IS 首輪付きの死刑囚   作:桜大好き野郎

5 / 52
4話

 

 

「そ、それは本当ですの⁉︎」

 

「う、嘘ついてないでしょうね⁉︎」

 

 月曜日の朝、教室に向かう廊下の一夏たちにまで響く声に3人は目をしばたたかせた。

 

 

「なんだ?」

 

「さあ?」

 

「I don't know」

 

 

 3人が知る由もないが、女子の間では今最も熱い噂話。今月末に開催される学年別トーナメント。その優勝者には織斑一夏と交際できる、と流布されているのだ。

 元は篠ノ之箒が自らのプライドと格闘し、漸く優勝したら付き合ってくれと宣言したのだがいかんせん場所が悪かった。何せ人通りが少なかったとは言え、宣言した場所は一年生寮、その一夏の部屋の前だったのだから。

 それが聞こえた数人がその日のうちに情報を共有し、そして気がつけば尾鰭背鰭ついて学園全体に浸透していた。

 

 余談であるが、次点でよく噂されているのはナナが一夏に好意を寄せているというもの。ラウラから庇った件が都合よく解釈されたらしく、一部界隈はそれはそれは盛り上がっていたそうだ。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 当然ながら、噂の渦中の人物には秘密。話を聞こうとした一夏だったが、あからさまに話を逸らされて避けられてしまう。それだけで碌でもない事なのだろうと当たりを付けるナナ。自身が関わっていない事を祈るばかりだ。

 

 

(にしても………)

 

 

 ちらり、と隣のシャルルに視線を向ける。あのラウラとの一件以降、何があったかは知らないが一夏と距離が近い様に伺える。同室ということもあり、恐らく偽装がバレたのだろう。

 それでも尚、男装を続けられているという事は一夏はこの事を教師陣に報告、または相談していないということ。なるほど、秘密を共有して距離を縮め、自然に本国へと輸送するつもりだろうと邪推する。

 

 先手を取られたのは痛いが、まだ巻き返しは効く。多少の焦りは持ちつつも、ここで慌てても仕方がないと動揺した様子はない。気合いを入れる様に笑顔の仮面を被り直し、目を閉じて腕を組むラウラの隣へと座るのであった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 さて、事件が起きたのはその日の放課後。

 学年別トーナメント優勝目掛けて特訓しようとしたセシリアと鈴がラウラに襲われたのだ。理由は八つ当たり。敬愛する織斑千冬がドイツの教官として再び返り咲くことはないと知ったラウラの癇癪だ。

 

 本人は本人で、教官が教えてくれた技術などを披露し続ければきっと戻ってくるだろうと考えていたのだが、その根本になぜお前ら如きがという気持ちがあった。

 

 二対一だというのにラウラの被害はISの装備の破損のみ。対するセシリアと鈴はダメージ限界を超え、ISを一時使用不可まで追い込まれたのだ。これ以上続ければ操縦者にも多大な影響が、と言うところで偶々特訓に顔を出した一夏がそれを保護。シャルルの牽制、そして何より事態を聞きつけて駆けつけた千冬の鶴の一声もありその場を沈めることに成功した。

 

 そして現在、多少なりとも傷を負った2人を医務室に運び、治療を受けたセシリアと鈴音がむくれていた。

 

 

「別に助けてくれなくてよかったのに」

 

「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

 

「HAHAHA!Nice one(ナイスジョーク)!」

 

「うっさい!笑ってんじゃないわよ!」

 

 

 誰がどう見ても負けていたのに、ここまで来ると一周して笑えてくるから不思議である。鈴の怒りを肩をすくめて流し、謝るつもりはないらしいナナに苦笑いを溢すシャルル。

 

 

「お前らなぁ………はぁ、でもまあ、怪我が大した事なくて安心したぜ」

 

「こんなの怪我のうちに入らなーーーいたたたっ!」

 

「そもそもこうやって横になっていること事態無意味ーーーつううっ!」

 

 

 軽傷だと包帯を巻かれた腕を上げようとする2人だが、当然ながら痛みが襲う。エリートである代表候補生といえど、色恋が絡むと存外馬鹿になるらしい。いざという時の手札が増えたと内心溢しながら、別の事を考える。

 

 学年別トーナメントでの優勝、なんてものは眼中にない。しかし、本国からは既に出場を義務付けられているのだ。学園内で最強を謳う更識楯無(生徒会長)に加え、操縦歴の浅い男性操縦者でも活躍する姿を見せて自国の技術力をアピールしたいのだろう。

