今回、キリ良くするために短め
アンケートへの参加、誠にありがとうございます
「アメリカのIS保有基地に襲撃、ねぇ………」
「随分と派手に動き出したモンだな」
IS学園生徒会室。書類を捌きながらつい先程入った報告書に目を通す楯無。その右隣、同じく書類をまとめるのはナナだ。学園祭の件以降、本格的に生徒会所属となったナナと一夏。役職は贔屓と見られないように副会長を一夏が、庶務兼相談室委員としてナナが割り振られた。
現在はここに虚を加えたいつも通りの3人で作業中。一夏はクラス代表の仕事があるらしく、遅れてくるとのこと。
「情報によれば襲撃者は1人。以前奪われたイギリスの第3世代型の実験機、サイレント・ゼフィルスに乗っていたみたいね。アメリカの国家代表を撒いたみたいよ」
「奪わせなかっただけよかった、と考えるべきだろうな」
「そうね。機体コンセプトとしてはセシリアちゃんのブルー・ティアーズと同じ本体は高速機動によって撹乱、BT兵器を駆使して隙を狙うって感じね。そうなると複数人で囲んだ方がいいのかもしれないけど………」
「下手すりゃ上手く誘導されて同志撃ちだろうな」
「そうなのよねぇ………虚、どう思う?」
「………そうですね。言わせていただくことがあるとすればーーー2人とも、距離が近すぎです」
今まで書類に目を向けていた虚が視線を2人に向ける。肩が触れ合うような距離で報告書と睨めっこする姿は、まさしくバカップルという言葉がふさわしい。
2人が付き合った初日以降、楯無は多少落ち着いた。しかし、それは当初の浮つきがなりを潜めただけで、十分に青い春を謳歌している。最近では距離がより近くなった事もあり、学生の間ではついにヤッたのかと臆測が飛ぶほど。
しかし、自覚はないのだろう。楯無は何を言ってるのかわからないとばかりに、こてんと首を傾げた。
「?このぐらい大丈夫でしょ?ねぇ?」
「………いや、近ェよ」
「えー。嫌なの?」
「嫌じゃねェ。嫌じゃねェが………その、集中できねェンだよ」
ナナに同意を求めるが、ナナはナナで無意識のうちの行動。それを意識して仕舞えば後に残るのは羞恥心だ。楯無の香りが、体温が、肩を少し動かせば当たる感触が、どれもナナを惑わせる。
顔を赤くして逸らすナナに、楯無はニヤリと笑う。
「へー?恥ずかしいんだ?」
「………ああ、その通りだよ。わかったら、離れてくれ」
「嫌よ。ナナくんの顔もっと見たいもの」
「はいはい、ごちそうさまです。お嬢様、そろそろ怒りますよ?」
「はーい」
虚にそう言われては引くしかない。椅子を引いて離れようとするナナを追う事をやめ、楯無は素直に返事を。書類作業に戻る楯無とは反対に、ナナは爆音を奏でる心臓を宥めるのに精一杯だ。
付き合いだしてからずっとこの調子なのだ。手は出さない決心を、楯無は嘲笑うかの様に攻め立てるのだから心臓が保たない。具体例をあげれば彼シャツしていたり、膝枕を要望したり、風呂上がりに抱きついて来たり。
そも、仕事ならまだしもこうして個人として付き合うのは初。勝手がわからない故にナナは後手に回るしかなかった。
楯無としては、限られた期限の中恋人らしいことを存分に味わいたいだけであり、こうして甘えたいだけなのだが。
最近お気に入りのコーヒーを一口。虚はため息を溢して2人を見る。
互いに好きだと言う事を言葉だけでなく行動に表しているという点は、確かに羨ましい。自分もいつかそうなれば、と妄想してしまう。それでも、せめて時と場所は選んで欲しい。虚の胸焼けのためにも。
「惚気てばかりいますが、書類は終わったのですか?」
「あらかたな。まともな申請が少ねェ」
ナナの仕事は各部への男子貸し出し、その申請書の整理と割り振りだ。だが、その理由が大抵ご褒美目当て。これを機に男子と仲良くなるのだ、と書類越しでその意気込みが伝わってくる。
「マネージャー作業ならまだしも、男子と食事会だの街へ買い物だの………こいつら頭大丈夫か?」
「まぁ、同じ乙女としては気持ちはわかるけどねぇ………」
