Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~   作:蓋然性生存戦略

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もうしばらくタンナは続くんじゃ


ユベリア戦役①

掲示板を見る限り、アインを狙う動きがあるようですね。

当然、アインを潰されると私が直接統率を取らねばなりませんから、私がキルされる可能性も上がります。

とは言え、こちらが掲示板の動きを見ていることを察知される、というわけにもいきませんね。

遠隔で連絡できる手段があれば楽なのですが……。

伝令役のモンスターを作って対処しましょう。

幸いにして、素材はまだまだ有り余っていますから。

 

「《クリエイト・アンデッド》」

 

――アンデッド作成を確認――

――カスタマイズを確認――

――《オウルケステラー》を生成します――

 

存外、可愛らしいものが出来上がりましたね。

INTを高めに、あとは機動力と持久力を重視してカスタムしましたから、多少の無茶も通るでしょう。

 

「貴方にも名前を付けておきましょうか。貴方の名前はミネです。ミネ、ハウンドガイストを指揮しているゾンビジェネラルのアインが、狙われています。自分の周辺に戦力を残しておくよう伝達し、戦闘区域周辺の情報をまとめてからまた戻ってきてください。できますね?」

ホー

 

肯定の意を感じますね。

期待できそうです。

視界共有やテレパシーなど、色々とできれば良いのですが、今はまだ覚えられそうにありませんね。

《災厄》を伸ばしていけば、いずれ手に入りそうな気もしますが。

どうにも、たかが10レベルの今の私では覚えられ……おや?

レベルが上がっていますね。

戦闘行動はミカさんを最後にしていませんが……今一度仕様を確認しましょうか。

ヘルプを参照します。

 

――ヘルプの呼び出しを確認。該当事項、検索中――

――回答:プレイヤーが生成・召喚した召喚獣、及びモンスターによる撃破でも、一部経験値を取得可能です。ただし、プレイヤーがログインしている場合に限ります――

――また、獲得できなかった一部の経験値は撃破を行った当該存在に割り当てられ、蓄積されます。これは召喚物・生成物の成長に利用できます――

 

思ったよりも詳しい情報が出ましたね。

なるほど、広域を狩る時には重宝しそうですね。

最終的には自ら刈り取ったほうが効率がよさそうですが、恐らくこれからも増えるであろう配下の事を考えると、悩ましいですね。

と、少し悩んでいるとミネが戻って来ました。

 

「おや、随分と早かったですね」

ホー

「なるほど、ご苦労様です」

 

アインは既に警戒態勢を敷いており、退路も確保していると。

戦闘区域どころかついでに推定制圧可能エリアの偵察まで行ってきましたか。

偉いですよ、ミネ。

INTを上げるとAIが随分と優秀になりますね。

多用する可能性の高いNPCの生成時は、INTを高めに設定しておきましょう。

コストが少々重いですが、背に腹は代えられません。

MPの他に、()()()()()も使っていますからね……とはいえ、今回の襲撃で収支は回収できそうですが。

 

「しかし、《バチカル》の反動には困ったものですね。()()()()()()()3()0()()()()()()()()()()()()()()()とは思いませんでした。()()()()()()()()()()()()3()()ですが」

 

余りにも重い代償です。

勝っても30分の戦闘不能。

後先考えずに使えば、死は免れません。

しかも、これの持続時間は驚異の10分。

10分で全てにケリを付けなければいけません。

とても長く、強力なバフですが、逆に言えばそれを過ぎてしまえば、30分間ガラクタ未満の存在に成り果てます。

致命的ですね。

なので今私は30分……5分ほど経過したのであと25分はガラクタ未満の存在です。

使わなければ敗北していたとはいえ、手痛いものですね。

 

「ですができないのは戦闘行動のみ。生産行動は可能というのは少し抜け道のような気もしますが……」

 

使えるものは使っていきましょう。

()()()()()()()()()()()()()()()です。

 

「ミネ、アインから何か伝達はありますか?」

ホー

 

少し増援が欲しいとのことですか。

ハウンドガイストが適任でしょうが、MPと経験値はともかく、素材が心許ないのですよね……。

何かいい手は……あるじゃないですか。

 

「ミネ、アインに伝えなさい。ハウンドガイストに私の元へ残っている死体を持ってくるように、と。それで軍勢を作ります」

 

ミネは一つ頷いて飛び去り、アインの元へ向かっていきました。

一応、私も退路を確保しておかなければなりませんね。

別動隊が私の元へ来ないとも限りません。

というよりも、似たようなスキルを持っているミカさんが、その性能を看破して来る気もします。

尤も、それはこちらも同じなので、恐らくミカさんが復帰してくることはないと思っていますが……。

念には念を入れよ、と言います。

ミネが戻ってきたら周辺の偵察に回ってもらいましょう。

 

ホー

「よく戻りましたね。首尾は上々のようで何よりです。連続で申し訳ありませんが、周囲の警戒をお願いします」

ホー

 

すぐにでもNPCの死体(素材)は来るようです。

優秀ですね。

ハウンドガイストの素材は全部使って送り出しまして。

MPが足りないのでポーションを……何本ポーション飲みましたっけ、私。

拾い物なので構わないのですがね?