 くだらない事に巻き込まれたと思い、学園側の拒否を期待したのだが、参加しないのは不自然だと言うこともあり、その言葉に従うことに。くたばれと中指を立てたのは説明を受けた昼間のこと。

 

 ISの修理もあり、目の前の2人は参加は不可。ご丁寧にも先ほど副担任の山田まやがそれを告げてくれた。。

 

 

「ま、先生も落ち着いたら帰っていいって言ってるし、暫く休んだらーーー」

 

 

 と、一夏が二の句を告げようとした時だった。廊下の外から雪崩の様な足跡が聞こえたのは。間違いなくこちらへと向かってくる音源に、絶対に面倒ごとだと悟ったナナがため息をこぼす。

 

 

「織斑君!」

 

「デュノア君!」

 

「オーウェン君!」

 

 

 ドアを壊さんとばかりに開かれ、雪崩の様に部屋に詰めてきたのは女子生徒の群れ。ベッドが5つあっても尚広々とした空間は一瞬にして人で埋め尽くされ、3人の逃げ場が封じられた。

 我先にと伸ばされた手は軽くホラーであり、流石のナナも気圧されて一歩後退。

 

 

「な、な、なんだなんだ⁉︎」

 

「ど、どうしたの、みんな………ちょ、ちょっと落ち着いて」

 

「HAHAHA、Japanese horrorネ。cool downしてexplanation please(説明して)

 

「これ!」

 

 

 状況が舐め込めない3人に女子一同が開示してきたのは学内の緊急告知文が書かれた申込書だった。

 

 

「な、なになに………?」

 

「今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、2人組での参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締切はーーー」

 

「ああ、そこまででいいから!とにかくっ!」

 

 

 そしてまた一斉に伸びてくる手。逃走経路を確認したナナは悪くない。

 

 

「私と組もう、織斑君!」

 

「私と組んで、デュノア君!」

 

「私とお願い、オーウェン君!」

 

 

 なぜこんな突然の変更があったのか、勿論ナナは知らない。しかし、これは好奇ではないかと内心ほくそ笑む。一夏とペアを組めば必然的に2人きりの時間と言うのは増えてくる。その隙に仲を深めるなり、多少強引にデータを盗み出すなり可能。そうと決まればここで宣言してしまえばいい。そう声を出そうとした時だった。

 

 

「悪いな。俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

 

 シャルルの肩を抱いてそう宣言する一夏。突然の事で困惑するシャルルだったが、どことなく嬉しそうなのは気のせいではないのだろう。これがシャルルの宣言だったならば対抗できるが、当の本人となれば話は別。

 速攻でプランを棄却したナナはゆっくりと、気づかれない様に気配を消して2人から距離を取る。目指す先は背後の窓だ。

 

 

「まぁ、そう言う事なら………」

 

「他の女子と組まれるよりはいいし………」

 

「男同士っていうのも絵になるし…………こほん」

 

「なんで⁉︎一夏くんにはオーウェンくんがっ!」

 

 

 一夏の宣言に概ね納得した一同。ならばと全員の標的が残りのナナへと移る。示し合わせたかの如く一斉に視線をそちらへ向ければ、そこにナナの姿はない。あるのは開け放たれた窓のみ。

 

 

「チィッ!逃げられた!」

 

「まだ遠くに行ってないはずよ!」

 

「人海戦術で探し出せっ!」

 

「いや、ここ3階だぞ⁉︎」

 

 

 一夏の言う通り、ここの保健室は3階。飛び降りるには不可能な高さ。慌てて窓から乗り出して下を見てみるが、そこに人影も死体もなにもなく、夕陽が辺りを照らしているだけ。

 どうやって逃げたかはわからないが、ひとまず無事な様で安堵を溢す。そして、必要な事だったとはいえ犠牲にしてしまったことに軽い罪悪感を覚える一夏。とにかく、今はただ彼の人の無事をただただ祈るしかないのだった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「はぁ、はぁ………ふぅ………」

 

「あら、お疲れみたいね。何があったのかしら?」

 

「チッ!」

 

 

 このまま学内を逃げ続けてもいずれは捕まると、判断したナナが逃げ込んだ先は自室。そこで待っていたのは当然ながら楯無だ。

 原因はわかっているだろうに、態々詳細を聞いてくる事に腹が立ち舌打ちを溢す。殺気を伴った視線を送るが、飄々と肩を竦めるばかりで効いた様子はない。それに毒気を抜かれたナナはもう一度深呼吸をするとベッドに座る。

