まで入って来たら、多少は気になる」
「あ、初めまして。ミシェルです。お邪魔してまーす」
厨房でホットケーキを作っていると、コスモスさんが下りてきました。
今日もふよふよと浮かんで移動していますね。
いつもはホットケーキくらいでは下りてこないのですが、ミカさんが来たのを察したようで。
警戒しながら厨房に入ってきています。
「……一応聞くけど、敵だよね?」
「それはそれ、これはこれ。私は
「勇者としてそれはどうなの?」
「剥奪されたらされたでその時だよ。私は私のやりたいことを変えるつもりはないじゃんね。戦って、美味しいもの食べて、旅の行く先々で友達作って、時には敵対して。そういうのって、とっても素敵じゃない?」
「……レオナ、この子まぶしい」
「諦めてください。正直その場にいるだけで傷を負っているかのように錯覚します」
正直、違和感が無いのですよね、共に食卓を囲んでも。
彼女の人徳がなせる業なのでしょうか。
ある種のカリスマ。
とはいえ、私の求めるものではありませんが。
「お待たせしました。味付けなどはお好みでどうぞ」
「えへへ、この瞬間を待ってたんだ~~!!」
「あ、ウチにはあと5枚欲しいっす!!」
「もちろん、用意してありますよ」
「やったっす!!」
「……レオナ、認めた方がいい。もうお母さん」
「馬鹿なこと言わないでくださいコスモスさん。こんな手のかかる娘を3人も持った覚えはありません」
「……まって?今、私のことも手のかかる娘判定した?」
ノーコメントで。
「ん!うま!美味しいよレオナ!なんで店出さないの!?」
「そんな暇ないからですね」
「もったいないよ~、天下取れるよ~~」
「やりません。老後にでも考えておきます」
「レオナの老後っていつ!?」
気に入ってくれたようで何よりですが、私の目的は変わってませんからね。
世界に君臨する巨悪として討たれる、それだけです。
「私が私として敗北した時、そこから先の私の人生は全て余生に成り果てるでしょう。精々足掻いてください、勇者」
「ようはぶっ飛ばせってコト?しかたない、がんばるしかないじゃんね」
特に期待しているんですよ、ミカさんには。
私を討ち取りうる勇者として。
いずれは全てをぶつけ合いましょう。
今はその時ではありませんが。
「そーいえばさ」
「なんでしょう」
「レオナから見て私以外の勇者ってどうなの?」
「ミカさんに比べれば路端の石ですが……」
「え、ウリさんもなの?あ、えっと、斧使ってる勇者!」
「……あの方は除きましょう。技量は目を瞠るものがありました。他の二人は現状論外です。あの日、この地でやり合った勇士たちの方がよほど手強いでしょう」
それを考えれば、やはり今のところ、一番滾った戦いは初日でしたね。
イニシアチブをとるかとられるかの大勝負でした。
あの日の勝利があってこそ、今の私があると考えれば、最も重要な戦いだったとも言えます。
「予想通り過ぎて憐れみを禁じ得ない。コスモスちゃんはどう思ってるの?」
「……別に。今の異邦人は私の敵じゃない。それはあなたが相手でも変わらない」
「あちゃー……やっぱり賢者って言ってもピンキリ?」
「……だてに長生きはしてない」
「え、コスモスちゃん何歳なの!?」
「最低でも5000年は生きているようですよ」
「おばあちゃんじゃん!?」
「……その口縫い合わされたい?」
「あ、はい、ごめんなさい」
中身幼女ですけどね……。
おや、コスモスさん。
なぜ今私に脛蹴りを?
口では何も言っていませんが。
「ふふっ」
「なんですか」
「いや、仲いいんだなって」
「……別に」
「劣悪な関係性のまま協力関係を結んでも実にはならないでしょう。関係性が良好であることは前提です」
全く。
何を当たり前のことを……。
関係値は良好であればあるほどいいでしょうに。
「ねえねえ、コスモスちゃん。レオナってもしかしてクソボケなのかな」
「……レオナは基本的に目的以外のことには頓着しない。今回のもそう」
「いつか刺されそうだね、キミのビジネスパートナー」
「……私もそう思う」
なんですか、こそこそと。
気づかぬうちに打ち解けたようで。
その点イーティさんは変わりありませんね。
おかわりはいりますか?まだありますよ。
「そういえばレオナさぁ、国まで作っちゃって、どこ行こうとしてるの?」
「立場を分かり易くしたまでのことですよ。私の国が世界を飲み込めば飲み込むほど、人々は私へと向かってくるでしょう?」
「あー、そういう?」
「私は人類の、ひいては世界への敵対者です。そういう役割ですし、私も望んでやっていることですから」
「え~、私は仲良くした~い」
「今の時点ですでに馴れ馴れしいですよ」
「言い方ひどくない?」
およそ敵同士とは思えない態度ですからね。
いいですか?