あんまり美味しいわけでもないですし……味の改良も出来ればやりたいですね。

後々の課題として覚えておきましょう。

それよりも今は……。

 

ホー

「おや、やはり東西の門から別動隊も来ていましたか。接敵まで五分ほど……戦闘不能時間は残り20分。足りませんね」

 

残り15分は稼げる何かが欲しい所ですね。

5分で何とかしましょう。

 

「一時的に凌げればよいので、時間制限付きで強さをブーストしましょうか。余裕を見積もって20分ほど」

 

――アンデッド作成を確認――

――カスタマイズを確認――

――一時的に《ボーンドラゴン》を生成します――

 

やはり魔王と言えばドラゴンでしょう。

これは一時的なものなので素材を消費するだけして消えてしまいますが、いずれは常駐させたいですね。

しかし強力ですね。

今の私より強そうな気配が……ちゃんと従ってくれますよね?

一時的な存在なので、INTは少し低めに設定していますが……それが吉と出るか凶と出るか。

 

Grrrrroooo

 

あ、従ってくれそうです。

有難いですね。

 

「げ、なんかヤバそうなドラゴンがいるんだが?!」

「聞いてねーぞ!!」

「そりゃ情報が刻一刻と更新されるのはそうなんだけど!!」

 

数は一個小隊ほど。

つまり30人ほどですね。

中々の数ではないですか。

尤も、先ほどの私よりも脆弱な存在が、今の私よりも強いこのドラゴンに勝てるとは思いませんが。

 

「よくぞいらっしゃいました。今この瞬間の好機を狙うこと、それ自体は正しいでしょう。それは肯定します。ですが……この守護者を突破できれば、の話です」

Grrrrroooo!!!

「あ、これ死んだわ」

「さ、散開!!ブレスは避けろ!!」

 

――轟!!!

 

これはアレですかね、某風の谷で殿下が放った言葉を言ってみても良いかもしれませんね。

 

「薙ぎ払え。あなたの力はそんなものではないでしょう」

GrrrrrooooOOOOOOOOOO!!

 

尤も、第一射は『焼き払え』だったそうですが、『薙ぎ払え』の方が有名ですね。

それはさておき。

プレイヤーたちは存外粘りますね。

いえ、これはボーンドラゴンが余力を残して戦っているからでしょうか。

役目に忠実ですね。

彼?彼女?の役目は私を守る事。

そこに万が一があってはいけません。

つまりところ、予想外の攻撃があった場合も、私を守れるようにしておかなければならない。

そこまで理解しているAIとは、中々優秀で困りますね。

謀反を起こされてもおかしくないですよ。

扱いには重々注意しなければいけませんね。

ボーンドラゴンさんの奮闘のおかげで、私は安全なのですし。

余裕をもってしっかりと私を守り切り、キッチリ与えられた時間の役目を全うしました。

中々良い見世物でしたね。

 

Grrrrroooo

「ええ、よくやってくれました。次は貴方を正式な従者として迎えたいと思います」

Grr……

「なんだ、ドラゴンが崩れて……」

「耐久戦闘だったのか!」

「じゃあ後はアイツを!!」

 

はて。

今もまだ生き残っているプレイヤーは何か勘違いをしているようです。

ボーンドラゴンさんが消えたということは、私の戦闘不能時間が過ぎたということですのに。

まあ、彼らに知る由もないですが。

 

「何か勘違いしているようですね。私が休憩している間、ボーンドラゴンさんは私を護衛していただけにすぎません。そして今、役目を終えて住処へと帰りました。これは貴方たちの勝利ではなく、貴方たちの敗北の証左です」

「つまりどういうことだ?」

「時間制限付き討伐クエストだったってことらしい?」

「レオナが休憩を終えるまでってこと?」

「多分」

「え、じゃあ何?これから強制ワイプ?」

「……多分」

「状況は理解しましたか?ではごきげんよう」

「「「ぐわあああああ!!」」」

 

適当に魔法スキルを打ち込めば大体死にます。

残ったのは直接貫いてあげれば討ち漏らしもありません。

余裕ですね。

 

「儚いものですね。ミネ、来てください」

ホー

「アインに伝達をお願いします。私も進撃する、と。ひとまず領主館を襲撃するので、中央まで突撃して来るよう、お願いします」

ホー

 

せっかく戦闘不可能時間が解けたのです。

私も参加するとしましょう。

翼を広げ、私は蒼穹に飛び立ちます。

 

――バサッ!!

