Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~   作:蓋然性生存戦略

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季節の変わり目で頭痛と鼻水が酷いですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
私は一日の半分を寝て過ごしています……


夏イベント:星降る海の名も無き詠・5

Xデー。

レイド開始の日。

プレイヤーたちが、水面月姫さんによって公開された情報をもとに、海岸線へと集まっています。

私はその少し後方に降り立ち、様子を眺めていました。

が、なにやら演説していた水面月姫さんからパスを渡されていました。

 

「レーオーナちゃん!何か意気込みは?」

「なんですか急に……」

「ほらほら、レイドボスとか言われてる奴相手に、何かあるでしょ?」

「はぁ……くれぐれも、私や勇者に頼りきりだなどという不甲斐無い姿は見せないように」

 

まあ、一言で十分です。

足を引っ張りさえしなければ。

 

その後、少し待っていると。

 

地響きが鳴り響きます。

東の海を割り、星の輝きと見紛うほどの光を放ちながら、巨大な龍が天へと昇っていました。

その口腔に破滅の咆哮を蓄えながら。

 

されど、それが放たれることはありませんでした。

何故ならば。

 

「マ(・)ギ(・)ア(・)レ(・)ー(・)ル(・)ガ(・)ン(・)、一斉掃射」

 

一三門の八八口径魔導電磁砲が、火を噴いたから。

復活直後で油断していたのであろう巨躯に、十三発の砲弾が突き刺さります。

 

《GrrrrroooooooOOOOOOOOOOOOOOOOONN!?》

 

「ふふ、あははは、アーッハッハッハッハ!!素晴らしい、素晴らしいですよキャスパリーグさん!!良い取引でした!!」

 

元々私が設計していたモノを、さらに改良して創り上げられた、八八口径魔導電磁砲。

いずれは戦艦などでも作って搭載しようと思っている産物。

良い買い物でした。

懐も痛みませんでしたしね。

というのも、アレは数日前の事。

 

 

 

『キャスパリーグさん』

『なんだ?』

『社長ですよね?』

『ナンノコトダカワカラナイナ』

『カナおばさんですよね?』

『キッショ、なんでわかるんだよ……声も体格も変えてるはずなんだが?』

『ノルフェアさんが古代文字を読めたところでちょっと思い出したんですよ。前に邸宅にお邪魔した時に[あ、そう言えば似たような文字あったな]って。関係者なら知っててもおかしくないですしね?』

『無駄に記憶力を発揮しやがって……で、何が欲しい。口止め料強請ろうってんだろ』

『いえ、ちょっと開発している秘密兵器に力添えいただければと』

『強欲な奴め……お前は傲慢より嫉妬か強欲の方がお似合いだ』

『それほどでもありませんよ』

『褒めてねーわ!!』

 

 

 

ということがありまして。

キャスパリーグさんの協力があり、元々の出来よりも素晴らしいものになりました。

威力はお墨付き。

本格的に戦闘に入る前に大ダメージです。

 

「おぉぉぉおお!!」

「帝国の軍事力は世界一ぃぃぃいい!!」

「これは勝つる!!」

「町に備えてある防衛兵器も動かせ!!今のうちに総攻撃だ!!」

 

プレイヤーの士気が上がりましたね。

良いことです。

さて、第二射を……と思った矢先。

空に流星が見えました。

レイドボスであるステラフォルに、一直線に向かっていく流星が。

 

遠目ですが分ります。

ミカさんですね、アレ。

 

「レオナにだけ良いカッコさせないじゃんね!!」

 

う、うるさ……。

どれだけ声張っているんですか……?

