Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
そんな作者を許してくれる読者様に感謝を。
さて。
どうしたものでしょうか。
水面月姫さん方、パイプドリーム商会の面々と歓談していたところ。
コッテコテの美少女吸血鬼な方が現れました。
真昼間ですが、デイウォーカーの方ですかね。
「見つけましたよ、マイマスター」
そう言って、キャスパリーグさんに殴りかかりました。
「ゲッ、ノルフェア!?ナズェココニ!?」
キャスパリーグさんは紙一重で回避。
すかさずカウンターを決めてお互い距離を取っています。
「昔はこの程度ではなかったでしょうに、マイマスター」
「るせぇ、ユニバースが違うんだよボケ!!あの時私自由にしろって言ったよなあ!?」
「ですので追いかけました」
「馬鹿かお前!?」
何やら因縁があるご様子。
商会の面々の方を見ると、アルトゥールさんだけ懐かしそうにしていました。
「随分と久しい顔だ。まさか元気にしているとは」
「え、誰あの子」
「キャスの昔の部下でね。色々とあったんだ」
「色々の部分が気になるんだけど」
「色々あったのさ」
部下というか、完全に主従ですよね、アレ。
謀反された感じの奴ですけど。
「凄まじい肉弾戦だな。アレに食いついているのは流石のキャスと言ったところか」
「キャスが負けるとこ見てみたぁ~い♪キャスが負ける方に10万」
「こうも力押しで負けそうになるキャスは珍しいな。キャスが勝つ方に5万」
「久しぶりに会ったけれど、相変わらず戦いが好きだね、彼女は」
「ふむ。ノルフェア、でしたか。そちらが勝つ方に10万ですね」
流れるようにトトカルチョが開かれます。
ちなみに私はノルフェアという方が勝つ方に賭けました。
どう見てもノルフェアという方のほうが肉弾戦に優れていますし。
「こなくそァ!!」
「その癖、まだ直っていなかったのですね」
「ア゜ッ!?」
短い攻防で軽く100を超える拳戟乱打の末、飛ばされたのはキャスパリーグさんでした。
ただし、飛ばされた方角は私の方です。
致し方が無いので蹴落とします。
ジュース片手ですし。
「あふん」
余裕そうですね。
ジュースを一口。
美味しいですね。
……さて。
ノルフェアさん?
何故私を見ているのですか?
「強いですわね、アナタ。死合いましょう?」
ああ、やはりそういうことですか。
断っても来るでしょうし。
「構いませんよ。貴女の得意でお相手しましょう」
受けてさしあげましょう。
徒手空拳で。
構えは自然体、されど半身。
「いつでもどうぞ?」
「じゃあ、遠慮なく」
迫る狂爪。
瞬きも許さない速度で距離を詰めてくるノルフェアさんは流石というべきですが、生憎と見えています。
半歩下がり、振るわれた腕を取って投げ捨てます。
「へぇ?」
寸前、交差する視線。
ノルフェアさんの口が、三日月に裂けました。
背筋に悪寒が走ります。
私は投げ落とすまで離さないつもりだったノルフェアさんを、水平に投げるようにして離しました。
あのまま掴んでいれば、こちらが手痛い反撃を受けていた。
その直感を信じて。
轟音と土煙を立てながらノルフェアさんは建物に叩き付けられ。
しかし、土煙が晴れた先にいたのは、無傷であるかのように佇むノルフェアさんでした。
「ふふ、楽しいわね」
「まだやりますか?」
「もちろん」
お互いに加速。
加減は無用、恐らくノルフェアさんの出自は、レイドボス級。
「「ハァッ!!」」
空中で交差する拳戟は火花を散らし、音を以て周囲に衝撃を与えます。
やはり力では不利。
ですが。
速度で勝る私がまだ有利です。
力は速度と重さ。
次第に翼を用いて飛翔した私たちは、空で何度も拳を交えました。
度重なる拳戟の中で、十二分に加速した私の一撃が、ノルフェアさんにクリーンヒットします。
フェイントの末に叩き込んだ蹴りが、ノルフェアさんの胴を薙ぎ払って蹴り落としました。
――ドガァァァァァン……
「ふぅ……少々派手にやり過ぎましたかね」
「全くだよ。修繕費は貰うからね」
「分かっていますよ」
これで終わってくれればいいと願いながら、ゆっくりと着地します。
水面月姫さんから苦言を戴きましたが、下手に加減して勝てる相手ではありません。
そもそも、クリーンヒット一発で倒れる相手でもありません。
こうなった以上は、多少の損害は覚悟の上です。
「いい、いい!やるじゃない!!マスターと関わりを持つに相応しいヒトね!!」
そして、案の定と言いますか。
少なからず傷を負っていますが、まだまだ元気そうです。
「もう一度聞きます。まだやりますか?」
「今日のところは良いわ。アナタ、名前は?」
「レオナ=ユベリアと申します。以後お見知りおきを」
「良い戦いだったわ。また死合いましょう」
「できれば遠慮願いたいのですがね」
やれやれ。
まだやると言っていたらどうしようかと。
これ以上は町を破壊しかねませんでしたし。
「で、ノルフェアちゃんだっけ?ウチのキャスを攻撃した理由を教えて欲しいんだけど」
「……?あの程度はじゃれ合いでは?」
「あ、困った。価値観が根本から違う子だ」
もしかして根っからのバトルジャンキーだったりします?
