Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
さて。
前回のイベントからそこそこ時間がたっています。
そうですね、一月ほどは過ぎたでしょうか。
夏休みにも差し掛かろうかという今日この頃。
何が起きるかは明白。
そうですね、夏イベですね。
すでに告知は出ておりまして、特設エリア《星降る海岸の港町》にアクセスすることが期間限定で可能になるようです。
かつてとある龍族によって栄えていた港町だったようですが、今はすっかりと衰退し、全盛期の見る影もない。
そんな特設エリアを復興するため、サーバー全域に出現するイベントエネミーを倒してイベントアイテムを集め、資材と交換して復興を進めるようですね。
個人達成報酬と全体達成報酬があり、全体貢献度に応じてランキングが掲載され、報酬も出るとかなんとか。
ちなみに匿名表記が可能なようです、やりましたね。
それはそれとしてなのですが。
この特設イベントエリア、コスモスさんと関係があるのでは?
おそらくですが、コスモスさんはクリフォト第四席、アスタロトのアディシェスに相当する力を持っています。
そして、アスタロトはドラゴン、もしくはドラゴンに似た獣に跨り、右手に毒蛇を持った天使の姿で描かれます。
もしドラゴンと関係があるのであれば、無関係ではないでしょう。
まあ、ここまではこじつけではあるのですが。
「……」
コスモスさんが物凄く苦い顔をしているのでほぼ確定です。
「何か嫌な思い出でも?」
「……別に」
まあ、誰しも語りたくはない過去があるでしょう。
凡そ予想は付きますが。
確か以前話してもらった昔話の中に、恩人に助けてもらったエピソードがあったはずです。
おそらくその話に出てくる舞台なのでしょう。
「ただ、気を付けてね」
「何にです?」
「もし、私を次の依り代にしようとした奴が生きていたら、生き延びていたら、それなりの脅威になる」
「ふむ……留意しておきましょう」
そうそう。
何も知らないコスモスさんの体を次の依り代にしようとしていた方がいたらしいですね。
それを連れ出して反逆したのが、ふらりと現れた恩人であるメビウスとかいう人物らしいですが。
「……多分、私以上の依り代は五千年間現れていない。だからもし生き残っていても、乗り換えることもままならずに衰弱しているとは思うけれど、それでも当時は十分に強者として数えられた龍族。今の異邦人が束になっても苦戦すると思う」
コスモスさんがそばにいるので、関係するイベントは情報を事前に入手できるのがいいですね。
しかしこれは、大型レイドですかね。
ふぅむ……いくつか質問するべきですね。
「コスモスさん。この港町は空間的連続性のある場所に存在しますか?」
「……存在する。座標もある」
「今も通常の移動手段で到達できますか?」
「……かなり遠いけど可能」
「であれば、です」
水面月姫さんに連絡し、パイプドリーム商会と連携しましょう。
まずは先行してもらい、モールの建設。
それからファストトラベル機能があるか確認してもらい、存在するのであれば私も先行しましょう。
イベント開始前に現着しておき、レイドに備えて準備をしておくべきですね。
そして肝心の座標ですが……ふむ。
この拠点から北東方向、北端の町トサイからさらに東に突き抜けた方向にあるようですね。
確かにかなり遠い距離間の場所にあるようで。
「ここはどこかの国に属していますか?」
「港町ということからわかる通り、海に面していて辺境もいいところ。開拓されているけどこの五千年で人が生存可能な領域は狭まって、港町が突出している形。西は街道、東は海、南は未開の地が広がって、北は山脈がある」
「制圧したとしても旨味は少ないですね……なぜかつては栄えていたのでしょう」
「奴が庇護していたことと、当時は他大陸との交易が盛んだった。今は交易がなく、小規模な漁業で成り立っているはず」
「なるほど……」
多分それなりに攻略が進めばここから他大陸への足掛かりになるのでしょうね。
というより、このイベントがフラグなのではないでしょうか。
成否如何によっては結果も変わりそうです。
さて、メッセージは飛ばしましたが……返信が早いですね、もう来ました。
『レオナちゃんさぁ、こんなおいしい話を持ってくるとか最高かよ!今度何かサービスするね!!超特急で向かって調査を終わらせておくからキミも今から来たほうがいい、善は急げ、悪も急げ~~!!』
即決ですね。
現地で合流し、方針を固める方向になりそうですか。
とはいえ、ミカさんがこの街に滞在しているので、あまり長く空けたくはないのですが……。
アインも連れて行きたいですし。
とりあえず、談話室に顔を出しましょう。
予想が正しければ、恐らくミカさんは起きてるはずです。