まともに見える申請書も、その裏で何かを画作していることは間違いないのだが、それは置いておく。そこまで行くと貸し出しの意味がなくなるからだ。
「部活動と関係ない要望は否認、そして再提出。何にしても、部活に関わる範囲でと念を押しましょう」
「まぁ、そうなるわな」
「すいません、遅れました!」
「一夏、待ってたヨ」
生徒会室のドアを開けて来訪する一夏。瞬時に意識の切り替えをするナナを、楯無は影で笑う。あまりの変わり身の早さが最近のお気に入りである。同時に、自分たちにしか素顔を見せない優越感が含まれているのだが、それはさておき。
「遅かったネ。何かあったの?」
「途中で女子たちに捕まった………。男子の貸し出しはいつになるんだって聞かれて大変だったんだよ」
「あら、ちょうどよかった。その割り振り作業をやってほしいのよ」
「ああ、はい。ええっと…………食事会とか買い物とか、マジか?」
「流石にボツだネ。ちなみに一夏、箒たちもculbに入ったンだって?」
「ああ。箒が剣道部で、鈴がラクロス部、セシリアがテニス部で、シャルが料理部、ラウラが茶道部だったな」
一夏の言葉を聞きながら、書類の山から紙を取り出す。5つの部活、そのどれも申請内容に不備はない。それらを裏返すと、一夏の前に差し出す。
「それじゃあ、一夏。この中からselectネ。初めての貸し出しは、そこにするヨ」
「そんな決め方でいいのかよ………」
「あら、面白そうじゃない。今後もその決め方でいきましょ」
「そういえばこう言う人だったな………」
これでいいのか?と疑問を込めた一夏の視線だったが、生徒会長はOKを出してしまう。聞いた自分が愚かだったと思いつつ、以前のナナならば内容を吟味して1番まともなモノを選んだだろうに。順当に楯無のノリに染まっている事だろう。
「ン?一夏、なンでそンな哀れみの視線を向けるんだイ?」
「いや………言わないでおく」
口に出したらそれこそ楯無の思惑通りだ。今も惚気るタイミングを伺う視線を向けていた。彼女がいることに、羨ましいとは年頃の男子らしく一夏も思う。少しナナが遠くなった気がして寂しいが、本人が幸せならそれでいいと言う事にした。
「ちなみに、何でその5枚からなんだ?」
「最初は知り合いがいた方がいいだろウ?」
それは建前であり、実のところ5人からの圧がかけられている。具体的に言葉にされたわけではないが、明らかに「最初は自分のところにしてくれ」と視線が語りかけていた。
それを思い出してナナは少し遠い目を。この唐変木にはいっそ、既成事実でも作った方がよっぽと効果があると思うのだが。
「そっか。まぁ、確かにそっちの方が………なんでそんな残念な奴、みたいな目で見るんだ?」
「いや………言わないでおくヨ」
言ったら最後、刺されそうな気がするので沈黙を選ぶ。第三者から好意をバラされて喜ぶ乙女はいないだろう。
さて、その結果選ばれたのはテニス部。残り4人には悪いが、これもくじ運である。なぜだと詰められる未来が見えたが、努めて見なかった事にしたいと願うナナであった。
◇◆◇◆
その翌日。本日のナナの業務は相談室勤務だ。
特訓や生徒会業務で閉鎖していた分、久しぶりの再会に予約者は殺到。それぞれ30分の時間制限を取り、抽選制となった今回。本日最後の来訪者にナナは頬をひくつかせる。
「………なんですの、その目は」
「なンでもないヨ………」
イギリス代表候補生にしてクラスメイトのセシリア・オルコットがそこにいた。マジかよ、と訝しむ視線に少し怒りを勝ったが、それはさておき。こほん、と喉の調子を整えたナナは早速本題へと移る。
「それで、何を相談したいのなナ?」
「それは、その………」
言い淀むセシリアだが、ナナは既にその内容に当たりをつけている。ここでグダついても時間の無駄だ。ため息混じりに本題へと入る事にしよう。
「当ててあげるヨ。一夏のberth day partyのことだろウ?」
「んなっ⁉︎なぜその事を⁉︎」