 

街というからには領主がいるでしょう。

そして、それがいるのは間違いなく……この街で一番目立つ建造物です。

ゆっくりとバルコニーにでも降り立ちますか。

 

「貴様がレオナ=ユベリアとやらか」

 

私がバルコニーに降り立つと、待っていたと言わんばかりに高貴な服装に身を包んだ男性が椅子に座っていました。

筋肉質ですがスラッとした体躯の、長身のおじ様。

女性から人気が出そうですね。

 

「おや、お出迎えありがとうございます、領主様?」

「言葉は通じるようだな。そうでなくては困るところだったが」

「ふむ。取引でもなさりたいので?」

「可能ならばそれが一番だが、しかしそれが可能とは思っていない。2,3聞きたいことがあるだけだ」

 

凄いですね、この方。

敵わないと分かっていても諦めていませんよ。

そのメンタルに免じて、願いを叶えてあげましょう。

 

「私の部下が来るまでに時間もあるようですし、それくらいでしたらどうぞ」

「では一つ。目的はなんだ?」

「私の使命を果たすことです。この世界の最も強大な巨悪として君臨することがとりあえずの目標でしょうか」

「子供の夢のような目的だが、実際にはこのザマだ、否定はできんな……」

「子供の頃からの夢なので子供の夢で間違いありませんね」

「狂っているのか?」

「むしろ正気でこんなことできると思いますか?」

「自覚がある分タチが悪いというものだ」

 

分かっていますよ。

破滅願望みたいなものですしね、最終的には。

 

「それで、質問はまだあるのでしょう?」

「では二つ目だ。何故ここへ来た?」

 

なんだそんな事ですか。

特に理由はないですが……。

 

「目が覚めた場所から最も近かったから、ですね。本当にただそれだけです、不運でしたね」

「全くだ……このタンナが私の代で潰えることになろうとはな……だがしかしだ。ただで終わるとは思うておるまいな?」

 

しかしいいですね、この眼。

なにも諦めてたまるものかという強い意志。

これを踏み越えてこその魔王と言えるでしょう。

 

「無論です。しかし領主様、何か手立てがおありで?」

「領主には、街の力を活性化させる特殊なスキルがある。それを、長い歴史の中で積み上げられた全魔力を放出し、発動する」

「ほう。詳細を伺ってもよろしいでしょうか。この後、いやでも思い知ることにはなると思いますが」

「何。この街にいる限り住民の全能力が向上し、被っていた不利益が一度だけ解消されるというだけの事だ」

「なるほど。実に単純で、そして厄介な能力ですね。ちなみにもう発動していたりしますか?」

「無論だ」

 

これは困りましたね。最も厄介な存在が強化付きで復活してしまったということではないですか。

今すぐにでも撤退を考慮すべきですね。

 

「さしもの貴様も、かの《焔剣の勇者》には手を焼くということか」

「……何のことでしょうか」

「報告は上がっている。ミシェル=ユスティーナという異邦人が相手ならば、貴様は本気を出さざるを得まい」

「なるほど、それが賭けの根拠ですか」

「その通りだとも」

 

このおじ様は私の目標を達成するにあたって勉強をさせてくれる良い人ですね。

チュートリアルおじ様です。

異邦人、つまりはプレイヤーの事でしょうね。

このおじ様は、プレイヤーの特性を理解したうえで利用しています。

驚異です。

他の貴族も同じように考えた方が良さそうでしょうか。

 

「あとは、かの勇者に任せるとしよう。どうせ、私を生かすつもりなど無いのであろう?」

「その通りですとも。最後に名を伺っても?」

「ああ、名乗り忘れていたな。私はギュスターヴ=タンナ=アウステリア辺境伯だ」

「改めまして、レオナ=ユベリアと申します。貴方様と話が出来たことは行幸でした、ギュスターヴ卿」

「ああ。なるべく苦しくないようにしてくれたまえ」

「もちろんです。では、ごきげんよう。良い黄泉路を」

 

オーダーに応え、首を狩りました。

コロリと、ギュスターヴ卿の首が転がる。

身体が崩れ落ち、断面から血の池が形成され……その表面に()()()()()()()

 

「どうやら、私は遅かったみたいだね、レオナ」

「一通りお話しが出来るくらいには時間が過ぎていましたよ、ミカさん」

 

振り向けば、バルコニーに降り立ったミカさんが居ました。

 

「場所、変えない?第二ラウンドと洒落込むには、ここは狭いよ」

「構いませんよ」

 

私はミカさんと共にバルコニーから飛び降り、今日この日の雌雄を決するための決戦場へと向かいました。

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