 

 

「それで?ありゃなンのつもりだ?」

 

「学園長の方針よ。私は一切関わってないわ」

 

 

 その言葉に嘘はないのだろう。生徒会長といえど、学内の行事の方針を変更するほどの権力は持たない。また、危険度を知っている教師陣がこの案を通すとも考え辛い。ならば現場を数値でしか知らない権力者からの指示だ。

 

 

「馬鹿なのか、そいつ」

 

「そんな事ないわよ。実際、アナタがどう動くのかはちゃんと理解してるみたいよ」

 

 

 ほら、という言葉と共に渡された書類は学年別トーナメント戦のペア申請書。既に片方にはナナの名が記されており、残る片方の名も埋められていた。そこに記されているのはーーー

 

 

「………なンのつもりだ、こいつァ」

 

 

 見間違いかと思い何度も読み返すが、そこに記されているのはラウラ・ボーデヴィッヒの名前。少なくともペアを組んで仲良くできる相手ではない。

 

 

「表向きは抽選で、ということで通すつもりよ。アナタはアナタでペアは決まってるって嘘をつけば大丈夫よ」

 

「当日大混乱だろ、それ。それに、人質を取るって可能性は考えねェのか?」

 

「それが無意味だってことは、アナタが一番わかっているでしょ?」

 

 

 その言葉に舌打ちを返すナナ。一夏と敵対し、そしてクラスでも孤立しているラウラを人質にする旨みは少ない。自身の首を無駄に危険に晒すだけだ。それにあの性格からして共謀して一夏を拉致することも不可能だろう。

 こちらの考えはお見通しとばかりの楯無に腹が立ち、何とか裏を掻こうと画策するが、今の状況では望み薄だと悟る。長いため息を吐いた後、頭を掻きむしると立ち上がり、振り返ることなく扉へと向かう。

 

 

「Hey、更識。特訓に付き合え」

 

「なに?トーナメントに向けてのやる気でも出たの?」

 

「そンなンじゃねェ。ただ、無様を晒せば本国が五月蝿ェ。てめぇのトコにもクレームが来るンだろ」

 

「………まぁ、そうね」

 

 

 確かに、本国からは国の威信のために同じ男性操縦者に負けることなど許さないという通達は来ている。現場を知らない、自身の頭の中の現実しか認められない上層部の小言を聞くよりは、ナナを鍛えた方が遥かに有意義だろう。例えそれが一般生徒とはいえない、死刑囚の相手だとしても。

 

 重たい腰を上げて、更識は虚に連絡を入れる。アリーナひとつ、貸し切るためだ。練習している生徒には申し訳ないが、あまり人目のあるところでの交流を見られたくない。飛び交う噂次第ではナナに対して身動きが取りづらくなる可能性があるからだ。

 具体的には楯無を慕う生徒たちが厄介者のナナを引き離そうとしたり、ということは軽く予想できる。そして、その間暗躍する可能性も大いにありうる。

 

 

「はぁ…………いいわ。けど、やるからにはビシバシするわよ。覚悟はいい?」

 

「ハッ!望む所だ。てめぇこそ、手ェ抜くなよ」

 

 

 自身の操縦の拙さは、誰よりもわかっているつもりのナナ。少なくとも、一夏に追いつくには血反吐を吐く特訓が必要だと理解していた。

 

 けれど、ナナはひとつ勘違いをしている。生徒の中で最強と言われる楯無の実力を。国家代表に選出される者との技術の差を。心のどこかで楯無を軽視して、彼我の実力の差を甘く見積もっていたのだ。

 

 

 アリーナ到着後、ナナが体験したのは血反吐を吐くどころか、血で血を洗うような拷問であった。度重なる書類整理や本国への連絡など、鬱憤が溜まっていたのだろう。楯無の攻める手は夜遅くまで続くのであった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 6月も最終週に入り、IS学園は月曜から学年別トーナメント一色にと変わる。学生からすれば企業にアピールするチャンス。そして企業や国家からすれば自国の技術力を示す場でもあり、優秀な者を青田買いできる場でもある。当然ながらアリーナ席は来賓で埋まっており、対談という名の腹の探り合いを繰り広げていた。

 

 

「しかし、すごいなこりゃ………」

 

 

