Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~ 作:蓋然性生存戦略
あれからリアルで数日。
探索は順調に進み、街の復興もそこそこ。
悪役として優雅な下積みを続けています。
レベルは……実のところそこまで上がっていませんね。
プレイヤーやNPCを殺害した時は山ほど経験値が手に入りましたが、普通のモンスターを狩る分には雀の涙ほどの経験値しか手に入りませんでした。
しかし次々街を襲っては立ち行かなくなります。
コスモスさんのような強大な存在も確認できましたしね。
なので、ここはひとつ、ダンジョンでも見つけて独占しようかと。
塵も積もればという奴ですからね。
タンナの街を陥落させた以上、南部の土地は私のものと言っても過言ではありません。
配下に進ませていたマッピングも、南部はほぼ埋まったようなものです。
ダンジョンの類も、かなりの数を発見できているのは僥倖ですね。
「アイン、どこが良いと思います?」
「陛下。お忘れのようですが、私も産まれた時間で言えば陛下と大差ありません」
ついついアインに聞いてしまいましたが、そうでした。
産まれたての赤子のような状態でした。
「それもそうでしたね。となれば、自らの足で調査するのが道理というものでしょう」
「危険です、と申し上げたいところですが、申し上げたところで止まるつもりはないのでしょう?」
「もちろんです。まだまだ実力不足だと思い知らされました。少なくとも、あのコスモスさんを真っ向から降せるくらいでなければ、お話しになりませんから」
「ご謙遜を……しかし、かの賢者を見据えるのであれば、当然の話ですか」
「せめて私もアインも、呪言なる効果を受け付けないほどにならねば、と思います」
現状、目下の目標は打倒コスモスさん。
あの時は和解出来ましたが、いざ戦うとなれば敗北を喫するのは私でしょう。
どんな手を使っても、今は勝てるビジョンが思い浮かびません。
致し方のないことではあります。
私はまだ産まれたてのニュービーですからね。
そこに隔絶した差があるのは当然のことです。
差があるのなら、埋めれば良いだけの話ですしね。
「というわけでアイン、出立しますよ」
「御意に」
下積みは大事です。
私の望む最期を迎えるためならば、苦ではないですし、何なら楽しいですしね。
まずは報告にある限り、最も難易度の高そうなダンジョンを目指しましょう。
他のダンジョンは随時配下を向かわせてレベリングです。
というわけで辿り着いたのですが。
「……ん、私も」
「なぜいるんです、コスモスさん?」
いつの間にかコスモスさんが合流していました。
なぜ?
「……暇だから」
「そうですか」
「……言いたいことは分かってる、言って良い」
「見た目通りなのだな、と思いました」
「……思ったより、傷付くね……」
どうやら、コスモスさんは暇で仕方がないらしいです。
まあ、暇は人生の大敵とも言います。
悪いことではないでしょう、きっと。
「……それで、このダンジョンの詳細は分かっているの?」
「いえ、全く」
「陛下、表層部分の概要ならば報告にあったと思うのですが……」
そうでしたか?
とはいえ、表層部分だけでは判断が出来ません。
やはり潜ってみる方が良いでしょう。
「……このダンジョンは、大きくて、歴史も長かったはず。百年前に調べた時は、百階層を超えていたと思うけれど……」
と思いましたが、コスモスさんが情報を出してくれました。
聞くからに巨大なダンジョンですね……攻略の甲斐があるというものです。
それに、良いことも思いつきました。
「陛下、流石に無茶では?」
「もしかしたら……おぉ、これは良いビジョンかもしれませんね。あとで図案を描きましょう」
「……純粋な色が輝いて見える……眩しい」
ともかく潜ってみましょう。
わくわくしてきました。
「行きますよ、アイン、コスモスさん。舞い上がって来ました……!!」
「陛下、お待ちを。せめてわたくしめを先頭に……!!」
「……たのしみ」
いざ、突撃です……!!
「なんて思っていた時期が私にもありましたね」
「何を冷静に言っているのですか?もとはと言えば陛下の不注意ですよコレ」
「段々フランクになって来ましたね。嫌いではないですよ」
「……すごい、ね。転移トラップからモンスターハウスを初手で引くなんて」
ダンジョン突撃から5分。
舞い上がっていた私は転移トラップを踏み抜き、全員でモンスターハウスに叩き込まれました。
凄いですね、途轍もない確率の元で何かが起きています。
適度に呪文をばらまきつつ近接主体で戦っていますが、数が減った気がしません。
目に見える範囲で、目算百体くらいは見えますね。
「それなりに強いようですし、出口を確保したらしばらくここで戦っていても良さそうですね」
「陛下?冗談ですよね?」
「……ん、悪くないと思う。出口はあっちの方向だって星が言ってる。向かおう」
「では道を切り開くので、前を任せましたよ、アイン」
「おまかせを!」
「《トフー》!!!」
ドカンと一発。
群れに穴を開けて、なだれ込みます。
「駆け抜けますよ!!」
「……こんな鉄火場も、久しぶり。楽しい」
トフーを用い、一直線に道を作りましたが、やはり再び埋まるのが早いですね。
急いで駆け抜けてしまいましょう。
「……そう言えばなんだけどここが何階層か、解ってる?」
「そう言えば知りませんね」
なにせ転移トラップを踏みましたからね。
地続きの地図なんてものは私のデータにはございません。
コスモスさんは分かっているのでしょうか?
期待の意味を込めて視線を投げます。
「……今は26階層から29階層のどこか。30階まで下りて、直通の道を開いた方が、帰るのは楽だと思う」
「有益な情報をありがとうございます。一足飛びに20階層後半とは。運がいいのか悪いのか」
とても具体的な数字が出てびっくりしました。
そう言えば以前調べたとか言っていましたね。
「どう考えても悪いと思いますが」
「でも経験値は沢山です。ああ、全てが財宝に見えてきました」
「……案外余裕?」
「ふふ、どうでしょうか。案外何も考えていないかもしれませんよ?」
「……あなたが楽しめているのなら、それでもいい」
ふむ。
コスモスさんは時折不思議な言動をしますね。
私に何を見ているのでしょうか。
何かフラグでも踏んだのでしょうか?
よく分かりません。
「……もうすぐ、このモンスターハウスの出口付近。頑張ろう」
「そう言えばコスモスさんは戦闘に参加されないので?」
「……私が参加したら、色々とダメになる」
「まあ、それもそうですか」
さぁ、楽しい楽しいモンスターファームはすぐそこです。
総て私の経験値にしてくれましょう。
ふふふふ、アハハハハハハハハハハハ!!