「君以外にも相談が来たからだヨ」
シャルロットを始め、ラウラ、鈴と続き、箒までもが相談に来たのだ。内容は揃いも揃って一夏に何をプレゼントすればいいか、である。驚愕するセシリアだったが、ナナの返答に納得。
何せ、距離を縮めるチャンスなのだ。少しでも印象に残りたいと思うのも仕方がない。
「そ、それなら話が早いですわ。………ちなみに、他の方は何をプレゼントするつもりですの?」
「ソレは守秘義務でいえないヨ。それに、一夏なら気持ちが籠っていればAll okだヨ」
流石に誕生日に何が欲しいかと聞くほど野暮ではない。と言うより、直接聞いた方が早いだろうにとナナは思ってしまう。競争率が高いのであれば、それだけで印象に残るだろう。なぜと聞かれたら、アナタを喜ばせるためにと言えばいい。唐変木であるが、初心でもある一夏になら効果覿面だ。
「そう、ですわよね………ちなみに、オーウェンさんは誘われていまして?」
「勿論だヨ。誘われない理由がないネ」
「まぁ、お二人の関係でしたらそうなりますわね。あそこまで仲がいいと羨ましくありますわ」
「同性だからネ。話せる事もたくさんあるヨ」
「ち、ちなみにですが、一夏さんはわたくしの事、なんとおっしゃって?」
「ソレも、オレの口からはいえないヨ」
主に一夏からは懺悔が多いのだが。偶に箒たちをそう言う目で見てしまう、という事なのだが年頃の男などそのような者だろうと慰めを。あと、自身は牧師でもなく、ここは懺悔室でもないと付け加えているが、今のところ聞き入れられた様子はない。
「もう、お堅いですわね」
「信頼に関わるからネ」
まぁ、それもそうだろうとセシリアも納得を。何でも喋る様ならこのような相談役にお鉢は回ってこなかっただろう。
一夏と比べ軽薄な印象が持たれる事の多いナナだが、ちゃんと線引きはできている事はセシリアも知っている。だからこそ、セシリアたち5人の中誰かを贔屓したりしないし、クラス内でも困りごとがあれば真っ先に頼られているのだ。
「それで、楯無会長とはどの様に過ごしておられるのですか?」
「オレの話かイ?プレゼントの話はどうなったノ?」
「いいじゃありませんか。まだ時間は残っているのでしょう?」
思えば、こうしてナナと話す事は今までなかった。こう言う機会も偶にはいいのかもしれない、と話題のカップルの話を。恋愛に敏感なのは、女子の特権である。
「それに、話していれば何をプレゼントするかのヒントになるかもしれませんし」
「………まァ、そう言うことナラ」
伝え聞く限り、彼女もだいぶ変わった者だとナナは思う。何せ最初は自国以外は認めない、選民思想の強かったらしいのだから。イギリスの会社の社長であり、国家代表に選ばれるエリート。そうなるのも仕方がないと言えるし、それに見合う努力を彼女は続けてきたのだろう。
だからこそ、男と言うだけで入学させられた一夏が最初は気に食わなかった。ISもよく知らない、ただ才能があるだけの素人だと。
それがクラス代表を決める試合で見事に様変わり。どんな心境の変化があったまでは知らないが、一夏に好意を寄せる様になったのだ。
そんな人物が、自身の話を聞きたいなど相当な変化。それな良いものなのか悪いものか、判断はナナにはできない。だが、少なくとも周囲との軋轢は小さいだろう。
「ウーン………と言っても、普通だヨ?膝枕したり、抱きつかれたり、手を握ってきたり」
「ふ、普通ですか、それ?」
「ああ、デモ。起きた時に抱き枕代わりにされてるのは、ビックリしたネ。心臓に悪いヨ」
「詳しくお願いしますわ」
今後の役に立つのであれば、根掘り葉掘り聞き出そう。その決意を元にセシリアは乗り気だったが、相手が悪かった。学園一熱いとされるカップルの熱量と惚気具合を。
ナナもナナで事実をポンポンと話しているだけで、恥ずかしがる様子はなく、また思い出して羞恥に悶える様な話は選別している。結果として時間制限30分、相談室を出てきたセシリアは甘味をドカ食いさせられた様に、酷い胸焼けに悩まされるのであった。
