Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
リアルの都合とかワイルズ発売とか重なってもう大変
積読消化とかもしてたら時間が過ぎ去っていた……
さて。
「ミネ。アインにここを守るよう通達してください」
『ホー』
アインにはかなりの経験値をつぎ込みましたし、ハウンドガイストたちには倒したであろうNPCやプレイヤーの経験値が入っています。
手早く強化をして、ここを守らせましょう。
現状の多少強くなったところで、決着がつくまで敵を通すことはないでしょう。
「さっきはいなかったね。作ったの?」
「ええ。私にはそういう能力がありますので」
「伝令役かな?」
「まあ、そんなところです」
別に見透かされたところで問題はありません。
元より、フクロウ型故に自由に空を舞うミネを捉えられるとは思っていませんし、それが分かったところで眼前の私を無視できる彼女ではありません。
確実にアインに命令は届くでしょう。
私は、この一番の危険因子を排除しなくては。
今からもう一度一時しのぎの戦力を出そうにも、間に合いません。
ですが《バチカル》は可能なら使いたくありません。
苦しいですが、まあ……
「せっかくですから、一対一で楽しみたいでしょう?」
「そうだね。私も、キミとは一対一が良いな」
「それは嬉しいことを言ってくれますね」
「でも残念なことに、キミのおかげで時間がないから、最初からフルスロットルで行くよ!!《バシリカ》!!」
やはり初手で使いますか。
即座に実行される大上段の振り下ろしが、とてつもなく速い。
ですが、目で追える範疇です。
対処は可能です。
「シッ!!」
――ガキィィィン!!
「うっそ!?」
「疲れるので、あまりやりたくはないのですけれどね」
やったことは極めて単純。
武器を側面から高速で打ち付け、打点をずらしました。
それだけです。
ですがこれ、非常に見極めが困難であり、相手が格上であればあるほど、私が精神的に消耗します。
なにせ足りないスペックを、繊細な技術でカバーしているわけですから。
「力と速度だけが強さではありませんよ」
「言ってくれるじゃんね……!」
先の一戦で、私が《バチカル》を使用したのには、三つ理由があります。
一つ、使い心地を知ること。
二つ、実際にペナルティを受けて見て何ができるか確認すること。
三つ、
一合、二合。
隔絶した技量の差に、ミカさんは驚いているでしょうね。
尤も、私は剣を合わせるたびに、じりじりと精神力が削られていくのですが。
瞬きすら許されないというのは中々苦しいものがありますね。
ですがそれだけです。
ここを切り抜けられなければ、魔王の道など不可能ですから。
「ちょっと!さっきと!!動きが!!!違い過ぎない!?!?」
「切り札を切らずに貴女を相手しているのですから、当然では?」
「絶対当ててやるんだから!!」
10分。
それだけの時間を耐えれば私の勝ちです。
やってみせましょうとも。
「クソ、あの指揮官誰かおとせねーのか!?」
「無理無理!隙が無い!!」
ミシェルとレオナが此度の雌雄を決する決闘を始めたのと同時刻。
領主館周辺では、アイン率いるハウンドガイスト部隊と、タンナの総戦力が対峙していた。
領主ギュスターヴが発動した特別なスキルにより、街の者には大規模なバフが掛かっていたが、しかしアインが構築した防衛網を突破できずにいる状態だった。
「なんか知らねーけどバフかかってんのに勝てないってどういうことだ!?」
それもそのはず。
決闘を開始する寸前、レオナがハウンドガイスト部隊を強化していたからだ。
多くの
それこそ、バフが掛かっていようと、初日程度のプレイヤーを楽に蹴散すことが容易くなるほどの量を。
故に防衛が可能であった。
それが無ければ、倒されていたのはアインたちの方だった。
「んー、あいつら成長してるねー。ちょっとやだなー」
「マジで?」
「さっきとかなり速度感が違うよ。間違いないよー」
それに、いち早く気付いたプレイヤーがいた。
ミシェルの様に特別な出自は持たないが、集団戦では追随を許さない実力者。
名を、リオンと言った。
「これは地道に何とかやってかないとねー。相手もそこまで積極的に攻撃してくるわけじゃないし……」
リオンは、戦局と相手の出方をよく観察していた。
ステータスは格上、そのうえ連携を取って来る集団のエネミー。
普通に考えてクソモンスターと言われても仕方がない類だ。
けれど、そこに彼は目を付けた。
「みんな~、ちょっと魔術師プレイヤー集めてくれない?僕に名案があるよー」
高度な知能を搭載されているのならば、駆け引きが出来る、と。
「集まったね~。じゃあやることは単純。魔法攻撃を一点に集中させて防衛網を破壊するよー。多分魔術師プレイヤーのみんなは死ぬほど狙われるだろうけど、そこはそれ、僕たちが守ろう。恐らく相手はそこまで数を割けないしね。そこを突こうか~」
可能な限り素早くこの包囲網を突破しなければ、リオンは事実上の敗北だと思っていた。
ミシェルのスキルの詳細を知っているわけではないが、しかしバフが掛かっているとはいえ、あの技量の怪物を相手にミシェルがどれほどの勝率を確保できるのか。
彼にとってはそれが不透明だった。
故に、焦りは見せず、されども焦燥感は抱いていた。
(これ中で決着ついたらボク達だけじゃ勝てないしなあ……)
そのため、相手にゆさぶりをかけて突破口を見出す。
それが彼のできることだった。
『……そう来たか。ガイストよ、部隊を一つ向こうへ向かわせろ。ここが勝負どころだ』
「わーお。流石に視野が広いねー。皆~、詠唱開始ー!向かってくる狼は無視して、奥の防衛網をぶち抜いてねー!」
派手に人員を動かせば気付かれる。
それは想定内。
問題は、向かってくる部隊を処理できるかどうか。
それに、この作戦の合否が掛かっている。
「僕はミシェルちゃんほどバカげた強さを持ってるわけじゃないけどぉー……」
「やるべきはやれる男だよぉー!!」
そうして、サービス開始初日に起きたというのに、長らく更新されることのなかった、魔法による大規模な集中攻撃が実行された。
多種多様な属性の雨あられ。
それは隠し要素として存在していた複合魔法を偶然にも引き起こし、大規模な破壊を撒き散らす。
――ドガアアアアアアアン!!
その規模、およそ半径50メートル。
現状、回避不可の範囲攻撃であった。
『ぐ、ぬぅ……!』
「あはは、効いてる効いてるー!!」
「リーダー、喜んでないで向かってくる狼手伝ってくださいよ!!」
「ごめんごめーん。前衛、今の爆発のところになだれ込んでー!!今が好機だよ!!」
「乗り込めー!!」
「イクゾー!!」
余波にてアインは少なくないダメージを受け、範囲内にいたハウンドガイストは消し飛んだ。
その穴を見逃すはずもなく、プレイヤーたちはなだれ込もうとした。
しかし。
『舐めるなよ。空いた穴は私が埋めればよいだけの事……ここは決して通さぬ!!』
「あっ?」
「ガッ!?」
「あえ~?身体が」
先陣を切って突撃したプレイヤーが、首を落とした。
否、落とされた。
『我が名はアイン。陛下の壱の騎士。此れより先は陛下と忌々しき天使の戦場。我らに出番はない』
「まいったねー。思ったより強いぞー、あの指揮官」
リオンは戦慄した。
例えなだれ込むことができても、あの指揮官級……アイン単騎で十分に瓦解すると。
戦局は事実上リセットされ、戦局は膠着していく……。
一方その頃。
「出し惜しみはしない方が良いんじゃない?」
「……」
レオナは、徐々に追い詰められていた。