いえ、その裂帛の気合に比例するように、流星が大きく……いえ、焔が燃え上がります。

 

「《テオグレン・シュヴェールト》!!」

 

ステラフォルが総攻撃で怯んでいるところに、燃え盛る流星が直撃し、大爆発を引き起こしました。

割けた海に叩き返さんとする勢いでステラフォルは叩き付けられ、さらなる大ダウンを引き起こします。

 

「第二射、撃(て)ェ!!」

 

それを見逃す私ではありません。

装填が完了した第二射を発射し、さらにダメージを稼ぎます。

しかし、相手は討伐期間1週間を想定されている超大型レイドボス。

私の軍勢とミカさんだけで削り切れるとは到底思っていません。

町の防衛機構も併せて利用し、上手く連携することで討伐が可能になる仕様のはずです。

あと想定されるのは、ダメージストッパー、残存HPトリガーによる特殊行動。

それらを警戒したほうがいいでしょうね。

 

《オ、オォォォオオオ……!!匂う、匂うぞ!!我が依り代の気配がァ……!!》

 

おや、人の言葉を話せたのですね。

一定ダメージを与えたからか、まだ続きそうだった怯み状態から急激に立ち直り、言葉を発したステラフォル。

その視線は、しっかりと私を捉えています。

前に出るべきでしょうか。

……いえ、選択肢はありません。

私は魔王なのですから。

 

私は翼をはばたかせ、一気に距離を詰めます。

小細工は要りません。

ただ真正面から、剣を以て切り裂きます。

 

「《至高技(プラウドアーツ):天裂光(ルクスメナス)》!!」

《貴様か、盗人はァ!!》

 

即座に放たれたブレス。

私はそれを穿ちながら、龍頭の前に躍り出ました。

 

「コスモスさんは私の契約者です。アナタのモノではありません」

《盗人風情が……!!》

 

さらなるブレス。

一瞬の拮抗。

アーツの効果が切れ、相殺した際に産まれた余波で吹き飛ばされます。

 

体勢を整えながら上昇し、私はそこにいるのであろうミカさんと合流します。

 

「随分と空中戦が様になりましたね、ミカさん」

「やっほ、レオナ。調子はどう?」

「好調ですよ。それで、手応え的にはどう見ます?」

「ん~~、HP……生命力を1割削ったかどうかな~、みたいな?」

「アレだけ叩き込んで、ですか……理性を取り戻したようですし、嫌になりますね」

「ホントね。自然回復量も馬鹿にならないだろうし」

「私の部隊のマギアレールガンの弾薬はそこまで確保できていません。先ほどのような大火力は維持できません」

「あらら、そりゃ残念。ちなみにあと何回?」

「一斉掃射をあと5回と言ったところでしょうか。弾薬は手作りですので」

「そうなると最後の押し込みに使いたいね……さて、どうしよっか!」

「ひとまずは……あのデカブツを滅ぼしましょうか」

《戯(ほざ)けッ!!》

 

東洋龍をモチーフとしたボスですから、噛みつくか、ブレスか。

基本的な攻撃はそんなところでしょう。

ですがレイドボスとしては不適格。

であるならば。

 

魔法陣が無数に浮かび上がり、水圧レーザーのような攻撃が襲い掛かって来ます。

予想通り。

 

「手札を増やすならば、そうなりますよね」

 

無言で意思を示し合わせ、私はミカさんを守るために障壁を貼ります。

ミカさんはその間に私の後ろで準備をします。

 

「さっすが」

「期待していますよ」

「じゃあ、応えようじゃんね!!

 《焔剣技(フラムエッジ):爆紅斬(クリムゾンストリーム)》!!」

 

少し前、私の最大のアーツとぶつかり合った大技が炸裂します。

地味にアレ、リキャスト長いんですよね。

なんと驚きの1時間。

私もミカさんも、あと1時間は極技を放てません。

 

《ぐっ……小賢しい真似を……!!》

 

このまま張り付いても良いですが、他プレイヤーの火力が届きません。

正確に言えば、出撃している戦艦の交戦距離に入りませんので、一度退きます。

それに、今回私はあまり前面に立つ気はありません。

これ以上のヘイトは買いたくないところですから。

良い感じに勢力図が拮抗するようにしたいですね。

 

というのはともかくとして。

 

「ところでレオナさー」

「なんでしょう」

「アレだけじゃあ、ないよねえ?」

「ふふ。ええ、もちろん。手札はまだありますよ」

 

ミカさんに問われ、無論と応えます。

八八口径魔導電磁砲は、いわば前座。

とっておきのがまだあります。

ですが、まだその時ではありません。

私たちは最後の押し込みの時までに力を蓄える方がいいでしょう。

無論、最終日まで手を出さないということはありませんが。

 