「あ、レオナ。やっほ~」
ああ、やはり。
規則正しいログイン時間ですね。
「おはようございます。少しお話があります」
「え、何?」
「しばらくアインを連れて留守にしますので、一度戻っていただければと思いまして」
「今日で終わるから、それまでお願いできない?」
「今日一日で終わるのならば構いません。アイン、後ほど合流するように」
「御意に」
「ところでどこに行くの?」
「《星降る海岸の港町》へ。少々因縁のある相手が動き出していそうなものなので」
「じゃあ近いうちにそっちで会うかもね」
「そんな気がします。それなりに急ぐ道なので、私はこれで。アイン、頼みましたよ」
「いってら~」
話が分かる勇者で嬉しいですよ、ミカさん。
さて、ネロに乗って急ぎましょう。
予備兵力も後ろから探索を兼ねて出撃させます。
急げばそれなりの時間で着くでしょう。
駐屯基地を作らなければなりませんし、補給線も確保しなければなりません。
途中でダンジョンなどを見つけたら制圧しておかないといけませんし。
やることは多いですね。
まあ、MMOですからね。
リソースは独占できればできるほど良いとされています。
道中はカットです。
特に何もありませんでしたからね。
「レオナちゃんはやくなぁい……?」
「ネロに乗って単身先行しましたから。あとから眷属部隊が合流します」
「おっけー。こっちは鬼目月姫と一番信頼してる幹部二人を連れてきて終わり。ボクたちはこれで十分だからね」
「紹介していただいても?」
「もちろん!キャスパリーグ、アルトゥール、ちょっとこっちきてー!」
どうやら私の方が早く来たようで。
後から水面月姫さんが来ました。
以前話していた幹部二人も紹介していただけるようで。
どちらも背が高いですね。
見下ろされるのは何というか、癪ですが。
平均くらいはあるはずなんですけどね、私。
鬼目突姫さんもですが、背丈があり過ぎです。
「よぅ。ソイツが前話してた奴か?」
「そうそう。このタッパがデカくてガサツなのがキャスパリーグ。ウチの技術部のトップね」
「気軽にキャスって呼んでくれ。よろしく」
「で、こっちのツラとガタイの良い優男がアルトゥール。ウチの護衛部隊のトップね」
「ご紹介に預かった、アルトゥールだ。僕の事も隙に読んでくれると嬉しい」
「レオナ=ユベリアと申します。良き隣人として、今後とも取引いただければと思います」
それぞれ握手を交わし、今後の方針を固めます。
「で、ここが次のイベントの開催予定地なんだろ?何すんだ?」
「恐らくレイドバトルがあるので、私は現地戦力を固めようかと」
「ボク達は現地のインフラの整備さ!レオナちゃんからのタレコミでね、ここは昔交易が盛んだったらしい」
「ということはつまり、ここがプレイヤーの他大陸への足掛かりになる可能性があるわけだね」
「恐らくは」
「ははーん?私たちで実効支配しちまおうって魂胆だな?」
「そゆこと~。正確にはその準備だぁね」
そうですね。
全盛期ほどではないでしょうが、未だ支配しているであろうレイドボスを排除しなければなりません。
目ッ殺するのは確定事項です、そのための準備をと言う話ですね。
「私としては、この港町の利権に興味はありません。付近に存在するダンジョンの実効支配権だけ頂ければそれで」
「うーん、謙虚そうに見えて強欲♥」
「経験値が無限にも思えるほど必要ですので……」
「そりゃそう。ボクらも苦労してるよ。ま、お互いコトが成った暁には優待しましょうねってコトで」
「ええ、それで構いません。しかし疑問なのですが」
「なんだいなんだい」
「モールは現状建てられるのでしょうか?」
「仮説入り口を設置するだけなら支配権も支配者の許可もいらないんだな、コレが。それが必要なのはモール内部の拡張も含む本設置。だからまあ、イベントが終わるまではパイプドリーム商会もてんてこ舞いさ」
「……我が領地はさぞ拡張が進んだでしょうね?」
「あはは、ボクの借りふたつってことで許して?」
「全く……油断も隙もありません」
「褒めてもドヤ顔しか出ないよ」
ただまあ、私たちが手を組めば難しいことはないでしょう。
圧倒的な補給路であるパイプドリーム商会。
そして現状最大戦力を保有する私の軍勢。
双方が手を組み、イベント開始までにやれることはいくらでもあります。
楽しみになって来ましたね。
「あ、そうそう」
「なんでしょう」
「今回のイベントで、ボク達も表立ってキミとの繋がりを公表するつもりさ。パイプドリーム商会と言う存在が、どのようなスタンスでいるかを示すためにね」
「良いですね。仲良くお茶会でもしましょうか」
「美味しいお菓子を、期待しているよ」
「無論、腕によりをかけて作りましょう」
改めて、握手を交わします。
同好の士がいるというのは、いい気分ですね。