◇◆◇◆
その日の夜。一夏たちと夕食を終え、自室に戻ったナナ。
「戻ったぞ」
「おかえりなさい」
いつものやり取り。しかし、いつもと違うのは楯無の表情だろう。ニコニコと、何が嬉しいのかナナを見つめる。これが何か企んでいるモノであればナナも警戒できるが、これはどちらかと言えば溢れんばかりの喜びを抱えているモノ。
最初のころならまだしも、付き合い出して数週間、同棲ならば数ヶ月は経ったのだ。何を今更喜ぶことがあるのかと頭を悩ませるナナに、楯無は含み笑いを溢しながらベッドに腰掛けたナナの隣に座る。
「ふっふーん。ナナくん、随分と惚気てたわねぇ」
「あ?あー………」
何のことはない、本日の相談室の一幕のことだろう。例の如く、監視カメラで覗かれていたらしい。
「まぁ、話せって言われたからな」
「それでも、彼女としては嬉しいものよ」
甘えてもナナが乗ることはなく、内心嫌がっているのではないかと不安を覚えていたこの頃。それが杞憂だとわかったのだ。小躍りしたいほどに楯無のテンションは高かった。
「私の魅力に飽きちゃったのかって、心配だったんだから」
「ンなわけねェだろ………。だがな、楯無ーーー」
「あら?2人きりの時はなんて呼ぶんだったかしら?」
「……………………か、刀奈」
身内などを除き、自分だけに呼ぶ事を許された名前。それが気恥ずかしく、未だそう呼ぶのには慣れていない。その度に顔を赤くして言葉に詰まってしまう。
同時に、楯無も彼氏にそう呼ばれる事を楽しみにしているので、ナナが慣れるしかないのだが。
「んんっ!それよりも、だ。オレは刀奈に手は出せねェ。それは話しただろ?」
「そうね。お互いのために、その一線は超えないって」
「ああ、そうだ。だから、その……誘いには乗れねェンだよ」
「へー………」
ニヤリ、と笑った楯無がナナの肩に頭を置く。びくり、と肩を振るわせるナナだが、拒絶するようなことはない。
「じゃあ、どこまで甘えていいか、そのラインを決めましょう。このくらいなら平気?」
「………まぁ、そうだな」
「じゃあ、これは?」
そのままナナの手の上に、自身の手を重ねる。男の子らしいゴツゴツとした手の感触を楽しみながら反応を伺う。今度は顔が赤くなるナナだが、まだ耐え切れるのだろう。首を縦に振った。
それならば、と今度はその手を取って互いの手のひらを合わせて、指を絡ませる。所謂恋人繋ぎだ。楯無もこれは少し恥ずかしいが、ナナほどではない。タコの方がまだマシだろうと言うほどに顔を赤くすると、黙りこくってしまう。
なるほど、ここら辺が今の限界かと楯無は見定める。しかし、好奇心が疼く。これより先に行ったらどうなるのか、それが気になって仕方がない。
「ふふふ、これならどうかしら?」
羞恥心に固まり、動かないナナの頬に口付けを。一度経験したとは言え、あの時ナナに意識はなかった。だからこそ、楯無はやってみたかったのだ。どんな反応をするのか。どんな行動に出るのか。そして、好奇心というのは時に猫を殺すという事を実感した。
「ひゃ⁉︎」
一瞬の出来事である。ナナが繋がれた手をそのままに楯無がベッドに押し倒された。完全に油断していたからこそ反応が遅れ、覆い被さるように楯無の肩を抑えるナナ。興奮からか呼吸は荒く、天井の照明で逆光となり楯無からはよく見えないが、それでも野獣の様に飢えた瞳が楯無を捉えていることはわかる。
ドキリ、と心臓が跳ねる。拒否しなければと考えるが、初めて見るナナの獣の部分。それに思わず見惚れてしまい、楯無の動きが固まる。そのままゆっくりと顔を近づけるナナに、ついにそうなるのかと期待半分で目を瞑る楯無。そしてーーー
「………わかっただろ?煽ったらどうなるか」
「ひゃ、ひゃい」
耳そばでそう呟かれ、回らない呂律で返事を。それに満足したのかナナは楯無の上から退くと、楯無の顔を見る事なくシャワー室へ。
「………少し、頭を冷やす」