 本来であればすし詰め状態の更衣室も、特例である男子生徒からすれば関係なし。だだっ広い更衣室を3人だけで使用できる特権はありがたかった。尚、許容以上に詰め込まれているであろう反対側の女子更衣室の事は考えない事とする。

 

 言葉を溢した一夏の視線の先はアリーナを写しているモニターではなく、ナナ。その目には酷い隈が浮かんでおり、ベンチに無気力に腰掛けていた。それもそのはずで、楯無の特訓と言う名を借りた憂さ晴らしはここ1週間毎日行われていたのだ。

 

 削られる睡眠時間と精神力。何度やってもその足元にさえ届かない実力差をまざまざと見せられて、ナナの疲労はピークに達していた。これで何の成果も無かったのであれば3日目にして暴れていただろうが、悔しいことに操作技術の糧にはなっているのだ。その実力はこの1週間で大幅に伸びたと言っても過言ではない。

 

 

「大丈夫か、ナナ?あれだったら、始まるまで寝ててもいいぞ」

 

「thank you、一夏………but、no problemネ」

 

 

 首元に巻いた濡れタオルで顔を拭き、意識を覚醒させる。この大観衆の中での実技披露。普通ならば緊張する様な場面だが、一夏にはその様子は見られない。慣れている、とかではなく単純に興味がないのだ。

 一夏の意識はラウラとの対戦。出場ができないセシリアと鈴音の分まで熨斗付けて返すことにしか頭にない。

 

 例の騒動を思い出し、無意識のうちに握られた左手。それをパートナーであるシャルルがそっと手を重ねてほぐした。

 

 

「感情的にならないでね。彼女は、おそらく1年の中では現時点で最強だと思う」

 

「ああ、わかってる」

 

 

 同室と言うこともあり、更には秘密を共有している仲。言葉では伝わらない部分でさえ、2人は目と目で通じ合う。何を見せられてるんだと、げんなりするナナなど視界に入っていないようだ。

 

 

「Ah〜、お邪魔カナ?後はYoung Man'sでごゆっくり、だったヨネ」

 

「っ‼︎そ、そんな事ない、よ?」

 

「あ、ああ、そうだぜ。ほら、それより対戦表が決まるぞ⁉︎」

 

 

 2人して慌てて話題を逸らし、誰と当たるんだろうなぁと棒読みの会話を続ける。少なくとも、隠し事があると薄情しているようなものだ。ここで女装はバレていると告げたい気持ちが芽生えたが、それはぐっと堪え仕方なしにモニターへと目を向ける。

 

 ちょうど対戦表が映し出されたモニターに表示されていたのはAブロック1回戦1組目の対戦。織斑一夏とシャルル・デュノアペアの文字が表示され、VSを挟んだ先に浮かんだのはラウラ・ボーデヴィッヒとナナ・オーウェンの文字。

 まさかの組み合わせに2人が呆けた表情を浮かべ、ナナはもう一度タオルで顔を拭く。質問攻めされる前に逃げる腹積りだ。

 

 

「お、おい、ナナ!お前、いつの間にーーーっていねぇ⁉︎」

 

 

 回復した一夏の声を扉越しに聴き、さてどう言い訳したものかと考えながら、指定された入場口へと歩を進めるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「1戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

 

「そりゃあ何よりだ。こっちも同じ気持ちだぜ」

 

 

 大歓声のアリーナの中、睨み合う両者。互いの背後にはそれぞれのペアが控え、同じ様に試合の開始を待っていた。

 個人通信で連絡を取れている一夏たちと違い、ナナ達に意思疎通する様子はない。そも、合流した時だってラウラは動揺も一瞥もすることも無く、ただ邪魔だけはするなと言い放っただけである。予想通り、タッグマッチの趣旨を解さないようだ。ならばこちらも自由にするだけである、と開き直ったナナは自然体。初日のようなぎこちなさは消えていた。

 

 周囲から注がれる視線、視線、視線。興味深いモルモットを見る様なものもあれば、利用できるかどうかと言う疑惑の視線など、好意的なものはひとつとしてない。それら全てがわずわらしく、中指立てて銃を撃ち込みたくなるが、そんな最悪手を打つ様な人間ならば既にこの世にいない。

 針の筵のような視線は兎も角、どこまでの成果をあげれば本国の小言をなくせるか。それが現在の課題である。

 

 

「ナナ」

 

 

 ふと、一夏からの個人通信が入る。映し出された視線は真剣で、真っ直ぐこちらを見据える姿は普段とは違う。ONとOFFが自然と切り替わるタイプかと、脳の片隅に新たに付け加え耳を傾ける。

