Übel or Justiz Online ~悪役少女の破滅の道~   作:蓋然性生存戦略

8 / 28
暇な賢者とダンジョンアタック

あれからリアルで数日。

探索は順調に進み、街の復興もそこそこ。

悪役として優雅な下積みを続けています。

レベルは……実のところそこまで上がっていませんね。

プレイヤーやNPCを殺害した時は山ほど経験値が手に入りましたが、普通のモンスターを狩る分には雀の涙ほどの経験値しか手に入りませんでした。

しかし次々街を襲っては立ち行かなくなります。

コスモスさんのような強大な存在も確認できましたしね。

なので、ここはひとつ、ダンジョンでも見つけて独占しようかと。

塵も積もればという奴ですからね。

タンナの街を陥落させた以上、南部の土地は私のものと言っても過言ではありません。

配下に進ませていたマッピングも、南部はほぼ埋まったようなものです。

ダンジョンの類も、かなりの数を発見できているのは僥倖ですね。

 

「アイン、どこが良いと思います?」

「陛下。お忘れのようですが、私も産まれた時間で言えば陛下と大差ありません」

 

ついついアインに聞いてしまいましたが、そうでした。

産まれたての赤子のような状態でした。

 

「それもそうでしたね。となれば、自らの足で調査するのが道理というものでしょう」

「危険です、と申し上げたいところですが、申し上げたところで止まるつもりはないのでしょう?」

「もちろんです。まだまだ実力不足だと思い知らされました。少なくとも、あのコスモスさんを真っ向から降せるくらいでなければ、お話しになりませんから」

「ご謙遜を……しかし、かの賢者を見据えるのであれば、当然の話ですか」

「せめて私もアインも、呪言なる効果を受け付けないほどにならねば、と思います」

 

現状、目下の目標は打倒コスモスさん。

あの時は和解出来ましたが、いざ戦うとなれば敗北を喫するのは私でしょう。

どんな手を使っても、今は勝てるビジョンが思い浮かびません。

致し方のないことではあります。

私はまだ産まれたてのニュービーですからね。

そこに隔絶した差があるのは当然のことです。

差があるのなら、埋めれば良いだけの話ですしね。

 

「というわけでアイン、出立しますよ」

「御意に」

 

下積みは大事です。

私の望む最期を迎えるためならば、苦ではないですし、何なら楽しいですしね。

まずは報告にある限り、最も難易度の高そうなダンジョンを目指しましょう。

他のダンジョンは随時配下を向かわせてレベリングです。

 

 

 


 

 

 

というわけで辿り着いたのですが。

 

「……ん、私も」

「なぜいるんです、コスモスさん?」

 

いつの間にかコスモスさんが合流していました。

なぜ?

 

「……暇だから」

「そうですか」

「……言いたいことは分かってる、言って良い」

「見た目通りなのだな、と思いました」

「……思ったより、傷付くね……」

 

どうやら、コスモスさんは暇で仕方がないらしいです。

まあ、暇は人生の大敵とも言います。

悪いことではないでしょう、きっと。

 

「……それで、このダンジョンの詳細は分かっているの?」

「いえ、全く」

「陛下、表層部分の概要ならば報告にあったと思うのですが……」

 

そうでしたか?

とはいえ、表層部分だけでは判断が出来ません。

やはり潜ってみる方が良いでしょう。

 

「……このダンジョンは、大きくて、歴史も長かったはず。百年前に調べた時は、百階層を超えていたと思うけれど……」

 

と思いましたが、コスモスさんが情報を出してくれました。

聞くからに巨大なダンジョンですね……攻略の甲斐があるというものです。

それに、良いことも思いつきました。

 

「陛下、流石に無茶では?」

「もしかしたら……おぉ、これは良いビジョンかもしれませんね。あとで図案を描きましょう」

「……純粋な色が輝いて見える……眩しい」

 

ともかく潜ってみましょう。

わくわくしてきました。

 

「行きますよ、アイン、コスモスさん。舞い上がって来ました……!!」

「陛下、お待ちを。せめてわたくしめを先頭に……!!」

「……たのしみ」

 

いざ、突撃です……!!

 

 

 


 

 

 

「なんて思っていた時期が私にもありましたね」

「何を冷静に言っているのですか?もとはと言えば陛下の不注意ですよコレ」

「段々フランクになって来ましたね。嫌いではないですよ」

「……すごい、ね。転移トラップからモンスターハウスを初手で引くなんて」

 

ダンジョン突撃から5分。

舞い上がっていた私は転移トラップを踏み抜き、全員でモンスターハウスに叩き込まれました。

凄いですね、途轍もない確率の元で何かが起きています。

適度に呪文をばらまきつつ近接主体で戦っていますが、数が減った気がしません。

目に見える範囲で、目算百体くらいは見えますね。

 

「それなりに強いようですし、出口を確保したらしばらくここで戦っていても良さそうですね」

「陛下?冗談ですよね?」

「……ん、悪くないと思う。出口はあっちの方向だって星が言ってる。向かおう」

「では道を切り開くので、前を任せましたよ、アイン」

「おまかせを!」

「《トフー》!!!」

 

ドカンと一発。

群れに穴を開けて、なだれ込みます。

 

「駆け抜けますよ!!」

「……こんな鉄火場も、久しぶり。楽しい」

 

トフーを用い、一直線に道を作りましたが、やはり再び埋まるのが早いですね。

急いで駆け抜けてしまいましょう。

 

「……そう言えばなんだけどここが何階層か、解ってる?」

「そう言えば知りませんね」

 

なにせ転移トラップを踏みましたからね。

地続きの地図なんてものは私のデータにはございません。

コスモスさんは分かっているのでしょうか?

期待の意味を込めて視線を投げます。

 

「……今は26階層から29階層のどこか。30階まで下りて、直通の道を開いた方が、帰るのは楽だと思う」

「有益な情報をありがとうございます。一足飛びに20階層後半とは。運がいいのか悪いのか」

 

とても具体的な数字が出てびっくりしました。

そう言えば以前調べたとか言っていましたね。

 

「どう考えても悪いと思いますが」

「でも経験値は沢山です。ああ、全てが財宝に見えてきました」

「……案外余裕?」

「ふふ、どうでしょうか。案外何も考えていないかもしれませんよ?」

「……あなたが楽しめているのなら、それでもいい」

 

ふむ。

コスモスさんは時折不思議な言動をしますね。

私に何を見ているのでしょうか。

何かフラグでも踏んだのでしょうか?

よく分かりません。

 

「……もうすぐ、このモンスターハウスの出口付近。頑張ろう」

「そう言えばコスモスさんは戦闘に参加されないので?」

「……私が参加したら、色々とダメになる」

「まあ、それもそうですか」

 

さぁ、楽しい楽しいモンスターファームはすぐそこです。

総て私の経験値にしてくれましょう。

ふふふふ、アハハハハハハハハハハハ!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。