「観測班、残りHPは!?」

「HPバーの1本目が2割削れました!ちなみにフルで残ってるのが9本あります!!」

「馬鹿HP過ぎるだろ!!」

「だからサーバー全域参加のレイドなんだろ!!」

「補給保つか!?」

「生産職に土下座すんだよ!!」

「うぉぉぉお!!サヨナラ俺の懐事情!!」

 

10本あるうちのHPバー。

そのうちの一本が2割削れたと。

全体HPでは2%しか削れていないというわけですか。

私もミカさんも、少し楽観的に予測していたようで。

 

「うへー、アレで2%かあ……」

「いずれにせよ、長期戦は免れませんね。第四席の賢者がいれば、少しは楽だったのですが」

「レオナたちがコテンパンにしたじゃんね」

「勝手に自滅しただけでしょう」

「被害を最小限にとどめておいてよく言うよ。そっちこそ、コスモスちゃんはどうしたの?」

「どうにもいい思い出が無いようでしたので、北方領に置いてきました」

「そっかぁ。じゃあ、正真正銘、私たちだけで何とかするしかないわけだ」

「そういうことですね。私は下がって火力支援をします。ミカさんはご自由にどうぞ」

 

私はそう言って離脱し、陸地まで戻りました。

ミカさんはまだまだ前線で戦うつもりのようですが、私は休みます。

暴れ狂うステラフォルを尻目に、私は自分の陣地に……と、思った矢先。

 

『野郎ども~~!!運営にサプライズしてえよなあ~~!!』

 

何か聞こえてきました。

水面月姫さんの声ですね。

拡声器でも使っているのでしょうか。

 

『あんなアマツ●ガツチモドキに1週間もかかると思ってる運営に目にもの見せてやりてぇよなぁ~~!!』

『だからボクも本気出すぜ!!超大出血大サービスだ!!』

 

『滅びし世に、金銀財宝如何程なものか!!

 夢を、希望を、ボクは守る!!』

『これが商会長の力だっ!!《ラスト・リゾート》!!』

 

これは……!!

 

『今この瞬間、この戦闘においてのみ、キミたちは一騎当千の猛者と同じ力を手に入れた!!猛者にはさらなる力を!さぁ、存分に力を振るえ、代金はボクが受け持つ!!代わりに今後とも贔屓にしてくれると嬉しいぜ~~!!』

 

まさかの広域バフ。

それも強力なものを。

ステータスバフなんてちゃちなものじゃありません。

レベルを加算するなどというバカげたバフです。

加算されたレベルは、50。

レベル上限を超えて加算されたこれが、戦域全てに行われたとすれば。

 

「うぉぉぉおお!!よく分からねえが攻撃ィ!!」

「身体が軽い、軽いぞォォォオ!!」

「殺せ~~!」

 

……やれやれまったく。

想定を崩してくれますね、本当に。

 

『陛下、部隊に異常が』

『水面月姫さんの支援です、問題ありません。それと、指示を変更します。マギアレールガンは撃ち切って構いません。アレの用意も進めてください』

『御意』

 

そちらがやる気ならば、私もやらざるを得ませんね。

 

「我が冠名は《無神》なり

 我が名はレオナ=ユベリア。

 異邦より来たりし運命を伴い、この地に我が意を示す。

 我は咎人。

 《無神》を冠する第一の玉座。

 尽きることなき不遜をこの手に。

 神ある世界に神の不在を証明せよ。

 《故、神は不要ず(アドナイ・ノゼア)》」

 

一度転生し、覚えた技。

火力だけはピカイチで、それ以外の特殊能力を一切持たない、純粋な火力砲。

これは属性を持ちません。

いかなる属性でもない。

無という属性でもない。

ただ、純然たる力。

故にこそ。

 

「神の不在証明となるのです」

 

放った瞬間、着弾する一撃。

真白に輝く光がステラフォルに直撃し、爆散します。

 

《盗人ガァァアアアア嗚呼ああ!!》

 

ふふ、良いのが決まりましたね。

さて、水面月姫さんが一日で終わらせると意気込んでいる以上、私も相応にリソースを吐きましょう。

良き取引相手の意気込みを無下にするほど、私も薄情ではありませんからね。

 

『うぉぉぉおお!!《コイン・トス・コール》!!』

 

しかし、いささか散財しすぎなのでは?