私とミカさんは、お互いに敵対勢力の特記戦力なのですよ?
だというのに敵地で寝泊まりを要求し、そのうえ手料理までねだるとは……。
「でも、そう言う割には問答無用ってわけじゃないし、国まで作っちゃって秩序は保つんだね」
「それが何か?」
「根っこはいい子なんじゃない?って思いたいだけ~」
「戯言ですね……私以外が生み出す無秩序な喧噪を好まないだけですよ」
どちらかといえば私は計画を立ててその通りに動くことを好みます。
その結果として秩序が崩壊する分には構いませんが、計画外の混沌はあまり好みではありません。
アドリブでそれを乗り越えてこその巨悪でしょうが、生憎と私の得意分野ではないのです。
一流のフィクサーとしては、変数は少ないほうがいいでしょうしね。
「そーいえばカジノあるらしいじゃん」
「そうですね。まだ充実しているとは言い難いですが」
「このあと足を運んでみようかな~」
「お好きにどうぞ。あまりに荒稼ぎするようでしたら締め出しますが」
「え~、だめ?」
「公共事業なので資金を絞られると困るのですよね……」
「すごい切実な声が聞こえた……」
というより稼げる前提なのでしょうね。
怖ろしいことです。
これがリアルラック強者ですか、私も人のことを言えませんが。
「陛下、ご歓談中申し訳ありません。水面月姫様がいらっしゃいました」
そうして雑談していると、アインが来客を知らせてきました。
水面月姫さんですか、アポなしで来るとは珍しいですね。
「そのままこちらへ通してください。私は追加を焼きます」
「承りました」
緊急性が高いか、ただ単に遊びに来たか。
いずれにせよ、渋って良いことはないでしょう。
「ねえねえレオナ、ミナモノツキ?って人は誰?」
「商談相手ですよ。詳しくは本人から聞くと良いでしょう」
「商談相手……?え、まさかモールのオーナー……!?」
さすが、察しの良いミカさんです。
失礼のないようにお願い致しますね?
さて、イーティさんが多く食べることを見越して多く生地を作っておいてよかったですね。
焼き上げながら飲み物も用意しましょう。
水面月姫さんは確かコーヒーを好んでいましたね。
「やっほー!突然だけどお邪魔するYO!」
「珍しいですね、先触れもなく来るのは」
「ちょちょっと緊急でね」
「あー、それ部外者の私がいて良いやつ?」
「むしろ当事者だねぇ、ミシェル=ユスティーナちゃん!手間が省けて助かったぜ!」
「うそーん」
おや。
私にもミカさんにも関係があり、尚且つ緊急性があるとは。
ちょっと想像がつきませんね。
「キミさあ、もうちょっとホウレンソウしっかりしたほうがいいと思うよ」
「え?」
「勇者ちゃんがレオナ陣営についたかもってすっごい話題になってる」
「エッ!?」
……ミカさん?
「……てへ☆」
「アイン、今すぐこの馬鹿勇者をつまみ出してください」
「御意」
「待って待って待ってよぉ!!私プレイヤーだから連絡なんて気軽に取れるからぁ!!」
「ミシェルちゃんってもしかしてポンの子っすか?」
「……はぁ」
ただでさえ
・ポンコツミシェル
トッププレイヤーはどこか抜けているのがデフォなのか報連相を見事に忘れ去りレオナのもとへやってきたお馬鹿さん。
このあと連絡して騒ぎは事なきを得た。
・何か企んでいるレオナ
つよつよプレイヤーが自分のところだけに集中しないように調整している。
対抗勢力が死滅してはつまらないでしょう?