どこか気落ちしたような、自身を責めるようにして消えるナナ。やってしまったという後悔と、その先に進みたいと思ってしまった事に対する自省。暫くは冷水を浴びて落ち着けるつもりである。
対して拘束を解かれた楯無。だと言うのにベッドに仰向けのまま、高鳴る心臓を抑える。その頬は真っ赤に染まり、初めて見た男の獣の部分に動揺を隠せない。
もしナナが襲うつもりなら抑え切れると、過信していたのだ。けれど、結果は散々。あのままであれば決まり事など忘却の彼方へと放っていただろう。
先ほどのナナに恐怖がなかったかと言われれば、嘘になる。だが、それ以上に期待してしまった自分がいるからこその胸の高鳴り。
もう一度見てみたい気も、と考えるが頭を振って否定する。それはナナの決意に唾を吐くようなものだ。信頼を裏切る様な真似はしたくはない。
(でも、ラインはわかったわ)
まずは手を繋いで慣らしていこう、と決める楯無。付き合える期間は残り1年半程しかないのだ。ナナが将来迎えに来てくれると信じてはいるが、それはそれ。今のうちに甘えられるだけ甘えたいと妥協を許さない。
そして、人は同じ刺激を受けると慣れる生き物だ。慣れて、慣らして、そのラインを緩くしてしまえばより一層甘えられると期待して。
そこまで考えて楯無のケータイが鳴っている事に気がつく。どうやら考え事に没頭しすぎていたらしい。
「はい、もしもし」
「随分とお楽しみのようだな」
「お、織斑先生⁉︎」
画面を見ずに反射的に対応を。電話口から聞こえる声に驚き、身体が飛び起きる。てっきり監視カメラを覗く虚からの小言だと思い、完全に油断していた。
「更識、お前たちの関係は黙認するつもりだ。だが、節度ある付き合いをしろと厳命したはずだが?」
「それは………はい。つい、調子に乗ったいいますか、好奇心が勝ったといいますか………」
「言い訳は無様。2人に反省文の提出、そして3日間の特別訓練。無論、オーウェンとは別日だからな」
「わ、わかりました………」
画面越しとはいえ、現場を見られたのだ。そも、言い訳が通じる相手でもない。しかも特別訓練の間、ナナとは会えないのだ。がっくりと肩を落とし意気消沈。
通話が切られると、タイミングを見計らったようにシャワー室からナナが顔を出した。いつもの様に上半身裸であるが、流石の楯無も今の状況で抱きつけるはずはない。
「あ?どうかしたのか?」
「………織斑先生に見られてたみたい。反省文と特別訓練を言い渡されたわ」
「What the fuck⁉︎God demn‼︎」
天を仰ぎ、口汚く罵るナナ。確かに危ない場面だったが、自制したのだ。褒められてもいいだろうと言う思いを込めて。
それは楯無も同じで、反抗心がメラメラと燃え上がる。肩をワナワナと振るわせた楯無はバッと顔を上げると、裾から取り出した扇子を開く。書かれているのは「逢引」の文字。
「よし、今度の週末、デートするわよ」
「………待て、なンでそうなる?」
「学生らしい、節度あるお付き合いをお求めの様だからよ‼︎」
理由になってないが、あまりの剣幕にナナは黙るしかない。何せ楯無とナナで3日間。合計6日もの間、特別訓練で放課後を制限されるのだ。帰ってきても疲れてまともに甘えることはできないだろう。せっかくラインがわかり、ナナを慣らしていけると思った矢先なのである。故に、今週末のデートで思う存分甘える。甘えてナナのラインを緩くする、と楯無は心に決めた。
「まずは反省文、そしてどこに行くか決めるわよ‼︎」
「お、おう………」
こう言う時、黙って頷くのが吉である。鬼気迫る勢いで反省文と向き合う楯無を尻目に、ナナは思う。どの道、この会話を聞いた誰かが監視するに決まってるいるのだ。当日、楯無が思うほどのデートができるのか怪しいものだと、つい想定してしまう。
(………まぁ、それでいいだろ)
監視がついていた方が、万が一の場合止めてくれるだろう。それはナナにとってありがたい事だ。それに、付き合って初めてのデートである。少しばかり浮かれている自身がいることに、最早ナナに驚きはなかった。
というわけで、次回はデート回