「あと、長い間音信不通だったクソボケバカマスターにイラついただけよ」
「キャスが悪いよ」
「キャスが悪いね」
「お前が悪いだろう、キャス」
「私もそう思います」
「アレ!?私が悪いのか!?」
何があったかは知りませんがキャスパリーグさんが悪いと思います。
あとで謝ったほうがいいと思いますよ。
「修繕費はお支払いいたしますが、商会の方のイザコザはそちらで処理していただければ」
「ボク達って言うよりキャスの不始末なんだけどね」
「お前、他にいないだろうな」
「え?あと1匹と1人いるが」
「いるねえ……」
「さっさと連絡付けろこのクソボケオタンコナス」
完全にギルティですね。
私はジュースのおかわりを戴いて、と。
「ああ、そう言えばなのだけど」
おや、ノルフェアさんが何か言いたいようで。
「ここに来る途中、石碑があったの。そこにはこう書かれていたわ。
『千を五度数える時、《星降る海の龍・ステラフォル》は解き放たれる。
人よ、燦然と昇る星に抗え。
其は輪廻背負う始まりの賢者の試練である』
何かわかるかしら?」
「「「「?!」」」」
ちょっと待ってください。
それたぶんレイドボスのポップ地点のヒントですよね!?
そんな石碑どこにあったのですか!?
「ノルフェアちゃん!?それどこにある!?」
「あっちの方から真直ぐ来たけど、それ以外は覚えてないわよ。あと気安く呼ばないで頂戴」
「アルトゥールくん!すぐに調査部隊を編成して突撃!!来た来た来たぁ!!」
「念のため考古学スキル持ちを連れて行くよ。石碑の内容が正しければ、レイドボスは東から、海から来るということを確定させたいね」
「他にも石碑がないか探してね」
「もちろんさ」
しかし、これで事が進展しそうですね。
何か分かればいいのですが。
そして二日後。
今まで分からなかったことが分かりました。
「というわけでね。これが調査資料。ザッと言うと『レイドボスは東から来る』。あのやたらめったら硬いゴーレムが湧くダンジョンは『弱体化ギミック』。で、極めつけは『完全に滅ぼすことは、現状できない』」
「ふむ……」
「これは推論だけど、恐らくこのレイドは再戦可能だ。それも初回はワールド単位でのレイドで、後日通常レイドが解放されるタイプと見た」
「困りましたね。ギミックとなれば独占するのは悪手ですが」
「そこはレオナちゃんの眷属で数の暴力を強いればいい。解放も視野に入れてもいいけどね」
「いえ、解放してしまいましょう。プレイヤー全体の底上げは必須ですから。防衛ラインを変更しますので、情報の拡散をお願いします」
「りょー」
レイド開始まで、あと数日。
できることは全てやりましょう。
「ああ、それとなんだけど。例の石碑、このゲームにおける古代文字で書かれてた。考古学スキル専攻のプレイヤーが読んでやっとだよ。ノルフェアちゃんがなんで読めたのか、ちょっとわかんないかも」
……それはちょっと話が違くありません?
・キャスとノルフェア
むかしむかし、愚連隊みたいな感じで暴れ回っていたやんちゃな過去がある。
その時敵対勢力との抗争でキャスがノルフェアを庇って瀕死……に近い状態になったことがある。
そのうえで長期間音信不通!?
キャスが悪いね……。
・ノルフェアなんで読めたん?
事情があって古代文字解読が最初からMAXで備わってる