 

 

「終わったら、何で黙ってたか聞くからな」

 

「alright。洗いざらい、ネ」

 

 

 戦闘開始まで、5、4、3、2、1…………。

 

 

「「叩きのめす‼︎」」

 

 

 開始のブザーと同時、吠えた2人の言葉がぶつかり合う。開幕直後による瞬間的な高速移動技術、瞬時加速(イグニッション・ブースト)による距離を詰める一夏に対し、その動きを予想していたラウラは右手を突き出す。物体の動きを止めるAICを行うつもりだ。

 空間に圧力をかけて対象の動きを止める機能に捕まれば最後、肩に装備してあるレール砲によって一方的な幕引きとなるだろう。これが一対一ならば勝負あり。しかし、これはタッグマッチである。

 

 

「させないよ」

 

 

 拘束された一夏の頭を飛び越えて躍り出たシャルル。同時に61口径アサルトカノンによる爆破弾の射撃を浴びせた。

 

 

「ちっ………!」

 

 

 肩の砲を射撃によってずらされ、一夏に向けていた砲弾は空を切る。さらにたたみかけるシャルルの攻撃に、ラウラは急後退して間合いを取った。

 

 

「逃さない‼︎」

 

 

 即座に銃身を正面にした突撃態勢へと移り、左手にアサルトライフルを呼び出す。1秒とかからず武装を完了する高速の切替。量産型をカスタムした専用機であっても遅れを取らない、シャルルの特技であった。

 

 

「Hey、オレを忘れないデネ」

 

 

 射撃を繰り出そうとしたシャルルに向かって放たれるのは無数の弾丸。寸前のところで突撃を辞めた故に外れたが、銃口は未だシャルルを狙っている。

 

 

「なら、俺も忘れられないようにしないとな」

 

 

 ラウラのAICから解放された一夏が狙うのはナナ。瞬時加速による急接近。迫り来るブレードに対してナナは手持ちの機関銃を粒子に変えると、新たな獲物を手元に呼び出す。

 甲高い音を立ててブレードを防ぐのは一本の軍用ナイフ。トリグラフの銘を持つその刃と峰に腕を押し当てて、ギリギリのところで事なきを得たのだ。

 

 

「へっ、叫ばなくても展開できるようになったみたいだな」

 

「Special trainingのお陰で、ネッ‼︎」

 

 

 地面を滑る様にして後退したナナに襲いかかるのはシャルルの弾丸。反撃して撃ち返そうとするが、それを阻む様に一夏は付かず離れずの一定の距離から離れない。なるほど、連携の練度はかなりのものだ。未だ候補生からすれば拙いとされる一夏の操縦技術の隙をシャルルが埋め、攻撃力の高い一夏が自由に攻め込めるというスタイルなのだろう。

 これは一筋縄ではいかないと冷静に分析していると、ナナの視界が急に横へとぶれた。

 

 

「邪魔だ」

 

 

 入れ替わりにラウラが一夏へと急接近。そのワイヤーブレードのひとつがナナの脚へと伸びていて、アリーナ脇へと遠心力で投げ飛ばす。

 

 

「チッ、ンのMother fucker………‼︎」

 

 

 アリーナの壁にぶつかり、苛立ちながら体勢を立て直すナナ。思わず素が出てしまうが、それ以上先の言葉はシャルルの弾丸に阻まれた。いくつか貰いながらもその場を脱出。ちらり、とラウラの方に視線をやれば左右のプラズマ手刀とワイヤーブレードの波状攻撃で一夏に襲いかかるところ。

 シャルルが援護に入らないところを見ると、先に自身を潰して数の有利を取るようだ。舐められていると判断が下された瞬間、烈火の如く湧き上がる怒り。冷静な声が落ち着けと頭に響くが、プライドに泥をかけられて出来た熱はそう易々と静まりそうにない。

 

 

「舐めてンじゃねェぞ、surrender monkey(フランス人)

 

「随分な言い草だね、ロシア人。お得意の無関心はどうしたのかな?」

 

「虚仮にされて黙るほど、お人好しじゃねェよ!」

 

 

 シャルルの煽りも、一夏へと視線を向けさせないものだと言う事さえ気づかない。互いの銃口が火を吹き、学年別トーナメントは1戦目にして盛り上がりを見せるのであった。

 

 

 





 尚、作中に出てくる英語は検索かGoogle翻訳によるものです。間違いがあれば指摘をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。