・八八口径魔導電磁砲
レオナが基礎設計を手掛け、キャスパリーグによって改修が行われた「魔法で動く超電磁砲(レールガン)」
心に刻んだ夢が放たれてしまう逸品が13門も用意されてしまいました……。
弾丸は手作りなので7斉射分しか弾薬がない。
今後の課題。

・キャスパリーグ(社長)(カナおばさん)
本作品の舞台であるUJOのひな型(世界としてはほぼ全部)を作って下の人間にスケジュールとかその他諸々ゲーム部分を丸投げしたクソボケ。
技術屋としては数世代先を行っている技量を持つが、その技術を自分の目的以外で使うことはない。
UJOを作った理由の5割が「自分がやりたいから」、4割が「友人である水面月姫と鬼目突姫と遊びたいから」、1割が「生まれる世界間違えてんなコイツ(レオナ)……ハコニワくらい作ってやるか」である。
余談だが、戦闘屋としても一流を誇っているが「ずっと戦うのは流石に飽きた」と生産職をやっている。
なお、本職は技術屋であるため馬鹿げたものが出来上がる。
運営と開発を任された人たちは頭を抱えた。
ちなみに八八口径魔導電磁砲、通称マギアレールガンはレオナとの共同開発。

・《星降る海の龍・ステラフォル》
封印されていた馬鹿デカドラゴン。
アマツマ●ツチみたいなタイプの龍、ただしサイズはアマツの3倍はデカい。
当然空を泳ぐというか飛ぶ。
縄張りが港町の近海なだけで別に海龍というわけではない。
というか分類的には神格とかの方が正しい。
巫女を乗っ取って俗世に干渉しながら港町の土地神として生きていたが、巫女の世代交代の時に歴代最高の資質を持った巫女であるコスモスが悪い男(シエル談)に引っかかって「生”き”た”い”!!」って叫んだので初代星の賢者第一席にボコボコにされて封印された。
今はコスモスと契約したレオナからコスモスの気配を感じて「契約したのか?我以外の者と……?」とブチギレして暴れている。
やってることが因習村の邪神みたいな感じだって?
それはそう。

・《故、神は不要ず(アドナイ・ノゼア)》
レオナの必殺技ポジション。
純粋な火力砲。
いかなる属性も持たない、というシンプルであるが故に厄介な特性を持つ。
地水火風闇光は勿論の事、時、無、幻と言った特殊属性、それどころか打撃、斬撃、刺突などの属性すらも持たず、プロジェクタイル属性ですらないヒットスキャン。
触れればダメージを受けるという概念が射出されたモノ。
そのため、属性防御や概念などの特殊防御を貫通してダメージを与えられる反面、シンプルに防御が固いと通らない性質を持つ。
リキャストタイムは2時間。

・《ラスト・リゾート》
水面月姫の最大の切り札。
リキャストタイム驚異の336時間。
丸々2週間もの長さを誇る。
その代わりに発動した戦闘において指定した範囲全てに『消費金額÷(10000×人数)』のレベル加算を行う。
特定バフ加算ではなく、「レベル加算」である。
正真正銘、最後の切り札。
水面月姫が持つ最大のジョーカーであり、最終手段。
今回、加算したレベルは50。
中堅層すら前線組に持ち込む大暴挙。
この一撃によって、水面月姫がため込んでいたポケットマネーがほぼ全て消し飛んだ。
商会の公的なお金はまだ無事。

・《コイン・トス・コール》
水面月姫のメインウェポン。
リキャストタイムは30秒。
《総資産÷1000000×消費金額(最低100000)》で威力が決まる銭投げアタック。
大本の参照元が総資産である点がミソ。
パイプドリーム商会が保有する総資産は揺るがぬ山と同義である。
なお、ラスト・リゾートでポケットマネーが消し飛んだのでケチケチ撃ってる。
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